INTERVIEW

2026.07.22

森山公稀(odol)× Ryu(Ryu Matsuyama)対談――「中心がない集団」オドリュウが繰り広げる新たな実験とは?

森山公稀(odol)× Ryu(Ryu Matsuyama)対談――「中心がない集団」オドリュウが繰り広げる新たな実験とは?"宇宙"での意気投合から顔を突き合わせたレコーディング秘話まで語る

odolとRyu Matsuyamaによるコラボレーションプロジェクト「odol × Ryu Matsuyama」(愛称:オドリュウ)が始動。9月に4曲入りのEP『d r i f t』をリリースし、キネマ倶楽部でライブを行うことが決定している。昨年12月に発表されたRyu Matsuyamaのアルバム『Voyager 2』にodolの森山公稀がアレンジャーとして参加するなどして交流を深めてきた両者は、ロック、フォーク、アンビエントを横断し、同じ風景と時間の流れを共有する2組であり、その相性の良さが楽曲から伝わると同時に、odolの3人とRyu Matsuyamaの2人= 5人がフラットな立場で取り組んだ制作スタイルは、現代的なバンドのあり方を模索する試みにもなっている。コラボレーションの経緯や、EPから先行配信されている「過ぎてゆく」と「風の先」について、森山とRyuに話を聞いた。

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バンドを始めたての20代の頃の気持ちに戻りたかった(Ryu)

─昨年のRyu Matsuyamaのアルバムに森山くんが参加することになった経緯から教えてください。


Ryu:僕が藤田琢己さんと一緒にやってたポッドキャスト(「音楽のミカタ」)にゲストで来てもらったのが最初のきっかけです。

森山:フェスで同じステージに出てたり、お互い(林)響太朗さんにアー写やMVをお願いしてたので、もちろん名前は知ってたんですけど、ちゃんと話をしたのはそのときが初めてでした。で、「いつか一緒に何かやれたらいいね」と言ってくださって、そこから2〜3年経って、Ryu Matsuyamaが新体制になるタイミングで電話をくれて。最初は「ライブに参加しませんか?」と誘ってくれました。

─2人になったからこそ、より自由に外部の人と関わることで表現の幅を広げようとした?


Ryu:もともと3人でやってたときはバンド感を大事にしていたというか、できるだけ同期を使わず、人力で、アナログですごい音を出すっていうのが目標としてあったんです。でもやっぱり2人になるとどうしても音が足りないというか、2人でもできるはできるけど、面白くできそうなビジョンがそのときは見えてなくて。それで「じゃあ、誰か他の人を」と思ったときに、森山くんが一番最初に浮かんだんです。鍵盤2台でやってみたいっていうのもずっと思っていたし。

─鍵盤2台の他に、森山くんとやりたいと思ったポイントは?


Ryu:風景感が似てると思ったんですよね。 アンビエントも好きで、ロックも好きで、それをお互いバンドに落とし込んでる。その風景感が特に近いっていう意味で、odolの曲が好きでずっと聴いてたので、そういう人と一緒にやってみたいなって。

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─声がかかって、森山くんとしてはどう思いましたか?


森山:最初はライブサポートだったので、既存の曲をやることになって。基本的にRyu Matsuyamaの楽曲は3ピースでも成立してるから、「ここにどうやって入ろう?」みたいな気持ちがあったんです。でも初めてリハーサルに行ったときに、「好きにやっていいよ」と言われて、本当に好きにやったら、それでそのままライブになっちゃったから、「これを求めてくれてるなら嬉しいな」と思って、楽しくやっています。

Ryu:誘ってる本人がそもそも何も計算してないので(笑)。

森山:アルバムの曲を作ったときも、基本的に「これはダメ」がなくて、まずは僕の好きにいろいろやって、最後は一緒に完成させていくプロセスなので、メンバーの一員みたいな気持ちでやらせてもらえて、すごくやりやすかったです。

─2人はどんな話で意気投合したんですか?


森山:まあ、クリストファー・ノーランですかね(笑)。

─音楽じゃなくて、SFだ。


森山:SFとか、宇宙。最初に僕の家に来てくれたときに、本棚を見て、「これも好き、これも好き」って言い始めて。

Ryu:『プラネテス』が一番最初に目に入ったんですよ。宇宙漫画の中でも『プラネテス』好きな人は間違いない(笑)。

森山:ノーランの作品の話から、「宇宙好きなんだ」みたいな話になって、 『プラネテス』の話もしたし、ハンス・ジマーの話もしましたね。

─宇宙・SF的な世界観に惹かれるのと、自分の作る音楽には何かリンクがあると言えますか?


Ryu:同じ宇宙でもそれぞれの興味はちょっと違う気もして。僕は完全にロマンというか、子供の頃に『E.T.』を観て SF にどっぷりハマったんですけど、あの頃のワクワクした気持ちがいまだに続いてるんです。ただ僕の歌詞は SF感が全然なくて、生活感が強い歌詞しか書けないから、アレンジでSF感を出してみたくて、それが『Voyager 2』には特に出ているかもしれない。昔はどうしても地球の風景が見えてしまうような音楽だったから、一回飛び立ちたいなって(笑)。で、森山くんの家の本棚を見たときに、「これならSF行ける!」みたいな気持ちになったんです。

森山:僕が宇宙とか SF にハマったのは大学生の頃で、それこそ『インターステラー』を映画館で観て、そこから急にハマった感じなので、ロマンチックな物語というよりもどちらかと言えば科学的な方に興味はあるんですよね。もちろん僕自身は専門家じゃないので、表面的なことしか知らないのですが、どうやら研究者たちがいくら宇宙のことを知りたいと追い求めても、今のところはまだよくわかっていない領域も多いんですよね。それはある意味ではロマンだなと思うし、求めれば求めるほどわかんなくなっていくというのもワクワクしますね。 宇宙って、僕の生活とはすごく遠い場所にあるから、それが自分的には安心するというか、逆に落ち着く感じがするんです。

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─『Voyager 2』はまさに宇宙的な世界観でしたね。


Ryu:最初に「To get there」を一緒にアレンジしたときに、なんかもう宇宙感出てるな、みたいな感じがして(笑)、自ずと近づいていった感じですかね。僕らが今までやってきてた景色感とはだいぶ変わったので、「これは宇宙に持っていける」と確信に変わった瞬間でした。「Reflections」も森山くんがいたからこそできた曲で、最初は「Anemoi」をリード曲にする予定だったんです。でも、「Reflections」は森山くんの家でアレンジしてる段階ですごい曲だなと思ったし、レコーディングが終わって、スピーカーで聴いた瞬間に、「これはもうリードだ」みたいな気持ちになって。 当時のディレクターとちょっとバトりましたけどね(笑)。「『Anemoi』の方が日本語だからわかりやすいかもしれないけど、音の新しさはこっちだ」みたいな、それで「Reflections」がリードになったんです。

─最初のデモからはガラッと変わってるんですか?


Ryu:最初のデモはピアノとドラムとボーカルだけなんです。その時点でメロディーラインはすごくよかったし、面白い曲だと思ったけど、表現したいサウンドができなくて、リードまでは一歩届かないかな、みたいに思ってて。でもそれが森山くんと一緒に作ることで「これだ!」みたいな形になって、あれはもう衝撃でした。

森山:最初に僕の家で、みんなでデモを聴くんですけど、衝撃が与えられたかもって思うときは、踊ってくれるんですよ(笑)。

─フィジカルな反応が返ってくる。


Ryu:僕は結構フィジカル派なので。アレンジも言語化できないタイプで、「もっとバーン!で」みたいに言っちゃう。

─そこはodolの制作とは全然違う?


森山:全然違います。そもそもodolは制作のプロセスでほとんど集まらないですからね。ベースのアレンジや歌詞についてのやりとりも全部テキストで進めています。レコーディングでさえ、 ある日は(シェイク)ソフィアンが来て、別の日はミゾベ(リョウ)が来てっていう感じで、3人集まることは少ないです。長年の経験があったからこそ、そういうやり方できるようになったのだと思います。一方で『Voyager 2』は特に最初の作品ということもあってか、ちゃんとみんなで集まろうっていう感じにしてくれて。データでやりとりするんじゃなくて、毎週のように家に来てくれて、それがスムーズに進んだ一番の要因だったと思います。

Ryu:僕はやっぱりフィジカルが好きなんですよね。リュウマツも最近はノンフィジカルのデータのやりとりになってたんですけど、でもやっぱりレコーディングは超体育会系というか、最初から最後まで、ボーカルRECでもみんないる、みたいな感じでやってきていて、そういうの好きなんですよね。だからオドリュウもできるだけフィジカルにやりたかったし、これは自分のエゴかもしれないですけど、バンドを始めたての20代の頃の気持ちに戻りたかったというか、それを一緒に感じられたらいいなっていうのもあったんです。もちろん大変なこともありましたけど、その分の楽しさがあったし、この経験をお互いのバンドにまた戻していけたらいいなって。

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─コラボの話の前にもう一個だけ、4月にodolのアルバム『slow blink』が出ていて、Ryu Matsuyamaに参加した経験がフィードバックされてる部分もあったのかなと。


森山:「バンドで作品を作る意義」をより強く認識した上で作れたっていうのは一個あるかなと思ってて。僕の場合、他のアレンジの仕事はどちらかというとデータのやり取りで進めることが多いんですよ。でもリュウマツでは本当にバンドのようにやってて、そのプロセスを踏んでいった中で、「バンドで音楽を作るってどういうこと?」みたいなのを、改めて考えたというよりは、なんとなく直感として感じてて。以前は、できる限りのリソースを割いて少しでも改善を続けて、理想のものを純度高く作っていくことが、音楽を作る上で目指すべきひとつの姿だと思ってしまっていたところがあったんですけど、 『Voyager 2』を作ってるときに、それだけじゃないベクトルもあることをちゃんと実感として感じられたところがあって。それは何かというと、みんなで「あ、いいね」ってなった瞬間の、その直感を大事にする、みたいなことで。

─それこそ思わず踊っちゃうような瞬間が大事だったりする。


森山:「あそこで踊れたから良しとしよう」みたいなことはこれまでのodolにはなくて、そういう可能性をodolの中にも盛り込めた部分はあるかなと思います。しかもそうやってできた作品を実際に出した後に後悔が残ってないから、「あれで良かったんだな」と思えています。

Ryu:僕と森山くんの作り方は結構対極だと思うんですよ。僕はその日にできた一番いいものがいいと考えるタイプで、それで後悔は絶対にしないって、自分で決めてるんです。「体が踊ってる」=「いいこと」っていう、一番根源にある「楽しい」をずっと追求してやってる。なので、オドリュウをやってたときに、odolのメンバーの人たちにも、「僕はこういう風に判断してるんだよ」っていうのを見せて、それで何かを感じ取ってもらえたかなっていうのは、『slow blink』を聴いても思ったので、odolに少しでも影響を与えられたのなら、1ファンとしてすごく嬉しく思いますね。

至らぬ点を改善するよりは、楽しくやる方を優先したい(森山)

─では改めて、今回のコラボレーションに至った経緯を教えてください。


Ryu:僕からお誘いさせていただきました。森山くんとはこれからも一緒に音楽を作りたいと思っていて、どうせやるのであれば、お互いのバンドでコラボしたいなって。なおかつ、ただ一曲作って終わりじゃなくて、レーベルや事務所の垣根を超えて、プロジェクトとして面白いことができると思ったし、それが自分たちにとっての起爆剤にもなって欲しかったんです。なので、今回はJacksonの家にみんなで集まって、5人で一緒に音を鳴らしたり、デザインも全員で話し合って決めたり、DIYに近い感覚で、密にできるプロジェクトをやりたくて、それでお誘いさせてもらいました。

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─森山くんはどう思いました?


森山:最初はもっと気軽に考えてたっていうか、「楽しそうですね。ぜひやりましょう」っていう感じだったんですけど、いざやり始めると......すごい大変っちゃ大変なんですよ。バンドをやるってめっちゃ大変ってわかってたはずなのに、また大変なことを始めてしまった...って思ったんですけど(笑)、でもやっぱりodolでやってることとも、Ryu Matsuyamaでやってることとも全然違う形のプロジェクトになってるので、それは僕にとってもありがたい場だなと思ってます。

─その「違い」は特にどんな部分で感じていますか?


森山:僕にとっての一番の違いで言うと、オドリュウでの自分は中心であることを手放してるんですよね。odolでもRyu Matsuyamaでもサウンドを任されてるから、「サウンドに関しては絶対的に責任を持つ」という気持ちがあるし、odolに対しては、「最終的には自分がいいと思えるものだけを世に出していく」みたいな、そういう自分のエゴもあるんです。でもオドリュウのときの自分は5分の1でしかなくて、仮に自分がまだあまりいいと思えてなくても、他の4人が「いいね」となってたら、「それなら良いか」と思えたりする。無責任とは違うんですけど、「中心にいること」を積極的にやめてみてる意識はあるんですよ。それをできる場を作ってくれたのはすごくありがたいし、その立場からじゃないとできないこともあるから、そこは明確な違いがあると思います。 もちろん曲作りにおいては自分とRyuさん主導で進めることもあるけど、ライブのこととか、グッズのこととか、意見はするけど、自分の美学が絶対的な基準になってるわけじゃない。「オドリュウという集団から生まれるものを側から見てる」ぐらいのテンション感でもあるので、それが面白いですね。

Ryu:「過ぎてゆく」で言うと、ドラム缶を取り出されたときは、リュウマツだったら「ちょっと違うね」って言ってたと思う。でもオドリュウに関しては、みんなの面白さが混ざった方が面白いから、だったらアリかなって。

─「過ぎてゆく」のリズムはドラム缶なんだ。


森山:プリプロの際に僕がエンジニアの代わりみたいなことをしてたときに、Jacksonさんがドラム缶を取り出して、マイクの前で叩き始めて、それに「めっちゃいい音ですね」みたいな反応をしたと思うんですよ。そのときにRyuさんやJacksonさんの中では、「森山くんがいい音と思ってるなら、まあいっか」みたいな感じになってたと思うし、その逆もすごくたくさんある。そういうことは「自分のバンド」と思いすぎてるとできないんですよ。

Ryu:できないね。

森山:「自分のもの」と思いすぎると、「やっぱり気になる」ってなっちゃう。でもそうならずに、とはいえ我慢してる感じでもなく、ナチュラルに進められてるのはありがたいです。「中心がない集団」みたいなのって、理想の一つではある気がするんですよね。

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─中央集権で生まれる強さもあるけど、バラバラだからこそ、中心がないからこそ生まれる強さもきっとあると思う。あとはドラムがいないバンドとベースがいないバンドっていう、その組み合わせの良さもありますよね。


Ryu:そこはシンプルに「ちょうどいいじゃん」と思いました(笑)。でも僕とミゾベくんの声が合うかどうかはやってみないとわからなかったですけどね。彼はフラットに歌うっていうか、ビブラートがない、真っ直ぐな感じだけど、 僕はずっとビブラートをしてるタイプなので。でもそれが意外と合うなっていう、新しい発見もあったり。

─「過ぎてゆく」はどういうところから着想を得て作った曲なんですか?


Ryu:僕がギターで書き始めた曲なんですけど、最初アレンジが複雑過ぎたんだよね。

森山:最初は全然違う仕事を2人で僕の家でやってるときに、「オドリュウでやってみたい曲があるんだよね」と言われて、家にあったギターで弾き語りをしてもらって。その時点でめっちゃいい曲だったんですけど、テンポの変化も多くて、バンドでやるには難解な曲だったんです。なので、まずは2人で、みんなで触れそうな形にまで持っていって、それをみんなに聴いてもらい、「これ今度Jacksonさんの家に集まるときやります」とだけ言っておいたら、みんなそれぞれ考えてきて、 集まったその日に完成させました。

Ryu:で、ドラム缶が出てきて。

森山:そこにあった鍵盤を僕が弾いて。

Ryu:僕は今回あんまり弾き慣れないギターを弾いて。

森山:っていう感じでしたね。スッとできたっちゃあスッとできた。

Ryu:しかもひさしぶりにクリックなし。5人でせーので。

森山:実際のレコーディングではクリックを使ったんですけど、デモ作りのときは「息を合わせてやってみましょう」みたいな。

Ryu:歌詞もJacksonの家で、みんなで、1時間ぐらいで考えました。歌詞をみんなで書くのはやったことがなかったけど、景色を羅列しながら、最後の「君とともに過ぎてゆく」をパンチラインにしようと決めて。難しさもあったけど、みんなが「いいね」ってなったら、僕も「じゃあ、これでいこう」っていう感じでした。

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─クレジットは「作詞:ミゾベリョウ、Ryu」となってるけど、みんなで話し合いながら作ってるんですね。


Ryu:主導は僕とミゾベくんなんですけど、森山くんからも「これおかしくない?」とか、「この風景はあんまり見えない」みたいな意見をもらいながら、その場で作っていきました。あんまりない制作現場だと思うんですけど。

─ないと思いますね。もっとわかりやすく、自分がメインで歌ってるところを自分が書いたのかなと思ってました。


Ryu:ちなみに今回反対なんです。ミゾベくんがメインで歌ってる部分を僕が書いて、ミゾベくんが書いた部分を僕が歌ってる。それによって、「こういう母音の回し方もあるんだ」みたいな発見もありました。

─ミゾベくんというボーカリストについて、一緒に制作してみてどう感じましたか?


Ryu:僕の方がボーカリスト寄りというか、彼は楽器に近い歌い方で、綺麗にピュッて「この音」を出す人だなって。僕はそこのノートにたどり着くために、頑張ってフェードインして、「あ、ここだ」っていう歌い方をするんですけど、ミゾベくんはピュッてその音を出せるタイプで、羨ましいというか、いいなと思いました。あとは感情を込めずにフラットに歌えるけど、それでちゃんと感動を与えるっていうのが、ボーカリストとして一番すごいことだと思うんですよ。「感動して!」って歌えば、感動させられるっちゃ感動させられるけど、ただフラットに歌って感動させられるって一番難しい領域で、僕も勉強しないとなと思いました。

森山:odolのレコーディングのときは、「もうちょっと歌っぽく」とか「もうちょっとセリフっぽく」みたいなディレクションがあるんですよ。「ここは置くように歌ってほしい」とか「ここはもうちょっと感情が見えるように」とか。今回はボーカルが2人いることによって、それをグラデーションでアレンジできる面白さがあったんですよね。一人で歌ってると、その人が淡々と歌ってるのか、感情を込めて歌ってるのか、そういう時間軸の変化ですけど、淡々と歌ってる人と感情を込めて歌ってる人が同時にいる。それがまず2人のボーカリストがいる面白さだし、2人が全然違うタイプだからこそ、そういう良さもあるんだなって思えたのが面白かったですね。

─最後の合唱パートはバンド感が出てますね。


森山:それも本当にその場のアイデアで。

Ryu:ああいう合唱はodolではほぼやったことない?

森山:やったことはあるんですけど、今回は人数が多かったですね。スタッフとかも呼んで、一緒に歌ってもらって、それも本当にその場の思いつき。「ちょっとブース出て、こっちのロビーで歌おうか」とか。

Ryu:最後の曲を録ってて、「マイク立ってるしやろうぜ」って。

─最後に残ってる声はRyuくんの声?


Ryu:僕の声です。みんな何か言ってるんですけど、カットされてて、一人だけ何か言ってるみたいで、恥ずかしいですけど(笑)。

森山:ああいうのもodolだったらカットされてたと思うんですよ。それが入ること自体、このプロジェクトが独特なものというか、どっちのバンドとも違うものだっていうのを表してると思います。

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─ちなみに「過ぎてゆく」はジョージ・ハリスンの「All Things Must Pass」は関係ないですか?


森山:関係ないです。

─曲調も含めて、オマージュ的なところもあるのかなってちょっと思ったけど。


Ryu:今言われて、「あ、確かに」と思いましたけど、全く意識はしてないです。

─「風の先」では〈今日も僕は風に吹かれて〉と歌われてるし、実は名曲オマージュという裏コンセプトがあるのかな?とか思って。


Ryu:それこれから使わせていただきますね(笑)。タイトルのことで言うと、今回5人で作ってて、EPのタイトルも曲のタイトルも全部5文字なんですよ。『drift』、「過ぎてゆく」、「風の先」、「VOICE」、「歌うたう」。「過ぎてゆく」に関しては、その曲で歌ってることをそのままタイトルにするのは、僕はあんまりやったことがなくて。でもミゾベくんに「『過ぎてゆく』でいいんじゃないですか?」って言われたときに、「その発想もありだな」と思ったんです。

─「風の先」はどのように作っていったのでしょうか?


Ryu:あれも僕のデモからだったんですけど、最初はAメロくらいしかなくて。

森山:「風の先」はJacksonさんの家で最初に集まったときに、結構5人でアレンジを進めたんですよ。

Ryu:そのときにハンドパンが出てきて、「入れてみよう」と思ったのは覚えてるんですけど、でもどういう風に進めたか......もう記憶が薄くなってきてる(笑)。自然と時間が経ったらアレンジされてた、みたいな印象なんですよね。でもカレンダーを見返すと、森山くんと何回もやりとりしてて、多分「風の先」が一番変わってる。

森山:Ryuさんとはオドリュウやリュウマツ以外にも、CM音楽や映画音楽も一緒にやっていて、月に3〜4回は会ってて。それで別の仕事が終わった後に、「オドリュウのあれどうする?」 みたいな感じで進めることも多いんです。

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─じゃあ最初からアレンジのイメージがあったわけではない?


Ryu:全くなくて、メロディーとコード進行だけちょっと送ったぐらいですけど、最初はもっと複雑で、7拍子とかにしてて、でもちょっと難しすぎるから4拍子に戻したり。キーは変えてなくて、最初ミゾベくんが歌ったときにちょっと低すぎるかもと思ったけど、意外とこの音域を歌ってもらったら気持ちいいだろうなって。これが最初に作り始めた曲なので、 一番時間をかけました。

森山:さっきの「中心がない」みたいな話と一緒で、楽曲に対しても始めは誰にも具体的なビジョンがないから、進めるうちにどんどん変わっていきます。最初は「これでいいのか?」とも思ったんです。それまでは最初から最後まで全体を見通しながら責任を持ってやるのが普通だったから。でも流れに任せてみると、スタジオに行けばなんとなく形になっていくし、締め切りがあればそこにはなぜか間に合う、みたいなことになって(笑)。だから本当に「こういう風にやろうとした」というよりは、流れ着いた感じ。

Ryu:一つだけテーマとしてあったのが、英語と日本語を混ぜたくて。最初は自分から歌詞を書きたくなかったんだけど、僕はメロディーと英語の歌詞が一緒に出てきちゃうタイプで、「あ、いいのできちゃった」と思って(笑)。それをミゾベくんに見せて、「こういうストーリーだから、こういうの書いてみて」って、あとはお任せして。そうするとお互いのメッセージが同じ方向を向いてなかったりするんですけど、それはそれで面白いんですよね。同じ愛の歌を歌ってるけれども、違う目線で見てたりするので、それはもう良しとして、 何も言わずに進めましたね。

─『Voyager 2』の最後の曲が「Kaze」だったので、連続性もあるのかなと。


Ryu:いや、それは特に意識してなかったです。一応愛の歌ではあるんですけど、「愛の歌」みたいな感じのタイトルにはしたくなくて、お互いが違う目線で見てるし、歌詞の中でも風が吹いてるから、「風の先」とかいいなと思って、じゃあそれでって感じ。

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─「風景が共通してる」という話もあったように、やっぱり曲の世界観はもともと近しいものがありますよね。風が吹いてる感じもそうだし、時間が流れてる感じだったり、旅の感覚だったり。そういう部分を共有してるからこそ、それぞれで書いても根底で繋がってる感じはしました。


Ryu:そう言ってもらえて、「確かに」と思ったし、それはそれで面白いなと思ってます。

森山:作品に対して僕ら自身がだいぶ客観的なんですよね。

─それも中心がないからこそ、かもしれないですね。


森山:やっぱり僕の中でオドリュウというプロジェクトは実験の場みたいな感じなんですよね。高校の頃にバンドを始めて、15年ぐらいバンドをやってきて、バンドじゃない音楽活動とか作品制作も同時に長くやってきた中で、バンドっていうものの特殊性に常に囚われてるというか。なんで自分はバンドっていう形にこだわってるんだろうとか、バンドでやる意義って何だろうとか、ずっとそれぞれのフェーズで考えてきて。で、また最初の話に戻っちゃいますけど、これまでは自分とバンドを同一視しすぎてる節があったんだなっていうことに気づけたタイミングがあって、それで「中心を手放す」みたいなことをオドリュウでやり始めた。これから作品を出して、ライブも経験した上で、また自分の考えがどう変わっていくのか。それが楽しみですね。

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─9月にキネマ倶楽部でライブがありますが、それぞれのバンドのパフォーマンスがあり、さらにはオドリュウとしてのパフォーマンスもあるわけですよね。


森山:そうなると思います。

Ryu:4曲しかないので、オドリュウだけのライブは無理ですね(笑)。

─どんなライブになりそうですか?


森山:さっきも言ったように実験の場ではあるので、「こういうライブにします」っていうのは明確には言えないんですけど...とにかく楽しい方を選択していこうというのはRyuさんとも共通してる部分だと思います。これを言うと無責任に聞こえるかもしれないですけど、いろんな至らぬ点があるとは思うんですよ。でも、至らぬ点を改善するよりは、楽しくやる方を優先したい。そういうものがだんだん減ってきてる感覚があって、それは自分にとってもそうだし、社会の中でも減ってる気がするので、そういう時間になればいいのかなと思ってます。 至らないことって、すぐに指摘されて、訂正を迫られたりするじゃないですか。でもそうじゃなくてもいいというか。特にバンドは好きでやってることなので、それを体現できる場になればいいなと。

Ryu:僕はずっと一期一会精神でやってきてるので、今回は「odol × Ryu Matsuyamaでできる面白いことをできるだけ全力で」っていうのがテーマかもしれないです。今回のアルバムは誰もリーダーシップを取ってないんですけど、でも見えてる風景は同じで、 それがお互いのバンドでも、オドリュウになったときにも見せられたらいいなと思います。あとは続けていくことが大事だっていうのは、バンドをやっていて一番学んだことなので、これは僕の勝手な発言ですけど、オドリュウとしてライブを何回か続けていけたら、また新しい音が見つけられるんじゃないかと思っていて。なので、キネマ倶楽部ではその進化の最初の一歩を見せられたなと思ってます。

─「オドリュウ」ってポケモンにいそうだし、進化しそうですよね(笑)。


Ryu:10年以上バンドをやってきて、自分たちの技術があればある程度なんでもできると思えてる自分がいるので、その気持ちを持って、あとは突っ走るだけです。

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取材・文:金子厚武
撮影:山川哲矢

RELEASE INFORMATION

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odol × Ryu Matsuyama「風の先」
2026年7月8日(水)
Format:Digital
Label:VAP

Track:
1. 風の先

試聴はこちら

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odol × Ryu Matsuyama「過ぎてゆく」
2026年6月17日(水)
Format:Digital
Label:VAP

Track:
1. 過ぎてゆく

試聴はこちら

LIVE INFORMATION

odol × Ryu Matsuyama "d r i f t"

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2026年9月12日(土)
東京キネマ倶楽部
OPEN 16:00 / START 17:00
出演:odol / Ryu Matsuyama
チケット:前売 ¥6,500(税込・ドリンク代別)
一般発売【7/25(土)10:00〜】
受付URL:https://eplus.jp/odol-ryumatsuyama/

drifters
BLUE Enoshima
2026年8月23日(日)
OPEN 17:15 / START 18:00
出演:ミゾベリョウ(odol) / Ryu(Ryu Matsuyama)
チケット:前売 ¥4,500(税込・ドリンク代別)
受付URL:https://eplus.jp/sf/detail/4537520001-P0030001

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odol オフィシャルサイト
Ryu Matsuyama オフィシャルサイト
@odolryu

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