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2023.07.09
カルチャーの前線で活躍するキュレーター達が厳選した音楽を配信するサービス FRIENDSHIP.の新譜を紹介。 キュレーターの金子厚武とナビゲーターの奥宮みさとによるFM福岡のラジオ番組「Curated Hour ~FRIENDSHIP. RADIO」から、今週オンエアした内容を掲載!FRIENDSHIP.がリリースした最新の音楽をいち早くチェックしよう!
New Release Digest Part 1
みさと:7月3日週にFRIENDSHIP.からリリースの新譜全22作品の中から、まずはPart-1の8作品をダイジェストでご紹介しました。リリースおめでとうございます。今週はアルバムやEPのリリースが本当にたくさんいらっしゃって、アルバムというところではフリージアンもリリースになりました。
金子:ついにアルバムですね。ちょっと前にも、今関西で非常に人気があるという話をチラッとしたかと思うんですけど、勢いそのままに、アルバムを完成させました。タイトルがバンド名そのまま『FREESIAN』で、今勢いに乗る彼らをそのまま閉じ込めた、という作品になってるんじゃないでしょうか。
みさと:そうですね。アルバム全体の、自分の人生をしっかりと書き記した歌詞世界というのも印象的でした。自分の人生って続いていくものだから、ループさせていくような、最初と最後のオープニングとエンディングにインタールードを使った演出感とかもこだわって、この作品1枚で自分たちが分かってもらえるように、そして何度も擦り切れるくらい聴いてもらえるように演出されたんだな、というのが伝わってくる作品でした。
金子:「人生は繋がってる」っていうのはおっしゃる通りで、アルバム1曲目の「イエスタデイワンスモア」はフリージアンの前身のバンドのCOSMOS時代からやっていた曲をリアレンジして収録していたり、あと僕COSMOSのことはよく知らなかったんですけど、今回改めて調べたら、COSMOSが2019年に発表してるアルバムの1曲目のタイトルが「フリージアン」なんですよ。
みさと:そうなの!?
金子:そう、それを初めて知って。
みさと:すごい!
金子:やっぱり人生は繋がってますね。
みさと:そのときは「これから改名しよう」なんて絶対そんな気はなかったはずだけど、もしかしたら、今立っている場所から過去を見たときに、あれが自分にとっての根本だったのかもって振り返られているのかもしれないですよね。どのようにリンクさせてバンド名を決めたかはもちろん本人しか知らないことだけど、そこにドラマがあることは間違いないですね。
金子:ですね。
みさと:うわー、すごいなあ。そして、ドラマがあったからこそ生まれたEPなんじゃないかな、という意味ではOtomodatchiのニューEPです。
金子:まさにそうですよね。Otomodatchiの2人、AmiideさんとJyodanさんはもともとCIRRRCLEという名義で活動をしていて、でもCIRRRCLEは解散になっちゃって、今回のお二人からのコメントを見ると、一時期は音楽へのモチベーションを失っちゃったり、インポスター症候群に陥っちゃったり、それぞれ結構しんどい時期があったみたいで。でも、もう一度2人で一緒に音楽をやるようになって、今回のEPのタイトルが『We're Still Friends』ですからね。僕たち、私たち、友達だよねっていう。
みさと:いいですね。「The Way You Make Me」も誰かがいることによって自分が作られるっていうことを歌っていて、EPを通して2人の絆と、あと喪失を経験しないと、なかなか謙虚になったり、心からの感謝って浮かばないでしょうから、そのあたりの言葉がすごく詰まってるEPだなと感じています。そんなPart-1からはどうしましょう?
金子:SuUをかけようかなと思います。
みさと:SuUもとても良かったですね。
金子:Part-1は良い曲たくさんあったんですけど、これは僕の個人的な好みですね。もともとバンドをやっていた方が休止をして、2019年に宅録のソロプロジェクトとしてスタートしてるんですけど、こういうアメリカのインディーのサイケポップ、Mac DeMarcoであったり、それ以降を感じさせるサウンドがまず好みで、FRIENDSHIP.で言うと田中ヤコブさんとか、もうちょっと広く見たら、カネコアヤノさんとかもそういうラインに入ってくると思うから、すごくFRIENDSHIP.らしいアーティストとも言えると思います。今回のアルバムは2019年に宅録のプロジェクトとしてスタートしてからいろんな形で、カセットテープで出したり、デジタルでも出したりしてきた曲を再録して、そこに新曲も加えてのフルアルバムということで、非常に良かったですね。
みさと:切実な青さとヒリヒリ感、こんなに気持ちを乗っけて声を重ねるのって、もう照れくさいところから解き放たれて、今自分たちが本当にこれしかできないっていうぐらいの潔さを感じたところもありました。「映画(長編)」「映画(短編)」という2曲が収録されてましたけど、何か鬱屈した思いとか、頑固な思いとか、形にならない思いも全部詰まってて、人と生きてくのって苦しいよな、でも誰かと生きたいよねっていう、矛盾なんだけどそれが矛盾じゃないよねっていう、何というか、言葉にできない......。
金子:めっちゃわかります。ちょっと不機嫌そうだし、ちょっと居心地悪そうなんだけど、でもそれを愛おしくも思ってるみたいな感じ、めちゃめちゃ伝わってきて。
みさと:ねー。
金子:SuUの音楽的な特徴のひとつとして、女性ボーカルが入っていて。Minakoさんという、ご自身でもソロアーティストとして活動してる方が「コースト」でも歌ってるんですけど、このサウンド感で男女ボーカルを前面に出してるのってわりと珍しい気がして。
みさと:そう思う。
金子:でもこの2人の声があることで、「他者との関係性」みたいな部分だったり、そういう表現がより深まってて、すごくポイントだなと思いました。
みさと:同感です。じっくりアルバム聴いてほしいですね。
New Release Digest Part 2
みさと:お送りしたのは新譜ダイジェスト、Part-2でした。リリースおめでとうございます。さてさてさて、陽気なはじめましてさんです。杉野菊キャラバン音楽隊。
金子:陽気でしたね。キャラバン音楽隊ですからね。彼らはもともと2022年の夏にボーカルの杉野さんを中心に活動を開始した京都のバンド。資料によると、杉野さんは幼なじみの山根さんと、公園や河川敷で全ての曲作りを行っているそうです。EPのタイトルが『歌謡ようよう』で、アートワークもめっちゃ昭和のアナログ盤みたいな感じだし、やっぱり歌謡曲っぽさ、その中にあるロカビリーだったり、ドゥーワップだったり、その感じが曲自体にも詰まっていて、非常に良かったですね。
みさと:すごく歌謡とか、もっと古の時代を感じるかなって思ってたんですけど、そこまで古臭くなってないっていうのがまたひとつ、杉野さんのボーカルの、声の魅力なのかなと感じたところがあって。もちろんツイストを踊りたくなるようなロカビリー感とかも感じるし、歌詞も「夜のヒットスタジオ」とか入ってくるし、でもそんなに古臭く感じないのはなんでなんですかね?
金子:影響源として吉田拓郎さんとか沢田研二さんの名前も並んでるんですけど、バレーボウイズの名前も挙がっていて。バレーボウイズも京都のバンドで、今ラッキーセベンをやってるシュウタネギさんがもともとやってたバンドで、彼らも昔の歌謡曲を今に更新してやってた人たちだから、その感じを受け継いでるっていうのはある気がしますね。
みさと:納得です。さて、Part-2から、私お気に入りを見つけまして、Ghost like girlfriendの曲が好きです。
金子:すごく良い曲ですよね。
みさと:良かったー!
金子:Ghost like girlfriendがフィーチャリングものを出すこと自体が珍しいと思うんですけど、女性ボーカルはたぶん初で。今回日本と中国をルーツに持つFoiさんが参加していて、FoiさんはVivaOlaくんとかともコラボしてるんですけど、この2人の声の混ざり方もまた特徴的で良かったですよね。
みさと:うん。デジタルの良さが活きたサウンドなのかなって思って聴き始めたら、カッティングギターが入ったり、最後泣きのエレキギターの強さとか、音の粒が立つ言葉のハネ感と歌唱方法っていうのがすごい最高だなと思って。二つとして同じような曲はない、とっても耳に引っかかる曲でした。
金子:"粘り気や湿り気ある詞曲をいかにサラッと表せるかを、毎度作品を出すたびに密やかに挑戦してる、それが今回ダントツで更新できた"っていうのを本人がコメントしてて。
みさと:岡林くん!
金子:岡林くんの声って、どちらかというと湿り気のある良い声だから、それをいかにサラッと聴かせるかに挑戦してたっていうのはわかるなあと思いつつ、今回Foiさんの声が入ってくることでそれが明確に更新できた。そういう意味でも記念碑的な一曲かもしれないですね。
みさと:彼がやりたかったことがちゃんと具現化されている素晴らしい曲でした。そんな中、Part-2からはどうしましょう?
金子:Halleをかけようかなと思います。
みさと:Halleさんは毎回言ってるけど、本当に末恐ろしい。もうCMソングにするよ、私が何かそういう仕事してたら。
金子:あはは。
みさと:ポカリスウェットか、ビオレとかの制汗剤のスプレーとか。
金子:いけますねー。
みさと:高校サッカーとかもいけるよ。
金子:いけますねー。
みさと:だって、清涼感とキュンの間違いない組み合わせなわけじゃないですか。
金子:でも本当に、このままCM曲になってもいいぐらいのポップセンスがありますよね。しかも、今回のこの「夏涼み」という曲はもともと17歳のときに作ってて、20歳でもう一度作り直して、という曲だそうで。だからこそのフレッシュさと、でもそこからの3年の積み重ねを経て、今もう一度やってるからこその完成度もあるという。
みさと:そうか、さりげなくアコギの音が聴こえるのが渋いなって思ってたんですけど、もしかしたらこの3年で、その大人になった20歳を超えたときに渋さがプラスされた可能性もありますね。
金子:かもしれない。10代のときに作ったこともあってか、彼の持ち曲の中ではBPMが一番速い曲らしくて、でも言ってもBPM135ぐらいで、その後にかかったT.M.Pの曲はBPM185だったから、そっちの方が全然速いんですけど(笑)。でも彼の曲の中では一番のアップテンポな曲で、そのフレッシュさ、それが夏感にも繋がってると思うし、いいですよね。ホントに、これCMでかけたい。
みさと:どんなCMにフィットするのか、想像を膨らませてみてください。
New Release Digest Part 3
みさと:新譜ダイジェストPart-3をお送りしました。リリースおめでとうございます。私、金廣さんやっぱりかっこいいなと思って。金廣真悟にはこういう曲を歌っててほしいんですよ。会場で全員がシンガロングして、「ソラシドでー」のタイミングでみんなが手を空にかざして、なんかもう歌い上げるロックサウンド。その全てが見えるし、ご自身の魅力をやっぱり全部分かっていらっしゃるなと。アルバムを噛み締めて、「そうそう、これこれ」って、ニヤニヤしてました。
金子:確かにこの曲はシンガロング間違いなしですね。メロディーラインも分かりやすいですからね。さらに言えば、ちょっと前に「40」という40歳になっての心境というところでのEPを出してて、今回はそのEPの曲に新曲も加えて、アルバムという形にしていて。タイトルが『Heartbeats』なんですけど、「heartbeat」という曲が入ってて、その曲は赤ちゃんがまだ奥さんのお腹の中にいる頃に、心音を録って、そこから曲を作りたいと思って作った曲らしくて。この人も人生がそのまま作品になってる人だなというのを改めて感じました。
みさと:そして、EPでいくとGateballersもリリースです。
金子:Gateballersは半年ぶりくらいのリリースですかね。濱野夏椰くんもちょっと前にお父さんになって、最近の曲では父親になったことが結構テーマになっていて。今回のEPに入ってる「Thank youとLove」っていう曲も、子供が生まれたことをきっかけに書いた曲らしいし、あと「花とゆめ」という曲は20代のときに書いた曲で、葬儀屋のアルバイトから帰ってきて、この曲を書いて辞表を出したらしいって資料に書いてあって。
みさと:だいぶパンチのあるエピソードを持ってますよね。
金子:やっぱりGateballersの曲の背景には色んな形での死生観みたいなものが表れている気がして、今回もやっぱりそういう作品だなと思います。
みさと:ギターはすごく勢いがあるのに、たっぷり倍でとったメロとのギャップみたいなものが、より二つの音がしっかり入ってくるという、両極のそのせわしなさと、ゆっくりゆっくり進んでいく人生との置き換えみたいなものも楽しめる曲作りでもあるなと聴いてました。
金子:サウンドはお馴染みの伊豆スタジオで録られていて。ちなみに、ちょっと前にくるりのオリジナルメンバーが再集結して、今年の秋にひさびさにアルバム出すことが発表されましたけど、それも伊豆スタジオで録っていて。
みさと:そうなんだ。えー、楽しみ。伊豆スタジオ、すごいね。
金子:夏椰くんのお父様がエンジニアをやられてるんでね。
みさと:そうかそうか、芸能一家。
金子:あはは。
みさと:そんな中から七夕も過ぎて夏ですし、どんな曲を聴きたいかというとこんな曲ですよね、厚武さん。
金子:はい、阿佐ヶ谷ロマンティクスの「阿佐ヶ谷音頭」をかけようかなと思います。
みさと:これ、阿佐ヶ谷姉妹のために作ったんですか?
金子:そうみたいですね。番組の企画で、阿佐ヶ谷姉妹が歌う盆踊りを作ってほしいと言われて、この曲を作ったと。
みさと:最初、資料を読まずに聴いてたんですよ。もちろん櫓を囲むような風景も浮かぶし、盆踊りソングだって聴いてたんですけど、私にはちょっと(キーが)高くて、これ歌えない、難しいよって思ってたんだけど、阿佐ヶ谷姉妹って聞いて、お姉さんめっちゃ歌上手いもんな、と。
金子:歌唱力高いですからね。
みさと:問題なかった、と思って。
金子:その祭囃子感もちろんありつつ、阿佐ヶ谷ロマンティクスらしいレゲエの感じもしっかりあって、その融合が結果的に細野さん的なエキゾチシズムみたいなところにも繋がってるような気がして。ただの企画モノじゃない、阿佐ヶ谷らしいオリジナルな曲にちゃんと仕上がってるなっていうのはすごく感じましたね。
みさと:オリジナルっていうところで言うと、歌詞も「離れていても、ここに集まって」という意味合いがあって、東京ってそういう街だもんなって。みんなそれぞれ田舎とか戻る場所があるけど、でも今この瞬間集まったらここがホームになるよねっていう、そういう雰囲気もあって、阿佐ヶ谷ロマンティクスの活動の根源みたいなものもちゃんと歌詞にさりげなく落とし込まれてるのが、ファンも納得のいく一曲になってますね。
金子:去年の段階だとコロナの影響で盆踊り自体はやれたとしても、声はまだ出せなかった気がするけど、今年はちゃんと歌いながら盆踊りができるでしょうから、是非とも生で披露してほしいですね。
RADIO INFORMATION
FM 福岡「Curated Hour ~FRIENDSHIP. RADIO」
FRIENDSHIP.キュレーター達が厳選した音楽をラジオで紹介するプログラム「Curated Hour ~FRIENDSHIP. RADIO」。キュレーターの金子厚武をコメンテーターに迎え、奥宮みさとと共にFRIENDSHIP.がリリースをする最新の音楽を紹介。番組後半ではThe fin.のYuto Uchinoが月替りでゲストを迎え、深い音楽談義を繰り広げるコーナーを展開。 放送時間:毎週土曜日 26:00~26:55 放送局:FM福岡(radikoで全国で聴取可能)
番組MC
金子厚武 1979年生まれ。埼玉県熊谷市出身。インディーズでのバンド活動、音楽出版社への勤務を経て、現在はフリーランスのライター。音楽を中心に、インタヴューやライティングを手がける。主な執筆媒体は『CINRA』『Real Sound』『ナタリー』『Rolling Stone Japan』『MUSICA』『ミュージック・マガジン』など。『ポストロック・ディスク・ガイド』(シンコーミュージック)監修。デジタル配信サービス「FRIENDSHIP.」キュレーター。 @a2take / @a2take3 奥宮みさと ラジオパーソナリティ/ナレーター/MC/ヨガインストラクター/酵素風呂サロンオーナー。 TOKYO FM、ZIP-FM、InterFM、FM 福岡など、ラジオパーソナリティ歴12年目。 安室奈美恵さんをはじめとするお茶の間ミュージシャンからコアなインディーズミュージシャンまで無数のインタビューを経験。コロナ前は年間200件程ライブや全国のフェスに行く現場派。野外フェスのヨガプログラムなども担当。倍音と1/fゆらぎの声を持ち、耳馴染みの良いベルベットボイスが特徴。 @_M1110_ / @11misato10 Yuto Uchino(The fin. Vocal / Synth / Guitar) 神戸出身、ロックバンドThe fin.のフロントマン、ソングライター。80~90年代のシンセポップ、シューゲイザーサウンドから、リアルタイムなUSインディーポップの影響や、チルウェーヴなどを経由したサウンドスケープは、ネット上で話題を呼び、日本のみならず海外からも問い合わせ殺到している。 The Last Shadow Puppets、MEW、CIRCA WAVESなどのツアーサポート、そしてUS、UK、アジアツアーを成功させるなど、新世代バンドの中心的存在となっている。 オフィシャルサイト / @_thefin / @yuto__the_fin