SENSA

2024.08.21

怒濤の年月を音楽に封じ込めて新たに生きていくというドキュメント「Ghost like girlfriend」-Highlighter Vol.212-

怒濤の年月を音楽に封じ込めて新たに生きていくというドキュメント「Ghost like girlfriend」-Highlighter Vol.212-

音楽だけでなく、どのカルチャーも共通点やつながりがあるということをコンセプトにしているSENSA。INTERVIEWシリーズ「Highlighter」では、アーティストはもちろん、音楽に関わるクリエイターにどのような音楽・カルチャーに触れて現在までに至ったか、その人の人となりを探っていく。Vol.212は、兵庫県出身のSSW・ビートメイカー・作家の岡林健勝によるソロプロジェクトGhost like girlfriendを取り上げる。
その才能は以前から高く評価されてきたが、このたび自身が「ようやく自分で作りましたと言い切れる作品が出来た」と言い切るEP『PM32000:00』が完成。喜びも寂しさも引き連れて進んでいく時間を封じ込めたドキュメントのような作品は、聴き手にも深い思考をもたらしてくれる。


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活動を始めたきっかけ
大学進学とともに本名名義で弾き語りを始めて、4年生の夏に以前所属させてもらっていた事務所の方に声を掛けてもらい、一緒に作品を作るにあたって改名するのはどうか?との話が上がり今の活動名となりました。当時自主制作で作ったばかりのアルバム『when we meet up』に収録していた「私が幽霊だった頃」という曲から"Ghost"と"girlfriend"を、そのアルバムをリリースした際に作った架空レーベル「A song like you record」、そこから"like"を持ってきて並べた名前となっています。

『2020の窓辺から』というEPのマスタリング直後にあったライブの際にライターでFRIENDSHIP.のディストリビューターでもある金子厚武さんに取材していただく機会があり、取材後の雑談でもしまた自主に戻ったらFRIENDSHIP.からのリリースを相談させてもらって良いですか?とお聞きしていて。そこから2年後に前レーベルからの契約満了の通達とそれにあたっての諸々の話し合いがあり、それが終わった直後に金子さんへDMして平(大助・FRIENDSHIP.)さんを紹介していただき、現在に至ります。

影響を受けたアーティスト
実家がカイロプラティックを営んでいて、待ち時間や施術中のBGM用にたくさんCDがあって、そこから槇原敬之さんやスガシカオさんのCDを手に取ってみたり、iTunesにも邦楽のウィークリーチャートの曲が常々入っていました。その影響で90~00年代の邦楽が自分のどの曲の根幹にもあるなと思っています。





自分でCDを買ったり借りたり、音楽に興味を持ち始めた14、15歳の頃から今も変わらない熱量で好きなのはBase Ball Bearです。聴き始めた頃の作品は詞世界がボーイミーツガールであったり、聴いていて浮かぶシーンにも少年少女や架空の街が出てくる印象だったのですが、その後のリリース作からは段々とVo/Gの小出(祐介)さんやBase Ball Bearそのものが浮かぶようになりました。

近年だと買い物をしていたりする何気ない自分の画が浮かんできたりと変わってきている印象があり、サウンドも作品集ごとに違うアプローチをされていて、今、何に興味があって何が書きたいかがどの作品にも強く反映されていること、そしてそれに伴うバンドの変化っぷりにすごく人間味を感じていて憧れています。なので自分もその時その時の興味や書きたいことをなるべく余さず作品に注ぎ込もうと、活動を始めた頃からずっと意識しながら作っています。



注目してほしい、自分の関わった作品
新しいEP『PM32000:00』(読み:ピーエムサンマンニセン)です。5年前にリリースした1st AL『Version』が完成した時、達成感も勿論ありつつですが、詞曲や原型のデモは自分で作ったものの、周りの制作陣のおかげで出来上がった節が大きくあり、「果たしてこれはどこまで自分で作ったと言えるのだろうか」という大きな戸惑いが生じました。そこから改めて編曲をまた少しずつ覚えていき、4th EP『2020の窓辺から』、2nd AL『ERAM』を経て、今作でようやく自分で作りましたと言い切れる作品が出来たのではないかと思っています。



1st ALが生音の色が、2nd ALが打ち込みの色が強かったので、3rd ALはその中間っぽいものを作りたいとこの2年ほど漠然と思っていて、Sunni Colónの『JuJu & The Flowerbag』等を意識しながら「事件」や「ゆめうつつ」は制作していたのですが、そのあたりから何故かリリースから一年経っていた2nd ALのセールス不振に対するどうしようもない気持ちだったりいろんなものが押し寄せて、一年ほどかなり暗澹としていました。

そんな中で決めた今作の制作だったので、もうとにかくやりたいこと書きたいこと全部やろうといつも以上に思いながら臨んで。暗澹としている人間が作るんだから暗澹とした作品になるだろう、というかいっそもうそういう作品になればいいと思いながら、いかに今の自分に兆しがないか、それをしっかり伝えられる言葉は何だろうかと探している最中に兆しそのものが意図せず急に見つかったり、以前から気になっていた管楽器やゴスペルクワイアを取り入れてみたり、やってみたいことそのまま過ぎて逆に避けていたギターサウンドやトリッピーなリバーブ感も今作では臆せずやってみたりと趣味嗜好がいつもより出ていて、結果、思ったよりも拓けた作品になった気がして自分でも少し驚いています。

彼此10年近くお世話になっていて今作でも全曲のミックスを手掛けてくださったエンジニアの宮沢竣介さんが、この作品が完成した際に前述の自主制作アルバム『when we meet up』を思い出したと言ってくださって、あのアルバムもやるせなさや憤りがカンストしたタイミングで作った作品だったし、そういう時にしか出せない風合いが今作にも表れているなと改めて思います。



今後挑戦してみたいこと
作品の周辺施策として写真を撮ったり、アートワークや映像を作ったりすることがこの2年で沢山増えたのですがどれも楽しくて、もっと自分のやりたいことに手が届くようにいろいろ知っていきたいなと思っています。

あとは歌詞カードの拡大版としてZINEを作る機会もここ1、2年で増えて、その誌面のデザインや文章を書くのもとても好きな時間なので今後も続けていきたいですし、今度友だちのZINEの誌面デザインとインタビューをやる予定があって、誰かのために作ることも少しずつやっていきたいです。

あとは引き続き曲のリリースと弾き語りのツアーをしたい、映画やドラマが好きなので主題歌や劇中歌で起用してほしいとか、ラジオで流れていると知ると全国どこの番組もタイムフリーで追いかけて聴くくらいにラジオ越しに自分の曲を聴く時間が好きなので、もっともっと流れてくれたら良いのにと思っています。

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7/3リリース「ミスユー!」ジャケット。岡林本人による撮影・コラージュ




7/24リリース「全知全能」MV。こちらも岡林本人が撮影・編集



カルチャーについて

触れてきたカルチャー
高校3年の頃に自動的にiPhoneへダウンロードされていた『バナナマンのバナナムーンGOLD』のPodcastを聴き始めたことから、ずっとラジオが好きです。今毎週欠かさず聴いているのは『とろサーモンの冠ラジオ枠買ってもらった。』『こんプロラジオ』『マユリカのうなげろりん!!』『霜降り明星のオールナイトニッポン』です。
先日初めてとろサーモンのラジオの公開収録を観に行った時にキングコングの西野(亮廣)さんが乱入して来て、お笑いもすごく好きなので目の前のレジェンドっぷりに少し震えました。



今作の制作に入ったあたりからANN JAMというアプリでちょうど自分が高校3年~大学1年あたりの「オードリーのオールナイトニッポン」放送回がアップされ始めて、それらを聴きながら制作に励んでいました。思春期の頃のマインドを思い出したことがより今作のソリッドさに拍車を掛けている気がします。



映画も好きで、制作期間の終わり際からまたいろいろと観始めています。
最近観たものだと『アイアム・ア・コメディアン』『ペパーミント・キャンディー』『タクシー運転手 約束は海を越えて』『オアシス』『積木くずし』『横道世之介』『Winny」『夜明けのすべて』『宮本から君へ』など、1、2日に一本くらい観ています。

『アイアム・ア・コメディアン』は先月ワンマンが終わった翌日に観に行きました。30歳になる数日前で、30代から感受性やパワーが乏しくなっていくのではないかという漠然とした不安を抱えていたのですが、劇中の村本(大輔)さんのエネルギッシュさがすごくて、何も心配ないかもと観終わった後には抱えていたその不安は跡形もなく消え去っていました。
30歳になってから最初に観た映画は『フィッシュストーリー』でした。こちらも何度も観ている好きな映画です。




今注目しているカルチャー
引き続き音楽・ラジオ・映画を楽しみつつ、前述にもありますがアートワークや映像をもっと思ったように作りたいので、気になった写真や映像が見つかったらその作家を探す習慣を身につけたいなと思っています。
最近よく見させてもらっているのはYunosukeさんというイラストレーター/グラフィックデザイナーの作品です。色味がどれも可愛くて憧れます。



音楽でいうとこの一年でNF ZesshoくんやNyQuilCapsのSakaiくんと知り合って、彼らの洗練されてるように聴こえるし、だけど同時に凄まじい濃度の歌詞を歌っていることもわかるというのは自分がしたくても出来なかったことなので、体現できていることが凄いなと思いますし、次作に向けてどうすれば自分なりのそれが出来るかを、彼らの音楽やいろんな人のヒップホップを聴いて改めて模索してみたいなと思っています。





RELEASE INFORMATION

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Ghost like girlfriend「PM32000:00」
2024年8月21日(水)

試聴はこちら

LIVE INFORMATION

Ghost like girlfriend & indoor cats.presents「hirrow tour」
2024年9月22日(日)
恵比寿KATA
OPEN 17:15 / START 18:00

2024年9月23日(月)
神戸RINKAITEN
OPEN 17:15 / START 18:00

2024年9月29日(日)
名古屋Sunset BLUE
OPEN 18:15 / START 19:00

チケット:
https://t.livepocket.jp/t/8pxy5

PROFILE

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Ghost like girlfriend
兵庫県出身のSSW・トラックメイカー岡林健勝のソロプロジェクト。
2017年、Digital single「fallin`」リリースより活動開始。 全楽曲の作詞曲・トラックメイクほか、近年は他アーティストへの提供も行っている。

LINK
オフィシャルサイト
@G_l_g_official
@ghost_like__
@ghostlikegirlfriend3658
FRIENDSHIP.

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