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2022.03.06
何ら躊躇なく"大傑作!"と断言したい。昨年YUME(Ba)が加入して新体制となったORESKABAND。その約4年半振りの新作は、彼女たちでしか成し得ないスカ、ロックステディ、レゲエを堂々と鳴らした見事なアルバムとなった。心も躍らすダンスミュージックと言ったらいいだろうか。最初に音源を預かって"とりあえずザっと聴いてみますか"と聴き始めたら、その音像にグイグイと引き込まれ、我を忘れて全曲に聴き入ってしまった。こんな素敵な音楽体験は久し振りである。
文字通り、いにしえのダンスホールの猥雑さを体現したかのようなオープニング、M1「THE GUINGUETTE」。スウィンギーなビートとハツラツとしたブラスに彩られたアップチューンから、いきなり聴き手の高揚感が煽られる。続くM2「No.9」では、ミドルテンポでマイナーなメロディに落ち着きつつも、大胆にエフェクトを導入。さらに、キャッチーなサビを持つ軽快なスカナンバー、M3「SHE」ではシンセベースを効かせる...といった具合に、どんどん新たなORESKABANDの世界に誘っていく。
バラエティ豊かなメロディを、トラディショナルなアンサンブルへのオマージュを損なうことなく──それでいて偏狭的に固執した様子もなく、いろいろに音を操って独自の楽曲に仕上げている。しかも、ここが最も大事なところだが、小難しさは微塵も感じられず、聴き応えはポップそのもの。そこが何よりも素晴らしい。古今東西の良質なロック作品にはすべからくこういう面がある。
The Beatles「I Saw Her Standing There」を連想させるM4「I'll Be There」。スリリングに迫るM5「うつくしい男」。大らかなM6「Stormy」。ゴスペルチックなM7「ARCO」。タイプはそれぞれだが、その主旋律には日本的な大衆感がしっかりと根付いている。それが確認出来て、嬉しいやら頼もしいやら。とりわけM8「Wonder Neighbor」では柔らかく、M9「新・NIPPON狂詩曲」では景気よく、日本ならではの叙情をメロディに託しているようだ。〈神戸から 虹の向こうへ かけぬけてく〉との精神は決して失われることなく、すべての楽曲に宿っている。派手にアルバムのフィナーレを締め括るM10「撃・ち・ま・く・れ!」&M11「ITOKASHI」もそれは然り。老若男女、聴き手を選ばないアルバムと言うこともできる。
見逃せないのは、そうしたポップさだけではなく、そこで歌われているメッセージ。白眉は〈君がどこの生まれで 誰の子供であろうとも/全くの問題外〉と歌われるM8「Wonder Neighbor」だろう。放浪民(ボヘミアン)さながらに、世界中で様々な人種・民族の眼前でライブを行ってきたORESKABANDだからこその説得力がある。M2「No.9」は図らずも(不幸にも?)タイムリーな内容になってしまったと筆者は考えるが、お聴きの皆さんがどう捉えるかが興味深いところ。
文:帆苅智之
ORESKABAND「BOHEMIA」
2021年3月2日(水)
試聴はこちら
2003年に大阪府堺市内の中学校にて結成した女性スカロックバンド。
iCas(Vo/Gt)、tae(Dr)、HAYAMI(Tb)、ADD(Sax)、YUME(Ba)の5人組。
ジャマイカ発祥のポピュラー音楽であるスカ、レゲエから影響を受けたオリジナルサウンドに現代を生きる女性ならではの力強いメッセージが込められた楽曲、エネルギッシュなライブパフォーマンスで世界を賑わせる。
全米46都市ツアー、ブラジル公演、ヨーロッパツアーなど、国内はもちろん海外での活動も積極的に行っている。 2015年から定期開催しているライブハウスとクラブカルチャーが交わるスカ、レゲエ、ダンスホールに特化したカルチャー系イベント「Stay Irie, Go Rudy」の主宰。
@ORESKA_Official
@oreskaband_official
Official YouTube Channel
文字通り、いにしえのダンスホールの猥雑さを体現したかのようなオープニング、M1「THE GUINGUETTE」。スウィンギーなビートとハツラツとしたブラスに彩られたアップチューンから、いきなり聴き手の高揚感が煽られる。続くM2「No.9」では、ミドルテンポでマイナーなメロディに落ち着きつつも、大胆にエフェクトを導入。さらに、キャッチーなサビを持つ軽快なスカナンバー、M3「SHE」ではシンセベースを効かせる...といった具合に、どんどん新たなORESKABANDの世界に誘っていく。
バラエティ豊かなメロディを、トラディショナルなアンサンブルへのオマージュを損なうことなく──それでいて偏狭的に固執した様子もなく、いろいろに音を操って独自の楽曲に仕上げている。しかも、ここが最も大事なところだが、小難しさは微塵も感じられず、聴き応えはポップそのもの。そこが何よりも素晴らしい。古今東西の良質なロック作品にはすべからくこういう面がある。
The Beatles「I Saw Her Standing There」を連想させるM4「I'll Be There」。スリリングに迫るM5「うつくしい男」。大らかなM6「Stormy」。ゴスペルチックなM7「ARCO」。タイプはそれぞれだが、その主旋律には日本的な大衆感がしっかりと根付いている。それが確認出来て、嬉しいやら頼もしいやら。とりわけM8「Wonder Neighbor」では柔らかく、M9「新・NIPPON狂詩曲」では景気よく、日本ならではの叙情をメロディに託しているようだ。〈神戸から 虹の向こうへ かけぬけてく〉との精神は決して失われることなく、すべての楽曲に宿っている。派手にアルバムのフィナーレを締め括るM10「撃・ち・ま・く・れ!」&M11「ITOKASHI」もそれは然り。老若男女、聴き手を選ばないアルバムと言うこともできる。
見逃せないのは、そうしたポップさだけではなく、そこで歌われているメッセージ。白眉は〈君がどこの生まれで 誰の子供であろうとも/全くの問題外〉と歌われるM8「Wonder Neighbor」だろう。放浪民(ボヘミアン)さながらに、世界中で様々な人種・民族の眼前でライブを行ってきたORESKABANDだからこその説得力がある。M2「No.9」は図らずも(不幸にも?)タイムリーな内容になってしまったと筆者は考えるが、お聴きの皆さんがどう捉えるかが興味深いところ。
文:帆苅智之
RELEASE INFORMATION
ORESKABAND「BOHEMIA」
2021年3月2日(水)
試聴はこちら
PROFILE
ORESKABAND(オレスカバンド)2003年に大阪府堺市内の中学校にて結成した女性スカロックバンド。
iCas(Vo/Gt)、tae(Dr)、HAYAMI(Tb)、ADD(Sax)、YUME(Ba)の5人組。
ジャマイカ発祥のポピュラー音楽であるスカ、レゲエから影響を受けたオリジナルサウンドに現代を生きる女性ならではの力強いメッセージが込められた楽曲、エネルギッシュなライブパフォーマンスで世界を賑わせる。
全米46都市ツアー、ブラジル公演、ヨーロッパツアーなど、国内はもちろん海外での活動も積極的に行っている。 2015年から定期開催しているライブハウスとクラブカルチャーが交わるスカ、レゲエ、ダンスホールに特化したカルチャー系イベント「Stay Irie, Go Rudy」の主宰。
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オフィシャルサイト@ORESKA_Official
@oreskaband_official
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