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2023.07.07
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札幌4バンドによる、誇りと信念を持って札幌音楽シーンのリアルを証明した夜。「#FLiNR and No.18 presents Counterblow vol.2 in TOKYO」
7月2日(日)に下北沢LIVE HAUSにて「#FLiNR and No.18 presents Counterblow vol.2 in TOKYO」が開催された。当イベントは、札幌出身のFirst Love is Never ReturnedとNo.18が主催となり、『FROM SAPPORO GOODMUSIC』を掲げて、同じく札幌出身のgoetheとDOUBLIVINGと共に行った4マンイベント。6月30日地元・札幌のSOUND CRUEにて同4組でのイベントを開催していたが、今回の東京編含めて両日共にソールドアウトという快挙を成し遂げた。東京のバンドを招聘するのではなく、札幌のシーンを盛り上げていこうとしている仲間と共に自らの力で挑んだ4組の、熱き信念と気合の入った当日の様子をレポートする。
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トップバッターは、DOUBLIVING。SULLIVAN's FUN CLUBのヨシダレオ(Vo/Gt)のソロプロジェクトではあるが、この日はサポートとしてベースとドラムを迎えた3ピース編成で登場。ミディアムテンポが生み出す緩やかさと温もりはそのままに、ヨシダの熱の入った歌唱が力強く届く「第五惑星のメリィへ」でスタートさせると、心強いボトムと共に軽快に弾んでいく「天才の君へ」を続けてプレイ。
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「自分含めて札幌らしい4組だと思いますし、自信を持って下北沢に来ました。俺は歌上手くないし、メロウな曲は無いけれど、いい曲持ってきました」と伝え、ギターのカッティングが爽快感を寄与する「とわいらいと(あの街)」を披露。聴いた後に口ずさんでしまえるポップネスがありつつも、どの曲もしっかり泥臭いのがDOUBLIVINGの良さだと思う。それはヨシダの歌い方や歌声にも由来するのだとは思うが、焦燥も不満も喜びも希望も愛情も、生身の温度で宿っているからこその熱が生まれるのだろう。新曲「P.S. I LOVE U」含め、まさに熱演と呼ぶに相応しいライブでバトンを繋げた。
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2組目は、goethe。DOUBLIVINGが生み出した熱を鎮めるように、そっと静かに「運命」をプレイ。R&Bやジャズを基盤とした様々な音楽性を交え、日本語詞特有の婉曲性や叙情性を味方にした彼らの楽曲は、どれもシンプルでミニマムな音像であるからこそ、樋口太一(Vo/Gt)の透明感と温度感の低い歌声がよく映える。
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鳴る音の一粒一粒が、煌々と輝くかのようにしっかりと、それでいてゆったりフロア全体に響き渡っていく。揺蕩う波を想起させるような1曲目を経て、「B(men)」や「煙管」では、小気味よいリズムがタイト&グルーヴィーに響き、オーディエンスの身体を揺らしていく。続く「ただ酔う」でも、まるで酩酊中特有のふわりふわりとした浮遊感とほてり、どこかクリアな脳内、そして無情にも襲ってくる人恋しさといった様々な感情を想起させてくる。人と人との間に生まれる些細な擦れ違いが生み出す切なさややるせなさを丁寧に描き、心地好い音楽として届ける彼らのライブを表現するには、「うっとり」という言葉が似合う。
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3組目のFirst Love is Never Returnedは、NYに留学経験を持つKazuki Ishida(Vo.&Key.&Gt)を中心に結成されたバンド。挨拶代わりのセッションから1曲目「シューズは脱がないで」でライブがスタートした時点で、彼の歌が「恋する歌声」と評される理由が一聴して分かった。甘さと芯の強さをひしと感じるボーカルと、その歌声を最大限に尊重しながらも、軽やかに、しなやかに構成されたグッドバランスのメロディが会場いっぱいに広がっていく。曲間で伝えられた「あなたに会いに来ました、よろしく!」という言葉の通り、聴者を圧倒するのではなく、共に音楽を楽しんでいこう!という包容力のあるボーカルがユートピアへ頼もしく導いてくれる。
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R&Bが持ち得る濃密さと、ジャパニーズ・シティポップが持ち得る爽やかさが融合したメロディの上で、慕情と熱情が絡み合う一夜の出来事をドラマティックに描いた「泡と文學」をプレイ。MCでは、初めての東京公演がソールドアウトで迎えられたことへの喜びを露わにしつつ、北海道最大規模のフェス「RISING SUN ROCK FESTIVAL 2023」に「RISING★STAR」枠で出演することが決まったというビックニュースも改めて発表し、会場全員のテンション感がどんどんと上がっていくのが肌でも分かった。数あるアーティストの中から選ばれたその実力は、この後続けた、エフェクトが掛かったボーカルと逞しいボトムが織りなすアーバンなダンスナンバー「OSC」や、真夜中のドライブを彷彿とさせる疾走感溢れるクールな「Baby,Don't Stop」などでもひしと感じたし、曲が変わる度に様々な表情を見せてくれる彼らのバンドとしてのレンジの広さに大きな可能性を感じた。
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「この曲は、コロナ禍中に書いた、皆さんと僕たちの愛の歌です」と紹介し、閉塞感のある生活の中でも迸る想いを宿しているという気持ちを歌った「プラチナ」をプレイしつつ、ラストには、「皆さんの好きなように、自由に選択して、またライブハウスに足を運んで、音楽を楽しんでいってもらいたいと思います」と伝え、豊かなスケールの中で進んでいく強さを歌った「Twenty-Twenty」を届け、オーディエンスを励ましてくれた。
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この日のラストアクトは、No.18!メンバー全員がサングラスを着用した姿でステージに登場し、フリースタイルを即興で叩き込むと、そのまま「Roll」でライブを始める。早々にShouBit(Rap)のフロウが炸裂し、力強く、それでいて自由度の高いビートが、キレのあるラップと共鳴していく。自然発生したオーディエンスのクラップと共に、ワウの効いたギターとHallking(Ba)のスラップベース、そして浮遊感あるコーラスが絡み合うムーディーな「Ginger」へと繋がっていく様は見事。流暢に流れるかのように、そして時に濁流のように畳みかけていくリリック、そしてその間に絶妙なタイミングで仕組まれた音のない間には、思わず歓声が上がる。
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鍵盤の音色が華やかさを付帯させつつ、KEN-ROW(Key)とSim Ra(Gt)とボーカルが入れ替わることで様々な表情を見せていく「On&On」は、タイトでグルーヴィー!3人の声質が異なることで、疾走感の中にも複雑な奥行を見せていった。シンプルなベースのリフを軸にしつつ、曲が進むにつれて徐々に熱を帯びていき、後半に向かってじわじわと、それでいてド派手に盛り上げていく「Scramble」も同様、どの曲にも攻撃的でヒリついた感触を抱きつつも、どの曲も依然として身体を預けられる絶妙なユルさを感じられる。それは、バンド自身が「好きなように、音楽で楽しんでいこうぜ」という気持ちを共有し、音楽が持つ自由を存分に理解しているが故に生まれる心的余裕が起因するものなのだろう。
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本編ラストの「Day To Day」含め、最後まであの場に集った全員が自由に手を挙げ、叩き、音楽に合わせて体を揺らすという最高にピースフルな空間を作り上げたが、収まらない高揚感に呼ばれて再度ステージに戻った彼らは、アンコールで「What About Us」をプレイ!ミディアムテンポの楽曲かと思いきや、2MCスタイルで強烈なパンチラインを繰り出し、ソウルフルなライブでフロアの余熱を沸点に再度塗り替えていく。
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4バンドが、それぞれ全く異なる音楽性だけれど、各々が誇りと信念を持って札幌の音楽シーンのリアルを証明しにきた今回のイベントは、大成功の中幕を閉じた。
文:峯岸 利恵
撮影:市川実果
オフィシャルサイト / @1st_love_is / @1stlove_is
No.18
オフィシャルサイト / @no18_sapporo_ / @no18_sapporo
DOUBLIVING
@doubliving_jp / @doubliving_jp
goethe
オフィシャルサイト / @goethe_band / @from_goethe
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4バンドが、それぞれ全く異なる音楽性だけれど、各々が誇りと信念を持って札幌の音楽シーンのリアルを証明しにきた今回のイベントは、大成功の中幕を閉じた。
文:峯岸 利恵
撮影:市川実果
LINK
First Love is Never Returnedオフィシャルサイト / @1st_love_is / @1stlove_is
No.18
オフィシャルサイト / @no18_sapporo_ / @no18_sapporo
DOUBLIVING
@doubliving_jp / @doubliving_jp
goethe
オフィシャルサイト / @goethe_band / @from_goethe