SENSA

2021.08.24

みらん「モモイロペリカンと遊んだ日」──地元の駅ビルに入ってたミカヅキモモコ、もしくは一口で食べれるスイーツ

みらん「モモイロペリカンと遊んだ日」──地元の駅ビルに入ってたミカヅキモモコ、もしくは一口で食べれるスイーツ

例えばMomとか諭吉佳作/menとかLAUSBUBとか。GarageBandで作曲するアーティストの楽曲は、逆に?なぜか?手作り感がある気がするのは気のせいだろうか。兵庫県在住のシンガー・ソングライターみらんの音楽も、その例に漏れず、だ。
これまでに、EP(配信・手売りCD)、シングル(配信)、アルバム(配信・CD)、シュウタネギ (WANG GUNG BAND、ex.バレーボウイズ)との共作EP、とリリースを重ねてきた彼女の新EPは、やたらと甘酸っぱくてドキドキする。例えば、ただの〈好き〉とは違う独特の〈素敵〉な関係性を示したリードトラック「ポトフがいいなっ」や、恋をすることを〈人類のサイクルに入り込む瞬間〉と喩えた表現が秀逸な「瞬間」など、普通の恋愛でもみらんが独自の視点を持つことで、甘酸っぱさが多分に出て来る気がするのだ。
彼女の声もその甘酸っぱさが抽出されるのに一役買っている。「ジャノメミシン」のみらんは、恋したてのキュートなみらん。「色恋沙汰」のみらんは、いろいろ経験して愛を知った大人なみらん。曲やシーンごとに表現の仕方も違うけど、ただの透き通る声とか、浮遊感のある声とも違うし、ビブラートがうまいのとも違う。〈色っぽさ〉と〈ピュアさ〉という相反する要素を兼ね備えた、独特のゆらぎがそこにある。そのゆらぎが、ふわっとした、甘酸っぱい匂いの漂う空気感を作っている。気がする。
そして、それをさらに増幅させているのが、アコギと、GarageBandによるハンドメイド感のあるトラックなんだと思う。このリズムや音程のズレは、どこまでが狙ってやっていて、どこまでが狙わずにやっているんだろう。マッサージチェアにマッサージしてもらうより手で押してもらった方が気持ちいい。この〈ガレバンなのに手押しでグリグリ〉感が、歌のゆらぎや甘酸っぱさを増幅させ、引き立てている。
ちなみに配信とCDでは曲順が異なり、個人的な印象としては、配信版は山あり谷あり緩急あり。CDはライブのように徐々に盛り上がっていくイメージ。自分の気持ちに合わせて聴き比べてみるのも面白い。
......などとここまで御託を並べてみたものの、そこまで仰々しい音楽でもない。もっと、地元の駅ビルに入ってたミカヅキモモコとか、SWIMMERとか、大中とか、宇宙百貨といった女子向けプチプラ・ファンシーショップみたいに気軽に入って気軽に出ていける音楽だし、さっと一口で食べれるスイーツみたいな音楽でもある。ぜひ召し上がれ。

文:酒井優考



RELEASE INFORMATION

モモイロペリカンジャケット.jpg
みらん『モモイロペリカンと遊んだ日』
2021年8月18日(水)
試聴はこちら

PROFILE

miran_a_1500_20210812.jpg
みらん
1999年生まれ、兵庫県在住。犬がめっちゃ好きなシンガーソングライター。
包容力のある歌声と可憐さと鋭さが共存したソングライティングが魅力。浮遊感の中にみせる芯の強さに恍惚とする。
2019年4月に3曲入りCD『こんな生活』の手売り販売をスタート。アマイワナとの共同企画「刹那倶楽部」では、これまでにヤナセジロウ (betcover!!)、井上花月と川島健太朗 (Laura day romance)等と共演。 2020年にシングル『もっとふたり、オボレル』、そして、1stアルバム『帆風』を配信リリース。
2021年に入ってからはシュウタネギ(WANG GUNG BAND、ex バレーボウイズ)との共作でEP『ねぎとみらん』を一部店舗限定で販売。
2021年7月7日、1stアルバム『帆風』をCD化、そして、8月18日には新作EP『モモイロペリカンと遊んだ日』をリリースした。

LINK
@m11ram_5
@mirams11
Official YouTube Channel

気になるタグをCHECK!