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2022.03.29
家族連れなども楽しめる椅子席のエリアを設け、サイドの壁にバックドロップが掲げられた渋谷クアトロ。BGMを流したままスッと暗転したステージに、続々とバンドメンバーが登場してくる。上手(かみて)から四本晶(Gt)、別所和洋(Key)、小宮山純平(Dr)、黒須遊(Sax)、チャンケン(Tp)、田口恵人(Ba)という6名とそれぞれの機材がずらりと並ぶ様子は壮観ですらあり、クアトロのステージがめちゃくちゃ狭く見える。ラフな調子で音を合わせはじめるとそのまま1曲目のイントロへとつながり、「Welcome to "NEW KICKS"!!」と呼びかけながらKeishi Tanakaが登場。曲は「What A Happy Day」、タイトル通り最高にハッピーな夜が始まる。
曲間をハンドクラップでつないで、イベントタイトルを冠した2曲目の「Hello, New Kicks」へ。四本がファンキーなワウギターを刻み、別所が涼しい顔でジャジーな鍵盤ソロをキメる。グルーヴってこういうことだよね、と身体で実感できるようなサウンドに、観客たちは手を掲げたりステップを踏んだりと思い思いのリアクションで応えている。代表曲のひとつ「Floatin' Groove」では、「来た!」という場内のリアクションと呼応するようにミラーボールが回り、アッパーなモータウン調のビートが楽しい「Wonderful Seasons」では黒須のサックスソロも飛び出す。
演奏そのものからも表情からも、バンド陣はみなリラックスしている様子が伝わってくる。拳を掲げたりクラップを煽ったり、フロアと交歓しながら動き回るKeishiもまた然り。ほぼ曲間を空けないまま冒頭のブロックを演奏し終えたところで、「いいじゃない、俺ら」と自画自賛してみせる。それを肯定する拍手を浴びながら、「この形でワンマンをやるのは1年半ぶりくらい?」「前半4曲で気づいたかもしれないですけど、だいぶフンフンしてますから」と久々のライブハウスでのワンマンとなるこの『NEW KICKS -ONE MAN SHOW-』への意気込みをユーモラスに伝えた。テンポを落としたイントロからスカ調のサウンドが炸裂する「Our Town」では、カメラマンをステージへと上げ、配信視聴組へ向け臨場感のある映像をプレゼント。ただでさえ人口密度の高いステージ上がよりカオスになったところで黒須とチャンケンのホーン隊が最前列まで出てきてKeishiと横並びでプレイするなど、視覚面からもぐいぐい盛り上げていく。
それぞれスキルとキャリアを積んできた面々による、良い意味で余裕や遊び心も含んだ演奏がとびきり心地良いものであることはもちろん、それを背負ったKeishiのボーカルの素晴らしさを堪能するライブでもあった。自らピアノでマイナー調のチルなフレーズを弾きながらの新曲「雨」、バンドメンバーが一旦退いてピンスポットひとつを浴び、弾き語りスタイルで歌った「せかいの車窓から」、「デビュー曲をやります」とアコギを奏でながらのフォーキーな「夜の終わり」と、ミドルテンポ以下の曲や音数を絞ったアレンジで、彼の歌声はより際立つ。豊かに響く中音域の力強さと若干のハスキー成分、言葉のひとつひとつをはっきりと伝えきる発声の確かさ、そしてどの曲でも感じられる、どこか朗らかで前向きなニュアンス。バンドの編成や曲調は何度も変わるけれど、中心にある歌声は揺るぎない。
弾き語りあり、ミニマルなカッコよさを堪能できる3ピースあり、サンプラーやシーケンスも交えたモダンなアプローチあり、とバラエティに富んだ中盤を経て、思いっきりご機嫌なロックンロール「Like Her」を5人編成でドロップして再加速。「まだまだ続くぜ、 "NEW KICKS"!!」と、メンバー紹介を挟んでからフルメンバーで放ったのは「This Feelin' Only Knows」、さらに2月にリリースしたばかりの「Sunny」へと続く。Keishiの音楽性の中核を成す、R&Bやソウル、ファンクといったグルーヴィーでダンサブルなノリの中に、ラテンやワールドミュージックなど多様な音楽の要素が顔をのぞかせるのも楽しい。会場全体の興奮度や幸福度がまた一段上がる。
MCでは、リハでバンドメンバーから「曲数が多い」とぼやきが入ったと暴露(?)する一幕もあったが、それだけボリューミーかつ多岐にわたった充実のセットリストは、観る側としてはたまらない。「こういうときにしかできないアレンジで」と、パッドによるビートとホーンを前面に出した「真夜中の魚」はしっとりアーバンに、四本が歌う一幕もあった横ノリのパーティーチューン「Just A Side Of Love」はとびきり楽しく、田口の5弦ベースで揺らす「The Smoke Is You」は往年のファンクやディスコの装いで。「One Love」は、ゴスペルを彷彿とさせる要所の多声コーラスと、Keishiのボーカルのみがストレートに響く箇所の対比が鮮やかだ。ライブはもう最終盤だが、歌声の力強さはここへきてむしろ増しているようにも感じる。
「この場所には愛があったようにこっちからは見えるし、みんながそう思っててくれたら嬉しいなと思ってます。その愛を持ち帰ってもらって、家に、街に、日本全国に、そして世界に。ちょっとずつ広がっていったらいいなと思ってます。音楽の力を信じてます。そして自分自身の力もまだまだ信じてるので、これからも付いてきてください」
基本的に飄々とにこやかな彼がグッと力をこめて口にした言葉がまっすぐ届いてくる。たしかに、この日クアトロで繰り広げられたハッピーで陽性な空間に、絶えず充満していたのは"愛"に違いない。生きることをまた始めようか。愛した世界で始めようか。おだやかに、優しく歌われる「I'm With You」のメッセージに耳を傾けながら、逆光でシルエット状態のKeishiの姿を見ながら、ライブの余韻を噛みしめる。
......のも束の間、アンコールに応えステージへと戻ってからはしばし緩めのトークタイムである。グッズを紹介したりするKeishiの後ろで、すでに缶ビールを開けているメンバーが複数いるのも微笑ましい。この日アナウンスされた、2年前にコロナ禍で中止となった都市を中心に3ピースでまわる『Summer Rains Tour』やビルボードでの弾き語り公演をはじめ、10周年となる今年に色々と計画していることがあると伝えたあとは、ピアノ弾き語りからの「Hello」をゆったりと届け、最後は大団円にふさわしく、祝福感とともに輝かしく鳴らされる「Breath」でライブを終えた。
濃密かつ軽快に、飄然かつ情緒豊かに。みっちり2時間強で23曲。Keishi Tanaka10周年の幕開けは実に晴れやかなものだった。
文:風間大洋
写真:山川哲矢
NEW KICKS -ONE MAN SHOW-
01. What A Happy Day
02. Hello, New Kicks
03. Floatin' Groove
04. Wonderful Seasons
05. Our Town
06. 冬の青
07. 雨
08. せかいの車窓から
09. 夜の終わり
10. Where You Know
11. 偶然を待っているだなんて
12. Like Her
13. How's It Going?
14. This Feelin' Only Knows
15. Sunny
16. 真夜中の魚
17. Just A Side Of Love
18. The Smoke Is You
19. Show Respect
20. One Love
21. I'm With You
[ENCORE]
22. Hello
23. Breath
配信チケット(1 Camera Only)
販売期間:2022年4月3日(日)20:00まで
販売URL:https://w.pia.jp/t/keishitanaka-d/
チケット価格:1,500yen
※配信期間中は再度の視聴が可能です。視聴可能期間は4月3日(日)23:59までです。
Keishi Tanaka「Sunny」
2022年2月16日(水)
Label:FRIENDSHIP.
Format:Digital
Track:
1. Sunny
試聴はこちら
「A SONG FOR YOU Vol.06 [SUNNY]」
※ライブ会場、オフィシャルウェブショップ限定で販売中
品番:KCRC014
価格:2,000yen(税込)
Track:
1. Sunny
内容:「Sunny」収録CD / ototabitoコラボ手ぬぐい / ブックレット / ポストカード3種類 / ステッカー1種類封入
オフィシャルウェブショップはこちら
7月1日(金) 新代田 FEVER
7月3日(日) 高崎 WOAL
7月7日(火) 京都 CLUB METRO
7月8日(金)福山 Boogie Man's Cafe POLEPOLE
7月9日(土) 福岡 Kieth Flack
7月10日(日) 松山 Double-u studio
7月11日(月) 神戸 海辺のポルカ
7月16日(土) 宇都宮 HELLO DOLLY w/Ropes
7月17日(日) 盛岡 the five morioka w/Ropes
7月18日(月) 山形 SANDINISTA w/Ropes
<オフィシャル先行>
受付期間: 3月27日(日) 10:00~4月10日(日)23:59
受付URL : https://w.pia.jp/t/keishitanaka-tour/
@KeishiTanaka
@keishitanaka
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曲間をハンドクラップでつないで、イベントタイトルを冠した2曲目の「Hello, New Kicks」へ。四本がファンキーなワウギターを刻み、別所が涼しい顔でジャジーな鍵盤ソロをキメる。グルーヴってこういうことだよね、と身体で実感できるようなサウンドに、観客たちは手を掲げたりステップを踏んだりと思い思いのリアクションで応えている。代表曲のひとつ「Floatin' Groove」では、「来た!」という場内のリアクションと呼応するようにミラーボールが回り、アッパーなモータウン調のビートが楽しい「Wonderful Seasons」では黒須のサックスソロも飛び出す。
演奏そのものからも表情からも、バンド陣はみなリラックスしている様子が伝わってくる。拳を掲げたりクラップを煽ったり、フロアと交歓しながら動き回るKeishiもまた然り。ほぼ曲間を空けないまま冒頭のブロックを演奏し終えたところで、「いいじゃない、俺ら」と自画自賛してみせる。それを肯定する拍手を浴びながら、「この形でワンマンをやるのは1年半ぶりくらい?」「前半4曲で気づいたかもしれないですけど、だいぶフンフンしてますから」と久々のライブハウスでのワンマンとなるこの『NEW KICKS -ONE MAN SHOW-』への意気込みをユーモラスに伝えた。テンポを落としたイントロからスカ調のサウンドが炸裂する「Our Town」では、カメラマンをステージへと上げ、配信視聴組へ向け臨場感のある映像をプレゼント。ただでさえ人口密度の高いステージ上がよりカオスになったところで黒須とチャンケンのホーン隊が最前列まで出てきてKeishiと横並びでプレイするなど、視覚面からもぐいぐい盛り上げていく。
それぞれスキルとキャリアを積んできた面々による、良い意味で余裕や遊び心も含んだ演奏がとびきり心地良いものであることはもちろん、それを背負ったKeishiのボーカルの素晴らしさを堪能するライブでもあった。自らピアノでマイナー調のチルなフレーズを弾きながらの新曲「雨」、バンドメンバーが一旦退いてピンスポットひとつを浴び、弾き語りスタイルで歌った「せかいの車窓から」、「デビュー曲をやります」とアコギを奏でながらのフォーキーな「夜の終わり」と、ミドルテンポ以下の曲や音数を絞ったアレンジで、彼の歌声はより際立つ。豊かに響く中音域の力強さと若干のハスキー成分、言葉のひとつひとつをはっきりと伝えきる発声の確かさ、そしてどの曲でも感じられる、どこか朗らかで前向きなニュアンス。バンドの編成や曲調は何度も変わるけれど、中心にある歌声は揺るぎない。
弾き語りあり、ミニマルなカッコよさを堪能できる3ピースあり、サンプラーやシーケンスも交えたモダンなアプローチあり、とバラエティに富んだ中盤を経て、思いっきりご機嫌なロックンロール「Like Her」を5人編成でドロップして再加速。「まだまだ続くぜ、 "NEW KICKS"!!」と、メンバー紹介を挟んでからフルメンバーで放ったのは「This Feelin' Only Knows」、さらに2月にリリースしたばかりの「Sunny」へと続く。Keishiの音楽性の中核を成す、R&Bやソウル、ファンクといったグルーヴィーでダンサブルなノリの中に、ラテンやワールドミュージックなど多様な音楽の要素が顔をのぞかせるのも楽しい。会場全体の興奮度や幸福度がまた一段上がる。
MCでは、リハでバンドメンバーから「曲数が多い」とぼやきが入ったと暴露(?)する一幕もあったが、それだけボリューミーかつ多岐にわたった充実のセットリストは、観る側としてはたまらない。「こういうときにしかできないアレンジで」と、パッドによるビートとホーンを前面に出した「真夜中の魚」はしっとりアーバンに、四本が歌う一幕もあった横ノリのパーティーチューン「Just A Side Of Love」はとびきり楽しく、田口の5弦ベースで揺らす「The Smoke Is You」は往年のファンクやディスコの装いで。「One Love」は、ゴスペルを彷彿とさせる要所の多声コーラスと、Keishiのボーカルのみがストレートに響く箇所の対比が鮮やかだ。ライブはもう最終盤だが、歌声の力強さはここへきてむしろ増しているようにも感じる。
「この場所には愛があったようにこっちからは見えるし、みんながそう思っててくれたら嬉しいなと思ってます。その愛を持ち帰ってもらって、家に、街に、日本全国に、そして世界に。ちょっとずつ広がっていったらいいなと思ってます。音楽の力を信じてます。そして自分自身の力もまだまだ信じてるので、これからも付いてきてください」
基本的に飄々とにこやかな彼がグッと力をこめて口にした言葉がまっすぐ届いてくる。たしかに、この日クアトロで繰り広げられたハッピーで陽性な空間に、絶えず充満していたのは"愛"に違いない。生きることをまた始めようか。愛した世界で始めようか。おだやかに、優しく歌われる「I'm With You」のメッセージに耳を傾けながら、逆光でシルエット状態のKeishiの姿を見ながら、ライブの余韻を噛みしめる。
......のも束の間、アンコールに応えステージへと戻ってからはしばし緩めのトークタイムである。グッズを紹介したりするKeishiの後ろで、すでに缶ビールを開けているメンバーが複数いるのも微笑ましい。この日アナウンスされた、2年前にコロナ禍で中止となった都市を中心に3ピースでまわる『Summer Rains Tour』やビルボードでの弾き語り公演をはじめ、10周年となる今年に色々と計画していることがあると伝えたあとは、ピアノ弾き語りからの「Hello」をゆったりと届け、最後は大団円にふさわしく、祝福感とともに輝かしく鳴らされる「Breath」でライブを終えた。
濃密かつ軽快に、飄然かつ情緒豊かに。みっちり2時間強で23曲。Keishi Tanaka10周年の幕開けは実に晴れやかなものだった。
文:風間大洋
写真:山川哲矢
NEW KICKS -ONE MAN SHOW-
2022年3月26日(土)渋谷CLUB QUATTRO公演 SET LIST
01. What A Happy Day02. Hello, New Kicks
03. Floatin' Groove
04. Wonderful Seasons
05. Our Town
06. 冬の青
07. 雨
08. せかいの車窓から
09. 夜の終わり
10. Where You Know
11. 偶然を待っているだなんて
12. Like Her
13. How's It Going?
14. This Feelin' Only Knows
15. Sunny
16. 真夜中の魚
17. Just A Side Of Love
18. The Smoke Is You
19. Show Respect
20. One Love
21. I'm With You
[ENCORE]
22. Hello
23. Breath
配信チケット(1 Camera Only)
販売期間:2022年4月3日(日)20:00まで
販売URL:https://w.pia.jp/t/keishitanaka-d/
チケット価格:1,500yen
※配信期間中は再度の視聴が可能です。視聴可能期間は4月3日(日)23:59までです。
RELEASE INFORMATION
Keishi Tanaka「Sunny」
2022年2月16日(水)
Label:FRIENDSHIP.
Format:Digital
Track:
1. Sunny
試聴はこちら
「A SONG FOR YOU Vol.06 [SUNNY]」
※ライブ会場、オフィシャルウェブショップ限定で販売中
品番:KCRC014
価格:2,000yen(税込)
Track:
1. Sunny
内容:「Sunny」収録CD / ototabitoコラボ手ぬぐい / ブックレット / ポストカード3種類 / ステッカー1種類封入
オフィシャルウェブショップはこちら
LIVE INFORMATION
Keishi Tanaka presents [Summer Rains Tour]
6月26日(日) 四日市 Advantage7月1日(金) 新代田 FEVER
7月3日(日) 高崎 WOAL
7月7日(火) 京都 CLUB METRO
7月8日(金)福山 Boogie Man's Cafe POLEPOLE
7月9日(土) 福岡 Kieth Flack
7月10日(日) 松山 Double-u studio
7月11日(月) 神戸 海辺のポルカ
7月16日(土) 宇都宮 HELLO DOLLY w/Ropes
7月17日(日) 盛岡 the five morioka w/Ropes
7月18日(月) 山形 SANDINISTA w/Ropes
<オフィシャル先行>
受付期間: 3月27日(日) 10:00~4月10日(日)23:59
受付URL : https://w.pia.jp/t/keishitanaka-tour/
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