SENSA

2021.08.08

生粋のミュージックラバーたちが切り拓くロックの未来「Newdums」

生粋のミュージックラバーたちが切り拓くロックの未来「Newdums」

SENSAが注目するアーティストを紹介する「RECOMMEND」。今回は神戸発の4人組バンドNewdumsを取り上げる。

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Newdums「Naked」


先入観はいけないけれど、「神戸出身のバンド」と聞くだけで、「おっ?」と反応してしまうところがある。女王蜂黒猫チェルシーフレデリックFIVE NEW OLDw.o.d.The Songbardsなど。神戸は個性的なバンドを数多く輩出している。そして、とても音楽に対する愛情が深いバンドが多い。その理由をいつか考察してみたいな、と思ったりもするけれど、その話はさておき。
2015年に神戸で結成された4人組バンド Newdums。彼らが6月23日に発表したアルバム『N.N.N.』もまた、神戸のバンドらしいチャーミングな個性に溢れ、その隅々にまで生粋のミュージックラバーぶりが発揮された瑞々しいロックアルバムだった。
音源だけを聴くと、まず日本のバンドとは思えない「洋楽っぽさ」が第一印象。伊井祥悟(Vo/Gt)のブルージーな歌声と陽気なコーラスワークが絡み合う「Naked」は、90年代ブリットポップの趣を漂わせ、青春時代特有の、あの無駄で価値ある一瞬の輝きを切り取ったような、何とも言えない気だるさと鋭利さにぐっときてしまう。

Newdums「Myself」


『N.N.N』は全11曲が収録された、Newdumsの初となる全国流通盤だ。今作を聴くと、ロック、ポップミュージックの歴史を築いてきた様々なアーティストが頭をよぎる。ザ・ストロークスザ・リバティーンズアークティック・モンキーズのようなガレージロック・リヴァイバルの熱気、T・レックスのグラマラスなロックの色気と、テンプテーションズシュープリームスらのモータウン的なポップスの奥行き。それらを決して懐古趣味に終わらせるのではなく、いまっぽく再構築して鳴らしている。たとえば、「Myself」のチルでメロウなアプローチには現行のネオソウルの潮流に共鳴するムードもある。過去の膨大なディスコグラフィーと現在のトレンドを同列にキャッチできる新世代の感性で生み出されたアルバムは、様々なジャンルの匂いが1曲のなかに雑多に投影されていて、次の曲、次の曲と進むたびに目の覚めるような感動があった。

Newdums「Behind the door」


冗長な部分が何ひとつない完成度の高いアルバム。そのなかで、あえて個人的なフェイバリットをあげるとしたら、「Behind the door」だ。1曲目に収録されたインスト曲「Voices」から、曲間を区切らず、ひとつなぎで聴かせるアルバムのオープニングナンバー。この楽曲の歌詞に関して、伊井は「このコロナ禍の不穏さや苦しさ、そして希望が込められた楽曲です」とコメントを寄せている。軽やかに刻むスネアのビートとメランコリックなギターが織りなす美しいサウンドスケープ。それが急激に破壊され、シューゲイザー的なアプローチで混沌とした狂気を描く展開は、まさに人間の心に渦巻く光と闇をありありと活写するようなスリリングなアプローチだ。
Newdumsの音楽は、いい意味で節操なしに音楽を聴いてきたミュージックラバーとしてのかけがえのない体験が新しいオリジナリティにまで昇華されているものだと思う。「もはやロックはやり尽くされた」「新しい表現など生まれない」。そんなふうに言われることもあるこの時代にあって、彼らのような存在がきっと新しいロックの未来を切り拓いていくのだろう。

PROFILE

newdums_portrait_2021_1500.pngNewdums
神戸出身の英詞4ピースバンド。唯一無二の歌声とフックのあるメロディが魅力。
様々な音楽からの影響を受けた彼らの楽曲は、現代的な響きを持ちながらも、どこか懐かしさを感じさせる。

LINK
オフィシャルサイト
@Newdums
@newdums
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