SENSA

2021.06.11

幾多の声が織りなす幻想的な夜明け「HANDSOMEBOY TECHNIQUE」-Highlighter Vol.075-

幾多の声が織りなす幻想的な夜明け「HANDSOMEBOY TECHNIQUE」-Highlighter Vol.075-

音楽だけでなく、どのカルチャーも共通点やつながりがあるということをコンセプトにしているSENSA。INTERVIEWシリーズ「Highlighter」では、アーティストはもちろん、音楽に関わるクリエイターにどのような音楽・カルチャーに触れて現在までに至ったか、その人の人となりを探っていく。
Vol.075は、DJ/トラックメイカーとして活動し、海外でも高い評価を受ける森野義貴のソロプロジェクトHANDSOMEBOY TECHNIQUEを取り上げる。
6月9日にリリースされた12年ぶりのフルアルバム『TECHNIQUE』は、曽我部恵一を迎えた「抱きしめた」、ミツメの川辺素を迎えた「Long Slow Distance」といった昨年デジタルリリースされた2曲をはじめ、畳野彩加(Homecomings)、井上陽介(Turntable Films)ら、国内ボーカリストを迎えた楽曲を収録。多彩なルーツが滲む全10曲には、森野のメロディーメーカー、トラックメーカーとしてのセンスが光る。

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活動を始めたきっかけ
10代後半~20代前半、バンドで月に1回ライブハウスでライブをしながら、週に1回クラブでDJをしてる頃に、サンプラーとシーケンサーを買って曲を作ってみてたら、DJとして知り合った現HALFBYの高橋君に「今度、京都でSecond Royalってレーベルが始まるんだけど、森野君って曲作れるんでしょ?なんか作って、レーベルのコンピに参加しない?」と誘われたのがきっかけです。もしあの時、高橋君に誘われていなかったら、今の僕はないと思います。きっと今頃バンドで大成功して、女優と結婚していたと思うので、高橋君が悪いと思います。

影響を受けたアーティスト
一番影響を受けたのは中学1年の時に初めて聴いた日本のバンドNewest Modelだと思います。彼らは元々BoredomsやOff Mask 00なんかとも対バンしていた大阪のパンクバンドでしたが、その後、サイケやニューオリンズ、ファンク、アイリッシュ・トラッド、ラテンなどを取り入れ、80年代後半~90年代初頭の日本の音楽シーンではかなり浮いていた印象です。メジャーデビューアルバムを買った時に、白黒コピーで作られた冊子が特典として付いていて、そこには「この曲を聴け!」という命令と共に、1950年代から80年代までのロックやソウルのアーティストと曲名がびっしりと書かれていました。そして僕はそこに記されていたアーティスト達に興味を持ち、CDを買い集め、夢中になっていったのです。もし、Newest Modelと出会わなかったら、僕はVevet Undergroud13th Floor ElevatorsClashCurtis MayfieldP-FunkPublic EnemyPrimal ScreamFlipper's Guitarも聴いていなかったと思うので、今の僕はないと思います。きっとB'zとかゆずを聴いて、そういうのを聴いている可愛い女の子と付き合って結婚していたと思うので、Newest Modelが悪いと思います。





注目してほしい、自分の関わった作品
関わったというか、関わってないとおかしい僕の新譜『TECHNIQUE』には、「参加してくれたアーティストと僕のおかげで完成した僕好みな曲」だけが収録されています。参加アーティストは「僕が好きなアーティストで、たぶん僕のことが嫌いではないだろう」と思った人に依頼しました。参加してくれたので、おそらく僕のことを嫌いではないのだろうと思っています。もし依頼して断られた人がいたら、たぶんその人は僕のことが嫌いなので、こっちもその人のことを嫌いになるつもりだったのですが、誰にも断られなかったので良かったです。



その他の「自分の関わった作品」は気に入ってるものばかりなので紹介したいところですが、いっぱいありますので、「自分に関わってくれた人の作品」を紹介させて貰っても良いでしょうか。今回のアルバムに参加してくれているか方々の作品です。

曽我部恵一さんは、初めてお会いした時に物販のTシャツをプレゼントしてくれて「ははーん、この人は僕の事を嫌いではないな」と思ったので依頼しました。


Homecomingsの方々は、レーベルメイトなので会う機会も多く、会話してる時に目を合わせてくれていて「ははーん、この人達は僕のことを嫌いではないな」と思ったので依頼しました。


Turntable Filmsの井上陽介さんは、これまで数え切れないくらい一緒に酒を飲んだし、ほぼ毎週会ってた頃もあったので「オマエが俺のこと嫌いだったらびびるわ」と思って鼻糞ほじりながら依頼しました。


ミツメの川辺素さんは唯一実際にお会いしたことがないのですが、「会ったこともないのに嫌われてたら僕相当やばいだろ」思って依頼しました。


共同プロデューサーのHALFBYの高橋孝博さんは、まあ、普通に依頼しました。



ミックスとマスタリングの明石聡一郎さんは、今までの全作品でミックスをお願いしていて、普通に10代からの友達なので、いつも通りな感じです。前作では、ミックスを頼んだのに、ドラムが入ってない曲に勝手にドラムを入れて返してきました。しかも変な所から入り始めて、一瞬ちょっと変拍子の曲みたいになってました。面白いからそのまま収録しました。「Twilight Blue」という曲です。



アートワーク全般のTone Twilightの江森丈晃さんは、江森さんの音楽もデザインも昔から大好きだったのですが、何年か前に僕がうまい棒を食べながら「うまい棒って棒じゃないよね筒だよね」とツイートしたところリプをくれたので「おお、あの江森さんがリプをくれるとは......さては、僕のことを嫌いではないな」と思い、これまでの自分のCDを送りつけたら、それに対しての感想までくれたので「ははーん、やはり嫌いではないな」と思って依頼しました。うまい棒のおかげです。



プレイリスト「HANDSOMEBOY TECHNIQUEが好きな曲 #2」
テーマはタイトル通り。昔から好きな曲を中心に、最近好きになった曲、アルバム『TECHNIQUE』に参加してくれたアーティストの曲までを選曲してます。




今後挑戦してみたいこと
挑戦ではないのですが、ヨーロッパのどこかの国のレーベル?配信会社?が「うちから何かリリースせんか?」と言ってきてるそうなので、新曲作ってリリースしてみたいと思います。


カルチャーについて

触れてきたカルチャー
10代の頃は所謂サブカルでしょうか。当時の僕にとってのサブカルとは根本敬とかガロとかそういったものですが。裸のラリーズとかJohn Zornとか聴いて山崎春美とかほぶらきんとかを聴いたりして、今考えるとかなりおっちょこちょいな感じです。そして20代前半の頃はさらにおっちょこちょいだったので、ガルシア・マルケスとかのラテンアメリカ文学を読んだり、フランス映画や香港映画を観たりしてました。黒歴史です。

今注目しているカルチャー
カルチャーなのか分からないですが、5年位前からアニメをほぼ毎日観るようになりました。最初のきっかけは覚えてないのですが、「何かアニメ観たいなあ」とふと思って検索して、「おすすめアニメトップ100」みたいなブログを見つけて、所謂名作みたいなのを上から順に観ていくのが楽しくなった、というのが観続けるようになったきっかけでしょうか。まあ、だいたいそういったブログとかでオススメされてる1位、2位は『コードギアス』か『シュタゲ』とかなので、まずそういったものを観てみたら、凄く面白くてそのまま色々と観るようになった感じです。


そして最近はゲームです。アニメとゲームが好きな40代ってもう終わってる気がしますが、僕、音楽作れるから。CD出したりしてるから。どうだ!これはセーフでしょう。たぶん。ゲームのほうのきっかけは分かります。2017年です。発売直後の『ブレス・オブ・ザ・ワイルド』を、200時間くらいやった後はまたしばらく何もやってなかったのですが、去年くらいから何かしらずっとやってます。これもまた検索して評価が高いものを探し始めたのですが、2ちゃん、じゃなくて、5ちゃんのそういうスレで絶対出てくる『Slay the Spire』をはじめ、インディーのゲームも面白いということを知ったりして、楽しくなって色々買い始めた感じです。




RELEASE INFORMATION
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HANDSOMEBOY TECHNIQUE『TECHNIQUE』
2021年6月9日(水)
視聴はこちら

PROFILE
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HANDSOMEBOY TECHNIQUE
2004 年のデビュー後すぐにスウェーデン最大の屋内フェスに日本人初アーティストとしてゲスト出演、ツアーに併せて国営放送やカルチャー誌が軒並み特集を組むなど、ヨーロッパを中心に海外で高い評価を受ける。
2005年、1stアルバム『ADELIE LAND』、2009年、2ndアルバム『TERRESTRIAL TONE CLUSTER 』とリミックスアルバム『DISCOMMUNICATION BREAKDOWN』をリリース。
リミキサーとしてもDIANA ROSSやPIZZICATO FIVEなど、国内外のアーティストを手掛けており、CM音楽制作等も多数おこなう。
2021年、前作から約12年ぶりとなるニューアルバム『TECHNIQUE』をリリースした。

LINK
オフィシャルサイト
@HandsomeboyTech
@kanotenmeix
Official YouTube Channel

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