SENSA

2021.08.24

​​ひたすらに熱く、真っ直ぐに駆け抜ける正真正銘のロックバンド「alcatrick」

​​ひたすらに熱く、真っ直ぐに駆け抜ける正真正銘のロックバンド「alcatrick」

SENSAが注目するアーティストを紹介する「RECOMMEND」。4ピースロックバンドalcatrickを取り上げる。

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佐藤蓮之介(Vo.)、ヨシダアキラ(Gt.)、村尾ケイト(Ba.)、くわはられん(Dr.)の4人からなるロックバンド、alcatrick。高校の同じ軽音部で結成され、2019年8月、下北沢を拠点に本格的にライブ活動を開始した。2021年2月にはバンドとして初となるワンマンライブを開催し、4月からは3ヶ月連続となるデジタルシングルリリースが発表。熱い想いがそのまま音に乗り、リスナーの心にダイレクトに刺さるような音楽性が魅力的で、スピードを一切緩めることなくアグレッシブに活動する、今注目のロックバンドだ。

alcatrick「201」


2020年3月25日にリリースされた1st EPの「qualia」より、シングルカットされた「201」(読み:ニーマルイチ)は、別れを歌うロックバラードとなっている。エネルギッシュな彼らのイメージとは対照的な空気感で、歌詞の世界観にマッチした男女2人のMVも非常に切ない。特に2番のサビの最後、〈じゃあまたね〉の後に続く、楽しかった日常を回想するようなシーンは、2人の笑顔や楽しそうな姿が美しくも切なく、そこから迎えるラストスパートに向けて聴き手の感情をグッと惹きつけている。そして〈ねえありがとね/私ね/このまま夜を迎える〉というラストのフレーズでは、転調したメロディに厚みを増したサウンドが乗り、アウトロでヨシダアキラ(Gt.)のギターソロが痛烈に響く。まるで1つの映画でも観たような充足感でしばらくは余韻に浸りたくなる、真っ直ぐなロックバラードだ。とてもエモーショナルで、心にグッとくる1曲。

alcatrick「LUCY」


"光"を意味する「LUCY」は初めて試みたデジタルシングル「L」のリードトラックで、現代社会における未来への期待と絶望をテーマに、その対比について言及している作品だそうだ。MVでは全身黒づくめの衣装と全身真っ白の衣装の2パターンがあり、期待と絶望のコントラストを表しているようにも感じる。疾走感あるサウンドと臨場感溢れる映像が、絶望に怯むことなく、未来への期待めがけて駆け抜けていく彼らの果敢な在り方を表しているようで輝かしい。異例の状況下で1年以上を過ごした今、我慢の限界が来たり、何かを諦めたくなったり、意気阻喪してしまう人も多いのではないだろうか。「LUCY」はそんな世界に光を刺すようで、聴き手を鼓舞する楽曲となっている。

alcatrick「戦線を衝く」


3カ月連続デジタルリリースの第1弾となった「戦線を衝く」は、エッジの効いたボーカルが大きな存在感を出していて、熱を帯びたロックサウンドが彼らの持ち味を存分に発揮している。この曲について佐藤蓮之介(Vo.)は「インディーズロックバンドシーンの前線で、自身だけではなく、戦ってきた仲間たちへの想いも込められている」と語ったそうだ。広大なロケーションが美しく鮮やかなMVでは、時折流れる戦争を示唆するような映像や、ギターを気怠そうに引きずり歩く姿が印象的で、何かに抗ったり荒んだ心情になりがちなご時世を彷彿とさせる。しかし、そんな心情を振り払うように〈終わらないよ/止まらないよ〉と叫ぶ彼らの姿は、凛としていて美しい。どんな状況であろうとも音楽を鳴らし続けるという決意を示したような渾身のこの楽曲が、この先もずっと音楽シーンを照らしてくれるだろう。

彼等の音楽は、どんな暗闇の中でも小さな光を見つけだし、その光に向けて一切の迷いもなく駆け抜けていくようだ。本格的な活動を始めて一年足らずでコロナ禍になり、初期衝動やぶつけどころのないエネルギーが余っていたかもしれない。しかし、そのエネルギーを見事音楽活動に余すことなくぶつけ、今できることに注ぎ込んでいるように思える。放出しきれず溜まったパワーを不満や否定的に使うのは簡単だ。しかし、彼らはしっかりと肯定的なパワーに変え、音楽を生み出している。悶々とする日々でも曇りのない眼で世界を見据えているalcatrickの音楽が、世界を照らしてくれると期待したい。

文:髙橋夏央


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@alcatrick
@alcatrick_official
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