2021.06.09
SENSAが注目するアーティストを紹介する「RECOMMEND」。今回は、TikTokを中心にSNSで話題のソロアーティスト・WurtS。
一度聴くと頭から離れない中毒性がある。いま、TikTokでバズり、2021年ブレイク間違いなしの新人として注目されているソロアーティストWurtSの楽曲「分かってないよ」だ。Music Videoに出演している女優・羽瀬川なぎが、「ふと気がつくと、『分かってないよ』を口ずさんでいる日々です」とTwitterでコメントしていたが、まさにそのとおり。どこかORANGE RANGEあたりを彷彿とさせる爽快なトラックにのせた、切なくもキャッチーな「分かってないよ」のサビには圧倒的な訴求力がある。そこに作り手に対する予備知識は一切必要ない。それでも、直感的に大勢の人たちがワクワクを共有し合えるポップミュージックとしての強さを、「分かってないよ」という楽曲は兼ね備えている。
WurtS「分かってないよ」
WurtSが初めてこの曲を自身のTikTokに投稿したのは今年の1月だった。まだ正体不明の存在からの投稿ということで、コメント欄には「これ、オリジナル?」「誰?」と言った疑問の声が並んだが、同時に「神曲」「フルで聴きたい」という、この曲の作り手の只者ではない感をキャッチするリスナーの声も数多く挙がっていた。この原稿を書いている6月7日時点では、TikTokの「分かってないよ」の投稿には、90万を超える「いいね」がついている。
そんな「分かってないよ」を待望のフル尺で収録する最新デジタルEP『MAGICAL SOUP』が6月9日(水)にリリースされた。
その全貌を聴くと、「分かってないよ」という曲に込められた、人と人とが理解し合うことの難しさ、もどかしさがくっきりと浮かび上がってくる。男女の視点が入れ替わりながら展開する歌詞には、相手を何もわかってないくせに、一緒にいたい、先に進みたい気持ちだけが先行する虚しさも伝わってくる。「君が好き」という表現に、清濁併せ吞む複雑な感情を内包する歌詞は、WurtSがTikTokで何曲もカバーしているクリープハイプにも通じるものがある。
最新デジタルEP『MAGICAL SOUP』には、「分かってないよ」のほか、「魔法のスープ」と「解夏」という新曲も収録されている。ギターロックのダンサブルな疾走感にのせたダークなメロディのミスマッチが絶妙な「魔法のスープ」は、ぜひ歌詞を目でも確認してほしいナンバー。1番は、正しい漢字とひらがなで表記されるが、2番からラストのサビへと進むにつれて、カタカナがまじり、やがてすべてひらがな表記に崩壊していく。その世界観には、どこか「分かってないよ」に通じるものがある。一方、昨今のシティポップ・リバイバルをWurtS流に解釈したサマーチューン「解夏」は、韻を多用した言葉遊びが光る。「解夏」とは、仏教用語で、夏の一定期間、僧侶がおこなう修行を終える日のことを指すが、意味深なタイトルだ。
今後おそらく2021年下半期にかけては、数多くのメディアが、"「分かってないよ」がバズったアーティスト"として、WurtSを取り上げていくことになるだろう。だが、WurtSは、決して「分かってないよ」だけのヒットで終わる存在ではないことは、昨年11月にリリースされた初作品『資本主義の椅子』を聴いても、わかると思う。
ASIAN KUNG-FU GENERATIONやゲスの極み乙女。といった邦ロックをはじめ、レディー・ガガやシーアら、時代を牽引する最先端のポップアイコン、The 1975やジョン・バトラー・トリオといったポップなアプローチで人気を博すロックバンドや、ヒップホップのレジェンドエミネムまでをもフェイバリットに挙げるWurtSの楽曲は、ジャンルの垣根を軽やかに越えていく。TikTokに投稿されている『資本主義の椅子』収録曲についての本人の楽曲解説を読むと、たとえば、「SIREN」の歌詞は、ヒッチコック監督の映画『白い恐怖』からの引用であったり、「ハイジャックサマー」は、佐野徹夜・原作小説で映画化もされた『君は月夜に光り輝く』からインスパイアされたものであることが明かされている。場所の洋邦も、時代も関係なく、自身の感性で選び取った様々なカルチャーの影響が、その楽曲には散りばめられている。
そして、『資本主義の椅子』という作品の歌詞に注目すると、そこには、世間の「当たり前」という呪いに抵抗したいという、WurtSの戒めにも似た想いも込められていた。それが強く表れているのが「マイティーマイノリティ」や「spellbound」といった楽曲だ。「マイティーマイノリティ」には、こんな歌詞がある。〈誰かの価値観で 何も出来ない僕らは 交わる人間スクランブル〉。それは、多様性が叫ばれながら、一方で、異端が猛烈に排除され、価値観が画一化される現代社会への痛烈なカウンターにもなっているように思う。優れたポップミュージックは、時代の映し鏡になると言われる。TikTokからのバズという出自も含めて、「21世紀生まれのソロアーティスト」を自称し、彗星のごとくネット上に現れたWurtSの存在は、2021年という混沌と再生の時代、そのムードそのものを象徴するような存在と言えるのかもしれない。
WurtS 2nd EP「MAGICAL SOUP」
2021年6月9日(水)
Track:
01. 魔法のスープ
02. 解夏
03. 分かってないよ
試聴はこちら
WurtS
2021年本格始動。
作詞・作曲・アレンジ、アートワークや映像に至るまで全てをセルフプロデュースする21 世紀生まれのソロアーティスト。
その楽曲は、ロック、ヒップホップ、エレクトロ等、様々なジャンルの垣根を超え、日々変貌を遂げている。
2020年11月に自身初となる作品『資本主義の椅子』、2021年3月にデジタルEP『檸檬の日々』をリリース。
TikTokでバズった「分かってないよ」が収録された最新デジタルEP『MAGICAL SOUP』より、自主レーベル「W's Project」からのリリースとなる。
@wurts2021
@wurts2021
Official YouTube Channel
一度聴くと頭から離れない中毒性がある。いま、TikTokでバズり、2021年ブレイク間違いなしの新人として注目されているソロアーティストWurtSの楽曲「分かってないよ」だ。Music Videoに出演している女優・羽瀬川なぎが、「ふと気がつくと、『分かってないよ』を口ずさんでいる日々です」とTwitterでコメントしていたが、まさにそのとおり。どこかORANGE RANGEあたりを彷彿とさせる爽快なトラックにのせた、切なくもキャッチーな「分かってないよ」のサビには圧倒的な訴求力がある。そこに作り手に対する予備知識は一切必要ない。それでも、直感的に大勢の人たちがワクワクを共有し合えるポップミュージックとしての強さを、「分かってないよ」という楽曲は兼ね備えている。
WurtSが初めてこの曲を自身のTikTokに投稿したのは今年の1月だった。まだ正体不明の存在からの投稿ということで、コメント欄には「これ、オリジナル?」「誰?」と言った疑問の声が並んだが、同時に「神曲」「フルで聴きたい」という、この曲の作り手の只者ではない感をキャッチするリスナーの声も数多く挙がっていた。この原稿を書いている6月7日時点では、TikTokの「分かってないよ」の投稿には、90万を超える「いいね」がついている。
@nia_n_ ♬ 分かってないよ - WurtS
そんな「分かってないよ」を待望のフル尺で収録する最新デジタルEP『MAGICAL SOUP』が6月9日(水)にリリースされた。
その全貌を聴くと、「分かってないよ」という曲に込められた、人と人とが理解し合うことの難しさ、もどかしさがくっきりと浮かび上がってくる。男女の視点が入れ替わりながら展開する歌詞には、相手を何もわかってないくせに、一緒にいたい、先に進みたい気持ちだけが先行する虚しさも伝わってくる。「君が好き」という表現に、清濁併せ吞む複雑な感情を内包する歌詞は、WurtSがTikTokで何曲もカバーしているクリープハイプにも通じるものがある。
最新デジタルEP『MAGICAL SOUP』には、「分かってないよ」のほか、「魔法のスープ」と「解夏」という新曲も収録されている。ギターロックのダンサブルな疾走感にのせたダークなメロディのミスマッチが絶妙な「魔法のスープ」は、ぜひ歌詞を目でも確認してほしいナンバー。1番は、正しい漢字とひらがなで表記されるが、2番からラストのサビへと進むにつれて、カタカナがまじり、やがてすべてひらがな表記に崩壊していく。その世界観には、どこか「分かってないよ」に通じるものがある。一方、昨今のシティポップ・リバイバルをWurtS流に解釈したサマーチューン「解夏」は、韻を多用した言葉遊びが光る。「解夏」とは、仏教用語で、夏の一定期間、僧侶がおこなう修行を終える日のことを指すが、意味深なタイトルだ。
今後おそらく2021年下半期にかけては、数多くのメディアが、"「分かってないよ」がバズったアーティスト"として、WurtSを取り上げていくことになるだろう。だが、WurtSは、決して「分かってないよ」だけのヒットで終わる存在ではないことは、昨年11月にリリースされた初作品『資本主義の椅子』を聴いても、わかると思う。
ASIAN KUNG-FU GENERATIONやゲスの極み乙女。といった邦ロックをはじめ、レディー・ガガやシーアら、時代を牽引する最先端のポップアイコン、The 1975やジョン・バトラー・トリオといったポップなアプローチで人気を博すロックバンドや、ヒップホップのレジェンドエミネムまでをもフェイバリットに挙げるWurtSの楽曲は、ジャンルの垣根を軽やかに越えていく。TikTokに投稿されている『資本主義の椅子』収録曲についての本人の楽曲解説を読むと、たとえば、「SIREN」の歌詞は、ヒッチコック監督の映画『白い恐怖』からの引用であったり、「ハイジャックサマー」は、佐野徹夜・原作小説で映画化もされた『君は月夜に光り輝く』からインスパイアされたものであることが明かされている。場所の洋邦も、時代も関係なく、自身の感性で選び取った様々なカルチャーの影響が、その楽曲には散りばめられている。
そして、『資本主義の椅子』という作品の歌詞に注目すると、そこには、世間の「当たり前」という呪いに抵抗したいという、WurtSの戒めにも似た想いも込められていた。それが強く表れているのが「マイティーマイノリティ」や「spellbound」といった楽曲だ。「マイティーマイノリティ」には、こんな歌詞がある。〈誰かの価値観で 何も出来ない僕らは 交わる人間スクランブル〉。それは、多様性が叫ばれながら、一方で、異端が猛烈に排除され、価値観が画一化される現代社会への痛烈なカウンターにもなっているように思う。優れたポップミュージックは、時代の映し鏡になると言われる。TikTokからのバズという出自も含めて、「21世紀生まれのソロアーティスト」を自称し、彗星のごとくネット上に現れたWurtSの存在は、2021年という混沌と再生の時代、そのムードそのものを象徴するような存在と言えるのかもしれない。
RELEASE INFORMATION
WurtS 2nd EP「MAGICAL SOUP」
2021年6月9日(水)
Track:
01. 魔法のスープ
02. 解夏
03. 分かってないよ
試聴はこちら
PROFILE
WurtS
2021年本格始動。
作詞・作曲・アレンジ、アートワークや映像に至るまで全てをセルフプロデュースする21 世紀生まれのソロアーティスト。
その楽曲は、ロック、ヒップホップ、エレクトロ等、様々なジャンルの垣根を超え、日々変貌を遂げている。
2020年11月に自身初となる作品『資本主義の椅子』、2021年3月にデジタルEP『檸檬の日々』をリリース。
TikTokでバズった「分かってないよ」が収録された最新デジタルEP『MAGICAL SOUP』より、自主レーベル「W's Project」からのリリースとなる。
LINK
TikTok@wurts2021
@wurts2021
Official YouTube Channel