2024.12.26
─『SUN』リリースから約一ヶ月が経ちましたが、反響などいかがですか?
SACOYAN(Vo/Gt):個人的には凄く良いものができたと思ってるけど、評判はあまり気にしないようにしてて...いつの間にか聴かれていつの間にか喜ばれて、みたいなのが一番いいのかな、と思ってます。
─作品を作ってみての手ごたえはいかがでしょう?
Takeshi Yamamoto(Gt):1st、2ndを作った時よりありますね。前はSACOYANの宅録時代の音源からフレーズを持ってくることもあったけど、今回はデモが弾き語りなので自分の解釈で弾くことが多かったです。制作期間も長かったのでサウンドのバリエーションも出たかな。
─1人、遠方に住んでいるみわこさんはどうでしたか?
みわこ(Dr):私としては3rdから変わった感じですね。前はライブ重視だったけど、最近はレコーディングも楽しくなってきましたね。
SACOYAN:今まではみわこさんがスタジオでまずドラムを叩いて、そこにたけちゃん(Yamamoto)がギターを乗せて、みたいな感じで曲を作ってたんですけど、リモートで更に効率よくできてるかな?と思います。最後にベースを入れる感じですね。
─遠距離での制作でもバンドとしての制作スタイルはブレなかったんですね。元々、宅録アーティストのSACOYANとしてニコニコ動画などで人気を博した後、バンドを組むに至った流れはどんなものだったのでしょう?
SACOYAN:昔からバンドはやりたいなぁとは思ったけど周りにやりたがってる人がいなくて。MTRの宅録で音楽は出来るし、ニコ動で発信もできるなぁと思ってあまりメンバー探さなくなったんですね。でも2011年に福岡に引っ越して生活環境が変わって。組むなら今かな?みたいに思ったのが2019年のことです。
原尻(Ba):僕はニコ動とか全く通ってない世代なんですけど、、ある時に知り合いから「SACOYANが福岡にいるからUTERO(原尻が店長を務めるライブハウス)に出してください」って言われて。聴いてみたらめちゃくちゃ良くて。声が凄いなと思って、一発目から気に入りました。
一時期SACOYANが行方不明になったことがあって。久々に会ったら前より音楽に前向きな感じで、バンドをやりたそうな雰囲気があったんです。当時はSACOYANとバンドやりたい人は沢山いたんで早く結成されないかなぁと思ってたら気づいたら自分が弾くことになって(笑)。不思議でしたけど、今考えるとありがたいなぁと。
SACOYAN:自分としてはすごくしっくり来てるメンバーですね。
─本作の楽曲制作にあたっての影響源やアレンジの参照点などはどうでしょう?
SACOYAN:私とたけちゃんはビルト・トゥ・スピルとか90年代のアルバムのバンドを聴いてインディーオルタナの王道感みたいなのがやりたいと言ってましたね。
これまでの作品は自分たちでそうは思ってなかったけどシューゲイザーの括りに入れられることも多くて。そこへの期待は無視しつつ、フーとかキンクスみたいなノリの曲書きたいなぁとか、みわこさんにビートルズみたいな感じで叩いて、みたいにシューゲイザーから距離を置いて、っていうのはあったかもしれないです。
─シューゲイザーではないけれども、結果的にこういう轟音になってるんですね。
SACOYAN:みわこさんのドラムがすごく大きくて。それに負けないようにしてたら自然に音は大きくなってきちゃう(笑)
Takeshi:みんな今までやってたバンドも音が大きかったので、デフォルトがデカい(笑)
SACOYAN:音を絞りようがない(笑)
─それぞれの楽曲についても教えてください。1曲目、「サモトラケのニケ」は1音目から押し寄せてくるような轟音が凄まじいですね。
Takeshi:あれはスティーブ・アルビニが使ってたハーモニク・パーコレーターっていうエフェクターの音ですね。タイミング的にも不思議な繋がりがあったなぁと思います。
─ニケとアマゾン(通信販売サイト)のように、聖俗が共存しているような歌詞もとてもユニークだと思いました。どういうことをイメージした曲ですか?
SACOYAN:さっき店長(原尻)が言ってた行方不明の時期って、音楽やりたいけど前に出れない状況があって。もう一生やらなくていいのかな、と思ってたけどずっと曲は鼻歌とかで作ってて。この曲のフレーズが出た時、外を見てたら歌いたい内容がばーっと浮かんできて。なんで私、人前に出る夢あるのになんでここにいるのかな、とか。寝る前にまた同じ日を過ごしちゃったなみたいな。その虚無感と緊張性をイメージしました。これでいいんだろうか?と駆り立てる想いみたいなのと、体がうまく動かない感覚を書いた曲ですね。そんな手に入れられそうで手に入れられないもののファンタジー性を表すために、神聖な展開を作りました。
─なるほど。ということはそんな気持ちを出発点にして、徐々に音楽に前向きになっていく時期の曲を並べたアルバムなんでしょうか?
SACOYAN:時系列はぐちゃぐちゃですけど、最後は《音楽が強くひかる》と歌う「UV」と決めてました。でも、その間の曲の歌詞も全部心情が繋がっているような感じになりましたね。感情をあげさげさせすぎず、いかに同じ風景から曲を拾えるか?を重要視しています。
─どの曲も力強さはありつつ心の奥底にある不安が見え隠れしているなぁと思いました。
SACOYAN:私って笑ってる時に困ってるみたいな、二面性があって。だからこそこういう揺らいだ歌詞になるのかな。打たれ弱かったりもするし、色々整ってないんですけど理想の自分はあって、気持ちを盛り上げる思いあがりみたいなのは強いんです。実力が何もない感覚はいつもありつつ、でも曲を書く絶対的な自信はありつつ。そういう揺らぎみたいなのがあるかもしれないですね。
私は歌詞を書いてる時が1番苦しくて、1番楽しいです。出来上がったら悦に浸って、「今回もよくやった~」みたいに思っています。
─そして、歌詞とサウンドの親和性がとても高いなと思うんです。「不意に」は冬の雪原のイメージが浮かびますし。
SACOYAN:音はこだわりなく、好きに作ってもらってるので風景が見えるっていうのは熱い話ですね!歌詞を気にしてるのは私だけだと思ってますけど...
原尻:僕はアルバムができて、歌詞カード読んだ時にいいこと歌ってるなぁと(笑)
一同:(笑)
Takeshi:僕はデモ段階で、鼻歌や歌メロを頼りにギターアレンジを作り始めるので歌詞は知らないことが多いですね。だから歌詞を読むと想像以上の歌詞書いてるなぁと。
SACOYAN:すごいでしょ?頑張ってるんだよ!(笑)
みわこ:私はSACOYANから歌詞が届いたらすぐに読みます。歌詞を知る前と後では演奏が変わる事もあります。
─皆さん、バラバラのタイミングなんですね(笑)。個人的に特に好きだったのは子供の時の記憶や、生と死を境界なく描く「園遊会」でした。この曲で〈神様は信じてない〉と歌っていますが、SACOYANさんの書く歌詞には信仰のモチーフが多く登場します。ご自身と信仰の距離感はどのようなものなのでしょう?
SACOYAN:母や外国に居た親戚がみんなカトリックで。いつも十字架を持ち歩いていたり、信仰は厚い感じだったんです。この歌詞は私が子供の時、親戚の家が停電した時に、蝋燭が見つけきらんくて、キリストの形をした蝋燭を手に取って火を点けた人がいて。あんな祈ってる感じだったのに困ったら火つけるんだ?って子供心に思ったことがあって(笑)。歌詞にもあるんですけど、向かいに住んでた子が亡くなったのに私は黒い服を持ってなかったから葬式に行けなかったり、弔いたいのに服装1つで入場できないのとか...信仰は身近だけど、同時に信仰って何だろう?って思うことは多かったんです。そういう記憶や大人たちの姿が歌詞に反映されてます。
─子供の時の根底にある記憶なんですね。「園遊会」というタイトルも面白いですね。
SACOYAN:親戚の家に中庭があって。私、夏生まれなので夏休みにそこに行った時に誕生日パーティをしてくれるんですね。近所の人いっぱい呼んだり、アイスクリームワゴンをチャーターしてくれて、お姫様みたいな気分で楽しかったんです。でも日本に帰ってくると、日本の親戚は誰もいなくて。盆も正月もどこも帰るところないけど、別の国にはそういうパーティがある、みたいな特殊な家庭環境があったから不思議な幼少期の歌詞が出来たのかな。
─さっきの"揺らぎ"の話と繋がるような気がしますね...楽しさと寂しさの間というか。
SACOYAN:思い返すと極端ではありましたね、飛行機降りると一方では日常で、一方で「ようこそー!」みたいな感じで(笑)。そう思うと落差がある感じでしたね。
─また「あれくさんでる」などにも現れていると思いますが、ご出産されてお子さんを持ったことで言葉選びの変化などはありましたか?
SACOYAN:娘が生まれてから、自分がちっちゃい時に泣いてた記憶とか、嬉しかった記憶とかを思い出すんですね。だから子供のことを書いてるようで、自分のことを書くみたいなことが今回は増えました。私は人に向けて曲を書くことも多くて、「不意に」も亡くなった父親の曲ですし。「あれくさんでる」は特に娘に向けたものですね
─こうして色々と訊かせてもらうと、つくづく生活について歌ってることが多いんですね。
SACOYAN:生活しか書きたくないですね。
─このアルバムをどういう人に聞いてほしい、などはありますか?
みわこ:音楽好きの人に聴いてもらいたいですね。
Takeshi:あと海外の人にも。
SACOYAN:海外の方のコメントも増えてる気がするし、年々ウェルカムムードが強まってる気がします。インスタにも海外の方から熱いメッセージ来たり。
あと自分が中学生の時とかを思い出すと、テレビとかラジオで何か良さそう!と思って聴き始めたものって一生好きだったりするから、突然出会って欲しいみたいな思いはありますね。昔から聴いてくださってる方にも「SACOYANS、こんな姿にもなりました!」みたいな。年賀状を届けるような(笑)
─最後に、来年1/10に開催されるZepp Fukuokaでのライブ(Ginger Rootのサポートアクト) への意気込みをお願いします!
SACOYAN:今までにない大きな舞台に立つことになりましたが、一致団結してパフォーマンス出来たらと思います!
取材・文:月の人
撮影:Chiyori
RELEASE INFORMATION
SACOYANS「SUN」
2024年11月13日(水)
Format:Digital
Label:FRIENDSHIP.
Track:
1.サモトラケのニケ
2.不意に
3.園遊会
4.変
5.Q
6.さいこう
7.あれくさんでる
8.HALLOWEEN
9.UV
試聴はこちら
LIVE INFORMATION
Ginger Root 『SHINBANGUMI』 JAPAN TOUR 2025
2025年1月10日(金)Zepp Fukuoka
出演:Ginger Root、SACOYANS
info:SCARLETT PROMOTION(092-717-7630)
SACOYANS Album『SUN』 Release Tour
2025年2月1日(土)
大阪・梅田HARDRAIN
info:梅田HARDRAIN(06-6363-5557)
2025年2月2日(日)
兵庫・神戸HELLUVA LOUNGE
info:HELLUVA LOUNGE(078-331-7732)
2025年2月9日(日)
東京・新代田FEVER
w/家主
info:新代田FEVER(03-6304-7899)
2025年2月15日(土)
福岡・UTERO
info:UTERO(092-534-5222)
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