INTERVIEW

2026.05.07

【MAP OF FRIENDSHIP.】Vol.07 シンマチダ(Oaiko)

【MAP OF FRIENDSHIP.】Vol.07 シンマチダ(Oaiko)

FRIENDSHIP.に関わる様々な人物の証言を基に、FRIENDSHIP.の意義と現代の音楽シーンを立体化していく連載「MAP OF FRIENDSHIP.」。第7回は6月7日に渋谷で「Oaiko FES 2026」を開催するOaikoの代表・シンマチダを迎えた。Oaikoはコロナ禍から1歩ずつ前へ進んでいくために、「元に戻す」のではなく「適応」していくことをコンセプトに掲げ、2023年にスタートしたレーベル。ひとひらのファーストアルバム『つくる』が大きな話題となり、近年はyeti let you noticeや、再結成をしたuremaといった上の世代もリリースするなど、2020年代に大きな盛り上がりを見せているオルタナティブなバンドシーンの中で、一際注目を浴びる存在となっている。Oaiko所属のアーティストはもちろん、HomecomingsやEnfantsといった上の世代、downt、Hammer Head Shark、Trooper Salute、iVyなど、現在のシーンの中核を成すアーティストが数多くラインナップされたフェスの開催を前に、シンマチダにここまでの歩みを聞いた。

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─まずはOaikoの成り立ちから教えてください。


マチダ:2021年の「フジロック」に行ったことがきっかけでした。当時はまだ大学生で、軽音サークルの後輩だったひとひらのドラム(梅畑洋介)とかと一緒に行ったんですけど、コロナ禍だったので、出演したのは日本人アーティストだけで、マスク着用、声出し禁止、お酒もNG。僕にとっては初めての「フジロック」だったんですけど、かなり制限が多かったんです。でも野外という場所で、その場に立ち尽くして鳥肌が立つ、噛み締めて音楽を楽しむ、みたいなことがすごく特別な体験になって、この感動はコロナが明けても残していきたいと思って。で、僕はもともとサークルの中でライブを主催していたので、卒業するくらいのタイミングにコロナ禍で中止になったライブを改めて企画する中で、やっぱりライブの企画をするのが好きだなと思って、卒業後はぴあに入社して、チケットの営業をしてたんですけど、仕事とは別で自分でイベントをやりたいなと。なので、「フジロック」の経験を反映させながら、「Oaiko」というイベントの一回目を2022年9月に開催して、その延長でレーベルも始めた感じですね。

─Oaikoという名前も「フジロック」での経験が由来になっているそうですね。


マチダ:RADWIMPSの野田洋次郎さんが弾き語りで出演されていて、一曲目にやったのがハナレグミの「おあいこ」のカバーだったんです。そのときはその曲を知ってたわけじゃなかったんですけど、野田洋次郎さんの歌も素晴らしいし、メロディーも良くて、その曲が一番ゾクゾクってきて。コロナ禍が起きたのは僕が大学3年のときで、本来大学生活の中で一番楽しい時期といいますか、サークルでは幹部になって、自分のバンドでは外のライブハウスに出て、月5〜6本ライブをやってたので、そこが一気になくなったのは、青春を奪われたような感覚もあったんです。ただ、さっきの「フジロック」のように、コロナ禍があったからこそ体験できたもの、与えてくれたものも多かったのは事実だから、「それはおあいこだよね」みたいなところから、Oaikoという名前にしました。

─2010年代の日本のバンドシーンは「フェスで勝っていく」みたいな価値観があったりもしたけど、コロナ禍を経て、やっぱり正解は一つじゃなくて、それぞれのあり方が見直された気がする。その感覚とOaikoという名前は親和性があるし、時代にもすごくフィットしてるなって。


マチダ:その前までは四つ打ちのバンドがすごく多かったかなと思うんですけど、コロナ禍ぐらいから日本だとSaucy Dogが出てきたり、海外だとビリー・アイリッシュが出てきたり、言い方が難しいですけど、もうちょっと優しい音楽が台頭したというか。点で捉えた話かもしれないですけど、でもその雰囲気を大きいところでも感じていて、もっといろんな戦い方が出てきたのかなと思いました。

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─マチダくん自身のリスナー遍歴を教えてください。


マチダ:バンドの音楽を最初にちゃんと聴いたのが中学3年生で、当時CMで流れてたKANA-BOONの「1.2. step to you」にグッと心を奪われる瞬間があって、「バンドめっちゃかっこいい」みたいになって。その頃はゲスの極み乙女、[Alexandros]、KEYTALKとかがちょうど盛り上がり始めたときで、そういう邦ロックバンドを聴き漁り、そこからGalileo Galileiとかandropも徐々に好きになって。で、高校生になると洋楽を聴き始めて。それこそ「KANA-BOONからアジカン(ASIAN KUNG-FU GENERATION)に行って、アジカンから洋楽に」みたいな流れだったんですけど、The 1975とかThe xxとかをめちゃくちゃ好きになって、洋楽を漁ってましたね。

─オルタナティブなバンドに関してはどうでしたか?


マチダ:サークルのときに一番コピーをしたのはきのこ帝国でした。Ivy to Fraudulent Gameとかも好きでしたね。で、そこからインディーズのバンドをもっと探っていったときに、滋賀のバンドが結構好きになって。ギターロック寄りですけど、 WOMCADOLEとかQB and planetsとか、Rocket of the Bulldogs、Blume popoもそうだし。

─なんで滋賀だったの?


マチダ:滋賀にかっこいいバンドが多かったんですよね。理由はわからないですけど、滋賀B-FLATを中心に盛り上がってた気がします。

─昔からそうやってバンドを調べたり探したりするのが好きだった?


マチダ:めっちゃ好きでした。高校生からバンドを始めて、当時は文化祭でやるぐらいのバンドだったんですけど、高2からオリジナル曲を作り始めて、そうするとSNSで軽音楽部の大会とかを見るようになって、そういう大会で勝ってるバンドに憧れたりして、全国にどんな大会があるのかを調べて、そこからいろいろディグってみたり。あとは「RO JACK」の動画とかも全部見てましたね。そこで京都のMarie Louiseを知ったり。

─Blume popoも「RO JACK」でグランプリを獲ってますもんね。


マチダ:そうですね。あとは「閃光ライオット」に出てるバンドをチェックしたり、そういうのがインディーズバンドを漁るきっかけになりました。


─ちなみに、自分のバンドを続けようとは思わなかった?


マチダ:思わなかったですね。大学時代はよく渋谷のCRAWLでライブをやってたんですけど、頑張ってやっと100人集客できるぐらいだったので、これは到底プロは無理だろうという感覚もあり、さらにコロナ禍で先も見えないし、ちゃんと就職をしようと思ってバンドを辞めました。当時から音楽のプロモーションを考えるのも好きだったので、音楽業界で働きたい気持ちは逆に強くなって。それで実際に就職をしたんですけど、Oaikoの活動も少しずつ盛り上がってきて、2024年の10月に思い切って会社を辞めて、フリーランスとして活動するようになりました。

─Oaikoの立ち上げから数年経って、シーンの盛り上がり的なことが言われるようになって、Oaikoの広がりとも結果的に歩調を合わせていたように思います。マチダくんの視点から、今のシーン的な盛り上がりをどう感じていますか?


マチダ:やっぱりコロナ禍は大きくて、最初のきっかけとしてungulatesがあると思っています。downt、くだらない1日、ANORAK!の三つがリリースされたのが2021年とか。当時はまだ大学生で、サークルのみんなと「やばい!」ってなってたのをよく覚えてます。当時はこういうインディーズのシーンでみんなが知ってるのはPENs+とかsaidとか、あとはKOTORIとかAge Factoryとかだったと思うんですけど、ungulatesのバンドが盛り上がって、そこから2022年にkurayamisakaのファーストEPと、simsiisのセカンドEP、yubioriのファーストアルバムが出て、それは大きかったですね。その後の2023年にOaikoからひとひらのファーストアルバムを出して、そこが自分もその輪の中に入れた瞬間だったと思います。で、そこからは雪国、sidenerdsとか、今盛り上がってるバンドがどんどん出てきて、去年はこの流れが終盤に差し掛かったというか、みんなアルバムを出したし、特にkurayamisakaがファーストアルバムを出したのは決定的なタイミングだったのかなと思っています。かっこいいバンドがいっぱいいて、「自分も出したい」っていうのが連鎖したのがこの5年間ぐらいだったと思うんですけど、逆に今からは似たようなジャンルの中で群を抜いていいものは生まれにくいんじゃないかと思っていて、今年からはシーンの転換期に入ってきたのかなと思ってます。


─ungulatesがコロナ禍以降の流れで果たした役割は大きいですよね。ライブハウスが使えなくなって、バンドシーンが盛り下がっていくのかと思いきや、SNSを通じてむしろ広がっていった。


マチダ:当時ANORAK!がスタジオライブをやってて、スマホのライトを照明みたいにしてて、「なんだこれは?」と思って見てました。まだスタジオライブはそんなに主流じゃなかった気がするんですけど、あれが衝撃的すぎて、すぐにサークルでも取り入れました。「これなら学生部に怒られないじゃん」って(笑)。で、そういうことをSNSでみんなでシェアする、みたいな流れが一気に出てきて。

─OaikoもSNSの活用は特徴の一つですよね。


マチダ:SNSを頑張ろうっていうのは最初から決めてました。やっぱり自分たちだけで始めてるから、当然予算が潤沢にあるわけでもないし、自分たちでゼロから何かを生み出さないといけないって考えたときに、すぐにできることがSNSと、あとはビラを配ることで、意外とこの二軸だなと最初から思っていました。なので、SNSを頑張りつつ、いろんなライブハウスと仲良くなって、ビラを配らせてもらったり、友達を作るっていうところから、地道にやりました。

─SNSの時代になって、ビラ配りの文化はだいぶ減ってきた印象があったんだけど、今ってまた増えてたりするんですか?


マチダ:そういうわけではないと思うんですけど、自分は結構大事だなと思っていて。やっぱりライブハウスに行くと、置きビラとかも目にする機会が多いと思うから、こういうところをおざなりにしたくないと思ったんですよね。会社員になって、いろんなイベンターさんや制作さんとお仕事をさせてもらう中で、ビラがあることの意味を感じたというか、「こういうところをちゃんとやんなきゃな」っていうのはすごく勉強になりました。

─SNSとリアルと両方あることで、相互作用が生まれていくでしょうしね。


マチダ:そうですね。それをいかにスマートに見せるか、みたいなところはずっと意識してます。

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─SNSからの盛り上がりがありつつ、より大きなうねりになっていく中では、「ぼっち・ざ・ろっく!」のブーム、羊文学のブレイク、the cabsの復活とか、いくつかシーンに影響を与えるトピックがあったと思うんですけど。マチダくんの実感としては、今の三つだとどれが一番大きかったと思いますか?


マチダ:「ぼっち・ざ・ろっく!」は大きいかもしれないですね。ライブハウスに外国人のお客さんが来てくれるきっかけになってるなっていうのはすごく感じます。下北沢シェルターで初めて主催ライブをやったとき(2024年3月15日、Oaiko pre.「つむぐ」。その感激と記録、Blume popo、Fennelが出演)に、当日券で外国のお客さんが20人ぐらいいらっしゃったんですよ。シェルターの人に聞いたら、「最近はこれくらい外国のお客さん来ますね」みたいなことを言っていて、そこは自分も恩恵を受けた気がします。今はちょっと違いますけど、アジアとかに行きやすくなったのもそういうきっかけがあったからなのかなって。


─音楽やアニメが一緒になって、カルチャーとして伝わった。


マチダ:伝わってる気がします。そこから派生して、アニメジャケットみたいなところにもすごく影響があると思っています。Oaikoのプレイリストを上げてるんですけど、アニメライクなアートワークのプレイリストを作ったら結構反応があったり、「集めてみると、こんなに多いんだね」みたいな感じがあって。そういう意味でも、「ぼっち・ざ・ろっく!」は今の盛り上がりの一つのきっかけになってるのかなと思います。

─「1990年代や2000年代っぽい音がまた増えてる」みたいなことがよく言われる中で、じゃあ当時と今の何が違うかというと、やっぱりネットカルチャーとかアニメカルチャーが浸透して以降の感覚が大きくて。ジャケットの話もそうだし、女性ボーカルが増えてるのも、もちろんきのこ帝国や羊文学の影響も大きいだろうけど、ボカロの影響も同じくらい大きいはずで。


マチダ:僕もそれはすごく感じていて、ボカロでいうと、キタニタツヤさんの影響を受けてるアーティストが最近すごく多いなと思います。ジャキついた音楽をやりながらも、ダウナーな感じを取り入れてる子もすごく多くて、SleepInsideをもっとダウナーにしたような子たちが最近増えてきていて。しかも、それを聴いてるのは軽音楽部生っていうよりは、ギャルみたいな子だったり。だんだん新しいところに届いてるんだなっていうのを感じていて、それは面白いなと思います。

─アニメジャケや女性ボーカルも含め、kurayamisakaはまさに今のシーンの象徴的な存在になっていて。kurayamisakaも初期からの知り合いですよね?


マチダ:そうですね。イベントの2回目に出てもらってて(2023年1月12日に下北沢近松で開催された「Oaiko vol.2」。pavilion、ToyJoy、ANORAK!、kurayamisaka、音速ばばあが出演)、それが確かkurayamisakaの4回目のライブとかで、その頃から仲良くさせてもらってます。せだいやyubioriのライブにもよく行ってたので、ライブハウスでもよく会うし。

─最初から「このバンドは絶対大きくなる」という感じだった?


マチダ:めっちゃその感じがありました。出てきた瞬間に「何このバンド?すごくね?曲良すぎだろ」みたいな感じで、周りのみんな盛り上がってたのをよく覚えてます。

─そのkurayamisakaがファーストアルバムを出して、さっき言ってくれたように、2020年代前半の流れが一度ピークを迎えて、これからはそれぞれの動きがまた始まっていくのかもしれない。


マチダ:ジャンルとして、エモとかシューゲイザーが言葉としてわかりやすかったからよく言われていたけど、もっと広義のオルタナティブで輪が広がっていかないと、今度は逆にシーンが終わっていくと思ってますし、似たようなバンドは伸びにくくなってしまうと思うんです。ここからはよりジャンルが分散していくからこそ、自分みたいなレーベルやイベントをやっている身がそれを括って大きくしていかないと、シーンとしては盛り下がってしまうかもしれない。それは危惧をしているところで、だからこそ、そこを自分が担っていかなきゃいけないのかなと思ってます。

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─Oaikoの作品をFRIEDNSHIP.から流通するようになったのはいつからですか?


マチダ:しろつめ備忘録からです。もともと友達のバンドのリリースから始まったレーベルで、最初は「CD刷って、流通頑張るよ」くらいだったんですけど、4組目のリリースがしろつめで、その頃から「サブスクも頑張るよ」みたいになって。で、いろんなところにメールをして、どんな感じでやれるのかを聞いたときに、FRIENDSHIP.の平塚さんがすぐにめっちゃ熱量のあるメールをくださって、そこからキュレーターによる審査へ繋げてもらいました。FRIENDSHIP.はもともといろんなバンドがリリースしてるのを知ってたし、その返信もあって、FRIENDSHIP.とやりたいと思いました。当時はまだXのフォロワーも1000人ぐらいだったと思うんですけど、Oaikoのことを知っててくれて、すぐ電話で打ち合わせをしたのを覚えてます。


─FRIENDSHIP.を使ってみて、どんな印象ですか?


マチダ:自分ももともとバンドをやっていたので、ちゃんと対峙してくれて、プロモーション面とかで広めてくれる人がいるのはめちゃくちゃでかいなと思います。平塚さんとはLINEとかで密にコミュニケーションを取っていて、僕はもともとサブスクに対する知識はあんまりなかったんですけど、今割と色んな情報を客観視できるようになったのは、コミュニケーションを重ねられる人がいたから。今はボタン一つで配信ができる時代だからこそ、一緒にやってくれる人がいるのはすごく大きいことだと思います。

─さっきのビラ配りの話じゃないけど、ちゃんと顔が見える、直接的なコミュニケーションが取れることは、今の時代だからこそむしろ大事かもしれないですよね。今年に入ってのリリースでいうと、tiny yawnはどういう経緯でリリースすることに?


マチダ:去年はレーベル所属のアーティストを増やそうと頑張ったタイミングで、「アーティスト数をここまで獲得しよう」っていう目標を決めた中で、一緒にやりたいアーティストを書き出したときに、tiny yawnもその一組にいて。もともとイベントに呼んだりはしていたので、一緒にやれたら面白いかなと思って声をかけさせてもらったんですけど、最初は「もう自分たちは長くやってきていて、レーベルとかは考えてないので、情報共有ぐらいなら」っていう返信だったんです。でも一回打ち合わせをしたときに、自分たちの考えをちゃんと伝えたら、「じゃあ一緒にやってみましょう」と言ってもらえました。tiny yawnのnoteにOaikoと一緒にやろうと思った理由を書いてくれてるんですけど、僕はパッションで伝えるというよりは、建設的な話ができる人とやりたいっていうのがあって。それをちゃんと伝えたら、そこに共感してくれました。


─今のOaikoにはイエティ(yeti let you notice)がいて、uremaも入ってきたり、2010年代から活動をしているバンドも増えつつあります。同世代だけじゃなくて、上の世代も巻き込むことは、もともとやりたいことだったのでしょうか?


マチダ:そうですね。しろつめ備忘録をリリースした後にイエティとやることが決まったんですけど、それまでは2〜3個下ぐらいの年の子たちだけしかいなかったので、上の世代を一バンド入れたいなと思っていたときに、イエティとの取り組みが始まっていて。

─もともとイエティの側からアプローチがあったんですよね。


マチダ:僕もイエティはすごく気になっていたのもあって、相思相愛みたいなタイミングだったんですけど、イエティとやり始めて、レーベルの中に上の世代のバンドがいることによって、相乗効果が起き始めたというか、上のバンドを入れると、その経験値が下に伝染していくのを感じたんですよね。なので、上の世代のバンドも一定数は入れたいなとずっと思っていて、その中でもカラーが違うバンドをなるべく入れていきたいと思っていたり。あとは東京のバンドだけをリリースするレーベルにはしたくないので、関西のuremaやcolormalがいたりっていうのも意識しているところではあります。

─それでいうと、今年からリリースしているsaddは三重のバンドですね。


マチダ:saddは2025年に出たファーストEPが衝撃的で、一聴き惚れというか、そこで心をガッツリ動かされたので、声をかけさせてもらいました。やっぱり地方のバンドは東京にはない各地のカラーが音楽に反映されるのが面白くて。例えば、仙台のTIDAL CLUBは寒い地域ならではの音楽だけど、その中にちゃんと熱量が感じられるのが面白いし、colormalも関西のインテリ感みたいなところが独特だし、そういう東京にはないものを各地のバンドは見せてくれるので、その中で光っているバンドとは一緒にやっていきたいです。


─じゃあ、これからもリリースするアーティストの数は増やしていきたいと。


マチダ:そうですね。最近だとフェスで出演者オーディションをやって、普通だとライブ審査をやって終わりが多いじゃないですか。でも僕はレーベルからのリリースをプライズに入れてたので、音源審査、ライブ映像審査の後に、最終審査で面接をして、各バンドと一時間くらい話をしたんです。やっぱり対話はすごく重要だなと改めて感じて、バンドそれぞれのカラーも見えたし、そこでいいなと思ったバンドは、今回選ばれなくても、今後イベントに呼んだり、関係値を築けるきっかけになったので、そういう繋がりはこれからも大事にしたいです。

─今回オーディションで選ばれたのは砂場泥棒で、FRIENDSHIP.的には日髙晴野さんとのコラボレーションで1曲リリースがあるので、縁があるなと思いました。


マチダ:砂場泥棒は京都大学のバンドなんですが、めちゃくちゃ面白くて。音楽性ももちろんなんですけど、考え方も面白い。京都の熊野寮の寮生なんですけど、そこで新たなカルチャーを起こそうとしている姿勢とか、エネルギッシュさとか、そういうところに惹かれて、この子たちとレーベルで一緒に混ざったら、もっと面白いことができるなと思ったのが一緒にやりたいなと思ったきっかけでしたね。


─音楽はもちろん、人間的な面白さも見ていると。


マチダ:「レーベルや事務所が売ってくれる」っていうスタンスだと、やっぱりうまくいかないと思っていて。特にまだインディーズの規模だと、まず自分たちが必死こいてやって、それでも届かないところに、第三者が関わることで視界を広げてあげて、その上で最終的には自分たちで目標の場所まで行く、くらいのスタンスじゃないと、いつまでたっても売れないと僕は思っています。そういう意味では、やりたいことがたくさんあって、「自分たちのエネルギッシュさを持て余してます」みたいな感じのバンドと一緒にやる方が楽しいなと思いますね。

─イベントも頻繁にやっていて、レーベルのアーティスト数も増えてきて、フェスに繋がっていくのは自然な流れのような気もしつつ、なぜこのタイミングでフェスを開催することにしたのでしょうか?


マチダ:去年初めて「みちしるべ」っていうツーマンのシリーズイベントをやって、SNSの反響で「次はフェスをやってほしい」みたいなのをちらほら見たんですよね。で、確かにこのままツーマンをやっていってもまた一緒だから、次のステップに上がりたいなと思ったときに、このタイミングでフェスをやっても面白いんじゃないかって、最初はそれくらいのテンションでした。で、やるなら渋谷のWWW中心にやりたいなと思ったのが去年のちょうど6月ぐらいでした。

─Oaikoは「適応」という言葉を掲げていて、フェスのホームページにも「Oaikoは、令和という時代に"適応"した形で、素晴らしいオルタナティブミュージックを中心としたフェス体験の創造を目指します」と書かれています。時代に適応したフェスのあり方とは、どのようなものだと考えていますか?


マチダ:フェスはアーティストがたくさん集まるものなので、シーンとして見えるものの一番顕著な例だと思っています。タイムテーブルを見返すだけで、その当時の音楽がわかる。そういうアーカイブとしてフェスがあることは、自分たちのやる意義があることだと思っているし、その中から新しく生まれるカルチャーは絶対にあると思うんです。当日生まれる音楽もそうですし、見に来てくれたお客さんがその日に出ていたバンドに憧れて、自分で音楽を始めたり、そういう連鎖でフェスとしての文化が繋がっていくみたいなことをやりたいし、それがフェスをやる意味になっていくんじゃないかなと思ってます。渋谷でやるのもすごく意味があって、渋谷はカルチャーの中心になる街だと思うから、そういう場所で一回目がやれるのも自分の中では大きなことです。


─WWWやWWXはお客さんとしてもよく通っていた?


マチダ:そうですね。ライブをよく見に行ったり、仕事でもよく行ってたので、いつかここでイベントをやりたいなっていうのはありました。なので、感慨深いですね。徐々に輪が広がってきて、もともと思っていた「シーンを作りたい」っていうのが実際に形になってきて、ここが一つの集大成になるんじゃないかなと思います。

─ラインナップはどのように決めていきましたか?


マチダ:ブッキングは結構大変でた。レーベルのバンドはなるべく出したいなと思いつつ、そこの選定はシビアにやっていった気がします。何でもかんでもレーベルのバンドだから出そうとは全然思ってなくて、「今のタイミングなら、ちゃんとこのバンドを押し出せる」と思ったバンドにオファーをしました。あとはやっぱりライブがかっこよくないバンドを押し出すわけにはいかないっていうポリシーはあって、ネームバリューだけで呼ぶことはせずに、今回呼んだのは全組自信を持って見てほしいアーティストばかりですね。

─TONEBOOKとのコラボがあったり、芸人さんを呼んだり、ライブ以外の要素を入れることも最初から考えていた?


マチダ:なるべくいろんなカルチャーを取り入れていこうと思ってて、XXIを借りたときに、お笑い芸人さんは最初から呼びたかったんですけど、弾き語りとかの形態で今めちゃくちゃ見たい人誰だ?ってなったときに、あんまり思い浮かばなかったのが正直あって。そんな中で、TONEBOOKさんに声をかけたら面白いことができるんじゃないかなって。これまでは「ギターマガジン」とか雑誌しかなかった中で、アプリに移行したのはすごく時代に適応しているなと思っていて、声をかけさせてもらいました。

─芸人さん含め、いろんなカルチャーを混ぜることは大事なポイントだと。


マチダ:今後も「Oaiko FES」ができるとしたら、お笑い芸人さんじゃなくても、何か違うカルチャーの要素を加えて、その輪を広げていきたいと思ってます。混ぜるカルチャーがデカすぎちゃうと、よくわからないものになっちゃうと思うんですけど、自分たちのものとして見せた上で、違うカルチャーが混ざることによって、その輪が広がるようにしたくて。今年の出演者で言うと、RAYがその象徴的なアーティストになると思っていて。

─アイドルカルチャーを混ぜる。


マチダ:そうです。メインビジュアルを内山(結愛)さんに担当してもらったのも、RAYは今アイドルとバンドの懸け橋になっていて、内山さんという存在はその中での象徴だと思っているので、そういう輪は大事にしていきたいです。常に「これいいな」と思うことは取り入れて、それが自分たちの形になっていけばいいと思っているので、いろんなイベントを見た上で、面白いことはちゃんと取り入れたいと思ってますね。最近だとAVYSSをすごくリスペクトしていて、この前の「AVYSS Circle 2026」に遊びに行かせてもらったときも、クラブシーンとバンドシーンの融合を感じたし、装飾もこだわってる感じがあって、そういったところに自分はワクワクを感じて。僕はクラブカルチャーに対してはそこまで精通してないけど、バンドカルチャーには精通しているつもりなので、そこの文脈に新しいものを少しずつ入れて、2020年代後半は新しいOaikoの形を作っていきたいなと思います。

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─タイムテーブル的には、イエティがヘッドライナーと言っていいかと思いますが、それは最初から決めてたんですか?


マチダ:いや、最初は結構悩みました。大きい規模感のアーティストを大トリにするのも形としては綺麗かもしれないけど、でもせっかく自分たちが一番顔となるフェスなんだから、レーベルとして、今一番推せるバンドを大トリに置くのがいいんじゃないかっていう結論になって、それでイエティにお願いしました。

─ちょっと前だったらひとひらだったと思うけど、イエティは世代をつなげるきっかけになったバンドだし、2026年のOaikoを示す意味ではぴったりだと思います。


マチダ:自分たちのレーベルのフェスだからこそ、今後もやっていくときは、やっぱり大トリはレーベルのバンドに務めてもらって、それがちゃんと成り立つようにしていきたいなと思います。

─では最後に、この先のOaikoの展望を聞かせてください。


マチダ:期待されているものを常に超していきたいっていうのが一番かもしれないです。フェスもイベントもどんどんやっていきたいし、リリースも増やしていきたいし、そこで毎回ちゃんと期待されているハードルを超えて、常にその期待が高まっていく状態にして、それを振り返ったときに、Oaikoっていうシーンがあって、「昔こんなのいたんだ?」ぐらいになっていくのが大事なことかもしれない。期待を超えていくっていうことは、やっていくことのハードルを上げていくこともそうですし、例えば、AVYSSで言うと最近雑誌を出したり、「常に新しいことをやる」ということにもつながっていくのかなと思っていて。自分たちも「これは確かに面白そうだね」っていうことをどんどんクリエイティブとして出して、「これがコロナ禍以降の新しいコンテンツの楽しみ方なんだな」って思ってもらえるようなことをやっていきたいなと思います。

─「適応する」っていうのは型にはめることではなくて、アップデートをし続けていくことであって、だからこそ、Oaikoはこれからも常に新しいことをやっていくと。


マチダ:そこはめちゃめちゃ大事にしてますね。SNSの形もどんどん新しくなるじゃないですか。それに対して常にOaikoから新しいものを発信していくし、作っていく。その精神を絶やさないことがすごく大事なことだと思います。

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取材・文:金子厚武
撮影:稲垣ルリ子

LIVE INFORMATION

Oaiko FES 2026
oaikofes_flyer_1000.jpgOaikoFES_2026_TT_02_1500.jpg
2026年6月7日(日)
会場:東京・WWW X / WWW / TOKIO TOKYO / SHIBUYA FOWS / SHIBUYA XXI※5会場同時開催
OPEN 13:00 / START 14:00

アーティスト(出演者) :iVy / yeti let you notice / 宇宙ネコ子 / urema / Enfants / えんどあ。 / colormal / KOTORI / sidenerds / 笹川真生 / サツマカワRPG / simsiis / chouchou merged syrups. / 砂場泥棒 / SleepInside / TIDAL CLUB / tiny yawn / downt / Trooper Salute / hardnuts / Hammer Head Shark / fulusu / Blume popo / Homecomings / 揺れるは幽霊 / ルサンチマン / RAY

出店:HOLIDAY! RECORDS / Sleep like a pillow / 枕眠堂

TONEBOOK STAGE:ねぎしのはん(sidenerds)/やささく・イエナガ(colormal)/秋好佑紀(yeti let you notice・えんどあ。)/中野(ルサンチマン)/清水(ルサンチマン)

チケット情報:
一般 ¥7,000(税込)※SOLD OUT!

※スタンディング
※ドリンク代別
※中学生以上はチケット要
※チケットの譲渡、および転売は禁止とさせていただきます。
※出演者は都合により変更・キャンセルとなる場合がございます。変更に伴う払い戻し受付はございませんので予めご了承ください。

<注意事項>
※雨天決行/荒天中止
※公演当日リストバンドへの引き換えが必要となります。リストバンド交換の開始時刻・交換場所については後日SNSにてアナウンス致します。
※リストバンド交換時、イベントドリンク代として¥600を徴収させていただきます。
※場内でリストバンドを外された場合、または紛失した場合は、ご退場いただくか、再度購入していただきます。取り扱いには十分ご注意下さい。
※モッシュ/ダイブ等の周囲のお客様に危害を及ぼす可能性のある危険行為はご遠慮いただいております。
※会場内・外で発生した事故、盗難等は主催者・会場・出演者は一切責任を負いません。
※過度の飲酒はおやめ下さい。周りに迷惑をかけるなどの泥酔者は強制的に退場していただく場合がございます、予めご了承下さい。
※本イベントは出演者によって写真撮影可/不可がございます、公式アナウンスをご確認下さい。

INFO:エイティーフィールド 03-5712-5227 / http://www.atfield.net/

主催:Oaiko FES 2026 実行委員会
制作:ATFIELD inc.
協賛:Eggs Pass、TONEBOOK

PROFILE

kanekoatsutake_20210528.jpg金子厚武
1979年生まれ。埼玉県熊谷市出身。インディーズでのバンド活動、音楽出版社への勤務を経て、現在はフリーランスのライター。音楽を中心に、インタヴューやライティングを手がける。主な執筆媒体は『CINRA』『Real Sound』『ナタリー』『Rolling Stone Japan』『MUSICA』『ミュージック・マガジン』など。『ポストロック・ディスク・ガイド』(シンコーミュージック)監修。デジタル配信サービス「FRIENDSHIP.」キュレーター。
@a2take / @a2take3

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オフィシャルサイト
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