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2021.06.15
HANDSOMEBOY TECHNIQUE「TECHNIQUE」──12年ぶりの新作で描き出す、めくるめくポップ・サイケデリア
京都を拠点としてSECOND ROYAL RECORDSが立ち上げられたのは2002年のことだった。母体となったのは、その2年前にスタートした同名のクラブイヴェント。レーベル初期の段階からDJとバンドのカルチャーを横断し、そのことを音作りにも反映させてきたのがSECOND ROYALというレーベルだった。
HANDSOMEBOY TECHNIQUEは、HALFBYらと共にそうしたSECOND ROYALのレーベルカラーを形成してきたアーティストである。彼自身、もともとDJと並行してバンド活動を行い、2005年の『Adelie Land』、2009年の『Terrestrial Tone Cluster』といったオリジナル・アルバムでは、さまざまなヴォーカリストも招きながらポップなダンストラックを作り上げてきた。現代ではDJが生楽器を使用してバンド的方法論によるビートメイキングを行うことは当たり前のものとなったし、バンドがダンスミュージック的な要素を取り込むことも珍しくない。「バンドとDJのカルチャーを横断」という物言い自体がえらい古臭く感じるほどだ。だが、SECOND ROYALはそうしたスタイルを2000年代初期の段階で打ち出しており、その象徴がHANDSOMEBOY TECHNIQUEだったのだ。
実に12年ぶりとなる新作『TECHNIQUE』は、万華鏡のように次々に表情を変えていく「White Law」で幕を開ける。冒頭で鳴り響くのはストリングスの調弦音。そこからHANDSOMEBOY TECHNIQUE印のポップワールドが一気に華開く。ストリングスに乗って高度を上昇させていく「Answer」や「Wishing for Your Love」の疾走感、チカーノ・ソウル的な香りも漂う「When You're Gone」の甘さなど、どれもポップ職人としてのHANDSOMEBOY TECHNIQUEの顔が伺えるが、いずれも心地良さに押し流されることはない。イージーリスニング的でポップなダンスアルバムは2000年代以降星の数ほどリリースされてきたが、彼の作品世界はそうしたイージーリスニング作品とは基本的に異なるものだ。
先ごろ公開されたプレイリストでは、HANDSOMEBOY TECHNIQUEの愛聴曲が45曲選ばれている。これを聴いていると、彼の音楽世界の背景に広がるものの豊かさが実感できるだろう。ダイナソーJr、エリック・カズ、サイモン・フィン、ピーター・ゴールウェイ、コモドアーズ、ヴァン・ダイク・パークス、スタックリッジ、大江千里、Qティップ、ストローブス......ジャンルはあまりに幅広いが、「HANDSOMEBOY TECHNIQUEの愛聴曲」としてそのラインナップを見返してみると、妙に納得させられてしまうから不思議だ。
フィーチャリング・ヴォーカリストは曽我部恵一、川辺素(ミツメ)、畳野彩加(Homecomings)、 井上陽介(Turntable Films)という4人。四者四様の歌の世界が広がっており、12年ぶりの門出を祝福している。いずれも普段の彼・彼女たちとも異なる表情を見せており、プロデューサーとしてのHANDSOMEBOY TECHNIQUEの手腕にあらためて唸らされる。なかでも「抱きしめた」における曽我部恵一の淡い歌唱は絶品だ。
世界の醜さばかりを思い知らされるこの時代、奇跡のようなこのポップアルバムは一種の救いとなるかもしれない。世界はまだこんなにも美しい。たとえひとときの幻だとしても、このアルバムはそう信じさせてくれるのだ。
文:大石始
HANDSOMEBOY TECHNIQUE『TECHNIQUE』
2021年6月9日(水)
Track:
1.White Law
2.Melodies
3.Answer
4.スロウフィッシュ
5.When You're Gone
6.Long Slow Distance
7.Wishing for Your Love
8.Somewhere Far Away
9.A Light Hits The Gloom
10.抱きしめた
試聴はこちら
@HandsomeboyTech
@kanotenmeix
Official YouTube Channel
HANDSOMEBOY TECHNIQUEは、HALFBYらと共にそうしたSECOND ROYALのレーベルカラーを形成してきたアーティストである。彼自身、もともとDJと並行してバンド活動を行い、2005年の『Adelie Land』、2009年の『Terrestrial Tone Cluster』といったオリジナル・アルバムでは、さまざまなヴォーカリストも招きながらポップなダンストラックを作り上げてきた。現代ではDJが生楽器を使用してバンド的方法論によるビートメイキングを行うことは当たり前のものとなったし、バンドがダンスミュージック的な要素を取り込むことも珍しくない。「バンドとDJのカルチャーを横断」という物言い自体がえらい古臭く感じるほどだ。だが、SECOND ROYALはそうしたスタイルを2000年代初期の段階で打ち出しており、その象徴がHANDSOMEBOY TECHNIQUEだったのだ。
実に12年ぶりとなる新作『TECHNIQUE』は、万華鏡のように次々に表情を変えていく「White Law」で幕を開ける。冒頭で鳴り響くのはストリングスの調弦音。そこからHANDSOMEBOY TECHNIQUE印のポップワールドが一気に華開く。ストリングスに乗って高度を上昇させていく「Answer」や「Wishing for Your Love」の疾走感、チカーノ・ソウル的な香りも漂う「When You're Gone」の甘さなど、どれもポップ職人としてのHANDSOMEBOY TECHNIQUEの顔が伺えるが、いずれも心地良さに押し流されることはない。イージーリスニング的でポップなダンスアルバムは2000年代以降星の数ほどリリースされてきたが、彼の作品世界はそうしたイージーリスニング作品とは基本的に異なるものだ。
先ごろ公開されたプレイリストでは、HANDSOMEBOY TECHNIQUEの愛聴曲が45曲選ばれている。これを聴いていると、彼の音楽世界の背景に広がるものの豊かさが実感できるだろう。ダイナソーJr、エリック・カズ、サイモン・フィン、ピーター・ゴールウェイ、コモドアーズ、ヴァン・ダイク・パークス、スタックリッジ、大江千里、Qティップ、ストローブス......ジャンルはあまりに幅広いが、「HANDSOMEBOY TECHNIQUEの愛聴曲」としてそのラインナップを見返してみると、妙に納得させられてしまうから不思議だ。
フィーチャリング・ヴォーカリストは曽我部恵一、川辺素(ミツメ)、畳野彩加(Homecomings)、 井上陽介(Turntable Films)という4人。四者四様の歌の世界が広がっており、12年ぶりの門出を祝福している。いずれも普段の彼・彼女たちとも異なる表情を見せており、プロデューサーとしてのHANDSOMEBOY TECHNIQUEの手腕にあらためて唸らされる。なかでも「抱きしめた」における曽我部恵一の淡い歌唱は絶品だ。
世界の醜さばかりを思い知らされるこの時代、奇跡のようなこのポップアルバムは一種の救いとなるかもしれない。世界はまだこんなにも美しい。たとえひとときの幻だとしても、このアルバムはそう信じさせてくれるのだ。
文:大石始
RELEASE INFORMATION
HANDSOMEBOY TECHNIQUE『TECHNIQUE』
2021年6月9日(水)
Track:
1.White Law
2.Melodies
3.Answer
4.スロウフィッシュ
5.When You're Gone
6.Long Slow Distance
7.Wishing for Your Love
8.Somewhere Far Away
9.A Light Hits The Gloom
10.抱きしめた
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