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2021.04.29
ライブ現場やインタビューの話の流れで、"ホールが似合うバンド" という表現をすることがある。その意味するところは、ライブハウスでモッシュやダイブをしたり、大声で叫ぶというよりは、歌や演奏にじっくりと耳を傾けたいバンド。あるいは、その広い空間に耐えうる歌の訴求力を持ったバンドといったところだと思う。最近で言えば、緑黄色社会やSHE'S、Saucy Dog、Novelbrightあたりは、小さなライブハウスでやっていた頃から、やがてホールに立つ姿を想像できるバンドだった。今回、このライブコラムに取り上げるthe shes goneも、そういう "ホールが似合うバンド" の1組だと思う。
略称であるシズゴにちなんで、the shes goneは 4月25日を「シズゴの日」と呼び、毎年主催ライブを開催している。2019年に吉祥寺Warp、2020年に渋谷CLUB QUATTROと回数を重ね、今年の会場は中野サンプラザだった。バンドにとっては初のホール公演。ステージに過度な装飾はなく、ホールらしい演出と言えば、楽曲とシンクロして色やかたちを変える照明だけ。その見せ方がシズゴにとても合っていた。(君への好きが溢れて) <頭には花が咲いている>と歌う「ふためぼれ」では花模様の光が揺れ、「ふたりのうた」ではサンプラの高い天井から美しい光が3人に降り注ぐ。「shower」ではミラーボールが放つ無数の光が会場中に飛び散った。シンプルに歌で勝負できるバンドだからこそ、バンドの地力でお客さんを魅了するホールデビューだった。
シズゴの歌は切ないラブソングが多い。......と書くと、少し言葉足らずになってしまうかもしれない。MCで兼丸(Vo/Gt)が「(自分たちは)恋愛バンドじゃない」と言っていたが、シズゴのラブソングは、いわゆる男女の恋模様だけをメインに扱うのではない、ということだ。人と人とが本気で理解し合おうとするうえで抱く葛藤がその本質であり、言うなれば、人間の歌なのだと思う。その歌は、切なくも、どこか人間くさい可笑しみが溢れている。
この日のライブで披露された曲で言えば、「サプライズ」。フラれながら<数年後の奥さんになれるつもりでいたんだ>と叶わなかった未来が頭をよぎったり、「最低だなんて」では、<わざとらしいけどあなたの嫌いなアイラインしている>と、矛盾する心を歌っていたりする。その何気ないワンフレーズに、不器用で、素直になれない、愛すべき人間像が浮かび上がってくる。
そしてそこに、マサキ(Gt)とDaishi(Ba)という個性なプレイヤーの演奏が加わることで、兼丸の歌が立体的になる。この日披露された「シーズンワン」も、「想いあい」も、1番から2番へと曲が進むにつれて、どんどん切なさが加速していった。シズゴの歌は、決して "いい歌" なだけでは終わらない。人間を描こうとするからこそ、音も言葉も、どこか歪で、予定調和にはなり得ないし、その一筋縄ではいかないアンサンブルの妙は、ライブという空間で強く浮き彫りになっていた。
結成5周年の「シズゴの日」ということで、ライブの終盤、MCで兼丸がバンドの歴史を振り返った。初めての彼女にフラれたときに世界が終わったような感じがした。その最悪な気分を託した歌が "あなた" のもとに残ってくれたらという想いを込めて、the shes goneというバンド名にしたこと。オーディションでマサキと演奏した「ラブストーリー」のこと。加入当時、Daishiがなかなか自分の意見を言ってくれなかったこと。最初は淡々と喋っていた兼丸だったが、途中からその声に嗚咽が混じりはじめた。「曲を作るときは、不安で......でも、「ふたりのうた」の歌入れのときに、いちばん最初にDaishiが「この曲いいね」って言ってくれて。......すごく心強くて。うん、うれしかった」。長かったようで短かったという5年間の想いを、時間をかけて集まったお客さんと共有した兼丸は、最後に「みんなの期待に応えられてるかはわからないけど。へたっぴでも、弱くても、これからもがんばりますので、よろしくお願いします」と頭を下げた。ロックバンドのフロントマンと言えば、「俺について来い」というような牽引力のあるタイプもいる。だが、そうじゃないタイプがいてもいい。兼丸には、シズゴには、だからこそ伝えられる歌があるのだと思う。
アンコールでは新曲「ラベンダー」が披露された。「僕らとしては明るい曲」「自分のなかの優しさを垣間見られた」、そう紹介された「ラベンダー」は、サビで、<好きになってく 君を好きになってく>というフレーズが何度も繰り返される。とても温かい歌だった。バンドにとって初挑戦となったホール会場でシズゴが見せた新たな一面。それは、最悪の悲しみからはじまったthe shes goneというバンドが、様々な感情を見つめながら、より愛情深く人間の歌を紡ぐバンドになっていく。そんな彼らのネクストステージのはじまりを告げるような歌だった。
撮影:kondoh midori
the shes gone「ラベンダー / ガールフレンド」
2021年5月26日(水)
UKCD-1196H1| UK.PROJECT
Track:
01.ラベンダー
02.ガールフレンド
※会場限定CDのみ「最低だなんて(room ver.)」収録
6/20(日) 福岡 BEAT STATION
6/21(月) 広島 CLUB QUATTRO
7/4(日) 仙台Rensa
7/15(木) 高松 DIME
7/16(金) 名古屋 Electric Lady Land
7/24(土) 札幌 PENNY LANE 24
チケット 全席指定 前売 3,500円(Drink代別)
一般発売 2021年5月29日(土)AM10:00~
@theshesgone
@the_shes_gone
Official YouTube Channel
略称であるシズゴにちなんで、the shes goneは 4月25日を「シズゴの日」と呼び、毎年主催ライブを開催している。2019年に吉祥寺Warp、2020年に渋谷CLUB QUATTROと回数を重ね、今年の会場は中野サンプラザだった。バンドにとっては初のホール公演。ステージに過度な装飾はなく、ホールらしい演出と言えば、楽曲とシンクロして色やかたちを変える照明だけ。その見せ方がシズゴにとても合っていた。(君への好きが溢れて) <頭には花が咲いている>と歌う「ふためぼれ」では花模様の光が揺れ、「ふたりのうた」ではサンプラの高い天井から美しい光が3人に降り注ぐ。「shower」ではミラーボールが放つ無数の光が会場中に飛び散った。シンプルに歌で勝負できるバンドだからこそ、バンドの地力でお客さんを魅了するホールデビューだった。
シズゴの歌は切ないラブソングが多い。......と書くと、少し言葉足らずになってしまうかもしれない。MCで兼丸(Vo/Gt)が「(自分たちは)恋愛バンドじゃない」と言っていたが、シズゴのラブソングは、いわゆる男女の恋模様だけをメインに扱うのではない、ということだ。人と人とが本気で理解し合おうとするうえで抱く葛藤がその本質であり、言うなれば、人間の歌なのだと思う。その歌は、切なくも、どこか人間くさい可笑しみが溢れている。
この日のライブで披露された曲で言えば、「サプライズ」。フラれながら<数年後の奥さんになれるつもりでいたんだ>と叶わなかった未来が頭をよぎったり、「最低だなんて」では、<わざとらしいけどあなたの嫌いなアイラインしている>と、矛盾する心を歌っていたりする。その何気ないワンフレーズに、不器用で、素直になれない、愛すべき人間像が浮かび上がってくる。
そしてそこに、マサキ(Gt)とDaishi(Ba)という個性なプレイヤーの演奏が加わることで、兼丸の歌が立体的になる。この日披露された「シーズンワン」も、「想いあい」も、1番から2番へと曲が進むにつれて、どんどん切なさが加速していった。シズゴの歌は、決して "いい歌" なだけでは終わらない。人間を描こうとするからこそ、音も言葉も、どこか歪で、予定調和にはなり得ないし、その一筋縄ではいかないアンサンブルの妙は、ライブという空間で強く浮き彫りになっていた。
結成5周年の「シズゴの日」ということで、ライブの終盤、MCで兼丸がバンドの歴史を振り返った。初めての彼女にフラれたときに世界が終わったような感じがした。その最悪な気分を託した歌が "あなた" のもとに残ってくれたらという想いを込めて、the shes goneというバンド名にしたこと。オーディションでマサキと演奏した「ラブストーリー」のこと。加入当時、Daishiがなかなか自分の意見を言ってくれなかったこと。最初は淡々と喋っていた兼丸だったが、途中からその声に嗚咽が混じりはじめた。「曲を作るときは、不安で......でも、「ふたりのうた」の歌入れのときに、いちばん最初にDaishiが「この曲いいね」って言ってくれて。......すごく心強くて。うん、うれしかった」。長かったようで短かったという5年間の想いを、時間をかけて集まったお客さんと共有した兼丸は、最後に「みんなの期待に応えられてるかはわからないけど。へたっぴでも、弱くても、これからもがんばりますので、よろしくお願いします」と頭を下げた。ロックバンドのフロントマンと言えば、「俺について来い」というような牽引力のあるタイプもいる。だが、そうじゃないタイプがいてもいい。兼丸には、シズゴには、だからこそ伝えられる歌があるのだと思う。
アンコールでは新曲「ラベンダー」が披露された。「僕らとしては明るい曲」「自分のなかの優しさを垣間見られた」、そう紹介された「ラベンダー」は、サビで、<好きになってく 君を好きになってく>というフレーズが何度も繰り返される。とても温かい歌だった。バンドにとって初挑戦となったホール会場でシズゴが見せた新たな一面。それは、最悪の悲しみからはじまったthe shes goneというバンドが、様々な感情を見つめながら、より愛情深く人間の歌を紡ぐバンドになっていく。そんな彼らのネクストステージのはじまりを告げるような歌だった。
撮影:kondoh midori
RELEASE INFORMATION
the shes gone「ラベンダー / ガールフレンド」
2021年5月26日(水)
UKCD-1196H1| UK.PROJECT
Track:
01.ラベンダー
02.ガールフレンド
※会場限定CDのみ「最低だなんて(room ver.)」収録
LIVE INFORMATION
全国ワンマンツアー「好きになってく TOUR 2021」
6/18(金) 大阪 Banana Hall6/20(日) 福岡 BEAT STATION
6/21(月) 広島 CLUB QUATTRO
7/4(日) 仙台Rensa
7/15(木) 高松 DIME
7/16(金) 名古屋 Electric Lady Land
7/24(土) 札幌 PENNY LANE 24
チケット 全席指定 前売 3,500円(Drink代別)
一般発売 2021年5月29日(土)AM10:00~
LINK
オフィシャルサイト@theshesgone
@the_shes_gone
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