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2022.04.01
FRIENDSHIP.の最新楽曲を紹介!江沼郁弥・光学・itsumi ほか全14作品 -2022.03.30-
カルチャーの前線で活躍するキュレーター達が厳選した音楽を配信するサービス FRIENDSHIP.の新譜を紹介。
キュレーターの金子厚武とラジオDJ MISATOによるFM福岡のラジオ番組「Curated Hour ~FRIENDSHIP. RADIO」から、今週オンエアした内容を掲載!FRIENDSHIP.がリリースした最新の音楽をいち早くチェックしよう!
MISATO:3月28日週にFRIENDSHIP.からリリースの新譜全14作品の中から、まずはPart 1の8作品をダイジェストでご紹介しました。リリースおめでとうございます!Part 1はわりとスムースでリラックスでメロウで、という感じでしたね。この時間にぴったりな楽曲が揃っています。そんな中でもはじめましてさんがちらほらと。まずは最後の、すなお!
金子:スリーピースのバンドですね。2020年11月に結成して、今年の2月にそれまでサポートのベースだったメンバーが正式なメンバーとして加入して、現在のスリーピースになっていると。ボーカルの存在感が非常に印象的で、たぶんこの番組を聞いてくれている人だと、踊ってばかりの国の下津くんにも通じる雰囲気を感じた人も多いんじゃないかなと思いますね。「ひかり」という曲のテーマも、踊っての世界観に通じる部分があるような感じもします。
MISATO:好きな方はかなりハマっちゃうバンドが出てきたんじゃないでしょうかね。ひらがなで"すなお"。
金子:一昔前だと"くるり"がいて、それこそミズキちゃんの"ねごと"とか、ひらがなが流行ったときありましたけど、最近はもうちょっとこねくり回したバンド名が多い気がするから、逆に新鮮ですね。
MISATO:最近はおしゃれなバンド名が多いけど、そのまんまですもんね(笑)。そしてもう1組、Tomato Ketchup Boys。
金子:彼らもスリーピースバンドで、もともとは静岡出身で、近年は下北沢とか東京を拠点に活動していたんですけど、この度ベーシストが脱退をすることになってしまい、この曲を最後に活動休止ということらしいです。
MISATO:そのタイミングではじめましてというのも、なんだか複雑な気持ちではありますけど...。
金子:実は僕ははじめましてではなくて、以前取材をしたことがあって、いいバンドなので、だからこそ残念なんですけどね。
MISATO:でも新しいメンバーを探したら、すぐにでも再開したいというお声もあるので。
金子:決してこれで終わりではないということですね。ガレージ・ロックとオルタナティブ・ロックのいいところをギュッと併せ持っていて、NOT WONKとかのシーンとも共振するような感じは、非常にカッコいいです。新しいベースを見つけるのか、2人で続けるのかはわからないですけど、復活を心待ちにしたいですね。
MISATO:新曲がFRIENDSHIP.からリリースされるタイミングには、新メンバーが加入しているかもしれない。
金子:ぜひぜひ、"バケーション"明けにもう一度会いたいです。
MISATO:楽しみにしています。Part 1から1曲お届けするのはどの曲でしょう?
金子:江沼郁弥さんの曲を紹介しようかなと思います。
MISATO:なんという素晴らしいEPが出ちゃったんでしょうね。
金子:いいですよね!さっきすなおとTomato Ketchup Boysを紹介したときに、いちいち「スリーピースの〜」と紹介していたのは本当にちょっとした伏線で、江沼さんももともとplentyという素晴らしいスリーピースをやってたわけですけど、ソロになってからは打ち込みのトラックをベースに活動していています。初期はいわゆるインディーR&Bとか、もうちょっとダンス・トラックっぽいものが続いてたんですけど、今回はチルアウトな、ゆるめの作品集になっていて、その雰囲気がこの『極楽-EP-』というタイトルにも表れています。テーマとして「暮らし、生活・衣食住」になっているらしく、あと『極楽』というモチーフに関しては、温泉というか、銭湯なのかな?「生活」というテーマから考えると。そのチルアウト感がEP全体に漂っていますね。
MISATO:わかります!
金子:最近サウナブームなので、サウナをモチーフにした曲を作る人はちらほらいるのですが、そっちには行かないところに"らしさ"を感じたりもしました。作品全体に生活感が出ていて、「生活、綴れ織り」という曲では、モノローグで自分の生活を喋ってたりとかして。江沼さんの作品にあまりそういうのってなかったと思うんですけど。
MISATO:そうですよね。
金子:やっぱりコロナ禍で自分の生活というものを見つめ直した中、それを楽曲として表現するというのが、いまの江沼さんの素直な表現だったのかなあと、EP全体を聴いてすごく感じました。
MISATO:歌詞・リリックに関しては、ちょっと風刺的なところもあるというか。江沼さんの背景も見えるんだけど、「いままでの自分でいられないよね」というのと、「いままでの自分から変わりたいよね」とどっちも見える。それがまさに厚武さんがおっしゃったコロナ禍の中での変化だったのかなと想像できるような作品ですね。でも、8曲入ってEPって、ボリュームありますね。
金子:アルバムと言ってもいいくらい、作品としての重量感ありますよね。
MISATO:3月28日週にFRIENDSHIP.からリリースの新譜全14作品の中から、Part 2の7作品をダイジェストでご紹介しました。こちらはちょっと懐かしい感じの印象と、あとはやはり初登場が多くてですね、まず最後に流れました、シヴァネコ。
金子:シヴァネコはたしかにちょっと懐かしい感じがしましたね。静岡出身の4人組で、セルフライナーノーツにも「ニューミュージックの系譜の荒井由実、シュガー・ベイブ、Hi-Fi Setなど往年のシティポップを思わせる当時の都会的なサウンドと、ジブリシリーズのような優しく儚い情景を掛け合わせた曲」ということで、まさに懐かしい感じが。
MISATO:そしてわかりやすい!
金子:でもきっとおじさんではなくて、若いはずで(笑)。
MISATO:そうですよね。
金子:もう今はシティポップやニューミュージックが若い人の間でもスタンダードな感じになっていて、特にそれを懐かしいものとも思わず、いまのものとして高いクオリティーで鳴らす、みたいなことが増えてきている気がして。グソクムズというバンドとかもそうだったりするんですけど、このシヴァネコも若いと思うけど、非常にクオリティー高くてかっこよかったですね。
MISATO:歌詞がスッと入ってくる感じは、ポップさという意味では重要な要素だと思うので、とても聴きやすいですよね。そして、Young Dalu、OSAMI率いるTokyo Young Vision。
金子:こちらはロサンゼルス在住のアーティスト、Wes Periodとのタッグということで、一転ラッパーたちのコラボレーションなんですけど。
MISATO:はじめましてですね。
金子:そうですね。とはいえ、パッと聴いてこれをラッパーだと思わない人もいるようなロックな曲調で、さっきここでディレクターとも「ちょっとThe Strokesっぽいね」という話をしていたんですけど、最近はポップ・パンクっぽいものとコラボレーションとか、エモとのコラボレーションとか、やっぱりラッパーとロックの接近というのは進んでいて、その1つの好例だと思います。あとおなじみのキュレーターのタイラさんがコメントをくれていて、「少しthe McFaddinにも似てる」と書いていて。この曲はラッパーがロックに接近していたのに対して、the McFaddinはロックのサイドからヒップホップ/ラップに接近して、結果的にちょっと似てるよねってすごく面白いなと思って。
MISATO:これは対バンして欲しいですね。
金子:面白いと思う。ミックス感のある対バンは個人的にも大好きだし、そういうのどんどん進んで欲しいですね。
MISATO:そしてまだまだいます。Tsudio Studio、SNJO 、HiRO.JPの3名の光学。
金子:こちらはネットレーベル、Local Visionsという島根を拠点に活動している......ネットレーベルだから場所は関係ないって気もするけど、でも島根というのは1つ面白いなと思います。
MISATO:ネットレーベルって、だいぶポピュラーになってきましたか?
金子:だと思います。一昔前だとやっぱり東京が多かった気がするけど、今は当たり前に全国に散らばっていますね。光学はプロデューサー3人のユニットなんですけど、彼ら自身も出身はバラバラだったりして、そこが地域の面白さと、でもネットレーベルだからこそ地域が関係ない面白さと、同居している感じはします。
MISATO:面白いですね。
金子:彼らは3人のユニットで、毎回ゲストボーカルを招いて違うコンセプトの作品をリリースしていて、今回はその4作目。今作はボーカルにUtaeさんを招いてR&B寄りの作風に仕上げているとのこと。これもすごく良かったです。
MISATO:いいですね。このプロフィールだけ見ると、もうちょっとゴリゴリでやられる感じなのかなと思ったら、上品というか質が良いというか。それが聴き馴染みの良さに繋がっているなという。
金子:それこそネットレーベルの先駆けというと、Maltine Recordsとかが思い浮かぶと思うんですけど、Maltine Recordsはポップで洗練もされつつ、ちょっと攻めてる感じのイメージがもともとあったかもしれない。でもいまはもうそれがスタンダードになっていて、その上でさらに独自性を出したポップスが生まれている、みたいなイメージかも。
MISATO:やはりポップスというのは、どれくらいポピュラリティに向かって、どれくらい自分たちの個性に向かって行くのかというのが、すごく難しい采配だと思うから、自分たちの塩梅のいいところを探して作っているミュージシャンたちは本当にすごいですね。
金子:それでいうと、光学は本当にバランスいいですね。自分たちの作りたいものを作りつつ、でもちゃんと開かれている感じがする。
MISATO:そして1曲お届けするのは、こちらの方ですね、itsumiさんです。
金子:この番組では何度も紹介している、VivaOlaくんやWez Atlasくんの高校の後輩だそうです。
MISATO:なんというすごい高校なんですかね(笑)。
金子:昔VivaOlaくんの曲にフィーチャリングで参加したりという経歴はあるんですけど、ソロとしては初めてのリリースです。itsumiさんは2000年生まれで、マレーシアで生まれて東京で育ってきた方。大学卒業の節目でより一歩を踏み出すという意味で、今回のリリースに至っているみたいです。「Burnt Toast for Breakfast」というタイトルで、東京は大好きな街ではあるけど、21年間生きてきた中でやっぱりダメージも受けてきて、それをこの"Burnt Toast"=焦げたパンに例えて、でもそれを摂取する、受け入れることによって、自分のものにして大人になる、という意味を込めているそうです。
MISATO:いいコメントですね。しかも「犬の散歩中に聴いて欲しい」とも書いてあって(笑)。
金子:その軽さのギャップがまた良いですね。
MISATO:それって日常だったからってことですよね。その挫折も、それを吸収していた時間も、この21年間の中で彼女が培ってきたもので、それって犬の散歩を毎日するようなことでもあったのかなという。すごく素敵な方。
金子:VivaOlaくんたちもそうですけど、グローバルなポップスというものが前提にある人たちが作るクオリティーの高い楽曲だと思うし、そこにちゃんと自分のアイデンティティーを込めて表現している。いい曲だなと思いました。
MISATO:素晴らしいですね。これからが楽しみなアーティストです。
MISATO:さあ年度末になりましたけど、ここに来てFRIENDSHIP.初登場が多いというのも、みなさんのやる気が伺えて嬉しかったですね。
金子:itsumiさんは大学卒業のタイミングだったり、エスキベルも「学生生活の集大成」ってコメントがあったと思うんですけど、やっぱりそういうタイミングではありますよね。
MISATO:新しい生活に向けて、みなさんに刺さるような、繋がるところがあるような歌詞がきっと見つかると思うので、ぜひ今回の14曲も一曲通して聴いてみてください。
FM福岡で毎週月曜日から金曜日まで深夜にオンエアされる、福岡市・警固六角にある架空のマンションの一室を舞台に行われ、次世代クリエイターが様々な情報を発信するプログラム「ミッドナイト・マンション警固六角(けごむつかど)」。"303号室"(毎週水曜日の27:00~27:55)では、FRIENDSHIP.キュレーター達が厳選した音楽をラジオで紹介するプログラム「Curated Hour ~FRIENDSHIP. RADIO」をオンエア。キュレーターの金子厚武をコメンテーターに迎え、MISATOと共にFRIENDSHIP.がリリースをする最新の音楽を紹介。番組後半ではThe fin.のYuto Uchinoが月替りでゲストを迎え、深い音楽談義を繰り広げるコーナーを展開。
放送時間:毎週水曜日 27:00~27:55
放送局:FM福岡(radikoで全国で聴取可能)
2022年4月より毎週土曜日の26:00~26:55に移動してお届けします。
第1回の放送は4月9日です。
金子厚武
1979年生まれ。埼玉県熊谷市出身。インディーズでのバンド活動、音楽出版社への勤務を経て、現在はフリーランスのライター。音楽を中心に、インタヴューやライティングを手がける。主な執筆媒体は『CINRA』『Real Sound』『ナタリー』『Rolling Stone Japan』『MUSICA』『ミュージック・マガジン』など。『ポストロック・ディスク・ガイド』(シンコーミュージック)監修。デジタル配信サービス「FRIENDSHIP.」キュレーター。
@a2take / @a2take3
MISATO
ラジオパーソナリティ/ナレーター/MC/ヨガインストラクター/酵素風呂サロンオーナー。
TOKYO FM、ZIP-FM、InterFM、FM 福岡など、ラジオパーソナリティ歴12年目。
安室奈美恵さんをはじめとするお茶の間ミュージシャンからコアなインディーズミュージシャンまで無数のインタビューを経験。コロナ前は年間200件程ライブや全国のフェスに行く現場派。野外フェスのヨガプログラムなども担当。倍音と1/fゆらぎの声を持ち、耳馴染みの良いベルベットボイスが特徴。
@_M1110_ / @11misato10
Yuto Uchino(The fin. Vocal / Synth / Guitar)
神戸出身、ロックバンドThe fin.のフロントマン、ソングライター。80~90年代のシンセポップ、シューゲイザーサウンドから、リアルタイムなUSインディーポップの影響や、チルウェーヴなどを経由したサウンドスケープは、ネット上で話題を呼び、日本のみならず海外からも問い合わせ殺到している。
The Last Shadow Puppets、MEW、CIRCA WAVESなどのツアーサポート、そしてUS、UK、アジアツアーを成功させるなど、新世代バンドの中心的存在となっている。
オフィシャルサイト / @_thefin / @yuto__the_fin
FRIENDSHIP.
キュレーターの金子厚武とラジオDJ MISATOによるFM福岡のラジオ番組「Curated Hour ~FRIENDSHIP. RADIO」から、今週オンエアした内容を掲載!FRIENDSHIP.がリリースした最新の音楽をいち早くチェックしよう!
New Release Digest Part 1
MISATO:3月28日週にFRIENDSHIP.からリリースの新譜全14作品の中から、まずはPart 1の8作品をダイジェストでご紹介しました。リリースおめでとうございます!Part 1はわりとスムースでリラックスでメロウで、という感じでしたね。この時間にぴったりな楽曲が揃っています。そんな中でもはじめましてさんがちらほらと。まずは最後の、すなお!
金子:スリーピースのバンドですね。2020年11月に結成して、今年の2月にそれまでサポートのベースだったメンバーが正式なメンバーとして加入して、現在のスリーピースになっていると。ボーカルの存在感が非常に印象的で、たぶんこの番組を聞いてくれている人だと、踊ってばかりの国の下津くんにも通じる雰囲気を感じた人も多いんじゃないかなと思いますね。「ひかり」という曲のテーマも、踊っての世界観に通じる部分があるような感じもします。
MISATO:好きな方はかなりハマっちゃうバンドが出てきたんじゃないでしょうかね。ひらがなで"すなお"。
金子:一昔前だと"くるり"がいて、それこそミズキちゃんの"ねごと"とか、ひらがなが流行ったときありましたけど、最近はもうちょっとこねくり回したバンド名が多い気がするから、逆に新鮮ですね。
MISATO:最近はおしゃれなバンド名が多いけど、そのまんまですもんね(笑)。そしてもう1組、Tomato Ketchup Boys。
金子:彼らもスリーピースバンドで、もともとは静岡出身で、近年は下北沢とか東京を拠点に活動していたんですけど、この度ベーシストが脱退をすることになってしまい、この曲を最後に活動休止ということらしいです。
MISATO:そのタイミングではじめましてというのも、なんだか複雑な気持ちではありますけど...。
金子:実は僕ははじめましてではなくて、以前取材をしたことがあって、いいバンドなので、だからこそ残念なんですけどね。
MISATO:でも新しいメンバーを探したら、すぐにでも再開したいというお声もあるので。
金子:決してこれで終わりではないということですね。ガレージ・ロックとオルタナティブ・ロックのいいところをギュッと併せ持っていて、NOT WONKとかのシーンとも共振するような感じは、非常にカッコいいです。新しいベースを見つけるのか、2人で続けるのかはわからないですけど、復活を心待ちにしたいですね。
MISATO:新曲がFRIENDSHIP.からリリースされるタイミングには、新メンバーが加入しているかもしれない。
金子:ぜひぜひ、"バケーション"明けにもう一度会いたいです。
MISATO:楽しみにしています。Part 1から1曲お届けするのはどの曲でしょう?
金子:江沼郁弥さんの曲を紹介しようかなと思います。
MISATO:なんという素晴らしいEPが出ちゃったんでしょうね。
金子:いいですよね!さっきすなおとTomato Ketchup Boysを紹介したときに、いちいち「スリーピースの〜」と紹介していたのは本当にちょっとした伏線で、江沼さんももともとplentyという素晴らしいスリーピースをやってたわけですけど、ソロになってからは打ち込みのトラックをベースに活動していています。初期はいわゆるインディーR&Bとか、もうちょっとダンス・トラックっぽいものが続いてたんですけど、今回はチルアウトな、ゆるめの作品集になっていて、その雰囲気がこの『極楽-EP-』というタイトルにも表れています。テーマとして「暮らし、生活・衣食住」になっているらしく、あと『極楽』というモチーフに関しては、温泉というか、銭湯なのかな?「生活」というテーマから考えると。そのチルアウト感がEP全体に漂っていますね。
MISATO:わかります!
金子:最近サウナブームなので、サウナをモチーフにした曲を作る人はちらほらいるのですが、そっちには行かないところに"らしさ"を感じたりもしました。作品全体に生活感が出ていて、「生活、綴れ織り」という曲では、モノローグで自分の生活を喋ってたりとかして。江沼さんの作品にあまりそういうのってなかったと思うんですけど。
MISATO:そうですよね。
金子:やっぱりコロナ禍で自分の生活というものを見つめ直した中、それを楽曲として表現するというのが、いまの江沼さんの素直な表現だったのかなあと、EP全体を聴いてすごく感じました。
MISATO:歌詞・リリックに関しては、ちょっと風刺的なところもあるというか。江沼さんの背景も見えるんだけど、「いままでの自分でいられないよね」というのと、「いままでの自分から変わりたいよね」とどっちも見える。それがまさに厚武さんがおっしゃったコロナ禍の中での変化だったのかなと想像できるような作品ですね。でも、8曲入ってEPって、ボリュームありますね。
金子:アルバムと言ってもいいくらい、作品としての重量感ありますよね。
New Release Digest Part 2
MISATO:3月28日週にFRIENDSHIP.からリリースの新譜全14作品の中から、Part 2の7作品をダイジェストでご紹介しました。こちらはちょっと懐かしい感じの印象と、あとはやはり初登場が多くてですね、まず最後に流れました、シヴァネコ。
金子:シヴァネコはたしかにちょっと懐かしい感じがしましたね。静岡出身の4人組で、セルフライナーノーツにも「ニューミュージックの系譜の荒井由実、シュガー・ベイブ、Hi-Fi Setなど往年のシティポップを思わせる当時の都会的なサウンドと、ジブリシリーズのような優しく儚い情景を掛け合わせた曲」ということで、まさに懐かしい感じが。
MISATO:そしてわかりやすい!
金子:でもきっとおじさんではなくて、若いはずで(笑)。
MISATO:そうですよね。
金子:もう今はシティポップやニューミュージックが若い人の間でもスタンダードな感じになっていて、特にそれを懐かしいものとも思わず、いまのものとして高いクオリティーで鳴らす、みたいなことが増えてきている気がして。グソクムズというバンドとかもそうだったりするんですけど、このシヴァネコも若いと思うけど、非常にクオリティー高くてかっこよかったですね。
MISATO:歌詞がスッと入ってくる感じは、ポップさという意味では重要な要素だと思うので、とても聴きやすいですよね。そして、Young Dalu、OSAMI率いるTokyo Young Vision。
金子:こちらはロサンゼルス在住のアーティスト、Wes Periodとのタッグということで、一転ラッパーたちのコラボレーションなんですけど。
MISATO:はじめましてですね。
金子:そうですね。とはいえ、パッと聴いてこれをラッパーだと思わない人もいるようなロックな曲調で、さっきここでディレクターとも「ちょっとThe Strokesっぽいね」という話をしていたんですけど、最近はポップ・パンクっぽいものとコラボレーションとか、エモとのコラボレーションとか、やっぱりラッパーとロックの接近というのは進んでいて、その1つの好例だと思います。あとおなじみのキュレーターのタイラさんがコメントをくれていて、「少しthe McFaddinにも似てる」と書いていて。この曲はラッパーがロックに接近していたのに対して、the McFaddinはロックのサイドからヒップホップ/ラップに接近して、結果的にちょっと似てるよねってすごく面白いなと思って。
MISATO:これは対バンして欲しいですね。
金子:面白いと思う。ミックス感のある対バンは個人的にも大好きだし、そういうのどんどん進んで欲しいですね。
MISATO:そしてまだまだいます。Tsudio Studio、SNJO 、HiRO.JPの3名の光学。
金子:こちらはネットレーベル、Local Visionsという島根を拠点に活動している......ネットレーベルだから場所は関係ないって気もするけど、でも島根というのは1つ面白いなと思います。
MISATO:ネットレーベルって、だいぶポピュラーになってきましたか?
金子:だと思います。一昔前だとやっぱり東京が多かった気がするけど、今は当たり前に全国に散らばっていますね。光学はプロデューサー3人のユニットなんですけど、彼ら自身も出身はバラバラだったりして、そこが地域の面白さと、でもネットレーベルだからこそ地域が関係ない面白さと、同居している感じはします。
MISATO:面白いですね。
金子:彼らは3人のユニットで、毎回ゲストボーカルを招いて違うコンセプトの作品をリリースしていて、今回はその4作目。今作はボーカルにUtaeさんを招いてR&B寄りの作風に仕上げているとのこと。これもすごく良かったです。
MISATO:いいですね。このプロフィールだけ見ると、もうちょっとゴリゴリでやられる感じなのかなと思ったら、上品というか質が良いというか。それが聴き馴染みの良さに繋がっているなという。
金子:それこそネットレーベルの先駆けというと、Maltine Recordsとかが思い浮かぶと思うんですけど、Maltine Recordsはポップで洗練もされつつ、ちょっと攻めてる感じのイメージがもともとあったかもしれない。でもいまはもうそれがスタンダードになっていて、その上でさらに独自性を出したポップスが生まれている、みたいなイメージかも。
MISATO:やはりポップスというのは、どれくらいポピュラリティに向かって、どれくらい自分たちの個性に向かって行くのかというのが、すごく難しい采配だと思うから、自分たちの塩梅のいいところを探して作っているミュージシャンたちは本当にすごいですね。
金子:それでいうと、光学は本当にバランスいいですね。自分たちの作りたいものを作りつつ、でもちゃんと開かれている感じがする。
MISATO:そして1曲お届けするのは、こちらの方ですね、itsumiさんです。
金子:この番組では何度も紹介している、VivaOlaくんやWez Atlasくんの高校の後輩だそうです。
MISATO:なんというすごい高校なんですかね(笑)。
金子:昔VivaOlaくんの曲にフィーチャリングで参加したりという経歴はあるんですけど、ソロとしては初めてのリリースです。itsumiさんは2000年生まれで、マレーシアで生まれて東京で育ってきた方。大学卒業の節目でより一歩を踏み出すという意味で、今回のリリースに至っているみたいです。「Burnt Toast for Breakfast」というタイトルで、東京は大好きな街ではあるけど、21年間生きてきた中でやっぱりダメージも受けてきて、それをこの"Burnt Toast"=焦げたパンに例えて、でもそれを摂取する、受け入れることによって、自分のものにして大人になる、という意味を込めているそうです。
MISATO:いいコメントですね。しかも「犬の散歩中に聴いて欲しい」とも書いてあって(笑)。
金子:その軽さのギャップがまた良いですね。
MISATO:それって日常だったからってことですよね。その挫折も、それを吸収していた時間も、この21年間の中で彼女が培ってきたもので、それって犬の散歩を毎日するようなことでもあったのかなという。すごく素敵な方。
金子:VivaOlaくんたちもそうですけど、グローバルなポップスというものが前提にある人たちが作るクオリティーの高い楽曲だと思うし、そこにちゃんと自分のアイデンティティーを込めて表現している。いい曲だなと思いました。
MISATO:素晴らしいですね。これからが楽しみなアーティストです。
MISATO:さあ年度末になりましたけど、ここに来てFRIENDSHIP.初登場が多いというのも、みなさんのやる気が伺えて嬉しかったですね。
金子:itsumiさんは大学卒業のタイミングだったり、エスキベルも「学生生活の集大成」ってコメントがあったと思うんですけど、やっぱりそういうタイミングではありますよね。
MISATO:新しい生活に向けて、みなさんに刺さるような、繋がるところがあるような歌詞がきっと見つかると思うので、ぜひ今回の14曲も一曲通して聴いてみてください。
RADIO INFORMATION
FM 福岡「Curated Hour ~FRIENDSHIP. RADIO」
FM福岡で毎週月曜日から金曜日まで深夜にオンエアされる、福岡市・警固六角にある架空のマンションの一室を舞台に行われ、次世代クリエイターが様々な情報を発信するプログラム「ミッドナイト・マンション警固六角(けごむつかど)」。"303号室"(毎週水曜日の27:00~27:55)では、FRIENDSHIP.キュレーター達が厳選した音楽をラジオで紹介するプログラム「Curated Hour ~FRIENDSHIP. RADIO」をオンエア。キュレーターの金子厚武をコメンテーターに迎え、MISATOと共にFRIENDSHIP.がリリースをする最新の音楽を紹介。番組後半ではThe fin.のYuto Uchinoが月替りでゲストを迎え、深い音楽談義を繰り広げるコーナーを展開。
放送時間:毎週水曜日 27:00~27:55
放送局:FM福岡(radikoで全国で聴取可能)
2022年4月より毎週土曜日の26:00~26:55に移動してお届けします。
第1回の放送は4月9日です。
番組MC
金子厚武
1979年生まれ。埼玉県熊谷市出身。インディーズでのバンド活動、音楽出版社への勤務を経て、現在はフリーランスのライター。音楽を中心に、インタヴューやライティングを手がける。主な執筆媒体は『CINRA』『Real Sound』『ナタリー』『Rolling Stone Japan』『MUSICA』『ミュージック・マガジン』など。『ポストロック・ディスク・ガイド』(シンコーミュージック)監修。デジタル配信サービス「FRIENDSHIP.」キュレーター。
@a2take / @a2take3
MISATO
ラジオパーソナリティ/ナレーター/MC/ヨガインストラクター/酵素風呂サロンオーナー。
TOKYO FM、ZIP-FM、InterFM、FM 福岡など、ラジオパーソナリティ歴12年目。
安室奈美恵さんをはじめとするお茶の間ミュージシャンからコアなインディーズミュージシャンまで無数のインタビューを経験。コロナ前は年間200件程ライブや全国のフェスに行く現場派。野外フェスのヨガプログラムなども担当。倍音と1/fゆらぎの声を持ち、耳馴染みの良いベルベットボイスが特徴。
@_M1110_ / @11misato10
Yuto Uchino(The fin. Vocal / Synth / Guitar)
神戸出身、ロックバンドThe fin.のフロントマン、ソングライター。80~90年代のシンセポップ、シューゲイザーサウンドから、リアルタイムなUSインディーポップの影響や、チルウェーヴなどを経由したサウンドスケープは、ネット上で話題を呼び、日本のみならず海外からも問い合わせ殺到している。
The Last Shadow Puppets、MEW、CIRCA WAVESなどのツアーサポート、そしてUS、UK、アジアツアーを成功させるなど、新世代バンドの中心的存在となっている。
オフィシャルサイト / @_thefin / @yuto__the_fin
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