SENSA

2021.08.12

Panorama Panama Town、パノパナの日に開催「0808 REQUEST ONE-MAN LIVE & ???」で見た、転がり続けるバンドの物語

Panorama Panama Town、パノパナの日に開催「0808 REQUEST ONE-MAN LIVE & ???」で見た、転がり続けるバンドの物語

ロックバンドは「物語」を共有することで、リスナーとの絆を深めることがある。メンバーの人となりや心境の変化を知ることで、同じ時代を生きているという感情を抱くことができたり、曲の説得力が増すこともある。もちろん大前提にあるのは、音楽のかっこよさ、ライブのかっこよさであるべきだ。「物語」と「本質」が本末転倒になってはいけない。

そういう意味で、いまのPanorama Panama Townは、その歩んできた歴史を糧にとても強いバンドになったと思う。2019年末から2020年にかけてを振り返ると、岩渕想太(Vo/Gt)の喉のポリープ手術に伴う活動休止、初期メンバー田村夢希(Dr)の脱退を経て、リスタートを切るはずだった日比谷野音での主催フェス「パナフェス」は新型コロナの影響で中止になった。厳しい状況が続いたが、それでもバンドは止まらなかった。そして、バンド名の表記を、パノラマパナマタウンからPanorama Panama Townに改名。4月7日にリリースした最新EP『Rolling』は、彼らが敬愛するルーツミュージックへの愛情がピュアに受け継がれた新しいパノパナのロックサウンドになっていた。

先日8月8日の「パノパナの日」に下北沢 Flowers Loftで開催された自主企画イベント「"0808" REQUEST ONE-MAN LIVE & ???」は、まさにバンドの「物語」を大切にした一夜だった。

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イベントの前半はソロコーナー。一番手は岩渕の弾き語りだ。ポリープ手術を機に、歌を見つめ直したことで初めて向き合うことになったという、岩渕の弾き語りを見られる機会はまだ多くはない。「誰に音楽を届けていいかわらなくて落ちた時期に、そこと決別するために書いた曲」と紹介した「Sad Good Night」や、岩渕の父親も好きだという井上陽水「人生が二度あれば」のカバーなど、1曲ごとにその曲にまつわる説明を添えて歌を届けていく。なかでも、「たぶんバンドではやらない新曲」と紹介した「新宿」がよかった。岩渕が愛する新宿という街を、地上から空へ、過去から現在へと、時空を超えて描き上げたその歌には、「街」に特有の思い入れを持つ岩渕らしい視座が貫かれていた。

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続いては、タノアキヒコ(Ba)の友だち(という設定)のDJ Sick BoyによるDJタイム。「いちばん好きなバンドはパノパナです」と、あくまで友だち目線でパノパナ愛を語ると、くるり女王蜂スチャダラパーなどの楽曲に、サンプルやエフェクトを大胆にほどこした本格的なスタイルでフロアを踊らせた。単純に盛り上がる曲を選ぶというよりも、そこにタノ自身の個性が色濃く光るのがいい。終始、全身でリズムをとり、熱くプレイしていたが、パノパナの楽曲のときには、さながらステージ下手でベースを弾くときのように格別激しいアクションで魅せてくれた。

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ソロコーナーラストは浪越康平(Gt)の弾き語り。エリック・クラプトン「Hey Hey」をはじめ、岩渕をヘルプに迎え、最近ふたりで良さを再発見したというザ・ストロークスの「I Can't Win」のカバーを披露するなど、そのステージには生粋のミュージックラバーである浪越の音楽愛が全面にあふれていた。サポートドラムの大見勇人を迎えたクラプトンの「I Shot The Sheriff」では、「保安官を撃った。でも、副保安官を撃ったわけじゃない、という歌です」という細やかな楽曲解説で、大見を「そうなの!?」と驚かせつつ、最後の「俺ism」では、「MOROHAっぽくやります」と紹介して湧かせた。歌は若干不安そうにも見えたが、それを持ち前のギターテクとキャラクターで補う、親近感の湧くステージだった。

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いよいよ後半、バンド編成のリクエストワンマンだ。バント初となる楽曲の人気投票の結果を受けて、10位の「ラプチャー」にはじまり、1位までを順番で披露していった。

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「大学のときに作った曲です」と、意外なランクインに岩渕が驚きを口にした6位の「クラリス」や、「4人でバンドをやっていくぞ、という気持ちで作った曲です」と振り返った5位の「リバティーリバティー」、「自分たちがいちばん最初に作った曲」だからこそ、3位にランクインしたことをよろこんだ「ロールプレイング」など、人気投票の特性上、やはりトップ10は初期曲が多かった。そんな懐かしいセットリストだったせいか、タノと浪越が繰り出す中毒性の高いグルーヴのうえで、尋常じゃない処理速度で言葉をまくしたてる岩渕のボーカルや、ガレージロックとラップが泥臭く絡み合いが生むパノパナのロックサウンドは、彼らが2015年に初めてシーンに登場した頃から圧倒的にオリジナルだったなと、そのステージを見ながら改めて思う。

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「作ったときは好きじゃなかったけど、みんなが好きになってくれて、ライブで欠かせない曲になった」という2位の「MOMO」から、「めちゃくちゃ正直な曲だなと思います」と伝えた1位のメジャーデビュー曲「フカンショウ」まで。完全に「操作なし」の曲順でありながら、クライマックスにかけて最高潮の盛り上がりに達して、本編は終了。さらにアンコールでは、惜しくもトップ10からこぼれてしまったという「$UJI」と「ホワイトアウト」を追加で演奏した。この日、披露されたのは、それぞれ長さは違うけれど、バンドと共に歴史を重ねてきた楽曲たちだ。その思い出をフロアのお客さんと一緒に共有しながら届けたライブの最後に、最新曲「Strange Days」を届けた意味も大きかった。

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この日、イベントの最初にステージに登場したとき、岩渕は、「今日は(パノパナに)飽きて帰ってほしいと思います」と冗談っぽく言っていた。だが、ソロにはじまり、転換BGMもすべてパノパナで、バンドセットも含めて3時間超えという一夜を終えて思うのは、飽きるどころか、ますますパノパナの沼にハマってしまったということだ。Panorama Panama Townというバンドが歩んできたこれまでの「物語」と同時に、その根源が濃密に込められたイベントを体感することで、ますますパノパナが好きになった。そう思うことができたのは、「物語」のいちばん新しいページにある最新作「Strange Days」が、バンドの過去を美しく継承しながら進化した最高にかっこいい曲だったからに他ならない。

写真:上原 俊

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@panoramapanamatown
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