2025.05.28
音楽だけでなく、どのカルチャーも共通点やつながりがあるということをコンセプトにしているSENSA。INTERVIEWシリーズ「Highlighter」では、アーティストはもちろん、音楽に関わるクリエイターにどのような音楽・カルチャーに触れて現在までに至ったか、その人の人となりを探っていく。Vol.238は、安納想とトヨシによるふたりバンド・エルスウェア紀行を取り上げる。
映像的でリリカルな歌詞世界と、70年代シティポップの匂いを内包しながら、ロック・フォーク・パンク・プログレ・ブラックミュージックなどを独自に昇華した、令和の"ニュー・ミュージック"。まさに旅する気持ちが味わえる。

自分で初めて見つけた音楽として最初に衝撃を受けたのは銀杏BOYZです。銀杏BOYZは出会った当初、X JAPANや上原ひろみさんをルーツに持つトヨシさんとの数少ない共通項でした。
矢野顕子 with 忌野清志郎「ひとつだけ」は、作曲部分に関してほとんどの楽曲で常にコライトをしている感覚の自分たちを振り返るときに、自分にとっては根っこにあると思っている曲です。
終わりの象徴である"さよなら"からはじまる世界があってもいい、大切な出会いに別れはなく 出会えた時点でとわに続く祭りのようなものなのかもしれないという思いを持って書きました!
それはきっと人と人との関係だけでなくさまざまな関係に言えることで、この曲を初めて演奏するエルスウェア紀行の単独公演で自分から見える、みなさんの顔や景色をイメージしながら"別れのないメロディ"という言葉を入れています。
はじめから緻密に全体像を描いていたのではなく、自然と出てくる言葉から1番を書き上げたあとで改めてテーマと向き合ってみた結果、別れの日から出会いの日へと時間が逆行するような構成になったのですが、これまででいちばん歌うのが難しかったです(笑)
エルスウェア紀行として出会えた自分の声色や温度感をいくつか使い分けてみて、歌の面でも別れから出逢いに向かう時間に寄り添うアプローチができたらなぁと考えながら、同時に、最終的には心の感覚に任せて歌ってみる、というバランスを探して録っています!
サウンド的にも、エルスウェア紀行として重ねた音楽的経験の集大成といえるものになっていて、次々と転調を繰り返すコード進行に寄り添いつつ難解な構成に陥らないよう、原点であるシンプルなコード進行や素直な旋律を大事にトヨシさんが作ってきてくれたサビのメロディがとてもうつくしいなと思います。
編曲面、特にストリングスのラインはトヨシさんが数週間をかけ作ってくれました。メロディの隙間を縫うような繊細な構成と、破綻してしまうギリギリの不協和音を意図的に使いながら緊張感のある動きを音にしていて、個人的にも好きな音がたくさんあります。少々マニアックではありますが、注目してみてもらえたらうれしいです。
今回はインストも配信されるので、バンド編成ライブだけでなく近年ほとんどの楽曲で演奏をお願いしている千ヶ崎学さんのベースラインと「ひかりの国」で編曲をお願いしたsugarbeansさんのピアノ、生で録音したストリングスの音もそれぞれ楽しんでください!
今年に入って個人で歌唱や楽曲提供のお仕事をさせていただくようになったのですが、メンバーのトヨシも地元スタジオでのエンジニアとしての仕事が増えていたりしていて。
エルスウェア紀行としても、楽曲提供やアーティストさんと交わるような制作、映像作品や舞台をきっかけに0から作っていくような制作、が出来たらいいなと思います。
映画『クワイエットルームにようこそ』という作品から松尾スズキさんを知り、同時期にまた松尾さんが書かれた『ニンゲン御破産』を友人から勧めてもらって大人計画に関わる作品を好きになりました!
今、机にあるのは 覚和歌子さんの詩集、岸本佐知子『ひみつのしつもん』滝口悠生『やがて忘れる過程の途中(アイオワ日記)』というふたつのエッセイ、アレックス・シアラー『13ヵ月と13週と13日と満月の夜』という小説です。
写真は、コロナ禍に自分でアートワークをやってみようということになり、森山大道さんが好きなので初めてのカメラはGRiiixを買って、撮るようになりました。2021年にリリースした「少し泣く」MVの砂丘と傘のモチーフは植田正治さんの写真集からのイメージです!




「知らない街のスーパーで惣菜を買う、路地を歩く、銭湯に行く、時間が許す限りその土地で生活をする」ということを目的に旅をする身体的な体験が、引きこもりがちな自分にとってはいつもそばにあって、世界とつながっているためのカルチャーだと思います!



エルスウェア紀行「とわの祭り」
2025年5月28日(水)
試聴はこちら
東京・渋谷 CLUB QUATTRO
時間:開場 / 17:15 開演 / 18:00
料金:前売 ¥ 4,950 (1ドリンク別)
チケット:https://eplus.jp/sf/detail/3346170001-P0030008P021001?P1=1221

エルスウェア紀行
2020年9月に始動した安納想(Vo/G)、トヨシ(G/Dr/Cho)によるふたりバンド。同年12月に1st フルアルバム『エルスウェア紀行』をリリース。「さみしくて、あまくて、つよい。」映像的でリリカルな歌詞世界と、70年代シティポップの匂いを内包しながらロック・フォーク・パンク・プログレ・ブラックミュージックなどを独自に昇華した他にないサウンドは、まさしく令和の"ニュー・ミュージック"である。ライブはメンバーのみのアコースティック編成のほか、サポートミュージシャンを迎えたバンド編成など多彩な形態で行う。"どこでもない場所を旅する記録"
@elsewherekikou
@elsewhere_kikou
@elsewherekikou
FRIENDSHIP.
映像的でリリカルな歌詞世界と、70年代シティポップの匂いを内包しながら、ロック・フォーク・パンク・プログレ・ブラックミュージックなどを独自に昇華した、令和の"ニュー・ミュージック"。まさに旅する気持ちが味わえる。

活動を始めたきっかけ
安納想(Vo/G):コロナ禍、前身バンドで予定したリリースやライブなどが一度ストップした際に改めてなぜ音楽を作って歌うのか、なにをしていきたいのかとメンバーのトヨシさんと長い時間話をする機会を得たことです。 「少しずつ輪郭が見えてきた自分たちの音楽に新しい名前をつけよう」という気持ちになったので、エルスウェア紀行の活動をスタートさせました。影響を受けたアーティスト
安納想:幼いころふたりで暮らしていた音楽を仕事にする母親の影響で、Joe Pace、Kirk Franklin などのゴスペルや、Earth, Wind & Fire、Chaka Khan、また松任谷由実さんなどの日本のシティポップを聴いて育ちました。自分で初めて見つけた音楽として最初に衝撃を受けたのは銀杏BOYZです。銀杏BOYZは出会った当初、X JAPANや上原ひろみさんをルーツに持つトヨシさんとの数少ない共通項でした。
矢野顕子 with 忌野清志郎「ひとつだけ」は、作曲部分に関してほとんどの楽曲で常にコライトをしている感覚の自分たちを振り返るときに、自分にとっては根っこにあると思っている曲です。
注目してほしい、自分の関わった作品
安納想:エルスウェア紀行 「とわの祭り」です。2021年リリースの楽曲 「少し泣く」で考えていた「もしかしたら時間は不可逆的なものではなく 過去・未来・現在がただ離散的に存在するものかもしれない。そうしたら 過去は消えたり過ぎ去ったりせずにずっとそこにあるから 、後悔は存在せず、いつもまた会える」という時間の捉え方から地続きにある楽曲なんじゃないかなと思います。終わりの象徴である"さよなら"からはじまる世界があってもいい、大切な出会いに別れはなく 出会えた時点でとわに続く祭りのようなものなのかもしれないという思いを持って書きました!
それはきっと人と人との関係だけでなくさまざまな関係に言えることで、この曲を初めて演奏するエルスウェア紀行の単独公演で自分から見える、みなさんの顔や景色をイメージしながら"別れのないメロディ"という言葉を入れています。
はじめから緻密に全体像を描いていたのではなく、自然と出てくる言葉から1番を書き上げたあとで改めてテーマと向き合ってみた結果、別れの日から出会いの日へと時間が逆行するような構成になったのですが、これまででいちばん歌うのが難しかったです(笑)
エルスウェア紀行として出会えた自分の声色や温度感をいくつか使い分けてみて、歌の面でも別れから出逢いに向かう時間に寄り添うアプローチができたらなぁと考えながら、同時に、最終的には心の感覚に任せて歌ってみる、というバランスを探して録っています!
サウンド的にも、エルスウェア紀行として重ねた音楽的経験の集大成といえるものになっていて、次々と転調を繰り返すコード進行に寄り添いつつ難解な構成に陥らないよう、原点であるシンプルなコード進行や素直な旋律を大事にトヨシさんが作ってきてくれたサビのメロディがとてもうつくしいなと思います。
編曲面、特にストリングスのラインはトヨシさんが数週間をかけ作ってくれました。メロディの隙間を縫うような繊細な構成と、破綻してしまうギリギリの不協和音を意図的に使いながら緊張感のある動きを音にしていて、個人的にも好きな音がたくさんあります。少々マニアックではありますが、注目してみてもらえたらうれしいです。
今回はインストも配信されるので、バンド編成ライブだけでなく近年ほとんどの楽曲で演奏をお願いしている千ヶ崎学さんのベースラインと「ひかりの国」で編曲をお願いしたsugarbeansさんのピアノ、生で録音したストリングスの音もそれぞれ楽しんでください!
今後挑戦してみたいこと
安納想:フルバンド編成やストリングスを取り入れた拡張的なアプローチでの立体的な音像のライブや、長く続けてきたミニマムなアコースティック編成で作る新しい音像の模索を並行していく、そのコントラストをより楽しんでもらえるような動きを企画していきたいです!今年に入って個人で歌唱や楽曲提供のお仕事をさせていただくようになったのですが、メンバーのトヨシも地元スタジオでのエンジニアとしての仕事が増えていたりしていて。
エルスウェア紀行としても、楽曲提供やアーティストさんと交わるような制作、映像作品や舞台をきっかけに0から作っていくような制作、が出来たらいいなと思います。
カルチャーについて
触れてきたカルチャー
安納想:映像作品、本、写真が好きです。映画『クワイエットルームにようこそ』という作品から松尾スズキさんを知り、同時期にまた松尾さんが書かれた『ニンゲン御破産』を友人から勧めてもらって大人計画に関わる作品を好きになりました!
今、机にあるのは 覚和歌子さんの詩集、岸本佐知子『ひみつのしつもん』滝口悠生『やがて忘れる過程の途中(アイオワ日記)』というふたつのエッセイ、アレックス・シアラー『13ヵ月と13週と13日と満月の夜』という小説です。
写真は、コロナ禍に自分でアートワークをやってみようということになり、森山大道さんが好きなので初めてのカメラはGRiiixを買って、撮るようになりました。2021年にリリースした「少し泣く」MVの砂丘と傘のモチーフは植田正治さんの写真集からのイメージです!




今注目しているカルチャー
安納想:注目しているカルチャーを聞いていただいて、自分にとってのカルチャーってなんだろう?と思うと、実感なのかなと思いました。「知らない街のスーパーで惣菜を買う、路地を歩く、銭湯に行く、時間が許す限りその土地で生活をする」ということを目的に旅をする身体的な体験が、引きこもりがちな自分にとってはいつもそばにあって、世界とつながっているためのカルチャーだと思います!


RELEASE INFORMATION

エルスウェア紀行「とわの祭り」
2025年5月28日(水)
試聴はこちら
LIVE INFORMATION
エルスウェア紀行 単独公演「夢幻飛行 2025」
2025年6月14日(土)東京・渋谷 CLUB QUATTRO
時間:開場 / 17:15 開演 / 18:00
料金:前売 ¥ 4,950 (1ドリンク別)
チケット:https://eplus.jp/sf/detail/3346170001-P0030008P021001?P1=1221
PROFILE

エルスウェア紀行
2020年9月に始動した安納想(Vo/G)、トヨシ(G/Dr/Cho)によるふたりバンド。同年12月に1st フルアルバム『エルスウェア紀行』をリリース。「さみしくて、あまくて、つよい。」映像的でリリカルな歌詞世界と、70年代シティポップの匂いを内包しながらロック・フォーク・パンク・プログレ・ブラックミュージックなどを独自に昇華した他にないサウンドは、まさしく令和の"ニュー・ミュージック"である。ライブはメンバーのみのアコースティック編成のほか、サポートミュージシャンを迎えたバンド編成など多彩な形態で行う。"どこでもない場所を旅する記録"
LINK
オフィシャルサイト@elsewherekikou
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FRIENDSHIP.