SENSA

2022.04.02

She Her Her Hers「Afterglow」──心と濃密に触れ合い、痛みを超えていく。エモーショナルな音楽の旅

She Her Her Hers「Afterglow」──心と濃密に触れ合い、痛みを超えていく。エモーショナルな音楽の旅

 当たり前にあると思っていたもの、世界が歪んでしまったとき、人はそこからどうやって立ち上がっていくのだろう。She Her Her Hersの最新作『Afterglow』では、不確かさに揺れる心の機微が、イマジネイティヴな音楽の旅となって描かれる。3rdアルバム『location』でのあたたかでフォギーな幻想的サウンドとはまたちがった、ソウルミュージックの熱量やグルーヴを昇華した、生の実感や重力を味わっていくような密度の高いサウンドが冴える。2019年には中国のレーベルとも契約し、作品への手応えを得て中国ツアーも成功させるアジア進出を果たしたShe Her Her Hers。活動を広げていく足がかりを掴んだところでのコロナ禍は、バンドや音楽家に限らずだが行き場のない感情があっただろう。怒りや憤り、不安、あるいは徒労感や終わりへの慣れなど、日々沸き起こるその感情を、3人は丁寧にすくい取って、音楽という場所に解き放った。
 SF的ショートショートの世界に迷い込んだような「Diagram X」のシュールなロック、憂いを帯びてたゆたうメロディやボーカルとポップなシンセサウンドが心地よくも不思議なリズムを生み出す「Imaginary line」。アルバム序盤で不可思議な世界にスリップすると、その音楽は内的な、感情の底へと深く潜り込んでいく。淡々と言葉を紡ぎあげていく「Arrows」のメロディは、心の羅針盤を正し、「Wolves」ではサックスの音色が物悲しくも、孤高の強さでもって遠吠えする。「Mermaid」や「After a Moment」の躍動的なビート、加速するスピードに景色が変わる体感だ。今回のレコーディングには、ライブでパーカッションやバイオリン、サックスを奏でるミュージシャンが参加し、田口恵人(LUCKY TAPES)もベースで参加した。緻密な音作りを、肉感的に表現するアンサンブルが曲の温度を上げている。残光を意味する、『Afterglow』。すべてを失ったわけではない、この光をどう育んでいくか。彼らの音楽の中で、静かに考えている。

文:吉羽さおり




RELEASE INFORMATION

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She Her Her Hers「Afterglow」
2022年3月23日(水)
[CD] CNDT-0001 / ¥2,000 +tax
Label: Conditioner Label

Track:
1. Diagram X
2. Imaginary line
3. SONAR
4. Arrows
5. Wolves
6. Mermaid
7. After a Moment
8. Little while

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オフィシャルサイト
@shhh_s
@sheherherhers_official
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