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2023.08.27
FRIENDSHIP.の最新楽曲を紹介!HAPPY・Limited Express(has gone?)・トロピカル・ハイサイほか全17作品 -2023.08.26-
カルチャーの前線で活躍するキュレーター達が厳選した音楽を配信するサービス FRIENDSHIP.の新譜を紹介。 キュレーターの金子厚武とナビゲーターの奥宮みさとによるFM福岡のラジオ番組「Curated Hour ~FRIENDSHIP. RADIO」から、今週オンエアした内容を掲載!FRIENDSHIP.がリリースした最新の音楽をいち早くチェックしよう!
New Release Digest Part 1
みさと:8月21日週にFRIENDSHIP.からリリースの新譜全17作品の中から、まずはPart-1 の6作品でした。リリースおめでとうございます。はじめましてさん、いらっしゃい。Texas 3000です。
金子:90年代のインディ、オルタナな感じがバリバリ出ていてかっこよかったですね。最近グランジっぽい方向に行く人たちはわりといる気がするんですけど、もうちょっと音像自体はローファイだったり、シューゲイザーも入ってればポスト・ハードコアっぽい要素もあったり、いそうでいないタイプの90年代インディ、オルタナを体現してる感じがして。過去曲も聴いてみたけど、どれもかっこよかったです。
みさと:ミックス感っていうんですかね、資料の1行目に"Texas 3000は矛盾に満ちた存在である"とあって、この矛盾が表れてるのかなっていう気もします。あと面白いのが、第3次中東戦争を生き延びたパレスチナの詩人が書いたポエムをもとにして曲を作っていたり、バンドが解散になりそうになるほど難航したEPだったということで、だいぶ気合いが入った曲なんだなというのが伝わってきますね。さらに優河さん、対極にあるような感じですけど、素晴らしい曲がリリースになってます。
金子:今年は「優河with魔法バンド」名義でドラマの主題歌と劇伴を出してますけど、単独名義としては約1年ぶりの新曲。とはいえ、今作も魔法バンドと一緒に作ってはいるんですけど、サウンドデザイン的にはまた一つ更新されてる印象もありました。もちろん生演奏なんだけど、トラック寄りな感じがして、ベースもシンセベースっぽいような音作りだったり、ミックスも立体的で、ピアノがLからRにずらっと流れていくようなサウンドがあったり。ビートミュージックとかでは聴くことがあるけど、ポップスではあまり聴かないようなミックスになってる印象もあって、また一段階更新されてるなと感じました。
みさと:セルフライナーノーツに"偶然誰かと出会えたはずの夜が少しのずれで出会えなかったりする。会えなかったことに対する、惜しいという小さな気持ちは時に壮大な夢のように私達をその夜に何度も連れ戻して清々しい朝を遠ざけていく"とあって。この「何度も連れ戻して」っていうのが、いま厚武さんがおっしゃったようにトラックのループ感というか、最後の終わり方もパツっと終わってまたループをしてしまうような終わり方になってるっていう、世界観の作り方も言葉と音がぴったりリンクしている、素晴らしい曲でしたね。
金子:優河さんは「夜明け」をずっと描いてきた人で、今回はそれを「遠い朝」と表現している。同じことを描いてるんだけど、でもベクトルが違うっていう感じもして、それも面白いですよね。
みさと:言葉の使い方も素晴らしいですよね。そんなPart-1からはどなたの曲にしましょう。
金子:HAPPYをかけようかなと思います。
みさと:HAPPY、 FRIENDSHIP.から出してたんですね。
金子:そうなんですよ、4年ぶりのリリース。
みさと:そうか、番組が始まってからはリリースしてなかったんだ。嬉しい。大好きです、HAPPY。
金子:HAPPYはもともと京都の出身ですけど、関西発のサイケ・バンドはFRIENDSHIP.にたくさんいまして、踊ってばかりの国がいたり、The fin.もそこに入れてもいいと思うし、最近だとDaisy JaneがFUJI ROCKのROOKIEに出て話題になったりっていうのがありましたけど、そのラインで言うとHAPPYは外せないバンドで。今回の新曲はパンデミックの間にメンバーが移住をして自宅兼スタジオを作り、そこで制作・録音された曲ということで、聴いてみれば分かる通り、よりサイケ度がマシマシになっています。基本的にはフレーズのループがずっと流れていくんだけど、少しずつ変化していく感じ、プログレとかフリーフォークとか、時代によって色んな呼び方があると思うけど、HAPPYならではの今のサイケっていう感じがすごくしましたね。
みさと:私、Kula Shakerが大好きで。
金子:はいはい(笑)。
みさと:その系譜というかね、感じるところもあるというのと。あとヨガのインストラクターもやってるので、楽曲について、「太陽を呼ぶ儀式のような曲です」と一言書いてあるんですけど、ヨガって太陽礼拝っていうのがあるんですよ。太陽に向かって決まったポーズを順番ごとにやっていかなきゃいけない一連の流れがあるんですけど、もうぴったり!Kula Shaker聴きながらもヨガやるんですけど。
金子:Kula Shaker聴きながらヨガやるんだ(笑)。
みさと:やっぱりインドの楽器を入れてくれるとよりリンク性が高まるんですけれども、この曲も。
金子:バンスリーというインドのフルートが入ってますからね。
みさと:いやあ、もう大好きな曲になっちゃいました。
New Release Digest Part 2
みさと:Part-2をお送りしました。リリースおめでとうございます。はじめましてさんが2組です。まずは、WESTERN STAGE。
金子:彼らはもともと2002年に結成されたスリーピースで、その後メンバーの進学・就職に伴い活動を休止していましたが、2022年に当時から親交があったギタリストをメンバーに迎え入れて、活動再開。その間が20年、活動休止期間を経ての復活と。
みさと:1年ぐらいしかやってなかったってことですか?
金子:ってことになりますよね。
みさと:すごい経歴だな。そして20年活動を休止してても、またみんなで集まろうよっていう関係値が築けてたこともすごくないですか。
金子:だから多分年齢的にも40歳とか、それぐらいの年齢になってるだろうけど、この曲の青春感。
みさと:ですよ。これ聴いて、みんな始めようぜ、もう一回やろうぜって、何年もやりたいことは変わらないっていう、青春ですね。
金子:何歳になっても、何かをやろうと思ったそのときが青春になるっていうね。
みさと:思い立ったが吉日!「歳をとった我々でも決して上手くはないけど楽しくやってみる精神で作った作品です」という、社会人経験されてる方の謙遜の仕方、素晴らしい。そしてもう1組が、Shizuka Kanataさん。
金子:こちらはベテランというか、ずっと色んなことをやり続けている方。札幌でChameleon Labelを主催してて、sleepy.abのプロデュースもやったり、今はYAYYAYという自分のバンドもやっていて、元GO!GO!7188、今はチリヌルヲワカをやってるユウさんと一緒に活動してたり、本当に色んなことをやられていて、その方のソロ名義がShizuka Kanata。
みさと:なるほど、気付かずにこの方の作品をもう耳にしてました。
金子:何かしらで触れてる可能性はあると思いますね。で、今回の曲はMOTHERCOATというバンドと、sleepy.abのギタリストの山内くんをフィーチャリングしてるんですけど、MOTHERCOATは僕がガツガツバンドをやってた頃にわりと近しいところにいたバンドで、めちゃめちゃ仲良かったとかではないんですけど、インディ・シーンの中ではカリスマ的なポジションにいたバンドで、かなりDIYで、独自のやり方でずっと活動をしてきたバンドなんですよね。彼らも活動休止とかがあったみたいなんですけど、2022年に岐阜の山間に移住して、今はそこを拠点に音楽をやってるみたいで。やっぱりDIY精神は続いてるんだなっていうのを感じるんですけど、Shizuka Kanataも言ってみれば、札幌という場所をずっと拠点にして、自分のインディ感みたいなものを貫いてやってきたわけだから、そういう人たちがこの曲で融合してる。その結果生まれたこのトラックがまた面白い未知のものになっていて、ドリームポップと言ってもいいのかもしれないけど、その枠には決して収まらない、この組み合わせだからこそのものになってる感じがすごくしました。
みさと:確かに。説教臭いわけでもなく、達観し過ぎてるわけでもなく、アンビエント過ぎず、でも土着感はあるし、でも洗練されてるし。
金子:山内くんのエフェクティブなギターの面白さもあるし。なんて形容していいのか分からないけど、でもすごくかっこよかった。
みさと:さあそんなPart-2からはどうしましょう。
金子:Limited Express(has gone?)を。
みさと:リミエキ!リミエキです!
金子:彼らももうベテランの域に入るバンドで、90年代から形を変えながらもずっと活動を続けていて、今回のニューアルバムもかっこいいですね。
みさと:かっこいい。12曲ですよ。アルバムですよ。
金子:オルタナやハードコア・パンクが地盤にありつつも、アルバムになると色んなタイプの曲があって、「PICK A FIGHT」っていう曲はパーカッションも入ったファンキーな曲だったり、長くやってきての地肩の強さと新たなチャレンジ精神と、ちゃんとどっちも感じます。あと音もすごく良くて、特にギターの飯田さんは現行の音楽シーンをちゃんと追ってる人だと思うので、「今のバンドの音像」もちゃんと意識している気がします。
みさと:(過去には)ロベルト吉野さんともね、一緒にやってる。
金子:YUKARIさんが書いてる歌詞も非常に印象的でした。今回『Tell Your Story』っていうタイトルで、「あなたの物語を聞かせて」っていうタイトルですけど、これにもう一言付け加えるなら、「This is My Story,Tell Your Stor」みたいな、「私はこう思ってる、あなたはどう?」っていう、ある種の問いかけな感じがして。曲ごとに色んなことに言及はしてるんだけど、ジェンダーバイアスとか、女性に対するエンパワーメントみたいなところはちょこちょこ感じられて、「Bet On Me」という曲も"私に賭ける、私に賭けろ"みたいなところで、いかに自分自身であるかっていうのを歌ってて。歌詞の中にかぐや姫と白雪姫と人魚姫が出てくるんですよ。それをモチーフにしながら、"私に賭けろ"っていうことを歌っていたり、あと「Keep My Sacred Area」って何回も繰り返してて、「私の神聖な領域を守れ」ってことですけど、やっぱり「いかに自分らしくいるか」っていうことが最終的なテーマになっている気がする。それが『Tell Your Story』っていうタイトルにも表れてる気がするので、そういう言葉の面でも非常に聴き応えのある作品だと思います。
みさと:いつでも自分が主役の人生を生きられるんだよっていうのを、この勢いある、ライブで聴きたいようなサウンドとともにYUKARIさんの声で届けてもらうと、目が覚める感じがするというか、ちょっと俯き加減だった自分をぐっと引き上げてくれるような、そんな作品だなと思いました。
New Release Digest Part 3
みさと:Part-3お送りしました。リリースおめでとうございます。厚武さん、私の推しがまた変な曲作りました。
金子:変な曲でしたね(笑)。
みさと:はい、SHU-MIです。
金子:褒め言葉ですけどね。
みさと:最大限の褒め言葉です。
金子:なんでしょうね、この曲は。すごい展開でしたね。
みさと:なんでしょう、プロレスの実況中継入ってましたね。
金子:コンセプトとしては、曲中で映画を観てるんですよね。なので実際にその映画から流れてくる音楽に切り替わったり、そこにナレーションがついたり、また戻ってきたりっていう、まずこの構成がね、めちゃめちゃ面白いですよね。
みさと:SHU-MIは毎曲毎曲、裏切りを体感させてくれてて、アイデア商品を作ったらもうヒットバンバン出してるような、特許とか申請できちゃいそうな感じがして、素晴らしいですね。
金子:確かに、アイデアマン揃いですよね。
みさと:5分半の超大作です。そして、おひさしぶりなのがHYPER GAL。
金子:1年半ぶりくらいのリリースですね。去年出したアルバムはライブハウスで一発録りをしてたんですけど、今回が初めてスタジオレコーディングを行った曲ということで。ただスタジオレコーディングとはいえ、めちゃめちゃハイファイな音になってるかっていうとそうではなくて、このツーピースらしいちょっとガレージな感じがあり、でもそれぞれが美術家やノイジシャンとしても活動してたりっていう経歴もあるから、そういうのをちょっと感じさせるような音の面白さ、ノイズ感もあって。リミエキと相性よさそうだなと思って調べたら、すでに去年対バンしてました。
みさと:ですよねー。「存在の境界線」をテーマに今回作られたということなんですけど、まさに疾走感のあるドラムとたっぷり使ったボーカルとシンセの違和感が狭間にいる感覚になれる曲だったなと思います。さあ、そんなPart-3からどうしましょうか?
金子:トロピカル・ハイサイをかけようと思います。
みさと:良いアルバムで、元気になるアルバムでした。
金子:こちらはayU tokiOの猪爪東風くんと永原真夏さんを中心として5月に大・シーサー博というライブイベントをやり、そのホストバンドがトロピカル・ハイサイで、そのときのライブ音源と、同じセットリストをスタジオでレコーディングしたスタジオ音源をカセットテープでA面B面に分けてリリース、今回はそのB面に入るスタジオ音源がまずリリースされると。
みさと:配信ではそちらがリリースされるということなんですね。アルバムの曲、私「夜を照らせ」がすごく好きです。最初の管楽器が入ってる感じとか、トロピカル・ハイサイと打ち出してるものだと、とっても沖縄に寄ったものなのかなって一見すると思ってしまうけど、そうではなくて、彼女たちの色んなバックグラウンドを感じながらも、でもあの沖縄ならではの温かさというか、そういった風も感じる、すごく良い曲たくさん入ってたなと。
金子:その「夜も照らせ」も含めた2曲がayU tokiOのカバーで、「青い空」を含めた2曲が真夏ちゃんのカバーということになっていて、なのでそれぞれのバックグラウンドも感じさせつつ、それをトロピカル・ハイサイver.にしてるっていう感じですね。「青い空」もスティールパンの音色がトロピカルな感じを出しつつ、ちょっとダブっぽい感じ、ゆったりした感じのテンションっていうのも、この組み合わせだからこそなのかなっていう感じがして、夏に聴くのも良いですね。
みさと:歌声も素晴らしい。いつも本当に表現力のあるボーカリストだなと感じていますけど、それもまた、さらに感じられるアルバムになっております。
RADIO INFORMATION
FM 福岡「Curated Hour ~FRIENDSHIP. RADIO」
FRIENDSHIP.キュレーター達が厳選した音楽をラジオで紹介するプログラム「Curated Hour ~FRIENDSHIP. RADIO」。キュレーターの金子厚武をコメンテーターに迎え、奥宮みさとと共にFRIENDSHIP.がリリースをする最新の音楽を紹介。番組後半ではThe fin.のYuto Uchinoが月替りでゲストを迎え、深い音楽談義を繰り広げるコーナーを展開。 放送時間:毎週土曜日 26:00~26:55 放送局:FM福岡(radikoで全国で聴取可能)
番組MC
金子厚武 1979年生まれ。埼玉県熊谷市出身。インディーズでのバンド活動、音楽出版社への勤務を経て、現在はフリーランスのライター。音楽を中心に、インタヴューやライティングを手がける。主な執筆媒体は『CINRA』『Real Sound』『ナタリー』『Rolling Stone Japan』『MUSICA』『ミュージック・マガジン』など。『ポストロック・ディスク・ガイド』(シンコーミュージック)監修。デジタル配信サービス「FRIENDSHIP.」キュレーター。 @a2take / @a2take3 奥宮みさと ラジオパーソナリティ/ナレーター/MC/ヨガインストラクター/酵素風呂サロンオーナー。 TOKYO FM、ZIP-FM、InterFM、FM 福岡など、ラジオパーソナリティ歴12年目。 安室奈美恵さんをはじめとするお茶の間ミュージシャンからコアなインディーズミュージシャンまで無数のインタビューを経験。コロナ前は年間200件程ライブや全国のフェスに行く現場派。野外フェスのヨガプログラムなども担当。倍音と1/fゆらぎの声を持ち、耳馴染みの良いベルベットボイスが特徴。 @_M1110_ / @11misato10 Yuto Uchino(The fin. Vocal / Synth / Guitar) 神戸出身、ロックバンドThe fin.のフロントマン、ソングライター。80~90年代のシンセポップ、シューゲイザーサウンドから、リアルタイムなUSインディーポップの影響や、チルウェーヴなどを経由したサウンドスケープは、ネット上で話題を呼び、日本のみならず海外からも問い合わせ殺到している。 The Last Shadow Puppets、MEW、CIRCA WAVESなどのツアーサポート、そしてUS、UK、アジアツアーを成功させるなど、新世代バンドの中心的存在となっている。 オフィシャルサイト / @_thefin / @yuto__the_fin