2021.07.09
SENSAが注目するアーティストを紹介する「RECOMMEND」。今回は、京都発の7人組バンドWANG GUNG BANDを取り上げる。
WANG GUNG BAND「SUNDAY」
<今日は朝からどこへも行ってないなぁ>。WANG GUNG BANDの「SUNDAY」という曲は、そんな歌い出しではじまる。はっぴいえんどや山下達郎、松任谷由実といった70~80年代のニューミュージックの雰囲気をまとった「SUNDAY」のなかで綴られるのは、なにも事件の起きない穏やかな日常だ。"君"からのメールを待ち、進展することのないふたりの関係を思いながら、ぼんやりと感傷にひたる日曜の午後。そんな他愛のない光景が目に浮かぶ。
この曲を演奏しているWANG GUNG BANDは、浪漫革命でも活動する藤澤信次郎(Key/Vo)とベーシスト・小俣拓磨と企てた新バンド結成計画に、元バレーボウイズのネギこと杉本周太(Gt/Vo)が合流したところからスタート。その後、浪漫革命の大池奏太(Gt/Cho)や、ドラマー・田中涼太が加入。幾度かのメンバーチェンジを経て、キーボーディスト・奥田恵加、サックス奏者・浅岡華波が加入した、フォーク・ファンク・ソウルなど様々なジャンルをミックスし心地よく演奏する7人組のミクスチャーバンド。
7人の絶妙なバランスによって鳴らされるエバーグリーンなバンドサウンドと、杉本&藤澤というふたりのボーカリストによる立体的なコーラスワークも秀逸な「SUNDAY」は、思わず口ずさみたくなる普遍的なメロディと相まって、何とも言えないノスタルジーを駆り立てる。
「SUNDAY」について、「なにも事件の起きない穏やかな日常の歌」と書いたが、WANG GUNG BANDは、そういう歌の在り方をとても大切にしているような気がする。
昨年リリースされた1st EP『冬と猫』に収録されている「風を追いかけて」も、「冬の足音」も、歌われるのは本当に些細な日常のワンシーン。通い慣れたいつもの道を軽やかに駆け抜けてゆく、空想好きな少女の戯れを描いた「風を追いかけて」。海の見える街に立ち、冬の訪れに胸をふくらませる「冬の足音」。いずれも忙しない生活のなかでは取るに足らないものとして見過ごしてしまうような出来事かもしれないが、WANG GUNG BANDの音楽によって、鮮烈な意味を帯びていくように感じる。「風を追いかけて」の軽快なスネアやエモーショナルにむせび泣くエレキギターは主人公の少女の軽やかな足取りと高鳴る感情を代弁し、物憂げなピアノからはじまる「冬の足音」のドラマチックな展開は、季節はずれの海を眼前にした小さな胸の高鳴りをどんな言葉よりも雄弁に描いている。
所詮、私たちの日常はほとんどが事件の起きない平凡な日。でも、たしかに動いたはずの感情がそこにはある。それを丹念に拾い集め、決してなかったことにさせないのが、WANG GUNG BANDの音楽なのだと思う。
というわけで、今回はWANG GUNG BANDについて紹介した。彼らのオフィシャルサイトやYouTubeで使われているロゴには、漢字で表記した「湾環楽団」というバンド名の周りに、「最良音楽」「人柄好評」という四字熟語(?)が並んでいる。グッドミュージックを鳴らすいい人たち、という意味合いだろうか。そういうことを自分から言ってしまう感じも、不敵で人懐こくていいなと思う。とあるインタビューでは、「今年はアルバムを予定している」という杉本の発言もあったので、そちらも楽しみに待ちたい。
WANG GUNG BAND
京都で2020年に結成。Gt&Vo.杉本周太 Key&Vo.藤澤信次郎 Ba.小俣拓磨 Gt&Cho.大池奏太 Dr.田中涼太 Key.奥田恵加 Sax&Cho.浅岡華波 で構成される7人組のミクスチャーバンド。
等身大で日常的な風景のなかに垣間見える美しい瞬間をフォーク、ファンク、ソウルなど様々なジャンルをミックスし心地よく演奏する。
@wang_gung_band
@wanggungband
Official YouTube Channel
<今日は朝からどこへも行ってないなぁ>。WANG GUNG BANDの「SUNDAY」という曲は、そんな歌い出しではじまる。はっぴいえんどや山下達郎、松任谷由実といった70~80年代のニューミュージックの雰囲気をまとった「SUNDAY」のなかで綴られるのは、なにも事件の起きない穏やかな日常だ。"君"からのメールを待ち、進展することのないふたりの関係を思いながら、ぼんやりと感傷にひたる日曜の午後。そんな他愛のない光景が目に浮かぶ。
この曲を演奏しているWANG GUNG BANDは、浪漫革命でも活動する藤澤信次郎(Key/Vo)とベーシスト・小俣拓磨と企てた新バンド結成計画に、元バレーボウイズのネギこと杉本周太(Gt/Vo)が合流したところからスタート。その後、浪漫革命の大池奏太(Gt/Cho)や、ドラマー・田中涼太が加入。幾度かのメンバーチェンジを経て、キーボーディスト・奥田恵加、サックス奏者・浅岡華波が加入した、フォーク・ファンク・ソウルなど様々なジャンルをミックスし心地よく演奏する7人組のミクスチャーバンド。
7人の絶妙なバランスによって鳴らされるエバーグリーンなバンドサウンドと、杉本&藤澤というふたりのボーカリストによる立体的なコーラスワークも秀逸な「SUNDAY」は、思わず口ずさみたくなる普遍的なメロディと相まって、何とも言えないノスタルジーを駆り立てる。
「SUNDAY」について、「なにも事件の起きない穏やかな日常の歌」と書いたが、WANG GUNG BANDは、そういう歌の在り方をとても大切にしているような気がする。
昨年リリースされた1st EP『冬と猫』に収録されている「風を追いかけて」も、「冬の足音」も、歌われるのは本当に些細な日常のワンシーン。通い慣れたいつもの道を軽やかに駆け抜けてゆく、空想好きな少女の戯れを描いた「風を追いかけて」。海の見える街に立ち、冬の訪れに胸をふくらませる「冬の足音」。いずれも忙しない生活のなかでは取るに足らないものとして見過ごしてしまうような出来事かもしれないが、WANG GUNG BANDの音楽によって、鮮烈な意味を帯びていくように感じる。「風を追いかけて」の軽快なスネアやエモーショナルにむせび泣くエレキギターは主人公の少女の軽やかな足取りと高鳴る感情を代弁し、物憂げなピアノからはじまる「冬の足音」のドラマチックな展開は、季節はずれの海を眼前にした小さな胸の高鳴りをどんな言葉よりも雄弁に描いている。
所詮、私たちの日常はほとんどが事件の起きない平凡な日。でも、たしかに動いたはずの感情がそこにはある。それを丹念に拾い集め、決してなかったことにさせないのが、WANG GUNG BANDの音楽なのだと思う。
というわけで、今回はWANG GUNG BANDについて紹介した。彼らのオフィシャルサイトやYouTubeで使われているロゴには、漢字で表記した「湾環楽団」というバンド名の周りに、「最良音楽」「人柄好評」という四字熟語(?)が並んでいる。グッドミュージックを鳴らすいい人たち、という意味合いだろうか。そういうことを自分から言ってしまう感じも、不敵で人懐こくていいなと思う。とあるインタビューでは、「今年はアルバムを予定している」という杉本の発言もあったので、そちらも楽しみに待ちたい。
PROFILE
WANG GUNG BAND
京都で2020年に結成。Gt&Vo.杉本周太 Key&Vo.藤澤信次郎 Ba.小俣拓磨 Gt&Cho.大池奏太 Dr.田中涼太 Key.奥田恵加 Sax&Cho.浅岡華波 で構成される7人組のミクスチャーバンド。
等身大で日常的な風景のなかに垣間見える美しい瞬間をフォーク、ファンク、ソウルなど様々なジャンルをミックスし心地よく演奏する。
LINK
オフィシャルサイト@wang_gung_band
@wanggungband
Official YouTube Channel