SENSA

2021.08.13

憂いとポップス、唯一無二の世界観を織り成す「黒子首」

憂いとポップス、唯一無二の世界観を織り成す「黒子首」

SENSAが注目するアーティストを紹介する「RECOMMEND」。東京を中心に活動している3人組バンド黒子首を取り上げる。

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2018年7月結成の3人組バンド、黒子首(ほくろっくび)。もともと2人組のアコースティック・ユニットとして活動していた堀胃あげは(Gt.Vo)が「アコースティック・ギターだけでは表現しきれない」と感じたことから、表現の幅を広げる為にバンド活動へ。同じ音楽の専門学校卒業という、みと(Ba.)、田中そい光(Dr.)をメンバーに招き結成。東京を拠点に活動し、7月27日には結成からの3年間を詰め込んだ初のフルアルバム、且つ、初の全国流通盤「骨格」がリリースされた。発売を記念したインストアライブや東名阪ツアー「新骨蝶」を開催し、ラジオやSNSでも口コミが広がるなど、今注目を集めるバンドだ。

黒子首「Champon」


〈予想通りの平熱/いつも通りの平熱/お薬飲むまでもないわね/弱いだけでしょう心が〉という歌い出しに、いきなりドキッとしてしまう。誰しも一度は、自分の心の弱さを体調や環境のせいにして目を瞑ったことがあるのではないだろうか。なんとなく本調子ではなく、うだつが上がらない日々。そんな淀んだ日常を見透かしたようにスッと寄り添う彼女らの音楽が、妙に心地よい。ジャジーなサウンドやMVのうす暗い色味のタッチ、堀胃あげはのアンニュイで魅力的な歌声が、退廃的な世界観を創り出し、どことなく惹かれてしまう。しかし、この楽曲はただ寄り添ってくれるだけではなく、〈淀んだ世界と手を繋ぐのさ〉というフレーズにもあるように、「そんな日々でも頑張りたい」「前に進みたい」と思ってる人の背中を押してくれるような側面もある。今、このご時世により一層響く1曲。是非、聴いてもらいたい。

黒子首「チーム子ども」


「Champon」の世界観とはガラリと変わって、非常にキャッチーな1曲。MVではメンバーにそっくりのマスコットが演奏している姿がとても可愛らしく、インパクト満点の作品となっている。(バスドラムにバンドロゴが描かれており、細部へのこだわりにも注目してほしい。) サウンドもポップで、みと(Ba.)と田中そい光(Dr.)のテンポよく跳ねるリズムに乗っかるメロディも心地よい。しかし、歌詞に注目してみると〈答えになんて辿り着かないことを/言い争ってバカみたいね〉〈言葉足らずの大人たちよ〉と、対大人の切り口で強気に物申している。チーム大人に挑む"チーム子ども"の言い分を、可愛らしく、ブラックさも交えて歌った黒子首ならではの絶妙なポップソング。2分台のショートナンバーで、リピート確定の癖になる1曲だ。

黒子首「エンドレスロール」


「初めて、真っ当に恋愛曲を書いた」と堀胃あげはが言うこの曲は、悲しみに別れを告げて歩き出す物語が描かれている。憂いを帯びた歌声を存分に発揮したメロディに、スケール感のあるアレンジや自然溢れるロケーションが映えるMV。恋愛曲と一言で表すのがもったいないくらいに広大なアンセムだ。堀胃は「真実の愛について考えれば考えるほど、この世に偽りの愛が無いことに気がつき、ハートフルな制作期間を過ごせました。」と言及している。だが、それと同時に、愛には終わりもないのではないか?とこの歌を聴いていると感じるのだ。鬱屈とした日々でも、対立する世界も、愛があれば乗り越えられるのではないか。特定の誰かに、というよりは世界に向けられているような黒子首のラブソングが、終わりなく"エンドレス"に響いてほしい。

「黒子首」という変わったバンド名の由来は、海外も視野に入れて活動する際に、海外の方達が興味をもってくれそうな名前にしたかったから、だそうだ。そこで日本の妖怪である"ろくろ首"をモチーフにし、結成当時のメンバーが全員首にほくろがあったことから「黒子首」になったとのこと。今回紹介した3曲も収録されている最新アルバム「骨格」のリリースからツアーを経て、これから国内外問わず躍進していくであろう彼女ら。今後の活躍に注目したい。

文:髙橋夏央


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