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2021.07.31
ハイライトは、「みんなの人生に少しの祝福があるように、僕はこれからも曲を作っていきます」と、キタニタツヤ自身が音楽を奏でる意味を伝えて演奏した「デマゴーグ」と「泥中の蓮」だった。神秘的な光がステージに降り注ぎ、キタニがエレキギターを弾きながら届けた穏やかなメロディラインに、バンドサウンドがそっと寄り添う。〈私は一人で歩くよ、この地獄を愛してみる〉。独白のように紡がれる歌には、理不尽の支配されたこの世界を地獄と呼び、それすらも愛して生きるという力強い想いが託されていた。その静謐な余韻を打ち消すように、ベースに持ち替えたキタニが唸る重低音で扇動し、ヘヴィなロックサウンドが炸裂した「泥中の蓮」につないだ。生きることは泥の中に咲く蓮のようなものと、鋭い筆致で綴るこの歌にはキタニ自身の死生観が色濃く滲む。この日、本編の締めくくりに披露された「デマゴーグ」と「泥中の蓮」は、共に最新アルバム『DEMAGOG』でも、最後に収録されていた2曲だった。どちらも通底する思想は同じだ。結局のところ、人間は誰もが本質的に孤独であり、この悪意に満ちた世界をひとりで生き抜かなければいけないということ。それを、「デマゴーグ」は祈りを込めて、「泥中の蓮」はファイティングポーズをとるように表現していた。
乱暴な言い方かもしれないが、本編で全14曲を披露したこの日は、このラスト2曲をいかに聴き手の心に深く打ち込めるか、に全身全霊を傾けるようなライブだったようにも思う。強要される正義に押しつぶされ、その苦悩から逃げ出そうとする「逃走劇」や「ハイドアンドシーク」といったダークな序盤を皮切りに、自分の居場所を求めて、刹那的な恋愛や快楽に身を委ねていく「人間みたいね」や「Cinnamon」「クラブ・アンリアリティ」といった洗練と色気が交錯するダンサブルな中盤。自分自身を雁字搦めに縛る呪いによって死を夢想する狂騒的なロックナンバー「夢遊病者は此岸にて」や「デッドウェイト」から、美しく儚いバンドサウンドに身を切るような別れを綴った「君のつづき」や「白無垢」、そして、混沌とした闇のなかで救済を求める「悪夢」へ。多彩なアプローチによって、現実で直面する理不尽や虚無感、喪失、後悔、苦悩という負の感情を徹底的に描き切った末に辿り着いた「デマゴーグ」と「泥中の蓮」。その希望の色はあまりにも眩しかった、真昼の太陽の下で灯すロウソクの火に意味を見出だすのは難しいが、暗闇の中で灯るロウソクの火は命をつなぐ救いの炎になる。
2014年頃にネットカルチャーの中から誕生したキタニタツヤは現在、ソロ、バンド、サポートベーシストと多方面に活動の場を広げている。彼が持ついくつかの音楽的拠点のなかで、もっとも純度の高い「キタニタツヤ」を体現するのが、ソロの、それもライブという表現においてだと思う。音源だけを聴くと、どこか厭世的で人間嫌いなアーティスト像を想像させるキタニだが、ステージに立ち、「この景色を見たかった!」と気さくに語りかけた姿は、純粋に音楽が好きな25歳の青年の等身大だった。MCでは、音楽を作る意味について、こんなふうに言っていた。「俺の音楽はいい曲を書いて終わりじゃない。この場でみんなで共有できて初めて成立して、俺の理想が実現される。ちゃんと俺は音楽をやってるって胸を張って言える」と。特にネットカルチャーと親和性の高い表現者の中には、制作のほうにプライオリティを置くタイプも多い印象があるが、キタニは現場主義を貫く。そんなキタニは、今回の東名阪ツアーのタイトルに「境界線」を意味する "BOUNDARIES" と名づけていた。他人と自分の間には両者を隔たる絶望的なまでの「境界線」がある。キタニタツヤはその「境界線」の際に立ち、それぞれの人生を祝福するための音楽を届けようとしている。それはきっと、ままならないことが多いこの世の中で、私たちを明日へとつなぎ止めてくれる光と呼んでいいものだと思う。
OPEN / 17:15 START / 18:00
11月3日(水・祝)大阪 BIGCAT
OPEN / 17:15 START / 18:00
11月6日(土)愛知 名古屋BOTTOM LINE
OPEN / 17:15 START / 18:00
11月14日(日)広島 SECOND CRUTCH
OPEN / 16:45 START / 17:30
11月16日(火)福岡 BEAT STATION
OPEN / 17:45 START / 18:30
11月20日(土)宮城 仙台LIVE HOUSE enn 2nd
OPEN / 17:15 START / 18:00
11月22日(月)東京 新木場USEN STUDIO COAST
OPEN / 17:45 START / 18:30
¥5,000(税込) *ドリンク代別途必要 ※整理番号あり
【学割あり】学生の⽅は会場にて学生証提示で¥1,000 キャッシュバック
チケット2次申し込み受付中
オフィシャル受付はこちら
受付プレイガイド : イープラス
受付期間 : 7月22日(木)18:00〜8月1日(日)23:59 (抽選)
当落発表日 : 8月4日(木)
枚数制限 : お1人様2枚まで・スマチケ限定
@TatsuyaKitani
@TatsuyaKitani2
@inunohone
Official YouTube Channel
乱暴な言い方かもしれないが、本編で全14曲を披露したこの日は、このラスト2曲をいかに聴き手の心に深く打ち込めるか、に全身全霊を傾けるようなライブだったようにも思う。強要される正義に押しつぶされ、その苦悩から逃げ出そうとする「逃走劇」や「ハイドアンドシーク」といったダークな序盤を皮切りに、自分の居場所を求めて、刹那的な恋愛や快楽に身を委ねていく「人間みたいね」や「Cinnamon」「クラブ・アンリアリティ」といった洗練と色気が交錯するダンサブルな中盤。自分自身を雁字搦めに縛る呪いによって死を夢想する狂騒的なロックナンバー「夢遊病者は此岸にて」や「デッドウェイト」から、美しく儚いバンドサウンドに身を切るような別れを綴った「君のつづき」や「白無垢」、そして、混沌とした闇のなかで救済を求める「悪夢」へ。多彩なアプローチによって、現実で直面する理不尽や虚無感、喪失、後悔、苦悩という負の感情を徹底的に描き切った末に辿り着いた「デマゴーグ」と「泥中の蓮」。その希望の色はあまりにも眩しかった、真昼の太陽の下で灯すロウソクの火に意味を見出だすのは難しいが、暗闇の中で灯るロウソクの火は命をつなぐ救いの炎になる。
2014年頃にネットカルチャーの中から誕生したキタニタツヤは現在、ソロ、バンド、サポートベーシストと多方面に活動の場を広げている。彼が持ついくつかの音楽的拠点のなかで、もっとも純度の高い「キタニタツヤ」を体現するのが、ソロの、それもライブという表現においてだと思う。音源だけを聴くと、どこか厭世的で人間嫌いなアーティスト像を想像させるキタニだが、ステージに立ち、「この景色を見たかった!」と気さくに語りかけた姿は、純粋に音楽が好きな25歳の青年の等身大だった。MCでは、音楽を作る意味について、こんなふうに言っていた。「俺の音楽はいい曲を書いて終わりじゃない。この場でみんなで共有できて初めて成立して、俺の理想が実現される。ちゃんと俺は音楽をやってるって胸を張って言える」と。特にネットカルチャーと親和性の高い表現者の中には、制作のほうにプライオリティを置くタイプも多い印象があるが、キタニは現場主義を貫く。そんなキタニは、今回の東名阪ツアーのタイトルに「境界線」を意味する "BOUNDARIES" と名づけていた。他人と自分の間には両者を隔たる絶望的なまでの「境界線」がある。キタニタツヤはその「境界線」の際に立ち、それぞれの人生を祝福するための音楽を届けようとしている。それはきっと、ままならないことが多いこの世の中で、私たちを明日へとつなぎ止めてくれる光と呼んでいいものだと思う。
LIVE INFORMATION
One Man Tour "聖者の行進"
10月31日(日)北海道 札幌SPiCEOPEN / 17:15 START / 18:00
11月3日(水・祝)大阪 BIGCAT
OPEN / 17:15 START / 18:00
11月6日(土)愛知 名古屋BOTTOM LINE
OPEN / 17:15 START / 18:00
11月14日(日)広島 SECOND CRUTCH
OPEN / 16:45 START / 17:30
11月16日(火)福岡 BEAT STATION
OPEN / 17:45 START / 18:30
11月20日(土)宮城 仙台LIVE HOUSE enn 2nd
OPEN / 17:15 START / 18:00
11月22日(月)東京 新木場USEN STUDIO COAST
OPEN / 17:45 START / 18:30
¥5,000(税込) *ドリンク代別途必要 ※整理番号あり
【学割あり】学生の⽅は会場にて学生証提示で¥1,000 キャッシュバック
チケット2次申し込み受付中
オフィシャル受付はこちら
受付プレイガイド : イープラス
受付期間 : 7月22日(木)18:00〜8月1日(日)23:59 (抽選)
当落発表日 : 8月4日(木)
枚数制限 : お1人様2枚まで・スマチケ限定
LINK
オフィシャルサイト@TatsuyaKitani
@TatsuyaKitani2
@inunohone
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