ユレニワ、シロナカムラによるセルフライナーノーツ「恋人たちのヒム」

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2022.03.14

#ユレニワ

前作からおよそ1年ぶりのシングル「恋人たちのヒム」をリリースした、千葉発4ピースバンド"ユレニワ"。今回もSENSAではVo/Gt シロナカムラによる楽曲のセルフライナーノーツを掲載！今回は3月9日(水)にリリースした配信シングル「恋人たちのヒム」について。

いじめに遭っていたうち二回とも、おれは悲しいだけで苦しくはなかった。
いざ殴り合いになっても腕っ節に自信はあったし、誹謗中傷に言い返している自分の論が一番正しいと確信していた。

まずはじめは、当時同じ団地内に住んでいた上級生たちに殴られたり、ゲーム機を盗まれたり、下着泥棒の罪をなすりつけられたりした。次第に呼ばれた場所に人がいなかったり、公園の落とし穴に落とされて笑いものにされたり、靴を投げ捨てられたりと、いじめらしい展開になってしまう。
それらはすべて、暴言と暴力で少しずつ解決した。しかし、加害者の上級生のひとりを返り討ちにしたおれの方が怒られて、団地の大人はどうしてこんなに変なんだろうと思った。それで、既に少し狂ってしまったのかも。だからまたいじめに遭った。

時は少し流れて、家族総出で引っ越した先でも争いは勃発する。「気に食わない新入生」になるのはあっという間で、誰しもがおれを腫れ物に触るように扱う。
やっぱり必死で抵抗した。机を投げたり、ドアを蹴散らしたり、いじめっ子の自転車を壊したりして、今考えれば、もうどっちが加害者かもわからない。

余計に周りの目は冷えてしまう。そんなことを望んでいるわけじゃないのに、自己防衛を強めれば強めるほど、仲良くなり得る人たちも去って行ってしまう。グレてるわけじゃないのに、それらの暴力沙汰を面白がった不良生徒たちはおれにむらがって、煙草を吸わせたがったり、よく知らない学校のよく知らない生徒を倒すために呼び出したり、おれの教室に迎えに来たりしたのだ。嘘みたいだろ、この時代に。でも田舎だったから。

幸い、おれは音楽が好きだった。バンドが好きだった。熱心になれるし、熱心でいたい対象がくっきりしはじめて、遅れて青春は咲いた。もっとはやくにこうしたかった。もっとはやくに出会いたかった。もっとはやくに包まれたかった。自分の生き様を明かす相手に、出会えてよかったと思うのだ。

いじめに遭っていたうち二回とも、おれは悲しいだけで苦しくはなかった。いいや、苦しかったのを力業でねじ伏せた。きっと忘れているだけだ。

そして、こんな話があったから書く気になった歌があって。その歌の中に「君」が生まれた。

「君」もそう、おれと同じだろ。その教室でロックスターに出会えたこと、嬉しいんだろう。これはセルフライナーノーツであり、君への手紙みたいなものなんだよ。

ユレニワ
Vo/Gt シロナカムラ

ユレニワ「恋人たちのヒム」Music Video

PROFILE

ユレニワ
千葉県にて結成のフォーピースバンド。衝動がむき出しになった生々しいライブパフォーマンスと、Vo/Gtのシロナカムラによる文学的かつ鮮烈な歌詞、そしてロック/オルタナを中心に据えながら、確かな音楽的素養に裏打ちされた楽曲が持ち味。
2018年12月にMASH A&R主催「MASH FIGHT! vol.7」にてグランプリを受賞。
2020年2月、初の全国流通盤1stアルバム「ピースの報せ」がリリースされ、同月のTOWER RECORDSによるレコメンド企画"タワレコメン"に選出。
2021年3月、3rd mini album「Impressionist」をリリース。
2022年6月より毎月8日に渋谷La.mamaにて2マン形式の定期公演「エロス-ラバーズ編-」を開催。