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2021.10.19

LITE、約2年ぶりのワンマンライブ「Stay Close Session」でみせた2020年代仕様のライブ空間

LITE、約2年ぶりのワンマンライブ「Stay Close Session」でみせた2020年代仕様のライブ空間

10月16日、LITEが約2年ぶりとなるワンマンライブ『Stay Close Session』をSHIBUYA O-EASTで開催した。昨年の緊急事態宣言以降、誰もが家から出られなくなった中で、メンバー4人の自宅をZOOMでつなぎ、リアルタイムのリモートセッションを行う「Stay Home Session」で音楽ファンからの大きな注目を集めたLITE。この日は結果的に緊急事態宣言明けのタイミングとなり、家から外に出て、メンバーやオーディエンスとより近い距離=Closeでのセッションが行えることの喜びを存分に感じさせる一夜となった。

そんなムードに大きく貢献したのが、この日参加した多数のゲスト。LITEはライブ活動がままならなくなった日々の中で制作にも注力し、しかも、この機会でこれまでやってこなかった制作を行うべく、コラボレーションやリミックスをサブスクで一曲ずつ配信していく『Fraction』を展開。その参加者や盟友たちが顔を揃え、さらには映画『騙し絵の牙』やNetflixで独占配信されているアニメーション映画『ブライト:サムライソウル』といったサントラ仕事の楽曲も披露されるなど、まさに約一年半の集大成と言える内容に。これまで当たり前だった環境や価値観が大きく変化した中、それを誰よりも前向きに捉え、誰よりも進化をしてみせたのがLITEであると、この日のステージは雄弁に物語っていた。

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まずはメンバー4人がステージに登場し、ミニマルなシーケンスとともに「Red Horse in Blue」からライブがスタート。そこからタイトかつアッパーな「Double」で一気にギアを上げると、ひさびさのCloseな距離の演奏に、たとえ声が出せない環境下でも、オーディエンスは熱量の高い盛り上がりを見せる。リリカルなピアノが耳に残る「Echolocation」に続いては、この日最初のゲストであるThe fin.のYuto Uchinoが登場し、「S」を披露。山本が叩くパッドによるビートを軸にしたアンサンブルに、Yutoの記名性の強いシンセが入り、後半に向けてジワジワと高揚していくサイケデリックなムードが心地いい。

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2人目のゲストとして登場したのはDÉ DÉ MOUSE。山本がバンドセットに参加するなど、以前から交流の深い2組は、すでに今年に入って3曲のコラボレーションを発表しているが、この日まず演奏されたのは「Image Game」。『Fraction』に収録されているリミックスに「DÉ DÉ MOUSE 4+1 Remix」と名付けられているように、文字通りLITEに第5のメンバーとしてDÉ DÉ MOUSEが加わったようなアレンジで、トリッキーなフレーズをメンバーとともにシンセで弾き、フロントの3人が同時にヘドバンをするかのような後半の勢いはまさに"バンド"。

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さらに、DÉ DÉ MOUSEが作曲、LITEがアレンジを手掛けた「Samidare」では、中盤のブレイクでミラーボールがフロアを照らす中、DÉ DÉ MOUSEがオーディエンスを煽り、後半のバーストへと突入する展開がカタルシス十分。このコラボレーション、まだまだ先もありそうだ。

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今年3月にオープンしたイケシブ(IKEBE SHIBUYA)のテーマ曲で、井澤のタッピングによるフレーズが印象的な「Tuning」、さらには「Temple」を続けると、「Zone3」では映像作家のKezzardrixとコラボレーション。

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「Stay Home Session」の映像に、リアルタイムのライブ映像を組み合わせてグラフィック化し、楽曲自体のスピード感に合わせて次々と切り替わっていく映像が抜群のかっこよさで、場内からは大きな拍手が送られた。

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続くゲストには9mm Parabellum Bulletの滝善充が登場。滝は『Fraction』には参加していないものの、この日限りのトリプルギター編成で、初期の名曲「Ef」を演奏。滝のメタリックなギターが加わることでより楽曲の重厚さが増し、後半の轟音パートもいつになく凄味を感じさせるものに。

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そのまま「Ef」と同じく『Phantasia』に収録の「Ghost Dance」を続けると、『ブライト:サムライソウル』のサントラから「Blinding」がアニメの映像とともに披露され、緊張感のある楽曲とアニメの戦闘シーンの好相性が感じられた。

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このあとに披露されたのは、downyの青木ロビンをフィーチャーした「Shinkai」。ここでは沖縄に住んでいる青木の自宅をリモートでつなぎ、ステージの4人もそれぞれスマホで自分を映して「Stay Home Session」時のような分割画面をスクリーンに映し出し、その上でリモートセッションを敢行。東京のライブハウスでの4人の演奏に、沖縄にいる青木のエモーショナルな歌声が違和感なく混ざり合い、まるで青木が同じ会場で歌っているかのような感覚は非常に驚きだった。

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「Stay Home Session」でもレーテンシー(遅延)の問題などを、最新のソフトを用いつつ、試行錯誤しながらクリアしていったわけだが、その発展形としてこの日のセッションが行われたことはこの一年半のひとつの帰結であり、さらなる未来への可能性を感じさせる1シーンだったと言える。

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ここから終盤にかけてはパーティーモードに突入し、「Bond」では山本が椅子の上に立ってオーディエンスを盛り上げると、「Pirates and Parakeets」では盟友のavengers in sci-fiが登場。両者はこれまでもこの曲で何度かセッションをしてきて、『Fraction』では木幡と稲見によるThe Department名義でのリミックスを提供しているが、この日最大の7人編成で、クラップとコーラスによって会場を大いに沸かせつつ、木幡はモジュールシンセを用いて奇妙なサウンドを作り出したりと、確かな進化も感じさせた。

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さらに、最後のゲストとして登場したのがcinema staff/peelingwardsの辻友貴。原曲ではSOIL & "PIMP" SESSIONSのタブゾンブがトランペットを吹く「D」では、辻がメロディアスなフレーズやカッティングでバンドと軽快に絡みつつ、後半では深いリヴァーブを聴かせたノイズギターで盛り上げる。ラストは「Infinite Mirror」のドラマチックな轟音をトリプルギターで作り上げて、華々しく本編を締め括った。

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アンコールでは『騙し絵の牙』のサントラから「Breakout」が披露され、ラストはエピックなハードコアシンフォニー「100 Million Rainbows」で大団円。多数のゲストがバンドの内包する音楽性を伝えつつ、決してジャンルという枠組みに捉われるのではなく、ただただ「他の誰もやっていないことをやる」という姿勢で自らの道を切り開いてきたバンドが見せた2020年代仕様のライブ空間に、終演後もしばらく興奮が抑えられなかった。

文:金子厚武
写真:Ayumi Saruya

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