SENSA

2020.12.31

DENIMSという青春の終わりと始まりが交差した、現体制ラストライブ「僕たちは新しい未来を切り開いていく」

DENIMSという青春の終わりと始まりが交差した、現体制ラストライブ「僕たちは新しい未来を切り開いていく」

DENIMSが12月27日に大阪・BIGCATで、ワンマンライブ『MAT-TUN TO THE FUTURE』を開催した。

松原大地(Ba)の脱退前ラストライブであるこの日は昼夜2部制で実施され、正真正銘、このメンバーで音を奏でる最後の舞台となった夜の部も、Sly & The Family Stoneの「Sing A Simple Song」のSEを背に、気負うことなくふらりとステージへと現れた4人。「BIGCAT、お元気ですか~!」(釜中健伍・Gt,Vo)と開口一番、Kula Shakerの名曲「Hey Dude」をもじった岡本悠亮(Gt)のギターリフから江山真司(Dr)のタイトなドラムソロへと流れ込んでの「たりらりら」と、1曲目から完全に仕上がっているDENIMSにフロアは早くも揺れる。続く「NEWTOWN」の疾走感とコーラスワーク、「Goodbye Boredom」のリラクシンでハッピーなリズムにオーディエンスも思うがままに身を委ねるなど、当日はコロナ禍に対応した立ち位置指定のオールスタンディングで行われたが、物理的な距離をものともしないグッドヴァイブで、あっという間に心が満たされていく。

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「『MAT-TUN TO THE FUTURE』、お越しいただきありがとうございます! 本当に本当に、まっつん(=松原)は今日がラストなんで。DENIMSの歴史が詰め込まれたセットリストで、最後まで楽しんでいってください!」(釜中)

「EIEIEI」の小気味いいカッティングに身を任せ、サビのリフレインとシンクロするようにオーディエンスの手が上がる......こんな何げない景色も、同じ空間で味わえる1分1秒が今は愛しい。そんな想いのさ中、本日の主役である松原にスポットが当たると、会場からは大きな拍手が湧き起こる。パープルの照明に包まれた「DIM」では、昨年解散した盟友Sawagiの代表曲「Motor Pool Is Not Dead」の印象的なフレーズをさらりと織り交ぜるなど、岡本が随所で潜り込ませる音楽愛溢れるオマージュがたまらない。

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「DENIMSを語る上で外せない、Sawagiとのマッシュアップをお送りしました。結構今みたいな小ネタとか、むっちゃ昔の曲とかもやるんで、この半年ぐらいで僕らのことを知った人には何のこっちゃ分からん曲が何曲かあるかもしれないですけど(笑)、関係なく楽んでもらえますか? 最後まで楽しめますかー!?」(岡本)

「飛沫を飛ばさないで楽しめる方法として、ちょっとステップするぐらいは良いらしいので。あとは声を出したくなったら拍手で応えてください!」(釜中)

2人のMCを受け、ステージもフロアも一体となって左右にステップした「DAME NA OTONA」では、背伸びせずに日々を彩るダンスナンバーがゆっくり身体に沁み込んでいく。性急なビートに背中を押される「SUPERSTAR」では、2本のギターがグッドメロディをかいくぐり、せめぎ合い、熱を帯びていくような展開で、曲間を空けずにすぐさま始まった「fools」といい、松原の最後の舞台に1曲でも多く届けたい、いや、一緒にプレイしたいとでもいうようなムードが何ともグッとくる。そんな気持ちも全て分かっているかのようなタイミングでの「モータウンサイクルダイアリーズ」は、DENIMSというバンドワゴンの青春を描いたような世界観とドンピシャで、バンドの歴史が走馬灯のようによみがえるセットリストの流れには、DENIMSの音楽に生で浸ることのできる喜びと、このグッドミュージックが鳴り止む頃には松原がいなくなるという現実との狭間で、言葉にできない感情が何度も胸を突き上げる。ノスタルジーを引きずったメロウな「BENNY」では松原の口笛ソロも交え、1曲、また1曲とかみしめながら聴かせていく4人。

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「まっつんもあと数十分でDENIMSじゃなくなるわけやけど、この際やから何か秘密にしてたこととかを言ったら?(笑)」(岡本)

「弦の張り方を知らんかった。今も合ってるのかどうか分からない(笑)。あとエフェクターも1つも分からへん。必要ないんじゃなくて、使い方が分からへんまま10年(笑)」(松原)

「あと楽屋でめちゃくちゃスラップするタイプのべーシストを下に見てるよな?(笑)」(岡本)

「何か"どや!"みたいにするやん? 好かんわ~(笑)。でも、曲が始まったらやらへんねん!」(松原)

「江山も言う?」(岡本)

「今浮かんだけど、マジで言われへんやつやわ(笑)」(江山)

MCでは、まるで今日でメンバーが脱退するとは思えない、たわいないやりとりに会場も大爆笑。後半戦の幕開けに釜中が鍵盤にスイッチして聴かせた「Marching Band!!!」では、ユニゾンのパートでお互いに目線を送り合う姿に、4人が重ねてきた時間を垣間見る。再び釜中がギターに持ち替えメンバーを1人ずつ紹介し、「この4人でやるのは今日が最後です」と改めて語り、「INCREDIBLE」では丁々発止の掛け合いでグルーヴの頂を一気に駆け上がっていく。その後も、みずみずしいハーモニーとバンドサウンドでBIGCATを包囲した「さよなら、おまちかね」、メランコリーなメロディながら力強いメッセージとエモーショナルなギターが勇気づけてくれる「Rocinante」と、DENIMSの豊潤なるアーカイブから惜しみなく楽曲を披露していく。すなわちそれは、松原と共に歩んできた音楽人生に他ならない。

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「本当にもうあとちょっとで、まっつんのバンド人生が終わるんですけど、せっかく皆さんも来てくれたので、まっつんからちょっと喋ってもらおうかなと」(釜中)

「来ていただいた皆さんと、会場と、運営スタッフと、僕を送り出すと決めてくれたメンバーにとても感謝しています、ありがとうございます! 僕がステージに立つことはなくなるんですけど、僕もみんなと一緒にDENIMSを見て楽しむ側に回るので、仲良くしてください(笑)。何かもう......ありがとうしか言えないのが悔しいというか。こんなご時世になって、周りの人の大切さが本当に分かったと思うんです。結構、人って簡単にいなくなるなとか考える時間もあって......みんなも周りの人を大切に、自分ももっと大切にしてください。また元気な姿で会いましょう」(松原)

FM802の9月度ヘビーローテーションに抜擢されたことも記憶に新しい「I'm」では、釜中が再び鍵盤で美しいメロディを奏で、お次はその軽やかなサウンドに身も心も躍る「Crybaby」と、いよいよ終わりの近づいたライブをさらにドラマチックに染め上げていく。

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「今日のセットリストはまっつんが考えてくれて、だいたいリリース順に昔の曲から順番にやってきて。まっつんがやめるという話が出たのは去年の今頃ぐらいやったんですけど、そこから1年間、コロナ禍で一番大変な時期にツアーとかリリースも一緒にやってくれたんです。この1年だけじゃなくて、(前身バンドの)AWAYOKUBAから換算したら10年ぐらいか......本当にありがとうございました。去年やめる話が出てから、まっつんのことをイメージして作った曲を2曲やって終わりたいと思います」(釜中)

その曲のタイトルが「そばにいてほしい」とは...。全編を通して湿っぽさはなく進行してきたとはいえ、そこはかとなく漂う寂しさを受け入れて、そこに集ったみんなで松原を第二の人生へと見送る。優しいコーラスと切ないメロディが胸を締め付け、岡本の泣きのギターが高ぶる感情を増幅させ切った後、ついにそのときが来てしまった...。本編を締めくくったのは、現体制最後の作品となった、その名も「LAST DANCE」。"ラストダンス/泣かないでいて/終わりから始まっていく"。DENIMSとして過ごしたかけがえのない時間に、それぞれが手にした道しるべ。DENIMSも、松原の人生も続いていく。4人の新たな旅立ちの日にこれ以上ないベストソングを捧げ、手を振りステージを去る松原にひときわ大きな拍手が送られる。

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鳴り止まない拍手に応えたアンコールでは、「まっつんは今日で抜けちゃうんですけど、僕たちは僕たちでまたすぐ動いていこうと思ってまして、来年3月にツアーを決めました」(釜中)と、ドミコとのクアトロツーマンツアー『東名阪 Split 2man tour "wish you were here" vol.2』の告知を。さらには、「来年から一緒にやってもらう新メンバーを交えて1曲やってもいいでしょうか?」(釜中)と、2021年よりSpecial Favorite Musicの土井徳人(Ba)が正式メンバーとして加入することを報告し、どよめきの真っ只中で新生DENIMSとして「swing swing」を演奏するというまさかのサプライズ! 別れを惜しむ間もない新たな出会いにオーディエンスも心地良く翻弄されながら、「でも、今日は『MAT-TUN TO THE FUTURE』なんで最後はまっつんと、あと2曲やっていいですか?」(釜中)と、再び松原を迎えてAWAYOKUBA時代からの楽曲「ティーンエイジ」、ライブ鉄板「Alternative」と畳み掛け、シメのブレイクではLed Zeppelinの「Black Dog」を入れ込むなど、最後まで躍動感と遊び心いっぱいに駆け抜けた。

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ここでライブが終わるかと思いきや、昼夜2部で計40曲以上演奏してきたにも関わらず、まだまだステージを降りようとしない4人。ここで、「まっつんのフューチャーに役立つであろうものを、僕らから選んでプレゼントします!」(岡本)とメンバーから包丁一式が手渡され、釜中が突如手紙を読み上げ始める。

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「20代から30代の、人生で一番青春してる時期をDENIMSに捧げてくれて、コロナ禍のこの1年間もツアーやリリースを、4人でしっかりDENIMSをしてくれて、ホントにありがとう! こんな円満な脱退は他にはあまりないと思います。まっつんは感情や意見をあまり表に出さないように見えますが、実は人一倍我を通すし、しっかりポリシーのある人だと思います。その我を通すために裏でたくさん努力もしてきただろうし、べースプレイも持ってるグルーヴもホントに天才だと思います。だから惜しい気持ちもあるし、寂しい気持ちもあるけど、僕たちは僕たちで新しい未来を切り開いていくので、まっつんも"メシ堅気"(=料理人)として思いっ切り進んでいってください。『ODD SAFARI』やイベントではフードとして呼ぶと思うので、僕たちのライブのときは仕事を放っぽり出して、最前列でライブを見てください(笑)。今までありがとうございました!」(釜中)

その言葉を受け松原も、「僕からも渡したいものがあるんでいいですか? 僕のお守りというか、ずっと持ってたデニムの切れ端があるんですよ。これを4等分してみんなに......某海賊漫画みたいに(笑)、4人で1つであったことを示すような証拠をあげる」と、先ほどもらったばかりの包丁で生地を切断し、メンバーへと手渡していく。この微笑ましくも感動的な光景をオーディエンスがじっと見守る中、「まっつん。もうベース弾かんでいいから一緒に歌ってもらっていいですか? ピンボーカルみたいな感じで、甲本ヒロトみたいに(笑)。本当に本当にラストの曲です、ありがとうございました!」(釜中)と、再び新メンバーの土井を呼び寄せ、新旧メンバー揃い踏みで「わかってるでしょ」を熱唱! 演奏後は松原が花束をもらいつつMVを彷彿とさせるビンタを食らうなど(笑)、最後の最後まで笑顔の絶えない濃縮還元な約2時間で、DENIMSという青春の1つの終わりと新たな始まりが交差した、忘れられない一夜となった。

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文:奥"ボウイ"昌史
撮影:河上良(bit Direction lab.)、小川星奈


「MAT-TUN TO THE FUTURE」SET LIST
<第一部>
1.たりらりら
2.NEWTOWN
3.Goodbye Boredom
4.It s Me
5.NEMUTAI
6. DAME NA OTONA
7. SUPERSTAR
8. fools
9. モータウンサイクルダイアリーズ
10. BENNY
11. Marching Band!!!
12. W.S.J.H
13. 酔いは醒めないで
14. Rocinante
14. I' m
15. CRYBABY
16. そばにいてほしい
17. LAST DANCE
--
en.1 ティーンエイジ
en.2 Alternative

ーーーーーーーーーーー
<第二部>
1.たりらりら
2.NEWTOWN
3.Goodbye Boredom
4.EIEIEI
5.DIM
6.DAME NA OTONA
7.SUPERSTAR
8.fools
9. モータウンサイクルダイアリーズ
10.BENNY
11.Marching Band!!!
12.INCREDIBLE
13. さよなら、おまちかね
14.Rocinante
15. I' m
16.CRYBABY
17. そばにいてほしい
18.LAST DANCE
--
en.1 ティーンエイジ
en.2 Alternative
en.3 わかってるでしょ

DENIMS - "LAST DANCE"(Official Music Video)



RELEASE INFORMATION

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DENIMS「LAST DANCE」
2020年12月23日(水)
Format: Digital
Label: OSAMI Studio.

Track:
1.LAST DANCE

視聴はこちら


LIVE INFORMATION
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東名阪 Split 2man tour "wish you were here" vol.2

出演:DENIMS / ドミコ
3月20日(土)渋谷 CLUB QUATTRO
3月26日(金)名古屋 CLUB QUATTRO
3月27日(土)大阪梅田CLUB QUATTRO
*各地2部入替制にて実施。

<チケット情報>
オフィシャル先行(チケットぴあ/電子チケットのみ)
2020年12月28日(月) 12:00~2021年1月11日(月祝) 23:59
チケット受付URL : https://w.pia.jp/t/denims/


LINK
オフィシャルサイト
@DENIMS_official
@DENIMS_official
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