SENSA

2022.03.05

KUDANZ「あわい」──"あわい"を掬い上げる、成熟期を迎えたフォークミュージック

KUDANZ「あわい」──"あわい"を掬い上げる、成熟期を迎えたフォークミュージック

『血の轍』以来、実に5年ぶりとなるKUDANZのフルアルバム。ササキゲン(Vo&G)を中心に、ソロの弾き語りやバンド編成など、様々に変遷を経てきたKUDANZだが、今作では新たな6人体制に。菅原達哉(EG)、伊藤克広、斎藤駿介(kokyu)、次松大助(the miceteeth)、井上英司を共同製作者に迎え、セッションに3年の歳月をかけて完成した今作は、その名も『あわい』という。あわいは「間」という意味合い。私たちが見過ごしがちな「あわい」にある感情や風景を、ていねいに掬い上げたような全9曲が収録されている。
全9曲のうち、5曲は一発録り。そのためか、いつにもまして生々しく響いてくる。もともとフォークミュージックをベースにしてきたアーティストだけれど、フォークミュージックは生き様や生活、つまり「生」が鏡のように反映される表現方法だと思う。今作では、生々しい演奏によって、よりKUDANZの核が伝わりやすくなっている。
また、生き様を映し出す表現方法であるがゆえに、KUDANZが活動を、ササキゲンが年齢を重ねていくことによって、歌や演奏に説得力が増してきたように思える。〈明日はいい日だ 明日はいい日だ/誰がなんと云おうと〉〈君は綺麗だ 君は綺麗だ/誰がなんと云おうと〉と、こちらに歌いかけてくれる「グッデイ」の、なんと力強いことか。そもそもササキゲンは、詩人のような言葉を、珠玉のメロディにのせて歌う、宝石のような才能を持っていたけれど、掘り出したばかりのピッカピカな時よりも、磨かれたり傷がついたり、様々な人との出会いを繰り返した今のほうが、滋味深い輝きを放っているのではないだろうか。
生活の反映というところでは、今の時代の空気もたっぷりと吸い込んだ言葉が並ぶ。〈分け隔てたい人が居る それに抗う人が居る〉〈同じ手足じゃない 同じ毛並みじゃない〉〈君の命が揺れている〉〈僕の命が揺れている〉──昨今よく聞く"分断"というキーワードが脳裏に浮かぶ「ゆりかもめ」。それと〈癇癪持ちが集まれば/見事な阿修羅をほじくれる〉と賑やかに歌う「仕事」を合わせて聴くと、うん、うん、と頷きたくなる。ひとり、だけどひとりじゃない。そんな感覚が、アルバムを通して心身に染み渡ってくる。
とは言え、時代に揉まれているというよりは、築いてきたエアポケットの中から時代を俯瞰して見つめているような独自性がKUDANZにはある。悠然としたテンポ感と、鮮やかな情景が浮かぶパーソナルな歌詞は、自分の歩幅と自分の視点を持っているアーティストならではだ。憧れるほど凛とした姿勢から、生きるヒントを探すこともできる一枚だと思う。

文:高橋美穂




RELEASE INFORMATION

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KUDANZ「あわい」
2022年3月5日(土)

Track:
1. ギターを らして
2. ゆりかもめ
3. 優しい場所
4. ハロー・グッバイ
5. ⽕のように
6. 異星⼈
7. グッデイ
8. 仕事
9. 虹

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PROFILE

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KUDANZ
岩手県出身のササキゲン (vocals/guitars)によるソロプロジェクト。
フォークミュージックをベースに置き、エレキギター/ガットギターでの弾き語りや、バンド編成など、多様な形態で活動中。
2022年2月、共同製作者に菅原達哉(EG)、伊藤克広、斎藤駿介(kokyu)、次松大助(the miceteeth)、井上英司を迎え、セッションに三年の歳月をかけた、フルアルバム「あわい」をリリース。


LINK
オフィシャルサイト
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