SENSA

2022.05.09

Ivy to Fraudulent Game「Singin' in the NOW」──多彩な曲の数々とともに打ち出したアイビーの最新モード

Ivy to Fraudulent Game「Singin' in the NOW」──多彩な曲の数々とともに打ち出したアイビーの最新モード

 渋谷のライブハウス、eggmanが運営する音楽レーベル、murffin discsに移籍した群馬出身の4人組ロック・バンド、Ivy to Fraudulent Gameが同レーベル内のmini muff recordsとともに立ち上げた自身のブランド、from ovumからリリースした4枚目のフルアルバム。彼らは21年9月の移籍後、かき鳴らす轟音のギターが新境地を思わせた「Day to Day」、ポスト・ロック調のエキセントリックなギター・リフが印象的な「オートクチュール」というオルタナ・ロック・ナンバーや80's調のニュー・ウェービーなロック・サウンドにバウンシーなモータウン・ビートとJ-POPからの影響を落とし込んだ「胸を焦がして」というポップ・ロック・ナンバーをシングルとしてリリースしてきた。本作にはその3曲を含む全10曲が収録されている。
 それぞれに異なる魅力を持つ前掲の3曲がある意味、予告していたとおり、バンドがここでアプローチしているさらなる曲調、およびサウンドのバリエーションの広がりは、前作の『再生する』にひきつづき、メイン・ソングライターである福島由也(Dr, Cho)に加え、寺口宣明(Vo, Gt)、大島知起(Gt)、カワイリョウタロウ(Ba, Cho)もソングライティングに取り組んだ成果なのだろう。光の粒を纏ったような音像とエネルギッシュなバンド・アンサンブルが、まさしくIvy to Fraudulent Gameのオルタナ・ロックを印象づける1曲目の「泪に唄えば」以下、本作の全10曲が物語るのは楽曲そのものの魅力のみならず、改めて気持ちを1つにして、音楽に取り組むバンドのフィーリングとバンドを前進させようという意思だ。
 「泪に唄えば」「オートクチュール」と序盤から2曲続けて、オルタナ・ロック・ナンバーを鳴らして、自分達が何者であるかを宣言してからの中盤は、シンセサイザーの音色も使って、王道のポップ・ロックをニュー・ウェービーに鳴らした「yaya」、同じテイストを持つ「胸を焦がして」、フォーキーなバラードの「Heart Room」、そしてアーバンな曲調に持ち前の歌謡テイストを落とし込んだ「UNDER LAND」と異色と言える曲が続く。中でもエフェクティブな音像と光を求める気持ちを地下鉄のメタファーとともにドラマ化した歌詞を持つ「UNDER LNAD」はメランコリックという言葉では表現しきれない、何とも言えない感情を残すという意味で、個人的には本作のハイライトではないかと思ったりも。
 そして、「color」から再びアップテンポのオルタナ調のロック・ナンバーが続くのだが、メランコリックな「color」、軽やかで明るい「オーバーラン」、爽快感あふれる「Day to Day」と1曲ごとに変化も楽しませる。
 アルバムのラストを飾るのは、自分達が音楽に取り組む動機を改めて言葉にした「愛の歌」。演奏が壮大になる後半では、自分達が何者なのか、今一度宣言するようにギターの轟音が鳴るが、バラード風に始まる前半はグロッケンシュピールとオルガンの音色がマーチ風のドラムとあいまって、ちょっと楽団っぽい雰囲気も。それもまた本作のサウンドのバリエーションの1つなのだろう。
 不確かな未来をしっかりと見据えながら、それでも希望を歌う歌詞も含め、『Singinʼin the NOW』とアルバム・タイトルで謡っているとおり、これが現在のIvy to Fraudulent Gameのモードなのだと思うが、圧倒的なロック・バンド感をアピールしながら、狭義のロックにこだわらないバランス感覚は、今後、彼らにとってさらなるアドバンテージになっていくはずだ。

文:山口智男



RELEASE INFORMATION

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Ivy to Fraudulent Game「Singin' in the NOW」
2022年5月4日(水)
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PROFILE

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Ivy to Fraudulent Game
2010年10月に群馬県にて結成された、4人組ロックバンド。
バンドの世界観を司り、主に作詞・作曲・アレンジをも手がける福島(Dr/Cho)が紡ぎ出す楽曲、その世界観をさらに鮮烈なものとし、ライブパフォーマンスから生み出される寺口(Vo/Gt)の圧倒的な求心力は多くのファンを魅了する。

バンド名の由来は
【Ivy】植物の蔦の意で、生命力が強く、広範囲に伸び成長して行く蔦のように音楽やバンドもなっていけるように...。
【Fraudulent Game】イカサマ的な意で、良い意味で期待を裏切っていきたい... という願いが込められ付けられている。


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