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2022.03.31
前作『NAMiDA』から実に4年半ぶりとなる、KANA-BOON待望のニューアルバム『Honey & Darling』が我々のもとに届けられた。
この間、彼らに訪れた試練については周知の通りだ。2020年春から始まった新型コロナウイルス感染拡大により、ベストアルバム『KANA-BOON THE BEST』を携え行われるはずだった全国ツアーは開催を見合わせることに。さらに2020年10月、ボーカル&ギターの谷口鮪が体調不良により休養することが発表され、一時期はバンドの存続すら危ぶまれる状態となっていた。
「休養期間の最中、自分の心から溢れ出た音楽と言葉たち。 それらは深い悲しみの産物と絶望から這い出すために求めた希望です」
谷口の公式コメントにあるように、通算6枚目となる本作はそんな「どん底」から復活を遂げたバンドの奇跡が刻まれたアルバムだ。2021年の初めには曲作りがスタートし、同年夏に始まったレコーディングは冬まで続いたという。この期間に作った楽曲は全てリリースしたい、そんなメンバーたちの強い意向により全15曲入り、トータル1時間を超える大作となった。
本作を一聴して感じるのは、どこか吹っ切れたかのような「風通しの良さ」だ。KANA-BOONといえば、4つ打ちロックの先駆けとなった「ないものねだり」(2013年)に代表されるような、性急なビートやエッジの効いたギターサウンド、矢継ぎ早に繰り出されるキメが特徴のバンドであり、そうしたエッセンスは近年の作品にも細かくアップデートされつつ引き継がれていた。もちろん本作にも、例えば「Torch of Liberty」や「夜が明ける」「天国地獄」など、これぞKANA-BOON!と快哉を叫びたくなるような楽曲も収録されてはいる。しかしアルバム全体の印象としては、これまでの彼らの作品にあった「狂おしいほどの焦燥感」はやや後退、アンサンブル全体の重心をぐっと落とし、もともと持ち合わせていたメロディーの良さと、そこに乗せた谷口の歌詞を引き立てることに成功している。これまでの作品に比べ、コンプレッサーやリミッターのレベルを抑えることによって、バンドのダイナミズムをより生々しく伝える方向へとシフトしているようにも感じられた。こうした変化はおそらく、「4つ打ちロックの代表格」とされたKANA-BOONが、コロナ時代に鳴らすべきサウンドを模索した一つの答えと言えるだろう。
そうした変化は歌詞の中にも表れている。例えば冒頭曲「Re:Pray」は、谷口がこの数年で味わった「喪失」と「再生」を綴ったものと思われるが、それは私たちがコロナ禍で感じてきた思いとも共振するような普遍性を帯びている。また、長らく続いたステイホームによって孤独や絶望を感じていた人たちに、そっと寄り添うような言葉が並ぶ「夜が明ける」や「alone」の歌詞は、深い悲しみと絶望を味わった谷口だからこそ書けたものだ。そんなバンドの真摯なメッセージは、本作を締めくくる楽曲「メリーゴーランド」に集約される。
"生きることはつらいものです/ 死ぬことすら眩しく見える / それでも日々にしがみついて生きよう / 光れ 光れ"
(「メリーゴーランド」)
前作からおよそ4年半というインターバルは、この最後のフレーズを導き出すために必要なものだったのかもしれない。本作『Honey & Darling』は、メジャーデビューから10年という節目を迎えるKANA-BOONのこれまでの集大成であると同時に、新たな一歩への期待を感じさせる傑作である。
文:黒田隆憲
KANA-BOON New Album「Honey & Darling」
2022年3月30日(水)
■初回生産限定盤(CD+Blu-ray) KSCL-3357~58 / 5,800円(+tax)
■通常盤(CD) KSCL-3359 / 3,000円(+tax)
CD収録曲:
1. Re:Pray
2. 21g
3. Dance to beat
4. Torch of Liberty
5. マイステージ
6. 夜が明ける
7. 橙
8. イコール
9. alone
10. 天国地獄
11. HOPE
12. いないいないばあ
13. ひかり
14. スターマーカー
15. メリーゴーランド
【Blu-ray】
KANA-BOON Re:PLAY TOUR 2021-2022
Live at Zepp DiverCity(TOKYO) 2022.1.21
2022年1月21日に開催した全国ツアーファイナル東京公演を全曲(17曲)収録。
さらにバックステージでのドキュメンタリー映像と、約30分のメンバーインタビュー映像も収録した、トータル2時間超えの豪華盤!
収録曲:
1. -Introduction-
2. ないものねだり
3. 盛者必衰の理、お断り
4. フルドライブ
5. ディストラクションビートミュージック
6. 結晶星
7. 街色
8. ターミナル
9. Wake up
10. Torch of Liberty
11. シルエット
12. MUSiC
13. まっさら
14. オレンジ
15. ネリネ
16. Re:Pray
17. メリーゴーランド
18. スターマーカー
19. Interview about the "KANA-BOON Re:PLAY TOUR 2021-2022"
特設サイトはこちら
アルバム購入はこちら
@_kanaboon
@kanaboon_official_insta
Official YouTube Channel
この間、彼らに訪れた試練については周知の通りだ。2020年春から始まった新型コロナウイルス感染拡大により、ベストアルバム『KANA-BOON THE BEST』を携え行われるはずだった全国ツアーは開催を見合わせることに。さらに2020年10月、ボーカル&ギターの谷口鮪が体調不良により休養することが発表され、一時期はバンドの存続すら危ぶまれる状態となっていた。
「休養期間の最中、自分の心から溢れ出た音楽と言葉たち。 それらは深い悲しみの産物と絶望から這い出すために求めた希望です」
谷口の公式コメントにあるように、通算6枚目となる本作はそんな「どん底」から復活を遂げたバンドの奇跡が刻まれたアルバムだ。2021年の初めには曲作りがスタートし、同年夏に始まったレコーディングは冬まで続いたという。この期間に作った楽曲は全てリリースしたい、そんなメンバーたちの強い意向により全15曲入り、トータル1時間を超える大作となった。
本作を一聴して感じるのは、どこか吹っ切れたかのような「風通しの良さ」だ。KANA-BOONといえば、4つ打ちロックの先駆けとなった「ないものねだり」(2013年)に代表されるような、性急なビートやエッジの効いたギターサウンド、矢継ぎ早に繰り出されるキメが特徴のバンドであり、そうしたエッセンスは近年の作品にも細かくアップデートされつつ引き継がれていた。もちろん本作にも、例えば「Torch of Liberty」や「夜が明ける」「天国地獄」など、これぞKANA-BOON!と快哉を叫びたくなるような楽曲も収録されてはいる。しかしアルバム全体の印象としては、これまでの彼らの作品にあった「狂おしいほどの焦燥感」はやや後退、アンサンブル全体の重心をぐっと落とし、もともと持ち合わせていたメロディーの良さと、そこに乗せた谷口の歌詞を引き立てることに成功している。これまでの作品に比べ、コンプレッサーやリミッターのレベルを抑えることによって、バンドのダイナミズムをより生々しく伝える方向へとシフトしているようにも感じられた。こうした変化はおそらく、「4つ打ちロックの代表格」とされたKANA-BOONが、コロナ時代に鳴らすべきサウンドを模索した一つの答えと言えるだろう。
そうした変化は歌詞の中にも表れている。例えば冒頭曲「Re:Pray」は、谷口がこの数年で味わった「喪失」と「再生」を綴ったものと思われるが、それは私たちがコロナ禍で感じてきた思いとも共振するような普遍性を帯びている。また、長らく続いたステイホームによって孤独や絶望を感じていた人たちに、そっと寄り添うような言葉が並ぶ「夜が明ける」や「alone」の歌詞は、深い悲しみと絶望を味わった谷口だからこそ書けたものだ。そんなバンドの真摯なメッセージは、本作を締めくくる楽曲「メリーゴーランド」に集約される。
"生きることはつらいものです/ 死ぬことすら眩しく見える / それでも日々にしがみついて生きよう / 光れ 光れ"
(「メリーゴーランド」)
前作からおよそ4年半というインターバルは、この最後のフレーズを導き出すために必要なものだったのかもしれない。本作『Honey & Darling』は、メジャーデビューから10年という節目を迎えるKANA-BOONのこれまでの集大成であると同時に、新たな一歩への期待を感じさせる傑作である。
文:黒田隆憲
RELEASE INFORMATION
KANA-BOON New Album「Honey & Darling」
2022年3月30日(水)
■初回生産限定盤(CD+Blu-ray) KSCL-3357~58 / 5,800円(+tax)
■通常盤(CD) KSCL-3359 / 3,000円(+tax)
CD収録曲:
1. Re:Pray
2. 21g
3. Dance to beat
4. Torch of Liberty
5. マイステージ
6. 夜が明ける
7. 橙
8. イコール
9. alone
10. 天国地獄
11. HOPE
12. いないいないばあ
13. ひかり
14. スターマーカー
15. メリーゴーランド
【Blu-ray】
KANA-BOON Re:PLAY TOUR 2021-2022
Live at Zepp DiverCity(TOKYO) 2022.1.21
2022年1月21日に開催した全国ツアーファイナル東京公演を全曲(17曲)収録。
さらにバックステージでのドキュメンタリー映像と、約30分のメンバーインタビュー映像も収録した、トータル2時間超えの豪華盤!
収録曲:
1. -Introduction-
2. ないものねだり
3. 盛者必衰の理、お断り
4. フルドライブ
5. ディストラクションビートミュージック
6. 結晶星
7. 街色
8. ターミナル
9. Wake up
10. Torch of Liberty
11. シルエット
12. MUSiC
13. まっさら
14. オレンジ
15. ネリネ
16. Re:Pray
17. メリーゴーランド
18. スターマーカー
19. Interview about the "KANA-BOON Re:PLAY TOUR 2021-2022"
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