- TOPICS
- FEATURE
2022.12.04
FRIENDSHIP.の最新楽曲を紹介!Wez Atlas & uin・カワサキケイ・Mark Diamondほか全20作品 -2022.12.03-
カルチャーの前線で活躍するキュレーター達が厳選した音楽を配信するサービス FRIENDSHIP.の新譜を紹介。
キュレーターの金子厚武とサトーカンナによるFM福岡のラジオ番組「Curated Hour ~FRIENDSHIP. RADIO」から、今週オンエアした内容を掲載!FRIENDSHIP.がリリースした最新の音楽をいち早くチェックしよう!
カンナ:11月28日週にFRIENDSHIP.からリリースの新譜全20作品の中から、まずはPart 1の7作品をダイジェストでご紹介しました。リリースおめでとうございます!Part 1では初登場が2組います。まずは最後にかかりましたラッキーセベン。
金子:ラッキー"セブン"じゃなくて、ラッキー"セベン"。
カンナ:そして6人組なんですよね。7人組ではないという(笑)。
金子:今年の5月に大阪で結成されたバンドで、梅田や難波の路上でライブを繰り返していた中で噂が広がり、SNSとかでライブ映像を見たイベンターさんからイベントに誘われて、10月からライブハウスでの活動を開始という、出来立てホヤホヤなバンドですね。
カンナ:本当ですね。
金子:元バレーボウイズで、FRIENDSHIP.的に言うと、みらんさんのプロデュースとかでも関わっているシュウタネギさんがメンバーでもあるバンドです。
カンナ:梅田とか難波の路上でライブしているということですけど、もし路上でこのバンドを見かけたら立ち止まりそうだし、背中を押されそうだなと思いました。新宿とかで見てみたいですね。
カンナ:続いて、初登場の櫛引彩香さん。
金子:櫛引彩香さんは青森出身のシンガーソングライター。
カンナ:私と同郷ですね。
金子:デビューが1999年なので、キャリアのある方です。最近のライブはサポートメンバーがヒックスヴィルの真城めぐみさん、CUBISMO GRAFICOやLEARNERSの松田 "CHABE" 岳二さん、LUCKY TAPESのベースの田口くんと、このサポートメンバーを見ただけでも音楽性やクオリティーの高さみたいなものがなんとなく伝わってきますけど、実際曲を聴いても素晴らしい曲でしたね。
カンナ:すごく豪華なメンバーだし、その中で全く力まない、張らない感じの歌声みたいなのは、実はあんまり聴いたことないボーカルだなと思って、すごくよかったです。
金子:今回の曲はFRIENDSHIP.から作品をリリースしているTOMMY HONDA、PANORAMA FAMILYとしても活躍するGOMESSさんが編曲で関わっています。TOMMY HONDAもゆったりとした、気張らないギターサウンドやトラックメイクが心地いいので、相性もぴったりですよね。
カンナ:それではPart 1から聴いていただく曲はどちらにしますか?
金子:Wez Atlasの新曲をかけようかなと思います。
カンナ:こちらもゆったりした感じですごく良かったです。
金子:Wezくんは相変わらずいろんなコラボレーションを積極的に行っていて、今回はトラックメーカーのuinさんとのコラボレーションということです。元Tokyo Recordings、現TOKAのソングライティングキャンプ、アーティストやプロデューサーが集まってコライトをして、何日間かの中で曲を制作するというのに参加してできた曲とのことです。
カンナ:なるほど。
金子:uinはSkaaiというラッパーと一緒に曲を作ってる人で。最近そのSkaaiがchelmicoのMamikoさんと共に福岡出身のyonawoの「tokyo」という曲に客演で参加していて、それがめちゃめちゃいい曲なんですけど、「Me Today」もあの曲に少し通ずるところがあるというか。この曲は「自分のための時間を取る」というテーマで、「忙しい毎日でもセルフケアを忘れないで」というメッセージが込められているとコメントが届いていて、〈調子はどうどう? 働き者ばかりの東京〉というリリックがあるように、どうしても忙しなく働いちゃう人たちに向けたセルフケアの歌になっていて。yonawoの「tokyo」も働いている若者たちにメッセージを送るような曲なので、兄弟みたいな曲だなと思って、併せて聴いてほしいなと思いました。
カンナ:新譜ダイジェストPart 2でした。リリースおめでとうございます。Part 2にも初登場がいまして、"鍵を返せ"。
金子:初登場ではあるんですけど、ボーカルのはしメロちゃんはシンガーソングライターとしてFRIENDSHIP.からリリースをしています。今年の頭に出した「みらみら」という曲はストリーミングでかなり再生されていて、Spotifyだと60万回近く再生されていたりという中で、今回はもともとやっていた"鍵を返せ"というバンドでのリリースです。
カンナ:そうなんですね。
金子:バンドの方もよかったです。ソロはいわゆる"ネット以降"を感じさせる作風だったりするんですけど、こっちにもそのテイストがありつつ、しっかりバンド感もあって、個人的にはパスピエとか思い出したりもしました。
カンナ:紹介文に「令和の歌謡曲を生み出す」と書いてあって、まさにそうだなという感じで、かっこよかったです。
金子:やっぱり言葉がユニークで、バンド名の"鍵を返せ"も面白いし、今回の「満足かい」という曲名も気になるし、EPのタイトルは『他人事』で。ちなみに前のEPは『評論家』というタイトルで、おそらく漢字3文字にこだわりがあるんだろうなと。
カンナ:これからも3文字シリーズで出していくんですかね。
金子:たぶん。
カンナ:楽しみですね(笑)。続いてはユアネス。およそ3ヶ月ぶりのニューシングル「Blur」をリリースしました。
金子:かっこよかったですね。
カンナ:アニメの主題歌かと思うぐらい素晴らしい曲でしたね。
金子:それこそアニメの曲にもなっている「籠の中に鳥」や、あと「私の最後の日」だったり、最近はバラードっぽい曲の印象が強くなっていると思うんですけど、初期のユアネスはポストロックっぽい、複雑なバンドアンサンブルも得意なバンドだったので、この曲はその側面が強く出ています。なおかつサウンドメイクでいうと、今回「サイバー」とか「電脳世界」という言葉がテーマになっているらしく、そのエレクトロニックなサウンドの感覚が加わっていて、新しい一面を見せている感じがしました。
カンナ:たしかにバンドの形に収まらないような感じがして、ライブがどうなるのか楽しみですね。
金子:でも本当に「サイバー」とか「電脳世界」な世界観のアニメ主題歌っぽいですね。
カンナ:私は完全に何かのアニメの主題歌だと思っていました(笑)。さてPart 2から聴いていただく曲はどちらにしますか?
金子:カワサキケイさんの曲をかけようかなと思います。
カンナ:フルアルバムがついにリリースとなります。おめでとうございます!
金子:おめでとうございます。ここ最近は新曲が出るたびに紹介していて、アルバムを楽しみに待っていたんですが、とてもよかったですね。
カンナ:素晴らしかったです。
金子:もともと宅録のシンガーソングライターで、去年出たEPでは80年代的な、アナログシンセの音色とかが特徴的だったのですが、このアルバムに向かっていく中で、2010年代以降のR&Bやヒップホップの要素も取り入れるようになっていて。特に声の加工がアルバム全編に渡って凝っていて、それによるサウンド面での現代性でありオリジナリティがすごく印象的でした。
カンナ:音もそうですし、歌詞もそうですし、どの曲も映像が頭に浮かんでくるような世界観でしたね。
金子:「街は海」とかまさにそうですよね。やっぱり歌詞もすごく魅力的で、今回のライナーノーツを読むと「とても長い時間をこのアルバムと共に過ごしました。長すぎる静寂とそれを食らい大きくなる恐怖に追いつかれないようにと、ただひたすらに作り続けました。すべての人が日々それぞれの戦いの中にいるように、このアルバムにも決して薄れることのない感情や、様々な戦いの記録が刻まれています」と書いてあって。「戦い」という言葉を使っているのがすごく印象的だったんですけど、それだけ切実に日常と向き合いながら、一つひとつ楽曲を作っていったんだろうなというのは、アルバムを聴くとサウンドからも言葉からも伝わってくると思います。
カンナ:作品を生み出すまでってすごく長く感じるというか、社会との繋がりが薄くなっていて。出すとまたちょっと盛り上がったりするんですけど、その期間はすごく辛いのがよくわかるので、「戦い」という言葉もしっくりきました。
金子:ちなみに、アルバムタイトルが『Elephant』なんですけど、何でだと思います?
カンナ:何でだろう...。
金子:これは完全に僕の妄想なんですけど、「エレファント・イン・ザ・ルーム」ってご存知ですか?
カンナ:わからないです。
金子:部屋の中に象がいたら、誰だってわかるじゃないですか?でもみんな気づいているのに、見て見ないふりをすることを「エレファント・イン・ザ・ルーム」と言うんですね。その"エレファント"をそのままタイトルにしているということは、"見て見ぬふりをしないで、現実を直視する"という意味がこのアルバムに込められているのかなって。現実を直視して、ちゃんと戦ってきた記録がこのアルバムである、みたいな印象も受けました。まあ、これ完全に僕の妄想なんで、「全然違います」と言われちゃう可能性も高いんだけど、そんな風にも読み取れるなって。
カンナ:なるほど!その解釈はめちゃくちゃいいですね。
カンナ:新譜ダイジェストPart 3でした。リリースおめでとうございます。さてPart 3にも初登場が2組いまして、まず1組目がULTRA.
金子:ULTRAは2020年11月に結成されたバンドです。FRIENDSHIP.からリリースをしているacd.をやっているMegumi Tsubosakaさんと、MASS OF THE FERMENTING DREGS、通称"マスドレ"のNatsuko Miyamotoさんがツインボーカルでやっているバンドです。
カンナ:かっこよかったですね。
金子:MiyamotoさんがTsubosakaさんと一緒に歌ってみたいと誘って結成されたそうです。マスドレは今年結成20周年で、紆余曲折ありながらずっと続けているバンドで、女性ボーカルのオルタナティブなバンドの中では、先駆けのバンドだと思っています。先週ayutthayaのアルバムも出てましたけど、マスドレから脈々と受け継がれている女性ボーカルのオルタナティブロックの系譜みたいなものある気がして、そんなMiyamotoさんが認めたこのTsubosakaさんのボーカルもめちゃめちゃ良いですよね。
カンナ:心にグサグサ刺さりますね。
金子:ULTRAってすごいバンド名だなと思うけど、でも曲を聴くとたしかに"ULTRA"なんですよね(笑)。
カンナ:続いても初登場、LADY FLASH!
金子:大阪のバンドで、もともと結成は2008年ということなので、既にキャリアのあるバンドですけど、ちゃんと知ったのは初めてでした。ご存知でしたか?
カンナ:フェスでたまに名前を見ていました。
金子:すごくいいですよね。音楽好きなんだろうなというのが伝わってくるバンドでした。英語のキャッチコピーも面白くて、「We are japanese plastic band like Pixies meets Yasuyuki Okamura」。で、今回の「Darkweb」のセルフライナーだと、「The Radio Dept.が90年代のダイエーの駐車場で演奏しているかのようなシンセサイザー、突如あらわれるDinosaur Jr.を意識した轟音ギターソロ」とあって、まさに!という感じもありつつ、そこ組み合わせちゃうんだ!という面白さもあって。ちょっとナードな趣味が滲み出ているところもたまらないですね。
カンナ:歌詞についてなのですが、最初「チューニング」だと思って聴いていたんですけど、資料を読んだら「中二病」の「中二」だったんですね(笑)。「ただでは終わらせないぞ」とか「ちょっと変わったことやっちゃうぞ」という感じが、いい意味で"中二"の側面もあるのかなと思いました。
カンナ:それではPart 3から何をお送りしましょうか?
金子: Mark Diamondをかけようと思います。
カンナ:20曲を収録したアルバムがリリースとなりました。おめでとうございます!
金子:Markさんもついにアルバムですね。この方もずっと新曲が出るたびに紹介していて、毎週のようにリリースをされていました。その集大成として20曲が収録されたアルバムです。このご時世でこれだけの尺のアルバムというのもなかなか出ないですけど、もはやアルバムというよりは日記みたいな作品だなという印象でした。
カンナ:なるほど。
金子:ご自身のコメントも来ているんですけど、「今回の曲のほとんどが2018年から2021年に経験したことに関するものだった。自分の幸せではなく自分の夢や願望に人生の重きを置いていたがために、本当にたくさんのことを見逃してしまった。そのせいで私が望んでいた現実から引き剥がされてしまった」とありまして、大変な時間を過ごしてきたんでしょうね。だからちょっと内省的な感じもあるんだけど、「このアルバムは私が求めた最高のセラピーに仕上がり、このアルバムが出来上がったことにこれから先も感謝する」というコメントもあって、暗がりの中を進んできたけど最終的には光が見えるような、そんなアルバムになっているんだろうなと。
カンナ:このコメントを読んで、私もそこに下線を引いたんですけど、やっぱりコロナの期間で、これまでの自分の人生との向き合い方がガラッと変わっちゃった人っていっぱいいると思います。このアルバムを通して聴くことで、気持ちの変化みたいなものも一緒に感じられるのかなと思いました。
金子:きっとコロナの影響もあるだろうし、Markさんは1stアルバムが120万回再生を超えて、メジャーレーベルに注目され、それまで働いていたコーヒーショップをやめて、フルタイムで楽曲制作やライブ活動を始めたそうで。で、メジャーから2枚のEPを出したんだけど、もう一度インディペンデントに戻り、去年の12月に2ndアルバムをリリースしたそうです。その中でいろいろ経験されたということだと思うんですけど、ストリーミングの時代になって一気に曲が聴かれて、環境が変わって、でもだからといってそこから先も全部が上手く行くかというと、そうでもなくて。そういうストリーミングの難しさというか、苦味も感じさせつつ、でもそうやっていろんな経験をしてきて今回のアルバムを作り、それがMarkさんにとっての光になったんだなと思うと、すごく感慨深いですね。
FRIENDSHIP.キュレーター達が厳選した音楽をラジオで紹介するプログラム「Curated Hour ~FRIENDSHIP. RADIO」。キュレーターの金子厚武をコメンテーターに迎え、MISATOと共にFRIENDSHIP.がリリースをする最新の音楽を紹介。番組後半ではThe fin.のYuto Uchinoが月替りでゲストを迎え、深い音楽談義を繰り広げるコーナーを展開。
放送時間:毎週土曜日 26:00~26:55
放送局:FM福岡(radikoで全国で聴取可能)
金子厚武
1979年生まれ。埼玉県熊谷市出身。インディーズでのバンド活動、音楽出版社への勤務を経て、現在はフリーランスのライター。音楽を中心に、インタヴューやライティングを手がける。主な執筆媒体は『CINRA』『Real Sound』『ナタリー』『Rolling Stone Japan』『MUSICA』『ミュージック・マガジン』など。『ポストロック・ディスク・ガイド』(シンコーミュージック)監修。デジタル配信サービス「FRIENDSHIP.」キュレーター。
@a2take / @a2take3
サトーカンナ
ボーカル、コーラス、作詞、ナレーション、執筆など、声と言葉にかかわる幅広い活動を続ける。
バンド(Kurhaus、グッド・ライフ・フェロウズ)ではシンセサイザーやパッドの演奏も担当。
ウェブサイト / @milkcupcakes / @kannasat
Yuto Uchino(The fin. Vocal / Synth / Guitar)
神戸出身、ロックバンドThe fin.のフロントマン、ソングライター。80~90年代のシンセポップ、シューゲイザーサウンドから、リアルタイムなUSインディーポップの影響や、チルウェーヴなどを経由したサウンドスケープは、ネット上で話題を呼び、日本のみならず海外からも問い合わせ殺到している。
The Last Shadow Puppets、MEW、CIRCA WAVESなどのツアーサポート、そしてUS、UK、アジアツアーを成功させるなど、新世代バンドの中心的存在となっている。
オフィシャルサイト / @_thefin / @yuto__the_fin
FRIENDSHIP.
キュレーターの金子厚武とサトーカンナによるFM福岡のラジオ番組「Curated Hour ~FRIENDSHIP. RADIO」から、今週オンエアした内容を掲載!FRIENDSHIP.がリリースした最新の音楽をいち早くチェックしよう!
New Release Digest Part 1
カンナ:11月28日週にFRIENDSHIP.からリリースの新譜全20作品の中から、まずはPart 1の7作品をダイジェストでご紹介しました。リリースおめでとうございます!Part 1では初登場が2組います。まずは最後にかかりましたラッキーセベン。
金子:ラッキー"セブン"じゃなくて、ラッキー"セベン"。
カンナ:そして6人組なんですよね。7人組ではないという(笑)。
金子:今年の5月に大阪で結成されたバンドで、梅田や難波の路上でライブを繰り返していた中で噂が広がり、SNSとかでライブ映像を見たイベンターさんからイベントに誘われて、10月からライブハウスでの活動を開始という、出来立てホヤホヤなバンドですね。
カンナ:本当ですね。
金子:元バレーボウイズで、FRIENDSHIP.的に言うと、みらんさんのプロデュースとかでも関わっているシュウタネギさんがメンバーでもあるバンドです。
カンナ:梅田とか難波の路上でライブしているということですけど、もし路上でこのバンドを見かけたら立ち止まりそうだし、背中を押されそうだなと思いました。新宿とかで見てみたいですね。
カンナ:続いて、初登場の櫛引彩香さん。
金子:櫛引彩香さんは青森出身のシンガーソングライター。
カンナ:私と同郷ですね。
金子:デビューが1999年なので、キャリアのある方です。最近のライブはサポートメンバーがヒックスヴィルの真城めぐみさん、CUBISMO GRAFICOやLEARNERSの松田 "CHABE" 岳二さん、LUCKY TAPESのベースの田口くんと、このサポートメンバーを見ただけでも音楽性やクオリティーの高さみたいなものがなんとなく伝わってきますけど、実際曲を聴いても素晴らしい曲でしたね。
カンナ:すごく豪華なメンバーだし、その中で全く力まない、張らない感じの歌声みたいなのは、実はあんまり聴いたことないボーカルだなと思って、すごくよかったです。
金子:今回の曲はFRIENDSHIP.から作品をリリースしているTOMMY HONDA、PANORAMA FAMILYとしても活躍するGOMESSさんが編曲で関わっています。TOMMY HONDAもゆったりとした、気張らないギターサウンドやトラックメイクが心地いいので、相性もぴったりですよね。
カンナ:それではPart 1から聴いていただく曲はどちらにしますか?
金子:Wez Atlasの新曲をかけようかなと思います。
カンナ:こちらもゆったりした感じですごく良かったです。
金子:Wezくんは相変わらずいろんなコラボレーションを積極的に行っていて、今回はトラックメーカーのuinさんとのコラボレーションということです。元Tokyo Recordings、現TOKAのソングライティングキャンプ、アーティストやプロデューサーが集まってコライトをして、何日間かの中で曲を制作するというのに参加してできた曲とのことです。
カンナ:なるほど。
金子:uinはSkaaiというラッパーと一緒に曲を作ってる人で。最近そのSkaaiがchelmicoのMamikoさんと共に福岡出身のyonawoの「tokyo」という曲に客演で参加していて、それがめちゃめちゃいい曲なんですけど、「Me Today」もあの曲に少し通ずるところがあるというか。この曲は「自分のための時間を取る」というテーマで、「忙しい毎日でもセルフケアを忘れないで」というメッセージが込められているとコメントが届いていて、〈調子はどうどう? 働き者ばかりの東京〉というリリックがあるように、どうしても忙しなく働いちゃう人たちに向けたセルフケアの歌になっていて。yonawoの「tokyo」も働いている若者たちにメッセージを送るような曲なので、兄弟みたいな曲だなと思って、併せて聴いてほしいなと思いました。
New Release Digest Part 2
カンナ:新譜ダイジェストPart 2でした。リリースおめでとうございます。Part 2にも初登場がいまして、"鍵を返せ"。
金子:初登場ではあるんですけど、ボーカルのはしメロちゃんはシンガーソングライターとしてFRIENDSHIP.からリリースをしています。今年の頭に出した「みらみら」という曲はストリーミングでかなり再生されていて、Spotifyだと60万回近く再生されていたりという中で、今回はもともとやっていた"鍵を返せ"というバンドでのリリースです。
カンナ:そうなんですね。
金子:バンドの方もよかったです。ソロはいわゆる"ネット以降"を感じさせる作風だったりするんですけど、こっちにもそのテイストがありつつ、しっかりバンド感もあって、個人的にはパスピエとか思い出したりもしました。
カンナ:紹介文に「令和の歌謡曲を生み出す」と書いてあって、まさにそうだなという感じで、かっこよかったです。
金子:やっぱり言葉がユニークで、バンド名の"鍵を返せ"も面白いし、今回の「満足かい」という曲名も気になるし、EPのタイトルは『他人事』で。ちなみに前のEPは『評論家』というタイトルで、おそらく漢字3文字にこだわりがあるんだろうなと。
カンナ:これからも3文字シリーズで出していくんですかね。
金子:たぶん。
カンナ:楽しみですね(笑)。続いてはユアネス。およそ3ヶ月ぶりのニューシングル「Blur」をリリースしました。
金子:かっこよかったですね。
カンナ:アニメの主題歌かと思うぐらい素晴らしい曲でしたね。
金子:それこそアニメの曲にもなっている「籠の中に鳥」や、あと「私の最後の日」だったり、最近はバラードっぽい曲の印象が強くなっていると思うんですけど、初期のユアネスはポストロックっぽい、複雑なバンドアンサンブルも得意なバンドだったので、この曲はその側面が強く出ています。なおかつサウンドメイクでいうと、今回「サイバー」とか「電脳世界」という言葉がテーマになっているらしく、そのエレクトロニックなサウンドの感覚が加わっていて、新しい一面を見せている感じがしました。
カンナ:たしかにバンドの形に収まらないような感じがして、ライブがどうなるのか楽しみですね。
金子:でも本当に「サイバー」とか「電脳世界」な世界観のアニメ主題歌っぽいですね。
カンナ:私は完全に何かのアニメの主題歌だと思っていました(笑)。さてPart 2から聴いていただく曲はどちらにしますか?
金子:カワサキケイさんの曲をかけようかなと思います。
カンナ:フルアルバムがついにリリースとなります。おめでとうございます!
金子:おめでとうございます。ここ最近は新曲が出るたびに紹介していて、アルバムを楽しみに待っていたんですが、とてもよかったですね。
カンナ:素晴らしかったです。
金子:もともと宅録のシンガーソングライターで、去年出たEPでは80年代的な、アナログシンセの音色とかが特徴的だったのですが、このアルバムに向かっていく中で、2010年代以降のR&Bやヒップホップの要素も取り入れるようになっていて。特に声の加工がアルバム全編に渡って凝っていて、それによるサウンド面での現代性でありオリジナリティがすごく印象的でした。
カンナ:音もそうですし、歌詞もそうですし、どの曲も映像が頭に浮かんでくるような世界観でしたね。
金子:「街は海」とかまさにそうですよね。やっぱり歌詞もすごく魅力的で、今回のライナーノーツを読むと「とても長い時間をこのアルバムと共に過ごしました。長すぎる静寂とそれを食らい大きくなる恐怖に追いつかれないようにと、ただひたすらに作り続けました。すべての人が日々それぞれの戦いの中にいるように、このアルバムにも決して薄れることのない感情や、様々な戦いの記録が刻まれています」と書いてあって。「戦い」という言葉を使っているのがすごく印象的だったんですけど、それだけ切実に日常と向き合いながら、一つひとつ楽曲を作っていったんだろうなというのは、アルバムを聴くとサウンドからも言葉からも伝わってくると思います。
カンナ:作品を生み出すまでってすごく長く感じるというか、社会との繋がりが薄くなっていて。出すとまたちょっと盛り上がったりするんですけど、その期間はすごく辛いのがよくわかるので、「戦い」という言葉もしっくりきました。
金子:ちなみに、アルバムタイトルが『Elephant』なんですけど、何でだと思います?
カンナ:何でだろう...。
金子:これは完全に僕の妄想なんですけど、「エレファント・イン・ザ・ルーム」ってご存知ですか?
カンナ:わからないです。
金子:部屋の中に象がいたら、誰だってわかるじゃないですか?でもみんな気づいているのに、見て見ないふりをすることを「エレファント・イン・ザ・ルーム」と言うんですね。その"エレファント"をそのままタイトルにしているということは、"見て見ぬふりをしないで、現実を直視する"という意味がこのアルバムに込められているのかなって。現実を直視して、ちゃんと戦ってきた記録がこのアルバムである、みたいな印象も受けました。まあ、これ完全に僕の妄想なんで、「全然違います」と言われちゃう可能性も高いんだけど、そんな風にも読み取れるなって。
カンナ:なるほど!その解釈はめちゃくちゃいいですね。
カワサキケイのインタビュー記事が公開されておりますので、あわせてぜひチェックしてみてください!
New Release Digest Part 3
カンナ:新譜ダイジェストPart 3でした。リリースおめでとうございます。さてPart 3にも初登場が2組いまして、まず1組目がULTRA.
金子:ULTRAは2020年11月に結成されたバンドです。FRIENDSHIP.からリリースをしているacd.をやっているMegumi Tsubosakaさんと、MASS OF THE FERMENTING DREGS、通称"マスドレ"のNatsuko Miyamotoさんがツインボーカルでやっているバンドです。
カンナ:かっこよかったですね。
金子:MiyamotoさんがTsubosakaさんと一緒に歌ってみたいと誘って結成されたそうです。マスドレは今年結成20周年で、紆余曲折ありながらずっと続けているバンドで、女性ボーカルのオルタナティブなバンドの中では、先駆けのバンドだと思っています。先週ayutthayaのアルバムも出てましたけど、マスドレから脈々と受け継がれている女性ボーカルのオルタナティブロックの系譜みたいなものある気がして、そんなMiyamotoさんが認めたこのTsubosakaさんのボーカルもめちゃめちゃ良いですよね。
ayutthayaのアルバムのレビュー記事が公開されておりますので、あわせてぜひチェックしてみてください!
カンナ:心にグサグサ刺さりますね。
金子:ULTRAってすごいバンド名だなと思うけど、でも曲を聴くとたしかに"ULTRA"なんですよね(笑)。
カンナ:続いても初登場、LADY FLASH!
金子:大阪のバンドで、もともと結成は2008年ということなので、既にキャリアのあるバンドですけど、ちゃんと知ったのは初めてでした。ご存知でしたか?
カンナ:フェスでたまに名前を見ていました。
金子:すごくいいですよね。音楽好きなんだろうなというのが伝わってくるバンドでした。英語のキャッチコピーも面白くて、「We are japanese plastic band like Pixies meets Yasuyuki Okamura」。で、今回の「Darkweb」のセルフライナーだと、「The Radio Dept.が90年代のダイエーの駐車場で演奏しているかのようなシンセサイザー、突如あらわれるDinosaur Jr.を意識した轟音ギターソロ」とあって、まさに!という感じもありつつ、そこ組み合わせちゃうんだ!という面白さもあって。ちょっとナードな趣味が滲み出ているところもたまらないですね。
カンナ:歌詞についてなのですが、最初「チューニング」だと思って聴いていたんですけど、資料を読んだら「中二病」の「中二」だったんですね(笑)。「ただでは終わらせないぞ」とか「ちょっと変わったことやっちゃうぞ」という感じが、いい意味で"中二"の側面もあるのかなと思いました。
カンナ:それではPart 3から何をお送りしましょうか?
金子: Mark Diamondをかけようと思います。
カンナ:20曲を収録したアルバムがリリースとなりました。おめでとうございます!
金子:Markさんもついにアルバムですね。この方もずっと新曲が出るたびに紹介していて、毎週のようにリリースをされていました。その集大成として20曲が収録されたアルバムです。このご時世でこれだけの尺のアルバムというのもなかなか出ないですけど、もはやアルバムというよりは日記みたいな作品だなという印象でした。
カンナ:なるほど。
金子:ご自身のコメントも来ているんですけど、「今回の曲のほとんどが2018年から2021年に経験したことに関するものだった。自分の幸せではなく自分の夢や願望に人生の重きを置いていたがために、本当にたくさんのことを見逃してしまった。そのせいで私が望んでいた現実から引き剥がされてしまった」とありまして、大変な時間を過ごしてきたんでしょうね。だからちょっと内省的な感じもあるんだけど、「このアルバムは私が求めた最高のセラピーに仕上がり、このアルバムが出来上がったことにこれから先も感謝する」というコメントもあって、暗がりの中を進んできたけど最終的には光が見えるような、そんなアルバムになっているんだろうなと。
カンナ:このコメントを読んで、私もそこに下線を引いたんですけど、やっぱりコロナの期間で、これまでの自分の人生との向き合い方がガラッと変わっちゃった人っていっぱいいると思います。このアルバムを通して聴くことで、気持ちの変化みたいなものも一緒に感じられるのかなと思いました。
金子:きっとコロナの影響もあるだろうし、Markさんは1stアルバムが120万回再生を超えて、メジャーレーベルに注目され、それまで働いていたコーヒーショップをやめて、フルタイムで楽曲制作やライブ活動を始めたそうで。で、メジャーから2枚のEPを出したんだけど、もう一度インディペンデントに戻り、去年の12月に2ndアルバムをリリースしたそうです。その中でいろいろ経験されたということだと思うんですけど、ストリーミングの時代になって一気に曲が聴かれて、環境が変わって、でもだからといってそこから先も全部が上手く行くかというと、そうでもなくて。そういうストリーミングの難しさというか、苦味も感じさせつつ、でもそうやっていろんな経験をしてきて今回のアルバムを作り、それがMarkさんにとっての光になったんだなと思うと、すごく感慨深いですね。
RADIO INFORMATION
FM 福岡「Curated Hour ~FRIENDSHIP. RADIO」
FRIENDSHIP.キュレーター達が厳選した音楽をラジオで紹介するプログラム「Curated Hour ~FRIENDSHIP. RADIO」。キュレーターの金子厚武をコメンテーターに迎え、MISATOと共にFRIENDSHIP.がリリースをする最新の音楽を紹介。番組後半ではThe fin.のYuto Uchinoが月替りでゲストを迎え、深い音楽談義を繰り広げるコーナーを展開。
放送時間:毎週土曜日 26:00~26:55
放送局:FM福岡(radikoで全国で聴取可能)
番組MC
金子厚武
1979年生まれ。埼玉県熊谷市出身。インディーズでのバンド活動、音楽出版社への勤務を経て、現在はフリーランスのライター。音楽を中心に、インタヴューやライティングを手がける。主な執筆媒体は『CINRA』『Real Sound』『ナタリー』『Rolling Stone Japan』『MUSICA』『ミュージック・マガジン』など。『ポストロック・ディスク・ガイド』(シンコーミュージック)監修。デジタル配信サービス「FRIENDSHIP.」キュレーター。
@a2take / @a2take3
サトーカンナ
ボーカル、コーラス、作詞、ナレーション、執筆など、声と言葉にかかわる幅広い活動を続ける。
バンド(Kurhaus、グッド・ライフ・フェロウズ)ではシンセサイザーやパッドの演奏も担当。
ウェブサイト / @milkcupcakes / @kannasat
Yuto Uchino(The fin. Vocal / Synth / Guitar)
神戸出身、ロックバンドThe fin.のフロントマン、ソングライター。80~90年代のシンセポップ、シューゲイザーサウンドから、リアルタイムなUSインディーポップの影響や、チルウェーヴなどを経由したサウンドスケープは、ネット上で話題を呼び、日本のみならず海外からも問い合わせ殺到している。
The Last Shadow Puppets、MEW、CIRCA WAVESなどのツアーサポート、そしてUS、UK、アジアツアーを成功させるなど、新世代バンドの中心的存在となっている。
オフィシャルサイト / @_thefin / @yuto__the_fin
LINK
FM福岡「Curated Hour ~FRIENDSHIP. RADIO」FRIENDSHIP.