SENSA

2024.12.23

Saucy Dog、新作『ニューゲート』完成!秋澤和貴の多彩なリファレンスを入り口に、そのミュージシャンシップに迫るソロインタビュー

Saucy Dog、新作『ニューゲート』完成!秋澤和貴の多彩なリファレンスを入り口に、そのミュージシャンシップに迫るソロインタビュー

スリーピース・ギターロック・バンド、Saucy Dogが12月18日、8thミニアルバム『ニューゲート』をリリースした。
同作には彼らが今年、配信リリースしてきたタイアップ曲に今回初出となる2曲を加えた7曲が収録されている(CDのみボーナストラックの「エピローグ」を追加)。
Saucy Dogとして初めてゴールデン・プライムタイムの連続ドラマ(『マイダイアリ―』)の主題歌として書き下ろした「くせげ」をはじめ、Saucy Dogらしさを追求する一方で、ガレージ・ロック、2ビート、シューゲイザー・サウンドにもトライした曲も含む7曲を聴いていると、『ニューゲート』というタイトルには新境地にアピールしつつ、新たなリスナー層にもリーチしたい、いや、リーチできるというバンドの思いが込められているようにも感じられる。
その『ニューゲート』という作品を、Saucy Dogを代表して、秋澤和貴(B)に曲作りやアレンジのリファレンスになった楽曲やアーティストを挙げてもらいながら語ってもらった今回のインタビュー。
秋澤のミュージシャンシップにも迫りながら、いわゆるアルバム・インタビューとは一味違う話が聞ける興味深いものになっている。


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ベースをはじめたきっかけはレッド・ホット・チリ・ペッパーズとアークティック・モンキーズ

─今日は、新しいミニアルバムのことももちろんなのですが、秋澤さんがベーシストとして、そしてミュージシャンとして、どんな人なのかというところも掘り下げられたらと思っています。まずは1年5か月ぶりとなる新作をリリースした現在の心境から聞かせてください。


そっかー、1年5か月ぶりになるのかぁ。そんなに空いた気は全然してないですけどね。むしろ、毎年出してたから、今年は出さなくてもいいかなぐらいに考えてたんですよ(笑)。でも、1年5か月でも前作の『バットリアリー』から雰囲気ってけっこう変わるんだなって改めて思いました。『バットリアリー』は、ちょっと暗いというイメージが個人的にはあって。でも、今回は、なんて言うんだろ。大人になったのかな。それこそ7曲目の「コーンポタージュ」の印象なのかも。以前、「Humming」(19年の3rdミニアルバム『ブルーピリオド』に収録)って曲でも父親のことを歌ってましたけど、「コーンポタージュ」は小さい頃に見ていた父親像がそれとはまた違った角度から描かれているところと自分が父親になってもおかしくない年齢ってことが相まって、だいぶ成長したなって感じました。もちろん、曲の雰囲気も含めてなんですけど、今回はその他の曲も過去の曲とわかりやすく対比できるような作品になった気がします。

─配信リリースしてきたタイアップ曲が全7曲中5曲収録されていることを考えると、2024年の制作をミニアルバムとしてまとめたとも言えそうですね?


結果的にそうなりましたね。

─タイアップが決まって、それに合う曲を、その時に自分たちがやりたいことも反映させながら作っている?


そうです。あ、でも、『52ヘルツのクジラたち』って映画の主題歌として作った6曲目の「この長い旅の中で」は、前回のアルバムを作ってた頃からフレーズはありました。ただ、その時は取っておこうとなって、今回使ったんですよ。逆に4曲目の「poi」は(石原)慎也(Vo/ G)がフレーズを持ってきて、「メロディのコードはこのほうがいいんじゃないの」って話をしながら作っていったんですけど、なんだかんだいちばん難しかったかもしれない。

─Saucy Dogとして新しいサウンドにアプローチしているし。


それもあって、3人の意見がなかなかまとまらなかった記憶があります。

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─石原さんは最初どんな曲にしたいと考えていたんですか?


特に、こんな曲っていうのはなかったと思うんですけど、僕は言葉を選ばずに言ったら、けっこうこてこてのフレーズだと思ったんです。

─ガレージ・ロック調のリフのことですか?


あ、そうです。でも、悪い意味じゃなくて、どこかで聴いたことがあるというか、耳馴染みがいいというか。ただ、そういうフレーズを、Saucy Dogらしさもある曲としてどうやって広げていこうかってところで展開に迷ったというか。結果、サビでSaucy Dogらしさをちゃんと出しながら、Aメロ、Bメロは今までにない感じになったと思うんですけど、ベースラインも最初、どうやってつけようかすごく悩んだんですよ。

─ベースラインを考える上ではアークティック・モンキーズの「From The Ritz To The Rubble」と東京事変の「ブラックアウト」を参考にしたそうですね?


はい。Aメロはアークティック・モンキーズのその曲をイメージしました。でも、Aメロの最後でセブンスコードになるとき、スライドのフレーズを入れてるんですけど、そういうのは「ブラックアウト」を参考にしてますね。「ブラックアウト」みたいなベースライン、普段、僕はあまり弾かないんですけど、一筋縄じゃいかないフレーズをきかせたほうが曲は映えると思って、そういうのを入れてみました。

─それは、これまでやったことがない曲調の曲に、どうやってベースを付けようかと考えたとき、自分が持っている引き出しの中から、アークティック・モンキーズや東京事変の、この曲を参考にしたらいいんじゃないかと引っ張り出してきたという発想なんですか?


そうです。僕がベースをはじめたきっかけはレッド・ホット・チリ・ペッパーズとアークティック・モンキーズなんです。今はもう、そんなに聴かなくなっちゃいましたけど、ベースラインを考えるとき、何かリファレンスが必要だと思ったら、まず自分が影響を受けた曲から探すようにしてますね。「poi」は「From The Ritz To The Rubble」ともう1曲、この曲いいじゃんと思って、それを参考にしてAメロのコード進行も提案した気がします。

─それもアークティック・モンキーズの曲ですか?


いや、アークティック・モンキーズじゃなかったです。なんだっけな。何かでした(笑)。

─「poi」に限らず、石原さんが持ってきた曲を聴いて、これだったらあの曲が参考になるというリファレンスは、けっこうぱっと思いつくものなんですか?


前はぱっと思いついてましたけど、慎也が持ってくる曲がどんどん複雑になってきて、なかなかぱっとは思いつかなくなってきてますね。たとえば、「この長い旅の中で」のようにテーマがある曲はわかりやすいんですけど、逆に「よくできました」はシンプルといえば、シンプルなんですけど。

─あー、パートごとにビートが変わるから。


僕はグリーン・デイとか、ストレイ・キャッツとか、パンクあるいはロカビリーみたいな曲にしたらかっこいいんじゃないと思いましたけど、みんなで意見を出し合って、結局、この曲のベースラインは、パッションでやりました。この曲は音作りもいちばん時間が掛かったんじゃないかな。曲としては短めのわりには。

─音作りに時間が掛かったというのは、どんなところで?


やっぱりギターを2本、3本と重ねるとなると、ストラトキャスターだ、テレキャスターだ、シングルコイルだ、ハムバッカーだ、リアだ、センターだって、何パターンも試しているから、音作りだけで6時間ぐらい掛かっているんですよ。

─ギターの音作りもメンバー全員で考えるんですか?


あとマネージャーさん、テックさん、エンジニアさんもです。ただ、音の好みの話になると、なかなかまとまらない。場合によっては、僕だけ違うってこともあるんですけど、そこは遠慮せず、ちゃんと自分の考えを言いますね。全員がそうだと思います。今回のミニアルバムは、特にそういうところにこだわったかもしれないですね。

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ギターを弾きながら考えてみたら、意外に、いいフレーズができることもあるんです

─ところで、「この長い旅の中で」はわかりやすかったとおっしゃっていましたけど、オールウェイズの「Belinda Says」の音作りと、テーム・インパラのフレーズを参考にしたそうですね。この場合の音作りというのは、ベースのことですか、それとも曲全体のことですか?


曲全体です。いわゆるシューゲイザーをイメージしてたんですけど、そこはみんな一緒だったから、わかりやすく決まりました。フレーズに関しては、オールウェイズを含め、そういうシューゲイザーのバンドってフレーズが動いてるようで、意外に動いてないから、シンプルでもいいのかなとは思ったんですけど、でも、スリーピースなんだからやっぱり動いたほうがかっこいいだろうって考えを改めたとき、だったらテーム・インパラが合いそうだって思いました。テーム・インパラのベースラインってボーカルのメロディに沿うことが多いんですよ。彼らの音楽が持ってる浮遊感も含め、「この長い旅の中で」に合っていると思って、確かベースフレーズを作った気がします。ボーカルに沿おうと思って考えたBメロのベースはまさにそうですね。

─「この長い旅の中で」はスタッカートをきかせて、リズムを刻むAメロのベースもすごくいいですね。


確か、あれは慎也に言われたんです。最初はサステインをきかせてたんですけど、刻んだほうがいいってなりました。

─なるほど。ギターの音作りもそうでしたけど、Saucy Dogはお互いのパートにも口を出しながら、アレンジ、音作りを考えているんですね。この曲はシューゲイザーをイメージしたそうですが、その意味ではトレモロピッキングでかき鳴らしたギター・ソロも聴き逃せないですね。


そこも音作りはかなりこだわりました。よくできたと思います。ちょっと忘れちゃいましたけど、この曲の音作りもけっこう時間を掛けた気がします。

─さっきスリーピースだからベースのフレーズは動いたほうがかっこいいとおっしゃっていたとおり、秋澤さんのベースプレイは実際に動くフレーズが多いですよね?


バンドをはじめた時から動くベースラインが好きだったんですよ。動くベースラインを聴いて育ってきたっていうのもあって。それこそポール・マッカートニーとか、ジェームス・ジェマーソンとか、メロディアスなベースがすごく好きで、そういうのを聴いて、自然にそういうプレイになったと思うんです。でも、改めて、ただ弾くだけじゃない、ちゃんと考えたベースラインを、この3、4年ぐらい意識するようになったんですけど、超難しいですね。スリーピースならではのリズム楽器としてのベースとリード楽器としてのベースの両方をやらないといけないっていうのがめちゃ難しくて、それは今でも悩んでます。昔はベースラインを思いつかない時は、家に帰ってめちゃめちゃ酒を飲んでフレーズを考えたこともありましたけど、今はもうそれはできないです。前はそれでなんとかなってたから、いけるかなと思ったんですけど、無理でした。そもそも酔いすぎてピッチが取れない。だから、今はちゃんとシラフで考えるようにしてます。

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─単純にルートで刻むのはつまらないですか?


いえ、全然そんなことはないです。昔はそのかっこよさがわからなかったんですけど、今はむしろルートで弾いている曲のほうがかっこいいと思っちゃいますね。その曲をルートで弾くことにはちゃんと意味があるんだってわかるようになってきたってことだと思うんですけど、それがサウシーに合うかどうかは別の話で。だから、敢えてやってはいないですけど、逆にフレーズを無理に入れようっていうつもりもないんですよ。結果的にその曲がかっこよくなればいいっていう。自分のエゴが曲に乗りすぎるのは違うと思うんですよ。だから、できるだけ客観的に聴くようにして、これを入れたら絶対良くなるというフレーズを意識しながらやってます。あと、大体2パターンぐらい用意しておきますね。それぞれのフレーズの意味や意図を説明して、どっちもいいから、どっちも録ろうってなることもあるし、そこからどんどん変わっていくこともあるし。そういうのは自分でも勉強になるからけっこうおもしろいと思います。

─ベースフレーズを考えるのが難しくなってきたのはベーシストとして成長してきたからだと思うんですけど、打開策や、そのヒントは見つかりましたか?


ベースラインっていうものにこだわらないことかな。それこそギターのフレーズとか、歌メロとか、歌のコーラスとかも意識して。そのほうが広く見えていいのかなっていう。うちにギターもあるから、ギターを弾きながら考えてみたら、意外に、いいフレーズができることもあるんですよ。そんなふうにいろいろな方法で、なんとかおもしろいフレーズを探そうかなとは思ってますけどね。

─さっきポール・マッカートニーの名前が出ましたが、ビートルズは東京事変を聴いて、東京事変の亀田誠治さんがポール・マッカートニーの影響を受けているという流れで聴くようになったんですか?


いえ、ビートルズは元々けっこう聴いてました。両親が音楽をすごく聴いてたんですよ。親父はキンクスとか、ザ・フーとか、日本のバンドだったら、eastern youthとか、THE YELLOW MONKEYとか、THEE MICHELLE GUN ELEPHANTとか、BLANKEY JET CITYとかが好きで、母親はblink-182とか、グリーン・デイとかが好きで。だから、わりかし古い音楽はずっと身近にあって、その影響で子どもの頃からいろいろ聴いてたんです。ただ、キンクスが好きだったから、高校生になるまでビートルズはちゃんと聴いたことがなかったんですけど、けど、ベースをはじめてから、ちゃんと聴いてみようって聴いてみたら、ベースラインすごいなってびっくりして。当時、僕はレッチリとかアークティック・モンキーズとかレイジ・アゲインスト・ザ・マシーンとか聴いてたんですけど、自分がやりたいベースはこっちだってなりました。

─なるほど、そういう流れだったんですね。2曲目の「馬鹿みたい。」のリファンレンスは、ビートルズとVulfpeckだったそうですね?


なんでだったかな。なんか、その2バンドが弾いてそうな雰囲気でやろうと思ったんですけど、最初のベースのスタッカートは、慎也のアイデアです。

─あ、ギターのコードリフからベースがぶーんと入ってきて、テッテッテッテッって刻むやつ?


そうです。

─石原さん、スタッカートが好きなのかな(笑)。


でも、スタッカートってそれこそリファレンスに挙げた2バンドのイメージがあるから、確かにそれはそうだなと思いました。でも、ビートルズっぽいっていったら、Dメロっていうのかな、2番のAメロの終わりの〈生まれ変わってもまた〉ってところのベースラインの。

─あー、なるほど。


シンコペーションをけっこう意識して入れたのは、ちょっとモータウンっぽいフレーズにしたかったからなんですけど、この曲はけっこうぱっとアイデアが湧いてきましたね。〈いまさら本音がどうとか〉って歌いはじめからのAメロがいちばん難しかったかもしれないです。

─けっこう高い音で弾いていますね?


そうですね。コードで鳴らしながら。

─コードで鳴らしていたんですね。


悩んだんですけど、コードで弾いたほうが音数が少なくて、かっこいいんじゃないかなと思いました。しかも、ベースラインも確かオンコードにしてるはずで、半音ずつ下がっていくっていうのをやってるんですけど、この曲は自分の中で、ぱぱっと思いついて、納得の行くフレーズがいちばん作れた気がしていて。ただ、Vulfpeckは、なんで挙げたんだろ?(笑) そうだ。たぶんVulfpeckの「Wait For The Moment」という曲を聴いて、思いついたんだと思います。フレーズが似ているわけではないんですけど、なんかしらフレーズを思いつくきっかけになったんですよ。

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─Vulfpeckのジョー・ダートはレッチリのフリーが大好きだそうですね。


そうなんですよ。でも、ジョー・ダートみたいなベースラインで16分はちょっと弾けないですね。

─さっきシンコペーションという話が出ましたけど、1曲目の「おやすみ」は2番からリズムを食い気味になるベースが、全体的にリズムを溜めた演奏の中で作るグルーブが曲を前へ前へとひっぱっているように聴こえるところがかっこよくて、個人的にすごく好きです。


でも、この曲、本当に難しかったんですよ。

─そうなんですか。メロディアスなベースラインは、秋澤さんが得意としているところではないですか?


そうですね。でも、2番のベースがけっこう動くところは、かなり悩んだんですよ。そのDメロのフレーズだけ、もう全然思い浮かばなくて、先にギターをレコーディングしてもらったんですけど、そこだけマジでどうしようってけっこう焦りながら、何か絶対いいフレーズがあるはずだと思って、たぶん2、3時間考えたんですよ。それでも見つからなくて、気持ちをちょっと変えようと思って、ジョン・メイヤーを聴いてみたんですよ。

─何か通じるものを感じたわけですね。


正確にはジョン・メイヤー・トリオだったんですけど、ピノ・パラディーノってこういうベースラインを弾いてたなって、それっぽいフレーズをちょっと無理やり入れてみたら、思いの外ハマったんですよ。〈毎日が雨でいい〉ってところですね。ここは全体的に勝負しにいってるかもしれない。

─ここ、かっこいいですよね。


ありがとうございます。でも、この曲、本当に全体的に難しかったです。1番から音符の長さがめっちゃ難しかったし、リズムを食うところもちゃんと合わないと変なふうに聴こえちゃうし。いちばん苦戦しました。アウトロのベースソロみたいなやつも本当に思いつかなくて、半分くらい慎也に手伝ってもらいました。最初、慎也からはゴスペルみたいな感じでって言われたんですよ。言いたいことはわかるけど、ゴスペルってどういうフレーズにしたらいいだろうって聞いたら、みんなで横揺れしながら手を叩きながら歌ってるみたいなって言うから、いやいや、わからない。けっこう難しいことを言うなと思って。それでも全然思いつかなくて、そしたら、俺だったらこういうふうに弾くけどってギターで弾いてくれたんですけど、やっぱりベースとは違うからめっちゃ難しかったです。さっき言ったところがようやくうまくいったと思ったら、最後の最後でめちゃめちゃ時間が掛かったっていう。結局、エンディングの持っていき方を含め、半分くらいは自分で考えましたけどね。

─直前までうねっていたベースが大サビでは淡々とリズムを刻んでいる。その落差もいいですね。


そうですね。最初は動いてたんですけど、そこまで動かなくてもいいんじゃないかって思って、それでダンダン・ダンダンって。そのほうがメリハリがつくんじゃないかってことで、そんなふうになりました。

マスタリングも立ち会っていて、曲間の秒数も自分たちで決めているんです

─ところで、石原さんは「おやすみ」を持ってきたとき、どんな曲にしたいと言っていたんですか?


最初は恋愛の曲っぽかったんですけど、全然違う曲になりましたね。曲そのものは6年ぐらい前からあって、レコーディングする直前まで行ったんですけど、その時の作品に合わないということでいったん流れたんですよ。それが今回、復活したんです。

─1曲目に持ってきたということは、けっこう自信があるということですよね?


それもあるかもしれないですね。これまでだったら後半に入れてたかもしれないけど、1曲目にこれが来たら、Saucy Dogってこういう曲もあるんだみたいになるんじゃないですかね。でも、僕がいちばん好きなのは3曲目の「くせげ」かもしれないです。

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─「くせげ」のベースは秋澤さんらしい。


そうですね。この曲は弾きすぎてもないし、弾かなすぎてもないし、ちょうどいい感じで。そんなに目立つわけじゃないけど、ベースソロみたいなところがあって、そこ以外はデモからそんなに変わってない。

─〈正確に思い出す事も/出来ないくらいぼやけてしまったじゃないか〉の後ですね。


あ、そうです。そこは、なぜだかわからないですけど、弾く時にフジファブリックの「赤黄色の金木犀」のギター・ソロを思い浮かべながら弾いてました。曲の感じは全然違うのに。たぶんコード進行がちょっと似てるんですかね。

─へぇ、おもしろい。


だから、やっぱりちょっとせつない感じがいいのかなと思って。あのフレーズは自分でもけっこう気に入ってます。わりとすぐに思いついたんですよ。

─「おやすみ」同様、今回、初出となるバラードの「コーンポタージュ」は、リリースが12月だから、クリスマスっぽいイメージの曲を加えようということになったのかなと想像したのですが。


あ、でも、レコーディングした時は、まだ歌詞ができてなく、どんな曲になるのか、正直、みんなわからなかったんですよ。で、僕は諸事情でボーカルのレコーディングに参加できなかったんですけど、レコーディングが終わったあと、音源を聴いたら、いつの間にかクリスマスの曲になっていて、あれ、何これみたいな。でも、それまでのイメージからすごく化けたと思って、なんだ、こんな曲になったんだ。めっちゃいい。まさかこんな曲になるとはってけっこうびっくりました。

─歌と歌詞が加わったことで、曲の印象がだいぶ変わった。


全然変わりましたね。初めて聴いたとき、ケンタッキーフライドチキンのCMの曲みたいだって思いました(笑)。

─いいですね。ぜひ使ってもらいましょう(笑)。


あったかい曲だと思うんですよ。今回の歌詞も「よくできました」以外は、暗いってわけじゃないけど、けっこう重いと言うか、聴き手に問いかけるような曲が多いから、最後があったかい曲っていうのはすごくいいなと思って。

─バランスが取れた。


そうですね。締まった気がします。

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─どの曲もSaucy Dogらしいんですけど、曲調はけっこうばらけましたね。


そうですね。年々、自分たちのこだわりも強くなってきて、どんな曲でもSaucy Dogらしさが出てきたと言うか、毎年、作品を出させてもらうことで、それを積み重ねて、いろいろな曲も出せるようになってきたと言うか。毎回、自分たちでもどんな曲ができるのか、もちろん予想はできないんですけど、今回も聴き応えあるものになったと思います。僕ら、マスタリングも立ち会っていて、曲間の秒数も自分たちで決めているんです。そういうところにもこだわりが出ているんじゃないかって思いますね。

─さっき「この長い旅の中で」を作るとき、シューゲイザーというイメージは3人共通していたとおっしゃっていました。ということは、石原さんもせと(ゆいか Dr)さんも洋楽を含め、普段からいろいろな音楽を聴いていらっしゃるということですよね?


それぞれに好きな音楽はあると思うんですけど、ふたりが洋楽を聴いているというイメージはそんなにないです。洋楽はたぶん僕がいちばん聴いていると思います。

─なるほど。常に新しいアーティストを探していらっしゃると思うんですけど、どんなふうに探していますか?


人に教えてもらったりとか、関連アーティストで出てきたものを聴いてみたりとかが多いですね。毎年、今年のプレイリスト100みたいなのを勝手に作ってるんですよ。100曲全部別のアーティストで。

─つまり毎年、100組以上は聴いているということですよね?


そうですね。去年は、半年後ぐらいに見たら1曲足りなくて99曲でしたけど(笑)。でも、それは僕が勝手に、その年にいいと思った曲を集めているだけなんで。

─そうやって曲を作る時の引き出しがどんどん増えていくわけですね。


自分の記録じゃないですけど、その年、何を聴いたか忘れないためにというか、思い出すためにというか、そこからまたいろいろな曲が聴けるかなとも思いますし。

─ベース作りのリファレンス探しという気持ちもあるんですか?


いや、そこは意識してないです。むしろ癒しを求めてますね(笑)。

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─今年、特に印象に残ったアーティストはいますか?


うーん、そうだな。OMAかな。イギリスのバンドなんですけど、ヒップホップの名曲をインストゥルメンタルでカバーしているんですよ。その人たちを知ったきっかけが(日本のDJ/ヒップホップのトラックメイカーの)Nujabesを聴いてるとき、関連で挙がってきたんですけど、今年の3月、恵比寿のLIQUIDROOMでNujabesのトラックで歌ってたShing02さんと一緒にライブもやったんですよ。演奏もめちゃめちゃうまくて、インストでこんなにかっこいいバンドがいるんだってすごく感動しました。でも、今年いちばん、印象に残ったのは......。

─はい。


この間、沖縄の宮古島で初めてライブ(「MIYAKO ISLAND ROCK FESTIVAL 2024~SAVE THE SEA, SAVE THE SKY~海に優しく、空に優しい、南の島のロックフェス」)したんですけど、そこでBEGINを聴いた時に、もうヤバすぎて、めちゃめちゃ感動しました。今更ながら、こんなにも素晴らしいのかと思いました。いや、これはすごいってなって、直接見たら、絶対泣くと思ったから、目の前が海だったんですけど、海を見ながら聴いてました。

─すごくわかります。


レジェンドって言われる理由がわかりました。ずっと歌い続けてほしいですね。いやぁ、あれはすごかったです。

─ありがとうございます。ミニアルバムのことをいろいろ聞かせていただきました。3人で受けるインタビューとは全然違うおもしろいものになったんじゃないかと思うのですが、最後に、年末なので活動の予定も含め、2025年の展望を聞かせてください。


まず1月と2月に「Saucy Dog 5ヶ月連続対バン企画 "こいこい"」が名古屋と東京で計4公演あります。5か月があっという間だったっていうのがありつつ、4月からはホールツアー(「Saucy Dog HALL TOUR 2025」)がはじまって、それが4か月続くので、誰ひとり、病気したり、ケガしたりせずにファイナルの沖縄までやり遂げられるようにがんばりたいです。

─2025年も忙しい年になりそうですね。


そうですね。来年も多くの人にSaucy Dogを聴いてもらえるようにがんばるのはもちろんなんですけど、来年もいろいろなことに挑戦したいですね。Saucy Dogって毎年おもしろいことをやってると思うんですよ。今年だったら、SiMの「DEAD POP FESTiVAL」とか、HEY-SMITHの「OSAKA HAZIKETEMAZARE FESTIVAL」とか、自分たちがこれまであまり出たことがない界隈のフェスにも出ましたしね。慎也ともちょっと喋ったんですよ。やっぱり勝負の年にしたいって。慎也は今年以上に忙しい年にしたいって言ってたので、それに振り落とされないようにがんばります。

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取材・文:山口智男
撮影:中野敬久

RELEASE INFORMATION

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Saucy Dog「ニューゲート」
2024年12月18日(水)
品番:AZCS-11312200円(tax in)
※詳細は後日発表

Track:
1. おやすみ
2. 馬鹿みたい。(ABEMA「キミとオオカミくんには騙されない」主題歌)
3. くせげ (ABCテレビ・テレビ朝日系ドラマ「マイダイアリー」主題歌)
4. poi (NHKアニメ「烏は主を選ばない」オープニングテーマ)
5. よくできました (TBS系「王様のブランチ」テーマソング)
6. この長い旅の中で (映画「52ヘルツのクジラたち」主題歌)
7. コーンポタージュ

Bonus Track(※CD ONLY)
8. エピローグ

<先着予約購入特典>
1_SaucyDog_NewGate_postcard_Lineup_square_1200.jpg
Saucy Dog Online Shop:オリジナルポストカード(Saucy Dog Online Shop ver.)
タワーレコード:オリジナルポストカード(タワーレコード ver.)
Amazon.co.jp:オリジナルポストカード(Amazon.co.jp ver.)
楽天ブックス:オリジナルポストカード(楽天ブックス ver.)
一般CDショップ:オリジナルポストカード(一般CDショップ ver.)

<注意事項>
※先着予約購入特典には数量に限りがございますので、なくなり次第終了となります。
※一部のオンラインサイトやCDショップで特典が付かない場合があります。事前にご予約されるオンラインサイト/CDショップにてご確認ください。

商品購入はこちら
試聴はこちら
アルバム特設サイト:https://saucydog.jp/feature/8th_minialbum

LIVE INFORMATION

Saucy Dog HALL TOUR 2025
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チケットなど詳細はこちら

Saucy Dog 5ヶ月連続対バン企画 "こいこい"
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2025年1月29日(水)
Zepp Nagoya
2025年1月30日(木)
Zepp Nagoya
開場:17:30 開演:18:30
<問い合わせ>サンデーフォークプロモーション 052-320-9100
ゲストアーティスト:My Hair is Bad

2025年2月19日(水)
Zepp Haneda(TOKYO)
2025年2月20日(木)
Zepp Haneda(TOKYO)
開場:17:30 開演:18:30
<問い合わせ>DISK GARAGE  https://info.diskgarage.com

※各会場、対バンアーティスト有
チケット料金:1F ¥5,500(税込)2F指定 ¥6,600円(税込)

INFORMATION

FM802「ROCK KIDS 802 -OCHIKEN Goes ON!!-」公開収録
2024年12月23日(月)18:30 スタート予定
グランフロント大阪 北館1F ナレッジプラザ
優先観覧エリアに100組200名様をご招待
後方エリアは観覧フリー
ゲスト:石原慎也(Saucy Dog)
DJ:落合健太郎(FM802 DJ)
詳細・優先観覧エリアエントリーはこちら

マイダイアリー
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2024年10月20日(日)初回放送スタート(毎週日曜よる10時15分~の全国ネット枠)
※放送終了後、TVer・ABEMAで見逃し配信

【キャスト&スタッフ】
出演:清原果耶、佐野勇斗、吉川愛、見上愛、望月歩
脚本:兵藤るり
音楽:小山絵里奈
主題歌:Saucy Dog「くせげ」(A-Sketch)
企画・プロデュース:清水一幸
プロデューサー:川村未来、藤田洋平、栗生一馬、森田大児
演出:穐山茉由、瑠東東一郎、髙橋浩、田口仁
制作プロダクション:東映東京撮影所
制作著作:ABCテレビ
番組公式HP:https://www.asahi.co.jp/mydiary/

TBS系「王様のブランチ」(毎週土曜午前9:30より放送)
番組公式サイト:
https://www.tbs.co.jp/brunch/

ABEMA 「キミとオオカミくんには騙されない」
本編URL:https://abema.tv/channels/special-plus/slots/9J3rN9pk8mjkcP
番組ページ:https://abema.tv/video/title/90-1820
番組公式HP:https://contents-abema.com/ookami-series/

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