SENSA

2021.01.31

無色の日常を鮮やかに色づける「阿佐ヶ谷ロマンティクス」

無色の日常を鮮やかに色づける「阿佐ヶ谷ロマンティクス」

今回のレコメンドは、「阿佐ヶ谷ロマンティクス」です。

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阿佐ヶ谷ロマンティクス
有坂朋恵(Vo)・貴志朋矢(Gt)・堀智史(Key)・古谷理恵(Dr)・本間玲(Ba)の5人組。2014年春、結成。ロックステディやレゲエといった中南米音楽の要素をニューミュージックやティンパンアレイを彷彿とさせる抒情的な日本語ポップスへと落とし込んだ、ロマンティックなナンバーを奏でる。

阿佐ヶ谷ロマンティクス「春は遠く夕焼けに」


個人的に、阿佐ヶ谷という街は馴染み深いです。東京23区の西の端、杉並区の中央に位置する中央線沿線の街、阿佐ヶ谷。その駅周辺は、よくある大型ショッピングモールによる画一化された賑わいではなく、昔ながらの小売店が軒を連ねる商店街に活気があり、地域に根差した街という印象があります。渋谷や原宿のようなカルチャーの最先端とは言えないけれど、健全に人の流れが循環する。生き生きとした生活感が漂う街です。

そんな"阿佐ヶ谷"の地名を冠したバンド、阿佐ヶ谷ロマンティクスが鳴らす音楽は、まさに阿佐ヶ谷という街の空気感に近い、生活と乖離しないグッドミュージック。彼らが2015年に発表した「春は遠く夕焼けに」のミュージックビデオには、阿佐ヶ谷の街並みが散りばめられていますが、その必要最小限の言葉で紡がれる日本語詞には、街の景色と四季の移ろいのなかで抱くモラトリアムの焦燥が鮮やかに描かれています。

阿佐ヶ谷ロマンティクス「チョコレート」


阿佐ヶ谷ロマンティクスの音楽は、70~80年代の日本のポップミュージックの影響を感じさせますが、そこにレゲエやカリプソの要素を取り入れているところが大きなポイントです。ギターの貴志朋矢とドラムの古谷理恵が早稲田大学の「中南米音楽研究会」に所属していたという経緯もあり、彼らが作り上げるリズムアプローチはかなり独特。南国らしい陽性の気分をまといながら、ボーカル有坂朋恵が紡ぐ揺蕩うような透明感のあるメロディが不思議なノスタルジーを駆り立てます。

これまで阿佐ヶ谷ロマンティクスは『街の色』(2017年)と『灯がともる頃には』(2018年)という2枚のアルバムをリリースしていますが、そのオリジナリティ溢れるリズム使いをより堪能できるのは『街の色』のほうでしょうか。なかでも「チョコレート」は、軽やかに刻むリズムにのせて、矢野顕子を彷彿とさせる有坂の自由気ままなボーカルが、バレンタインデー前夜の女子のそわそわとした気持ちを可愛らしく歌っています。同作の「不機嫌な日々」もそうですが、作詞を手がける貴志は、男性でありながら、繊細な女ごころを表現するのがとても上手なソングライターだと思います。

阿佐ヶ谷ロマンティクス『灯がともる頃には』



阿佐ヶ谷ロマンティクスの歌のなかで、とても好きな歌詞があります。

<終わりのない日々に 対を成す過去の美>

『灯がともる頃には』のラストナンバーとして収録される穏やかなポップソング「終わりない日々に」のサビです。夜から朝へと時間の経過を表すように進んでゆく『灯がともる頃には』というアルバムの最後に、新たな朝のはじまりを告げるこの曲は、いつか終わる日が訪れると知りながら、終わりなど意識せずに生きる私たちの日々を起点に、未来と過去、有限の人生について想いを馳せます。阿佐ヶ谷ロマンティクスの歌は悲しい過去を背負った登場人物が多いように感じるのですが、そういう過去ですら、未来と対をなす「美しい時間」として受け入れ、やがて終わりへ向かう人生を希望に満ちたサウンドで表現する「終わりのない日々に」は、阿佐ヶ谷ロマンティクスというバンドに通底する思想が表現されているように感じました。

阿佐ヶ谷ロマンティクス「独り言」



というわけで、今回は阿佐ヶ谷ロマンティクスを取り上げてみました。ちなみに、彼らの最新ナンバー「独り言」は、最後に書いた「終わりのない日々に」と対になる、男女の視点を入れ替えた曲では、と思ったりもしています。"あなた"と迎えた朝が無色の日常を色鮮やかに変えていく。そんな「独り言」という楽曲のように、阿佐ヶ谷ロマンティクスの音楽は、ありふれた日常をロマンチックに彩ってくれます。

阿佐ヶ谷ロマンティクスに関する詳しい情報はオフィシャルホームページをチェックしてみてください。

LINK
オフィシャルサイト
@Asagaya_Roman
@asagayaromantics
Official YouTube Channel

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