何気ない行動や日々の余白をも浮遊感ある音楽に昇華「設計図」-Highlighter Vol.260-
INTERVIEW
2026.04.29
制作スタンスの変化が示すバンドの現在地──odol『slow blink』インタビュー

『バンドはこうあるべし』みたいなものがなくなった
─まずは遡って話してみると、2024年10月にここLIQUIDROOMで10周年のライブがあり、2025年は表立った活動はそんなになくて。ファンのみなさんからすると、「odolはどうなってるの?」という気持ちもあったかなと思うんですけど、実際は水面下でずっと曲を作っていたのか、それともお休みをしてる期間もあったのか、2025年はどんな感じだったのでしょうか?
森山公稀:曲も作りつつ、お休みもしつつっていう感じだったかな。
ミゾベリョウ:2024年や2025年に作った曲を、2025年末や2026年に入ってからリアレンジしたパターンも結構あったよね。
森山:曲自体は2024年も2025年も作ってたんですけど、アルバムにするのか、EPとかシングルで出すのかがあんまりピンと来てなくて、デモがいくつかできても、「これをまとめて出そう」という気持ちにならなかったから出さなかった、みたいなところがあったんですね。でも2025年の末ぐらいから「今年何もしてないね」みたいなムードが僕らの中でも出てきて、「そろそろアルバム出したいね」っていう気持ちが芽生えて。そのときはまだ4〜5曲ぐらいしか、アルバムに収録できそうなものは完成してなかったんですけど、そこからバーッと残りの曲を作った感じです。
─ソフィアンくんにとって2025年はどんな1年でしたか?
Shaikh Sofian :僕はプレイヤーとしての修行期間だと思ってた部分もあって。odolが3人編成になってから、いろんな強豪プレイヤーの人と一緒にやる機会も増えてきて、「このままじゃ置いてかれちゃうぞ」みたいな気持ちが蓄積されていた部分もあったんです。なので、10周年ライブを経て、去年はベーシストとしてもう1ランクアップするにはどうしたらいいのかを考えて、同じようなベーシストとたくさん会って、相談に乗ってもらったりして。それを経てodolの制作期間に入ったから、その期間に得たものを発揮するレコーディングになったんじゃないかと思います。
─ミゾベくんは2025年はどんな1年でしたか?
ミゾベ:odolとしてはライブをしてなかったんですけど、ちょいちょい弾き語りのライブがあって、一人で演奏はしていて。それはソフィアンと同じく修行的なところもあったかもしれない。2024年のLIQUIDROOMのワンマンは、自分たちの活動の中の1個の山場みたいなところもあったので、その後は燃え尽き期間もあった気がするんですよね。でもその期間を経て、2026年はまたいろいろやれそうだなって、水面下でプロジェクトが始まっていったので、そこに対しての準備にはなったと思います。
─森山くんも若干の燃え尽きとかあったんですか?
森山:いや、全然ないです。前作の『DISTANCES』を出して、やっぱり続けることが大事だなと思ったんですよね。辞めないことっていうか、早く作品を出すことよりも、続ける方が大事だって、自分の中で決めたんですよ。なので、燃え尽きて何も出来なくなってたわけじゃなくて、2人もそれぞれ色々やってたし、僕もソロをやったり、そういう時間が取れたのは良かったなと思うし、結果的にこうやって無事にアルバムができたので、必要な時間だったのかなと今は思いますね。
ミゾベ:調べたんですけど、『はためき』が「2年8ヶ月ぶりのアルバム」って書いてたんで、それよりは早かったんですよ(笑)。
─今回は2年5ヶ月ぶりですもんね。2025年に表立った活動が少なかっただけで、決して期間が空いたわけじゃない。
森山:odolとしては通常のペースでした(笑)。
─アルバムのテーマやコンセプトに関してはいかがですか?
森山:前まではいろんなことに囚われてたんですよ。バンドなんだから、集まって曲を作る方がいいとか、自分のソロプロジェクトみたいにしたくない気持ちもあって、それは2人にも常に言ってたし、だから別にやることがなくてもわざわざ集まったりもして。でもそれで時間だけ過ぎてもしょうがないし、そういうことにあんまり囚われなくなって、「好きにやればいい」という気持ちに変わって。それで結果的によりバンドっぽくなったのもあるんですよね。なので、「よし、今からodolの制作期間だ」というよりは、いろんなことの間で、odolの曲を進めたくなったら進めて。「バンドはこうあるべし」みたいなものがなくなったというか、そのバンドごとにバンドらしさはあるから、「odolのやり方でやればいい」と思えるようになったのは大きな変化でした。
ミゾベ:確かに、前までは曲を作ったりすることに対して、ちょっと堅苦しく考えてた部分があった気もするんですけど、今回は一番自由に作れた気がします。『DISTANCES』とか、『はためき』とか、バンドにとってのタイミングを考えて、そのタイミングにとって、どんな歌詞だったり、どんな歌が必要なのか、自分に必要とされてるものを探すみたいなところもあったと思うんですけど、今回は割とそのまま書けたような気がしますね。
─確かに、コロナ禍だったり、 10周年だったり、どこか使命感を持って作るような時期が続いたかもしれないけど、今回のタイミングは特別そういうものがあったわけではなく、だからこそ自由に作れた部分もあったのかもしれない。
ミゾベ:そうですね。
─ソフィアンくんはどうですか?今回の制作を振り返ると。
Shaikh:今までのodolのスタイルは、デモの段階でめちゃくちゃ作り込んでたんですよ。今回は森氏(森山)が余白のあるデモを作ってくれることが多くて。レコーディングに参加してくれたプレイヤーは、各々特色のあるドラマーさんやギタリストさんで、そういう人たちが能力を発揮しやすい場をそもそも整えてくれてたんですよね。で、実際にドラムを録って、ベースを録るってなったときに、今までと比べて、すごい生もの感というか、今この場で作り上げられてるんだなっていうのをひしひしと感じながらレコーディングしてる瞬間がすごく多くて。結果的に人の身体性みたいなものが今までの作品の中でピカイチ出てるのは、そういう背景があるんじゃないかと僕は感じてます。
森山:『はためき』までは全員がメンバーだし、まだみんな暇だったので(笑)、もう夜から朝まで、何日も何日もかけて同じ曲をみんなで聴きながら、ああだこうだ言いながらやっていて、そうなると僕が全部の音を知れるじゃないですか。その都度、「これはこっちの方がいい」とか結論を出しながらやってたら、レコーディングではもう余地がないというか、その通りにやるだけで終わっちゃうし、一人が勝手に変えたら成立しなくなったりするので。でも徐々にいい音とかいい演奏みたいなものの考え方も変わってきて。そもそもバンドの音楽はすごく雑な音楽だと思うんですよ。曲によっては譜面も存在しなかったりするし、演奏するたびに違うことが起こるし。でもその曖昧さみたいなものがバンドサウンドを形作ってるじゃないですか。だから、正確に録音すればいいんじゃなくて、その人らしさが出た方がいいし、ギターの音も、僕が鳴ってほしい音じゃなくて、ギタリストが鳴らしたい音が録れた方がいいとか、そういう風に気持ちが変わってきたんです。今回のアルバムは特にそれを考えながら録ったところもあったので、レコーディングの進め方もそういう風になってきましたね。ソフィアンのベースも、僕が細かいフレーズを全部考えちゃうんじゃなくて、大体のダイナミクスだけを伝えたら、僕が打ち込みで作ったデモに忠実なやつと、ソフィアンがやりたいようにやったやつと、2個送ってくれて。
Shaikh:デモガン無視バージョン(笑)。
森山:今回はそれを組み合わせながら作っていて、その方がレコーディングも楽しいんですよね。
─最近よく言われる話かもしれないけど、 AIによって、変に整えられたような音楽はいくらでもできるようになって。でもだからこそ、さっき言ってくれた雑味だったり、バンドだからこそできることに目が向いたのかもしれない。
森山:そうだと思います。しかもそれは音の話だけじゃなくて、バンド活動ってそもそもそういうものだなって。複数の人が一つの音楽を作るわけで、いろんなミスコミュニケーションとか、ぶつかったりとか、そういうことが無限に起きるじゃないですか。言い方が難しいですけど、ネガティブな意味じゃなくて、バンドで音楽を作るってめちゃくちゃストレスがかかるし、大変なんですけど、でもそのこと自体に一番価値があると感じてて。自分の中の常識とか、自分がやりたかったことを乱されることで、新たな自分の美学が形成されていくわけじゃないですか。自分だけでやってても、同じことの繰り返しになっちゃうけど、ノイズが入ることで、自分の中の感性がより立体的に育まれていく。バンドはそういう場だと思うようになったんですよね。
Shaikh:その感覚を途中から僕も察してきて、「森氏を困らせてやりたい」みたいな気持ちが出てきて(笑)。途中から、どうやったら森氏が一番困るかを考えながらやってて、そこはもっとやれたかなっていう気もする。これまでは森氏と仲良くすることばかり考えてたけど、もっとストレスを与えられるような存在にならなきゃなっていうのは、最近の課題として感じてますね(笑)。

概念化された猫みたいな距離感
─みなさんにアルバムを聴いてもらう前の挨拶で、森山くんが「明るいアルバムになったと思う」と話してくれたように、実際今回のアルバムは開かれた、自由で軽やかなムードが感じられて、その背景にはバンドに対する意識の変化があったわけですね。
森山:明るい曲を作ろうと思って作ったというよりは、いろんな曲を作ってた中で、「これを進めたい」と思ったのが結果的に明るい曲だったんです。あとは歌詞についても、自分の中のコンセプトとして決めたことがあって、今回は内容に関して一切口出ししてないんですよ。前回までは、「これは何を伝えたいの?」とか「こことここって矛盾してない?」とか、歌詞の意味についてもディスカッションをして、レコーディング当日まで調整をしてたんです。でも今回は「メロディーに対してこの言葉はノリが悪い」とか「この歌詞にするならメロディーはこっちにしようかな」とか、音楽に対して齟齬があったら言うんですけど、何を歌うかには一切関与しないようにしたんです。やっぱり違う人間だから、2人で作り込めば作り込むほど、硬さが出ちゃうと思うんですよね。なので、今回はミゾベが自由に書いた歌詞をなるべくそのまま生かしたので、そこもアルバムのムードに関係してると思います。
ミゾベ:前までは森山に聴かせて、「いいね」ってなったら、「あ、いいんだ」みたいな感じで、「これはよくわからなかった」ってなったら、そこから壁打ちもできたんです。ほとんど一人で作ってはいるんですけど、「最終的には森山がなんとかしてくれる」みたいなところもちょっとはあった。でも今回は2曲目に作った曲ぐらいから、「あれ、何も言ってこないぞ」と思って(笑)。
森山:それは伝えないでおこうと思ってたんですけど、まあ伝わっちゃいますよね。
ミゾベ:前までは森山の意見もあって、「ここはつじつま合ってないけど、そのまま行こう」っていうのがなかったんです。「ここは伝わりづらいかもだけど、自分的にはフレーズがいいからこのまま行こう」と思ったやつも、森山から「そこはちょっとわかんない」って言われたら、調整するようにして。でも今回は自分でもっと責任を持つ感じになって...それは前からそうなんですけど、でもこれまで以上に自由に書いたところはありました。
─さっきの演奏に関する雑味の話とも通じるというか、これまでは整合性を大事にしてたけど、そこは一旦取っ払って、それよりも「この言葉がいいから」を尊重していて、それはある意味、雑と言えば雑なのかもしれないけど、だからこその良さが出る。
ミゾベ:そうですね。ラジオの収録で、「電話」に対して、「普通はこのサウンドでこんな歌詞にしないよね」みたいなことを言われたんですけど、実際「電話」は「逆にこういう歌詞にしよう」と思って書いた曲だったので、そういうのも今回だからこそかもしれない。ビートは激しかったりするけど、結構パーソナルな歌詞で、そういう普通だったらやらなそうなこともやれたのは、今回ならではですね。
─ソフィアンくんはアルバム全体のムードに関してはどう感じてますか?
Shaikh:森氏の雰囲気が変わったというか、モードが移り変わったんだなっていうのを一番感じてるのは僕とミゾさんだと思うんですけど、最初から戸惑いがなかったかというと、そうではなくて。森氏が若干、諦めじゃないけど、突き放した感じというか、「俺は関係ねえぜ」みたいな感じになってしまったんだとしたら、それはちょっと悲しいなって。
森山:むしろ信頼が増した感じなんだけどね。
Shaikh:最初はその戸惑いがちょっとあって、不安でした。でも作品を作っていく中で、「こういうことなんだな」っていうのを、徐々に感じていって。
ミゾベ:森山がその感じになったのはRyuさんの影響もあるのかなって。Ryu Matsuyamaにアレンジとかライブサポートで関わりだしたじゃないですか。
森山:うん、ちょうど前のアルバムの直後ぐらいから。
ミゾベ:そうそう。それも影響あるのかなとうっすら思ってて。僕ら今Ryu Matsuyamaと一緒に曲作ったりしてて、Ryuさんは判断が鬼のように速いんです。だし、「全部やってみよう」「それいいね!」みたいなキャラで、odolにはそんな人いないんですよ。
Shaikh:判断速いと逆に怖いですよね。
森山:ダメそうなところを見つける方が得意だな(笑)。
ミゾベ:森山がRyuさんとどう関わってるかはわからないですけど、俺はRyuさんと出会ったことによって、制作が楽しくなったんですよね。なので、そういう空気感がodolの制作にも流れ込んできたのかなと思ってた。
森山:確かに、その影響も絶対ありますね。あとは僕前回のアルバムまで20代で、今回のアルバムが30代になって初めてのアルバムなんですよ。25歳ぐらいのときから、「20代はodolのために全てを捧げよう」みたいな、自分の中の決意っていうか、自分との約束みたいなものがあったんですけど、30歳になって、それを解禁したところがあって。もちろんodolは大切なプロジェクトなんですけど、自分自身の作品作りとか、生活とか、そっちにもちゃんと向き合っていこうと思って、それでソロライブを始めたり、作曲の仕事も受け始めたりして。そうすると、基本的に僕は頼まれて、音楽を作りに行ったり、アレンジをしに行ったりするわけで、途中でも言ったように、こんなにノイズが発生する現場はodolしかなくて、でもそれこそがバンドの良さで。Ryuさんとの出会いもあったりしつつ、バンドというカオスな場の存在意義が自分の中で増したんですよね。
─アルバムのタイトルが『slow blink』で、「猫が目を細めてゆっくりと瞬きをする、敬愛や信頼を示すサインのこと」。このタイトルはどれくらいのタイミングで出てきて、なぜこれに決まったのでしょうか?
森山:タイトルは最後の最後で、ジャケットが決まった後に決まったんです。
─猫ジャケが決まった後に。
森山:はい。ジャケットが先で、「じゃあ、猫のワードにしよう」みたいな。写真家の濱田(英明)さんにジャケットをディレクションしてもらってるんですけど、最初のミーティングで何気なく猫の写真を見せてくれたんです。「不思議」の MVに出てくれてるメグちゃんっていう猫なんですけど、それを見たときに「これめっちゃいいじゃん」みたいな空気に満場一致でなったんですよ。濱田さんは「え?もう決めちゃっていいの?」みたいな感じだったんですけど。
Shaikh:僕もその日は朝までコースだと思いながらミーティングに臨んでました。
森山:前作までは長い時間ミーティングをしてたんですけど、今回は30分ぐらいのミーティングで、「これでいこう」となって。もちろん、それを撮り直していただいてるんですけど、この方向性は割と直感で決めました。で、ミゾベに「今回どういう歌詞なの?」って聞いたら、「全部愛の歌になってた」みたいなことを言ってたので、愛情表現的なワードを探して、『slow blink』を見つけたんです。僕らは誰も猫は飼ってないんですけど。
─誰か飼ってるのかなと思ったんだけど、そうではないんですね。
森山:飼ってないからこそ、いい距離感というか、特定の「あの猫」じゃなくて、ソフィアンの言葉で言う「概念化された猫」みたいな、猫っていう存在が僕らに与える心地よさとか、幸せとか、寄り添ってる感じが、odolの音楽とマッチする部分があって、しっくりきたんです。それが猫じゃなくて、例えば、人対人の愛情表現だと、もっと固有なものじゃないですか。それぞれに深いストーリーがあったりする。でも僕らが猫を飼ってないことによって、ちょっと抽象的な愛情表現になるというか、具体的なエピソードがないので、それがすごく程よい温度感だなと思って、このタイトルになりました。
─「全部愛の歌になった」というのは、ミゾベくんはどう感じていますか?
ミゾベ:今までのodolの曲にもいわゆるラブソング的なアプローチの曲があるにはあるんですけど、少なかったんですよね。でも世の中の曲で一番多いのはやっぱりラブソングだと思うし、自分たちの楽曲に気持ちを重ねてくれる人もたくさんいるから、今回はラブソングを解禁して、いっぱい書いてみようかなと思ってたら、結果的に全部そうなったっていう。実際は裏テーマがあるような曲とか、ダブルミーニングの曲も多いんですけど、そういう意図で愛の歌が増えた感じですね。
─特定の人への愛情もあるかもしれないし、概念的な愛情もあるかもしれないし、音楽に対する愛情もあるし、多様な愛が描かれてるというか。
ミゾベ:まさにそうです。バンドのことを歌った曲がいくつかあったり、友達とかのことを考えて、「この人に聴かせたい曲」とか「この人が歌って欲しいであろう歌」みたいな書き方も結構してますかね。あとはまあ、そんなにいい話じゃないですけど、10周年を経たので、最初の2曲をレコーディングしたときぐらいに、スタッフやメンバーと「もうちょい新しいドアを開きたいね」っていう話をして。そこから「じゃあ、ラブソング解禁するか」みたいになって、それで作っていったのもありました。
─具体的な曲の話をすると、個人的には「ごめんね」がアルバムを象徴する曲だと感じました。一つは音の面で、今回ホーンが印象的に使われていて、それが作品全体の愛情とか温かみみたいなムードにもつながってると思うし、歌詞の面でも、ラブソングと受け取れる歌詞だと思うし。この曲はどのように生まれたのでしょうか?
森山:「ごめんね」は一番最後に作ったんですよ。収録曲が出揃ってきた頃に、スタッフからアルバムを代表するような、いわゆるリード曲が欲しいというような期待があって。僕自身は全部そのつもりで作っているんだけどと思いつつ、じゃあそれにもちゃんと応えながら、自分が好きなことをしようと思ったんです。どういうサウンドだったらメンバーやスタッフをいい意味で裏切りながら、「でもこれリードだね」ってできるのか。それで何曲か作って、今の「ごめんね」ができたんです。結果的に割とストレートな、ギターロック的なサウンドにはなってるけど、それがむしろ今のodolには新しいし、一番『slow blink』のための曲でもあるって感じですかね。
─ソフィアンくんは「ごめんね」に対してはどんな印象ですか?
Shaikh:やっぱり最後にできた曲っていうのが大きいですよね。今回もたくさんのゲストに参加していただいて、ギターの迅さん(Laura day romanceの鈴木迅)とか、ホーンの真砂(陽地)さんとか、アルバムの制作を通して、「この人はこういうプレイをするんだ」っていうのを知って、最終的にアルバムをまとめる曲を作るってなったときに、それまでの過程が全部あったからこそ、このまとまり方ができてる。最初からこういう曲を作ろうってなってたら、全然違う形にまとまってたと思うんですけど、アルバムの最後のフェーズでこの曲を作ろうってなったのが重要なことなんだなっていうのは、さっきの森氏の話を聞きながら強く思いました。
─迅くんは今回初めてアルバムに参加しているわけですが、どのような経緯で?
森山:ミゾベがもともとLaura day romanceのファンで。
ミゾベ:めっちゃ好きで。
森山:僕におすすめしてくれたんですよ。
ミゾベ:迅さんがSNSで「odolめっちゃ好きです」って言ってくれたのもあって、めっちゃ忙しいだろうなと思いながら...。
森山:一応聞いてみるかで連絡してみたら、快くオッケーしてくれました。
─「ごめんね」の歌詞に関しては、どのように書いたのでしょうか?
ミゾベ:2024年に一回ボツにした曲の中に、「連れて行ってあげられなくてごめんね」っていうテーマで書き始めた曲があったんですけど、「ごめんね」は最後に作った曲で、タイトなスケジュールだったから、歌詞を完成させられそうな曲がそれぐらいしかなくて、この続きを書こうと思って。今はもう落ち着いてるんですけど、当時2人に話してたのは、ファーストとかセカンドを作ったときは若かったので、すぐに武道館に行くぐらいの感じで思ってたんですよ。でももちろんそんなに甘くはなくて、実際にはそうはいかないことにフラストレーションがあって。で、僕はボーカルなので、「自分のせいだな」みたいな気持ちがあって、そういうテーマの曲を書こうかなと思って、そこから書き始めてはいるんですけど、最終的には違う感じになりました。あとこの曲はシンセでメロディーが入ってるデモが送られてきたときにめっちゃいいってなって。スタッフとかだと「シンセじゃわかんねえ」ってなるんですけど(笑)。
─歌じゃないとイメージが伝わりづらい、みたいなね。
ミゾベ:なんですけど、逆にシンセのメロディーはそこから無限大の歌詞が入れられるから、自分の中では最初のシンセを超えられない曲が結構あって。「ごめんね」も最初はそういう曲で、歌ってもなかなかしっくり来なくて。それを超えるには、マインド的に強い気持ちで書いた曲が必要だなと思って、それでこの題材で書き始めたっていうのもありました。
─最初はちょっとマイナスな気持ちで書き始めた「ごめんね」という言葉だったのかもしれないけど、〈だから今はその目を細めてただ笑って〉という歌詞もあるように、このアルバムの親愛や信頼のモードに当てはまることによって、誰かに対する愛情としての「ごめんね」という言葉に変わったというか、昇華されたというか、そんな印象もあるのかなって。
ミゾベ:そうですね。これは人に言われた言葉なんですけど、「ごめんねだけど、ありがとうだよね」みたいに言われて、そうとも言えるなと腑に落ちました。
この曲を作れたから、アルバム1枚できそうだなと思えた
─そろそろ時間的に質問&感想コーナーに行かなきゃなんですけど、具体的な曲の話があんまりできなかったので、最後に一人一曲ずつ、思い入れの強い曲を挙げてもらってもいいですか?
Shaikh:制作中に一番森氏とやりとりがあったのが「電話」なんですよね。デモでドラムのビートを聴いた段階から、「これはカズくん(ドラマーの大井一彌)へのラブレターソングだ」と思って、だったらベースはそんなに細かく刻むより、のびやかに弾いて、その合間で鳴ってるドラムの音がちゃんと聴こえた方がいいんじゃないかなと思ったんですけど、森氏の中ではそうじゃないと。もっとベースの推進力をもって、全体のアンサンブルとして聴かせたいんだと。なので、そこからやりとりをずっとしてて、レコーディング当日もまだ「やっぱりのびやかに弾いた方がいいんじゃないですか?」とか言いながらだったんですけど、最終的には一番俯瞰して見えてる人の意見だし、もちろん信頼もしてるので、言われた感じのプレイをしてみて。で、いざ完成したものを聴いたら、「その通りだった」っていうのを一番体感できた曲が「電話」だったんです。カズくんのドラムをフィーチャーしつつ、でもカズくんのドラムソロソングではない形にまとめ上げる森氏の手腕を感じました。
─そんな森山くんは一曲挙げるとしたらどうですか?
森山:「不思議」が最後に入ってて、この曲は『DISTANCES』の直後に作ったんですけど、この曲を作れたからこそ、今回のアルバムができたなって。今回のサウンドの軸というか、出発点であり終着点になってる曲だと思ってて、この曲を作れたから、アルバム1枚できそうだなと思えたので、「不思議」は重要な一曲かなと思います。
─「不思議」の時点で〈その目を見たら 瞳の真ん中に 変わっていないもの見つけた〉と歌われていて、これもある意味『slow blink』ですよね。
ミゾベ:「瞳」とか「目」が次から禁じ手になりそうやな。
森山:「花火」が一回禁じ手になりました。
ミゾベ:めっちゃ初期ね。
森山:高校生でバンドをやってた頃から、大濠公園の花火のことをずっと歌ってたので(笑)。
─ミゾベくんは一曲挙げるとしたらどうですか?
ミゾベ:「曇り空」ですかね。「電話」は歌詞を書くのに1ヶ月半から2ヶ月ぐらいかかってたり、どの曲もそれなりに時間がかかってるんですけど、「曇り空」だけ30〜40分でバーッて書けて。「本当にこれでいいのかな?」と思いながら、一回仮歌を入れて、次の日聴いても、「これでいいじゃん」みたいな感じになって。時間をかければいいってもんでもないし、それがすぐしっくりきて、自分のものになったのは、前からこういうテーマで一曲作ってみたかったんだろうなと思って、印象に残ってる曲です。
─それこそ前だったら森山くんとワンラリーあったのかもしれないけど、今回はそれがなく、一番素のミゾベくんが出てる曲なのかもしれないですね。
ミゾベ:確かに。そういう意味では、ラッキーでした(笑)。

こうして公開インタビューの時間があっという間に過ぎていき、その後はアルバムを聴いた参加者からの質問に答えたり、感想を聞いたりと、和やかなムードでリスニングパーティーは進行。最後にミニライブが行われて、「未来」、「17」、「不思議」の3曲が披露されると、5月23日と24日に渋谷WWWXで開催されるワンマンライブのサポートメンバーが発表され、ギターの西田修大、ドラムの大井一彌というおなじみの2人に加えて、トランペットの真砂陽地の出演も決定。生のホーンを含めた編成によって、華やかで、温かみのある、新たなodolの姿が見られる日が、今からとても楽しみだ。
取材・文:金子厚武
写真提供:UK.PROJECT




