2025.10.02
このインタビューでは"対話"という言葉が何度も登場した。10代の頃に飛び込んだBiSHで様々な経験を積み上げ、2023年の解散後の独り立ちからも山や谷を歩んできたアユニが、日々やライブで懸命にコミュニケーションをとるようになって得たものとは。アユニはまっすぐに、誠実に語ってくれた。

今までより素直に自分の言葉を音楽にできた作品になった
─『ちっぽけな夜明け』を聴かせていただいて、グッときました。バックグラウンドや様々な情報を抜きにして、今のPEDROの音楽と向き合える全6曲が詰まっていますね。
ありがとうございます。確かに、今までより素直に自分の言葉を音楽にできた作品になったので。生き様や、葛藤していること、考えていること、これから前向きに生きていきたいっていう情熱が詰まっていると思います。
─そういった作品にしたいと思ってスタートしたんですか?
正直、制作し始めた頃は、ツアーとツアーの合間に作っていたので、「よし、切り替えてまた新たな自分を出さなきゃ」って脳みそになってしまっていて。かっこつけたような言葉や、今までになかった曲調を入れたり、迷っていたところがあって。でも、レーベルの人や身近な人に「うまく音楽制作ができないんだよね」って相談して、対話をしていくなかで、今まで培ってきたものがあるんだから、そのままの気持ちを出せるような音楽をやればいいんだって気づかせてもらって。そこから、本来の自分をそのまま出すモードになりました。
─対話することが大事だったんですね。
いや、ほんとそうですね。ちっちゃい頃からなんですけど、人に自分の気持ちを話すのが苦手で。悩みとか今思っていることを打ち明けるとか、人の話を聞きに行くのも躊躇っていたところがあって。でも、そういうのを打破していかないと、自分のこともわからなくなってしまうなって、PEDROをはじめてから気づかせてもらえたので。コミュニケーションや対話は意識するようになりました。

─それは今作からではなく、徐々に扉を開けていったんですか?
ああー、徐々に周りの人にケツ叩いてもらってたというか。でも、コミュニケーションを積極的にとろうって自覚し始めたのは、この制作期間からです。
─何かきっかけがあったんですか?
プライベートのときも、音楽をしているときも、自分が発している言葉や音に違和感があって。それって、素の自分を出すのが怖くて、ちょっとごまかしていたからかなって。もともとアイドルっていう職業だったので、憑依させることや取り繕うことがナチュラルにできるタイプなんです。なので、人と話していても誤解を生んでしまうことがあったし、ずっと自分を守っている感じがするなって。でも、いざ勇気を振り絞ってほんとの気持ちを人に話してみると、自分が思っている以上に真剣に向き合ってくれて、「一緒に解決していこう」って言ってくれる。そういう人たちが周りにこんなにいたんだって気づいて。そこから、対話すること――自分の気持ちを打ち明けて、相手の気持ちも受け取ることって大事なんだなって思えて、コミュニケーションを意識するようになりました。
─信頼できる方たちをアユニさんが引き寄せたのかもしれないですね。
自分はめちゃめちゃ運がいいと思っていて。人には恵まれていると思います。
─さきほど「憑依させることがナチュラルにできる」とおっしゃっていましたが、そういうときの自分を、自分自身では好きでした?
その最中は好きなんです。自分にコンプレックスを抱いているので、素の自分とかけ離れている時間は楽しいんですよね。でもたとえば、ライブが終わりました、家に帰ってひとりで部屋にいます、ってなったときに、すっごく落ちてしまうんですよ。人前にいるときの自分と、素の自分にギャップがあって。それは苦しかったですね。

─今のお話を聞いて、"歌って表現する"っていう点においてはBiSHにおいてもPEDROにおいても同じだけれど、メンバーと一緒に歌って踊るBiSHと、ひとりで作詞作曲してベースを弾いて、自分がバンドを引っ張っていくPEDROでは、表現の正解が違うのかなって、改めて思いました。そこで、解散後に壁にぶつかってしまったところもあったのかなあって。
おっしゃる通りです。BiSHにいたときは団体戦だったし、メンバーの一員として曲を提供してもらって、振り付けも考えてもらえて、そこの場所でどれだけ自分が足を引っ張らないようにするか、っていうことを考えていたんですけど。でも、バンドのフロントマンとして自分がゼロイチを作る立場になって、今まで与えてもらっていたものを自ら作り出していくことになって。今まで、ほんと甘えて、人に任せっきりだったので。今も全然、できていないんですけど。バンドも団体戦とはいえど、自分が引っ張っていく立場なので。24時間音楽のことを考えるようになったし、その責任感とかを鍛えていかなければならないので。
─24時間音楽のことを考えるのは、楽しいですか? しんどいこともありますか?
どっちもですね。でも、やっぱり好きだからやっているので。楽しいも苦しいも言ってられないっていう気持ちですね。
─ツアーが多いのも、意図的だったりするんですか?
基本私はPEDROの活動一本に集中して、しっかりやり切りたいと思っているので、言葉を選ばずに言うと、例えばテレビやメディアに出たりいろんなことを中途半端にやるより、音楽に自分の時間をしっかり割いて、自分で表現したいものを曲にして、少なからずPEDROの音楽を聴いてくださる方がいるなら、全国に自分で足を運びたいんですね。その結果ライブでの表現をどんどんブラッシュアップして、ライブバンドとしての型をしっかり作れるようにしたいと思ってます。
お客さんを"この時代を一緒に生きている仲間"として見るようになった
─8月11日に東京・日比谷公園大音楽堂でワンマンライブ「PEDRO Special One-Man Show『ちっぽけな夜明け』」を行いましたけれど、そこのアンコールで今作の全曲を演奏されましたよね。それはいつぐらいから決めていらっしゃったんですか?
正直、制作をしていた時点では野音のライブが決まっていなかったんです。本当は、今作の楽曲は秋のツアーで披露するつもりだったんですね。曲作りも、それに間に合うように進めていたんですけど。今作が完成したころに、急に野音のライブが決まったんです。奇跡的に「あと2ヶ月後に野音ができます」と。じゃあ、せっかくならこの日までに(新曲を)磨き上げようということになりました。
─でも、アンコールに6曲もの新曲を初披露するって、本編からドキドキしそうですね。
ああ、もうガクブルでしたね(笑)。野音が決まってからの2ヶ月は、ずっと野音のことしか考えられなくって。毎日スタジオに通って、毎日そのための体力作りをして、新曲も練習して。「やれることはやり切った」って胸を張って言えるんですけど。あとからライブ映像を見返したら、マジでアンコールまでガチガチに緊張していて。アンコールもめっちゃ緊張していて。ああ、こんだけ何百回もライブを重ねても、その日にしかないプレッシャーってのしかかっているんだなって改めて思いました。

─新曲を披露したときのお客さんのリアクションって、見えましたか?
正直、お客さんのリアクションを受け取る余裕がなかったんですけど。でも、私はネガティブな発言をMCとかですることが多くなっちゃっていて、日ごろのネガティブを発散しに来てくれるお客さんも多いんですけど。野音のライブは、そういうサプライズもあって、お客さんからも「待ってました!」みたいな、前向きなエネルギーを感じましたね。
─お客さんもみなさんいい顔をされていましたね。アユニさんの表情や歌もしなやかになって、"こうじゃなきゃ""こうしなきゃ"っていう型に嵌っていない感じがします。そういう、解き放たれてきたような実感ってありますか?
それはむちゃくちゃあるなあと思って。解き放つとかは、まだ葛藤しているところはありつつも、PEDROっていう存在に対して自分が親密になった感覚があって。どういうことかっていうと、今までアイドルをやってきたなかで培ってきた歌い方や表現方法を、わりとナチュラルにPEDROでも出していたんですけど。たとえば、人と話すときに声のトーンが上がるとか、理想の自分になったフリをするとか。そういうのが、PEDROのパフォーマンスでも癖づいちゃっていたので、壁がある感覚があって。でも、特に野音とか今作でこだわったのは、日ごろ自分が身近な人と話している声のトーンで歌おうっていう。それが「解き放たれた」っていう言葉になるのかもしれないですけど。そういう意識になってからは、壁も溶けていったというか。それは、きっとライブでも出ていて。目の前のお客さんを、お客さんとして捉えるというよりかは――もちろん、お金を払ってチケットを買って来てくれているからには、最高に楽しませたいんですけど、"この時代を一緒に生きている仲間"として見るようになったというか。だから素の自分が出せるようになったんだと思います。

─そのお話を聞くと、今のPEDROとかアユニさんって、ライブハウスが似合うなあって思います。今日のキーワードになっている"対話"じゃないですけど、お客さんと間近で向き合えるから。ホールやアリーナのライブにも、じっくりエンタテインメントを体感できる良さはあると思うんです。でも、今のアユニさんは、いい意味でライブハウスが似合う表現や発想をされている。ここまでの、ライブを主戦場としてきた活動が実った感じがしますね。
そう言っていただけると、めちゃめちゃ報われます。まあ、デカければデカいところでやりたいですけど(笑)。でも、大なり小なり関係なく、しっかり対話して進んでいきたいです。
─え、やっぱりキャパが大きいところのほうが気持ちいいですか? アユニさんはドームからライブハウスまで立たれているわけで、そのあたりも聞いてみたいです。
気持ちよさは......どうなんですかね。小さいライブハウスも、物理的にお客さんと距離が近くて、めちゃめちゃ緊張するから、終わったあとの達成感がすごいし。また大きい場所では、こんなに集まってくれるんだって思えるし、受け取るエネルギーも大きいし。どっちもですね。ありがたいことに、グループ時代からいろんなステージに立たせてもらって。でも、PEDROとしては、まだまだペーペーなので、たまに自信を失うんです。そういうときに、立たせてもらったステージや来てくれたお客さんのことを自覚するようには意識していますね。
複雑な言葉や自分らしい言葉にしても許される面白さが歌詞にはある

─『ちっぽけな夜明け』の「いたいのとんでけ」はベースレスですよね。PEDROのアユニさんにとってベースって武器だと思っていたので、この曲は特に驚いたんですが。武器を置いてステージに立とうと思えたのは何故なのか、教えていただけますか?
この曲はドミコのさかしたひかるさんがアレンジしてくれて。2024年にドミコとツーマンライブをしたとき、打ち上げでひかるさんに「歌って踊れるなら、ベースがない曲があっても面白いんじゃない?」ってふと言われたんです。確かに「PEDROではベースを武器に戦っていかなきゃ」って想いに囚われていたので、ひかるさんのひと言で自分のなかで革命が起きて。じゃあ、そういう曲を作ろう、そしてせっかくならひかるさんにアレンジをお願いしたいので、ディープでドープでハードな曲にしようっていうスタートでした。
─確かにアユニさんは「歌って踊れる」んですけど、さかしたさんがサラッと提示したのがすごいですよね。私なんか勝手に、PEDROではベースを持たない自分......踊る自分やハンドマイクの自分を封印しているのかなって思っていたから。実際はどうだったんですか?
ああー、頑なに決めたとか、公言していたとかはないんですけど。でも、"楽器を持たないパンクバンド"のBiSHだったので、その裏で楽器を持つバンド・PEDROっていう対比は自分でも考えていたので。確かに、PEDROで楽器を置く発想は自分にはなかったです。
─それも対話が鍵ですね。さかしたさんと対話することで革命が起きたっていう。
そうですね。前まで、打ち上げとかまったく参加しなかったんです。でも打ち上げって、絆が深まるっていうか。スタッフさんやアーティストの方々が切磋琢磨してひとつのステージを作って、そのあとに話し合う時間って、すっごい面白いなっていうことに気づいたので。

─さかしたさんのほかには、「1999」で石毛(輝・the telephones/Yap!!!)さんもサウンドプロデュースやアレンジに関わっていますね。このいきさつは?
前作(『赴くままに、胃の向くままに』2023年11月リリース)でもひかるさんにアレンジをお願いして(「グリーンハイツ」「春夏秋冬」)。そのときに、サウンドアドバイザーっていう形で石毛さんがついてくださって。そこで、今回の新譜を作るにあたって、サウンドが先だったので、「もっとこういう曲があったらお客さんを喜ばせられる」って、キャッチーでノリやすい曲を考えていたときに、石毛さんにアレンジをお願いしようとなりました。
─リフがキャッチーで開けた曲調に仕上がっていますよね。
自分の歌詞がネガティブ寄りというか、"マイナスを肯定していこう"という感じなので。それを明るい曲にのせたら、私にしかできない音楽になるんじゃないかなって考えました。
─石毛さんとの対話のなかでは、印象的だった言葉はありましたか?
私の歌詞はまっすぐなので。でも、石毛さんはテクいじゃないですか。だから恐れ多かったんですけど。でも「こんなにまっすぐな言葉を書ける人もそうそういないから、自信を持っていいと思う」って言ってもらえたのはうれしかったですね。自分は幼稚なのかなとか......ピュアって言われることも多いんですけど、それも腑に落ちないし、世間知らずなのかなって不安になることもあったんですけど。そうじゃなくって、「まっすぐでがむしゃらだからこそ書ける言葉がある」って言ってもらえたのは、うれしかったですね。
─いや、アユニさんの歌詞は、まっすぐだけれど幼稚ではないと思います。特に今作は、どの楽曲の歌詞もメッセージは一貫しているじゃないですか。でも、しっかりバラエティーに富んだ歌詞になっている。このボキャブラリーと表現力は素晴らしいですよ。
いやいやいや、恐縮です。言葉っていうものとは、常に向き合っているというか。それこそ、今まで感情を言葉に落とし込むことをしてこなかったので。こういうインタビューでも、対話っていうより、自分の意思を複雑に表明しているだけなんじゃないかなって。日ごろ、人と話していてもそうなので。もっとわかりやすい、楽しい対話ができるようになりたいなあと思いつつも。でも、音楽っていうものにするにあたっては、複雑な言葉や自分らしい言葉にしても許されるというか。そういう面白さが歌詞にはあるのかなって思います。

─言葉遣いのさじ加減が心地いいんです。たとえば、ラストナンバーの「ちっぽけな夜明け」は、曲名の"ちっぽけ"とか、歌詞の〈ほんの少しマシな日が来ますように〉の"ほんの少し"とか、ささやかなんですよね。過剰に暗くも明るくもなく、ちょっと心が温かくなったぐらいで、スッと日常に戻れる。寒暖差で風邪をひかないというか。曲順も含めていいですよね。
自分の意欲とか情熱に対するさじ加減は、めちゃめちゃ下手なんです。そこをバランスよく、いい塩梅でいけるようになったら、もっと器用になれると思うんですけど。それが今回の作品に出たのかもしれないですね。いわゆるゼロ100思考とか、完璧主義とか、自分の力を見誤って爆発しちゃって人に迷惑をかけちゃう日々のなかで、「自分は不器用だ」ってずっと思い込んでいたし、それにすがっていたところもあったんですけど。いやいや、待てよと。「器用にしようって思っていないからできていないんじゃないかな」って。確かに楽器も、人に想いを伝えることも、ひと晩で上達できるわけなくって。がんばって少しずつ上達できるものだって実感もあったので。自分が人にエールを届けるときにも、今までだったらがむしゃらに「がんばれ!明日には変われるんだ!」って言っていたかもしれないけど、今回は"明日には変われる"っていう意欲は大事だけど、焦ったっていろいろ止まったり壊れたりするから。「ちょっとずつでいいから、お互いいい日にしていこうや、いい人間になっていこうや」みたいな感じに、ようやくなれましたね。
─その「ちっぽけな夜明け」の印象はゆーまおさんのアレンジの力も大きいですけど、今作は田渕ひさ子さんがアレンジした「ZAWAMEKI IN MY HEART」も印象的で。まず曲名にナンバーガール・リスペクト感があふれていますよね(笑)。
パクりました(笑)。
─そこもまっすぐ(笑)。でも、田渕さんも楽しんでいらっしゃるようなアレンジで。こういう曲を田渕さんに弾いてもらうって、ぜいたくですよね。
幸せですね。前作でもおふたりにアレンジをお願いしたんですけど、3人でライブを重ねて、関係性を深めて、緻密にやり取りをするようになったので。それが、それぞれの楽曲にも反映されているのと。制作をはじめたきっかけも、ゆーまおさんが「また一緒に曲を作ろうよ」ってツアー中に言ってくれたからっていうのが大きくて。ふたりがいなかったら、今の自分は確実にいないので。楽しいし、ありがたいですね。

─「背景、僕へ」は、さかしたさんアレンジ、石毛さんがサウンドアドバイザーというタッグで。これ、PEDROじゃなかったら、もうちょっとマニアックな聴こえ方になっていたように思うんです。おふたりの楽曲の料理を、どう受け取りましたか?
最初にデモを作った段階では、ロックチューンになるようなイメージだったんですけど。それをひかるさんにお渡しして、返ってきたら想像以上にひかる節になっていて。自分の脳内じゃこの曲は完成できなかったと思います。あとは息の出し方やベースのフレーズは、今まで自分がしたことがないものだったので、新たな挑戦もできたっていう。
本来の姿で、本来の気持ちで、嘘をつかずに人と向き合えたら、この人生は成功
─新しい挑戦が光るなかで、紙資料には"昔の方がよかったとか舐めんなよ"という言葉も刻まれています。この"昔"って、アユニさんのいつ頃を指すんですか? BiSHの頃なのか、PEDROの初期なのか、もっと以前なのか。
ああ......めちゃくちゃかっこつけて言うと"毎日成長"みたいな。みんなそうだと思うんですけど。3日後には考え方が変わっていたりするタイプなので。だからこそ、昨日より以前の自分は昔の自分なんです。だから、どの時期っていうのはないですね。

─では、紙資料の"これが私の原点"という言葉の"原点"とは、どこを指しますか?
身近な人たちの認識は違うかもしれないですけど。たとえばレーベルとしては、アユニ・Dとしてデビューした頃、とか。でも自分のなかでは、物心がついてから、人目とか気にせずがむしゃらに遊んだり好きなものに没頭したり、率先して行動していた頃が"原点"という意識です。アユニ・D以前に、ひとりの人間として形作られた頃ですね。表舞台に立って、人からとやかく言われる前の自分、好きに羽を伸ばしていた頃の自分。
─その原点って、今まで歌とか表現では出していなかった部分ですかね?
結果、そうだと思います。今までも"等身大の自分たち"という見せ方をしていたし、自分でもそう思っていたけど、やっぱBiSHに入ったきっかけも、今までの自分と変わりたいからだったし。変わろうとして、違った自分を演出していたところは多分あって。今、まさに対話していくなかで気づきました(笑)。
─アーティストが"原点回帰"と言うと、1stアルバムへの回帰とかに思えますけど、アユニさんの場合は違う感じがしますね。
そうですね。1stアルバム(『zoozoosea』2018年9月リリース)は、血迷いすぎて取り繕っていたので。自分から音楽をはじめたわけじゃなく、誘ってもらってはじめたからこそ、初期衝動というよりは課題のように取り組んでいたので。そう考えると、それ以前の、人として生まれた頃の初期衝動に戻った、みたいなところはあります。
─取り繕わなくてもよくなったのは、自信がついたからですかね?
そうさせてもらったっていう感覚です。友だちや身近にいる人に。「そのままのあなたがいいのに、なんでそのままを出さないの?」って言われることが多くって。スカしたり、ごまかしたり、嘘ついたり。そういうのが、家から一歩出たときのデフォルトになっていたので。そこを言ってくれていた人たちがいたから、っていうのがあります。

─"昔の方がよかったとか舐めんなよ"だけど、昔に戻りたいわけではない?
いや、戻れって言われたら戻ります(笑)。昔もよかったんです。血迷ったり、取り繕ったりしたけど、一生懸命にがむしゃらにやっていたので。でも、そのなかで気づかせてもらえたことがあるから、今のほうがもっといいっていう気持ちです。いわゆるアンチ昔ではない。
─ファンの方に「昔の方がよかった」とか、いろいろ言われたら気になりますか?
ああー、気にしていないふりして、気にしていると思います。だから取り繕ったりしちゃうんだろうなって。
─でも、若い頃から活躍されてきたから、取り繕ったりする時期があるのは当然だと思うんです。そんな、様々なステージに立ち、状況や数字や意見を目の当たりにして、山も谷も歩んできたアユニさんが、今、思う成功や幸せって、言葉にするとどんなことですか?
やっぱ、マイナスな意見を言われたときに気にしてしまう節もあるんですけど、それよりも、好きでいてくれる人に嫌われたくないっていう。プラスな気持ちの人に立ち向かうのって怖いので。だからこそ、いい子を演じなきゃっていうのがあって。でも、その道中で、いろんなことを好き勝手やってみて、いろんな間違いをしたんですけど、それでもずっと好きでいてくれる人はいて。それに気づかせてもらうなかで、今は、本来の姿で、本来の気持ちで、嘘をつかずに人と向き合えたら、この人生は成功だなって思えるのかな。そういうことを貫いている人が、信頼を得て、その人の魅力に引き寄せられた人がたくさん周りに集まるんだろうな。もしくは、別に集まらなくても理解してくれる人が多少なりとも周りにいれば幸せって思えるんだろうなって。思いました、今。
─それっていい意味で大人になったんだと思うし、これから少しは楽な気持ちで生きられるようになると思うんです。でも一方で、私は「拝啓、僕へ」の〈いくつになっても 思春期と反抗期〉ってフレーズに強く共感していて。アユニさんよりもだいぶ年上なんですけど(笑)。こういうことを思っているうちは、素直に気持ちを出していってほしいです。
めっちゃうれしいです。これが完成した数日後に、ひさ子さんがどういう人生だったか私が聞くような会話をしていて。そうしたら「今でも自分は思春期なんです」「ずっと反抗期なんです」って言っていて。うわ!歌詞に書いた言葉だ!って。自分も、いろんなものに葛藤して、反抗して、戦っていくのかなって思います。その反面、同世代の友人からが「思春期と反抗期は学生時代に終わらせてきた」って言うのも聞くので、面白いなあって。
─私も、いつか思春期や反抗期は終わると思っていたんですけど(笑)。ほんと人それぞれですよね。ロックや音楽から離れられない人にはぶっ刺さるフレーズだと思います。
わあ、うれしいです。ありがとうございます。
─そういう人はオルタナティブ、少数派かもしれないですけど、それでいて今作は、これまでのアユニさんやPEDRO、BiSHを聴いていなかった人にも届く広さはあると思うんです。改めての自己紹介みたいな「I am PEDRO TOUR」もありますし、楽しみにしています。
ぜひ来てください。

─ツアーのフライヤーやジャケットの絵も素敵ですね。これもアイデアはアユニさん?
はい。いったん構成を作って、それを我喜屋(位瑳務)さんっていうイラストレーターの方に頼んでいます。
─色味も、ビビッドではないんだけどカラフルっていう、まさに今作、まさにアユニさんらしい雰囲気が表現されていますね。
うれしい!ありがとうございます。
─今のアユニさんにとって、ライブってどういうものですか? これまで、いろんなキャパシティーで、いろんなコンセプトで、いろんな時期にライブをやってきたと思うんですが。
今までは、"衣食住ライブ"みたいな、生活とか言っていたんですけど。なんか、生活って言うほどナチュラルすぎるものじゃないし。自分にとってライブは神聖なものだと思っているので。なんだろうなあ......どうしましょう(笑)。生きる意味だと思います。
─簡単に言葉にできないものなのかもしれないですね。すごく大切で。衣食住という普段の日々と並列には扱えないというか。
でも、だからこそ、衣食住の生活で補ったものをすべて出し切る場所だと思う。お客さんと生存確認する場所だと思うし、対話する場所だと思うし、自分が作り上げてきたものを披露する場所だと思うので。ライブの予定がGoogleカレンダーからなくなったら、なんで私は生きているんだろう?って思っちゃうだろうし。とにかく、自分自身には必要なものです。
─お客さんも、カレンダーにライブの予定があるからこそ、日々の仕事や勉強をがんばれると思うんです。それと同じ情熱を持つアユニさんのライブを私も観たいです。
ありがとうございます。でも、ライブをナチュラルなものだって胸を張れるようになるまで、続けていきたいと思います。
取材・文:高橋美穂
撮影:エドソウタ
RELEASE INFORMATION

PEDRO「ちっぽけな夜明け」
2025年9月10日(水)
Format:Digital,CD
Label:ROMANTIC PLANET
AYND-0001 [CD+Blu-ray] ¥8,800-(taxi in)
AYND-0002 [CD+DVD] ¥6,600-(taxi in)
AYND-0003 [CD] ¥2,750-(taxi in)
CD Track:
1.1999
2.いたいのとんでけ
3.ZAWAMEKI IN MY HEART
4.拝啓、僕へ
5.朝4時の革命
6.ちっぽけな夜明け
Blu-ray / DVD:
PEDRO TOUR 2025「LITTLE HEAVEN TOUR」
2025.05.14 Spotify O-EAST
1.音楽
2.明日天気になあれ
3.祝祭
4.人
5.ナイスな方へ
6.hope
7.ラブリーベイビー
8.愛せ
9.ぶきっちょ
10.beautifulね
11.東京
12.生活革命
13.魔法
14.清く、正しく
15.万々歳
16.グリーンハイツ
17.春夏秋冬
18.雪の街
19.アンチ生活
20.吸って、吐いて
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LIVE INFORMATION
PEDRO TOUR 2025「I am PEDRO TOUR」
2025年10月5日(日)静岡 Live House浜松窓枠
2025年10月6日(月)
兵庫 神戸Harbor Studio
2025年10月10日(金)
広島 LIVE VANQUISH
2025年10月15日(水)
北海道 旭川CASINO DRIVE
2025年10月16日(木)
北海道 PENNY LANE24
2025年10月24日(金)
東京 Zepp Shinjuku(TOKYO)
2025年11月4日(火)
宮城 darwin
2025年11月5日(水)
青森 Quarter
2025年11月11日(火)
鹿児島 CAPARVO HALL
2025年11月12日(水)
熊本 B.9V1
2025年11月13日(木)
福岡 DRUM Be-1
2025年11月20日(木)
高知 X-pt.
2025年11月21日(金)
香川 高松DIME
2025年11月26日(水)
新潟 GOLDEN PIGS RED STAGE
2025年11月27日(木)
石川 金沢AZ
2025年12月3日(水)
埼玉 HEAVEN`S ROCK さいたま新都心VJ-3
2025年12月9日(火)
神奈川 F.A.D YOKOHAMA
2025年12月12日(金)
愛知 THE BOTTOM LINE
2025年12月14日(日)
大阪 GORILLA HALL
<チケット金額>
【スタンディング】¥6,500(税込・別途ドリンク代)
【学生チケット】¥3,000(税込・別途ドリンク代)
チケット一般発売日:
10月公演:発売中
11月公演:発売中
12月公演:10月4日(土)10:00〜
【受付URL】http://w.pia.jp/t/pedro/
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