SENSA

2021.03.02

Helsinki Lambda Club、突き抜けた遊び心の前提にあるもの -「MIND THE GAP!!」ツアーファイナル@恵比寿LIQUIDROOM-

Helsinki Lambda Club、突き抜けた遊び心の前提にあるもの -「MIND THE GAP!!」ツアーファイナル@恵比寿LIQUIDROOM-

Helsinki Lambda Clubのライブを恵比寿リキッドルームで見ました。

大阪・名古屋を経て、ツアーファイナルとなったこの日のライブの中心にあった作品は、昨年11月にリリースされた最新アルバム『Eleven plus two / Twelve plus one』。



この作品をひとことで言うなら、ヘルシンキの過去から現在、未来へとタイムトラベルするような1枚。前半は、バンドの過去~現在に焦点をあて、結成初期に色濃かったガレージロックを軸にしたエネルギッシュな楽曲が並びます。後半は、ボーカル橋本薫が覗き見してしまったバンドの未来がテーマ。「もしかしたら、こんな音を鳴らしているかもね」というような空想をもとに、エレクトロな打ち込みや現行のポップミュージックの影響を吞み込んだノージャンルな楽曲で彩られていました。
その作品は、こちらの予想の斜め上をゆくユニークなテーマ設定もさることながら、海外のインディーシーン界隈に対する愛情と実験精神に満ちた音作りが非常に丁寧で、これぞヘルシンキの到達点と言える作品だったからこそ、いかにライブで表現するのか、ワクワクしながら会場に向かいました。

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アルバムの一曲目「ミツビシ・マキアート」を皮切りに、ライブは進んでいきました。稲葉航大 (Ba)がロングヘア―を振り回してステージを暴れまわり、脱力感とエモーショナルをあわせもったバンドサウンドのなかで存在感を放つ熊谷太起 (Gt)の多彩なギター。ひたすら楽しげに、無邪気に、夢中になって演奏する3人の佇まいが自然とフロアへと伝播してゆき、お客さんもまた自由に体を動かして踊る。素敵な空間が出来上がっていく。コロナ禍のライブの新ルールでお客さんは声を出すことはできませんが、それがヘルシンキのライブの楽しさを減点する理由にはなりません。

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ひときわ会場が湧いたのは、中盤に繰り広げられた「Sabai」。アルバムで描く架空の未来では、ボーカル橋本が一時脱退するため、稲葉が作詞作曲をして、ボーカルを担当するという曲。この1曲のために、サポートバンドにnever young beachの巽啓伍(Ba)、カメラマンのマスダレンゾ、サウンドエンジニアの飯塚晃弘というバンドと親交の深い仲間たちを呼び込んだ演出は、おもしろいやら、かっこいいやら。完全にこちらの感情は迷子です。再びステージに戻った橋本が、「自分の愚かさに気づいたよ。やっぱりバンドっでサイコーだよね。へへっ」と、芝居っけたっぷりに言うセリフも痛快でした。
ヘルシンキがその作品やライブのなかで見せる遊び心には、表現者である以前に熱心なミュージックラバーであり続ける彼らの、音楽への多大なリスペクトと勤勉な探求心が大前提にあります。だからこそ何をやっても許される、そんな気がするのです。

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底抜けに楽しくて、ハッピーになれる。得体の知れない陶酔感に満ちたヘルシンキのライブでしたが、メッセージ性の意味で鮮烈な印象を残したのは、浮遊感漂うスローバラード「パーフェクトムーン」でした。『Eleven plus two / Twelve plus one』という作品について、もし何か外向きの想いがあるとしたら、と前置きをした橋本が、「世の中に違和感や生きづらさを感じている人に届いたらいいなと思う」と語り、そういうものを提示する曲として、「パーフェクトムーン」に繋ぎました。この曲で、<欠けた形が僕らのパーフェクトムーン>と歌われるフレーズは、互いに足りないものを補い合うふたりの関係性であり、完璧ではないからこそ美しい人間の在り様を表現しているのだと思います。

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突飛なアイディアと奔放なパフォーマンスで聴き手を翻弄しながら、随所で強い意志をもった言葉も突き刺してくる。これだから、Helsinki Lambda Clubというバンドは油断ならない。そのステージを見ながら、ああ、終わってほしくない、と心から思うライブでした。

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写真:マスダレンゾ


SET LIST
01. ミツビシ・マキアート
02. Debora
03. それってオーガズム?
04. ユアンと踊れ
05. Skin
06. IKEA
07. Happy Blue Monday
08. Sabai
09. ロックンロール・プランクスター
10. PIZZASHAKE
11. パーフェクトムーン
12. 眠ったふりして
13. Good News Is Bad News
14. Shrimp Salad Sandwich
15. マニーハニー
16. you are my gravity
17. 引っ越し
18. シンセミア
19. 午時葵
〜アンコール〜
20. しゃれこうべ しゃれこうべ
21. 何とかしなくちゃ
22. 宵山ミラーボール




RELEASE INFORMATION

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Helsinki Lambda Club『Eleven plus two / Twelve plus one』
2020年11月25日(水)
視聴はこちら


LINK
オフィシャルサイト
@helsinkilambda
@helsinkilambda
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