SENSA

2022.02.08

YAJICO GIRL×YONA YONA WEEKENDERS、相思相愛の2組が起こした化学反応「YAJICOLABO」

YAJICO GIRL×YONA YONA WEEKENDERS、相思相愛の2組が起こした化学反応「YAJICOLABO」

2月5日、YAJICO GIRLが渋谷クラブクアトロで主催イベント『YAJICOLABO 2022』を開催した。『YAJICOLABO』はYAJICO GIRLがシンパシーを感じるアーティストに声をかけて行われる2マンイベント。1月30日には梅田クラブクアトロでBBHFとの2マンが開催されたが、この日はYONA YONA WEEKENDERSを対バンに迎え、「コラボとラボ(実験室)」のかかったイベントタイトル通りの、化学反応が生まれるライブとなった。

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先行のYONA YONA WEEKENDERSのライブは「思い出in the sky」からスタート。彼らの面白さはパンクやメロコアを背景に持つメンバーがシティポップ要素の強い楽曲を演奏していることであり、横揺れのグルーヴが非常に心地いい。しかし、見た目やファッションからはパンクシーンの出身であることが感じられ、そのいい意味でのギャップも魅力的。ギターのキイチによる派手なアクションや、ドラムの小原"Beatsoldier"壮史がときおり入れる手数の多いアグレッシヴなフィルインも、一般的なシティポップのバンドのライブではなかなか見られないものだ。

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BPMを上げて、場内の熱も一気に高まった「いい夢」では、スズキシンゴのベースをフィーチャーした間奏でメンバーが思いっ切り頭を振ったり、やはりフィジカルな気持ちよさがある。一般的に言って、ゆったりとしたテンポでグルーヴを生み出すことは、アップテンポのロックでグルーヴを出すことよりも演奏技術的に難しく、シティポップという言葉が流行り始めた頃は、「音源はいいけど、ライブを観ると線が細い」ということもよくあった。しかし、YONA YONA WEEKENDERSの場合は各メンバーがパンクシーンで場数を踏んできたがゆえの安定感があり、ステージを心から楽しんでいることが感じられるのがとてもいい。

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MCではフロントマン主導で音楽性が大きく変わったことがYAJICO GIRLとの共通点であり、シンパシーを感じるという話があったが、個人的には音楽性こそ違えども、どちらの音楽からも確かな歌心が感じられることが共通点であるように思う。特に、YONA YONA WEEKENDERSの磯野くんのソウルフルかつ温かみのある歌声はやはり素晴らしく、中盤で披露された「終電で帰ります」や「東京ミッドナイトクルージングクラブ」は絶品(紅一点、サポートコーラスの西恵利香の歌声も非常に効果的)。かと思えば、「ビートソルジャー、カモン!」の掛け声から始まった「R.M.T.T」(「ラーメン食べたい」の意味)は軽快なグルーヴチューンで、この歌とグルーヴの両輪が彼らのライブを間違いないものにしている。

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最後のMCでは、YONA YONA WEEKENDERSがラジオでYAJICO GIRLの「FIVE」をかけたことがきっかけとなって、今回の共演に繋がったことに感謝を伝え、オーディエンスに「これからもライブハウスに来てください」と呼びかけると、〈いつだって未来は光の中〉と歌う「光の中」に続いて、〈未来のドアをノックしたいな〉と歌う「SUNRISE」に繋げる粋な選曲で、この日のライブを締め括った(ちなみに、最後にメロコア出身らしいジャンプを決め、ギターを思い切り歪ませたキイチがそのままフィードバックノイズを鳴らしてパンクにステージを後にするかと思いきや、最後にちゃんとアンプのつまみを絞って帰ったのは、何だか温かい気持ちになりました)。


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後攻のYAJICO GIRLは「Better」からライブがスタート。生演奏のみのYONA YONA WEEKENDERSに対し、同期やサンプラーなども用いるYAJICO GIRLはサウンドのレイヤーも印象的だが、まず目を奪われたのはフロントマンである四方颯人のステージング。イベント前に行われた磯野くんとの対談では、「もともと音源を作るのが好きで、どちらかというとライブには苦手意識がある」と話していたが、この日はバンドの演奏に乗って自由に体を動かし、しっかりとオーディエンスと向き合いながら歌う姿が頼もしく、180cm以上の恵まれた体格も相まって、非常にステージ映えすると感じた。これはやはり、YONA YONA WEEKENDERSの後だからこその、気合いの表れなのかもしれない。

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その一方、「街の中で」では吉見和起がワウギターを鳴らし、武志綜真は間奏でベースソロを奏で、「セゾン」では榎本陸がアウトロで深いリヴァーブのかかったギターを鳴らしたかと思えば、「今夜は眠らないで」ではアコギを抱え、古谷駿は同期とともにビートを構築してバンドを下支えしたりと、メンバーそれぞれがより有機的にアンサンブルを担っているように感じる。途中までは『アウトドア』からの曲が続けて演奏されたが、中盤のハイライトとなったのは最新作『Retrospective EP』に収録されている「チルドレン」。四方が「映画やドラマのテーマ曲をイメージした」と語るバラードからは、やはり確かな歌心が感じられ、攻めたサウンドメイクの一方で、彼らが秘めている大衆性を改めて感じさせた。

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「今日は僕らものれる曲をいっぱい用意してきました」と話して始まった後半戦は、「どことなく君は誰かに似ている」からスタート。Bメロがブレイクになっていて、サビではじけるダンスミュージックマナーのアレンジで、四方のステージングもよりフィジカルの度合いを増し、体を揺らすオーディエンスも多く見られる。そして、2組を繋いだ「FIVE」をしっかり届けると、ループのリズムとギターのリフレインが心地いい「Life Goes On」へ。間奏ではゴスペルコーラスとともに場内がクラップに包まれ、この日一の一体感が生まれると、四方は〈手を伸ばせよ 思い出in the sky〉とYONA YONA WEEKENDERSの楽曲「思い出in the sky」の一節を歌い、こうしたステージ上での余裕もこれまでのYAJICO GIRLのライブでは見られなかったものかもしれない。そんな〈思い出〉を辿るように、ラストは〈忘れないで〉の声ネタが耳に残る「VIDEO BOY」。アウトロでは音源にないライブアレンジが追加されるなど、ライブならではの魅力も存分に見せつけ本編を終えた。

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アンコールではもう一度アッパーなダンスチューン「雑談」でフロアを沸かせ、『Retrospective EP』の多面性を改めて伝えると、四方が「〈好き〉という気持ちを大切に、選択したり、行動したりすることが、文化、芸術、音楽を守ることになると思う」と想いを語り、さらには「自分は頭で考えがちだけど、YONA YONA WEEKEDNERSのライブを観て、もっとピュアな気持ちを大事にしようと思った」と語ったが、そんな2組の化学反応はこの日のステージから間違いなく感じられた。最後はこの日唯一、上京以前に作った『インドア』から「熱が醒めるまで」が披露され、意義のある2マンが締め括られた。


文:金子厚武
撮影:鈴木友莉

YAJICOLABO 2022
2022年2月5日(土)東京・渋谷CLUB QUATTRO公演 SET LIST
YONA YONA WEEKENDERS
M1.思い出in the sky
M2.君とdrive
M3.いい夢
M4.終電で帰ります
M5.東京ミッドナイトクルージングクラブ
M6.R.M.T.T
M7.Open your eyes
M8.光の中
M9.SUNRISE

YAJICO GIRL
1.Better
2.Futura
3.街の中で
4.セゾン
5.今夜は眠らないで
6.チルドレン
7.どことなく君は誰かに似ている
8.FIVE
9.Life Goes On
10.VIDEO BOY
En1.雑談
En2.熱が醒めるまで

LINK
YAJICO GIRLオフィシャルサイト
@YAJICOGIRL
@yajicogirl
BBHFオフィシャルサイト
YONA YONA WEEKENDERSオフィシャルサイト





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