SENSA

2024.08.14

Enfantsが始動してから見据えていた

Enfantsが始動してから見据えていた"到達点"『D.』が生まれるまで──大屋・中原・伊藤インタビュー

Enfantsが7月31日にEP『D.』をリリースした。

新作は『Q.』、『E.』に続く3枚目のEP。2021年末に活動を終了したLAMP IN TERREN を経て、2022年3月に松本大がEnfantsとしての活動を開始してから、ずっと思い描いていた"到達点"としての作品だ。

しかし、話を聞いてみると、楽曲制作は難産を極めたという。果たして何があったのか?

松本大へのロングインタビュー、そして大屋真太郎(G)・中原健仁(B)・伊藤嵩(Dr)の3人へのインタビューを通して、Enfantsというバンドの"生き様"に迫った。


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Enfantsになってからは、より松本大の中心にフォーカスして、いらないものを削ぎ落としていくという感覚に近い(大屋)

─まずシンプルな質問として、『Q.』『E.』『D.』と3枚のEPが完成しての実感は、どんな感じですか?


伊藤嵩(Dr):「Q.E.D.」で「証明完了」という意味だとは思うんですけど、何の証明が完了したんでしょうね?という実感はあって。実感してないというか。特に僕はバンドの構成上、後から入っているので、僕が入ったことの証明なのかなっていうのも思ったりして。あやふやな実感ですね。

大屋真太郎(G):LAMP IN TERRENを活動終了して一緒にEnfantsとしてやっていくというときに、僕はどこに向かっていけば良いか、いちばん迷ってたんです。それで、(松本)大がやりたいものに方向を合わせるのにこれだけの期間がかかっちゃったのかなっていうところはあって。やっと自分的には方向が見えてきたんですけど、作っている最中は本当に手探りで。俺が「右かな? 左かな?」って思ってたら「右斜め後ろなんだよね」みたいな、自分が想像してなかった方向だったりもして。そっちの方向に向くっていう作業がとても難しかった。とても苦しい期間でした。なので、作品(の制作)を終えて「やっと終わったか」というところもありますし、「これで次に進めるかも」っていう実感もありますね。

中原健仁(B):「これがEnfants」ですよっていう自己紹介みたいなところもあると思うんですよ。ドラムが嵩になって、LAMP IN TERRENとはどう違うんだみたいな証明でもあると思うし。個人的には自分自身の準備期間というか、Enfantsとはどういうことをやっているグループなのかみたいなことを、大から話を聞いたり、実際に作っていく曲の中でそれを感じたりした期間ですかね。思ってた方向と違ったりとかも結構あったんですけど、3つの作品のレコーディングとかライブをやっていく中で修正して、こういうやり方で表現したらいいのかなっていうのを確かめたような期間でした。

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─これは中原さんと大屋さんにお伺いしたいんですが、LAMP IN TERRENの松本さんと、Enfantsとしての松本さん、そこにはどんな変化があったと思いますか?


大屋:僕の中では、作曲とか編曲をする上で、LAMP IN TERRENの頃は要素を足していく作業だったのに対して、Enfantsになってからは、より松本大の中心にフォーカスして、いらないものを削ぎ落としていくという感覚に近い。そういう違いがありました。

中原:作曲面ではよりシンプルになりましたし、人間的にはLAMP IN TERRENの時より話をしやすくなった感じはあります。松本大がオープンになったのか俺が話しやすくなったのか、距離感が縮まったと思います。

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─伊藤さんからはどう見えますか?


伊藤:僕の第一印象は普通に面白い奴だなと、シンプルに話しやすいなと思っていたんで、あんまりイメージのギャップはなかったんですけど。LAMP IN TERRENからEnfantsになっての変化については、本当に自分がやりたいことをやるようになったのかなと思います。LAMP IN TERRENの時は客観視をすごく大事にしていたと思うんですけど、今はその割合がグッと減った。自分のやりたいことにフォーカスした結果、それがいい方向に転がっている。もちろん問題点もあったとは思うんですけれど。そこに自分が加われたのが嬉しかったですね。

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─Enfantsは当初「松本大を中心としたロックバンドプロジェクト」という打ち出しでしたけれど、これは、バンドですよね。


大屋:バンドです。

中原:大も含めて、メンバー的にはバンドだと思ってますね。

伊藤:元々はメンバーが入れ替わっても気兼ねなくやれるよねっていう、抜けるにしても新しい人を入れてやるにしてもそのつどステージで面白くなればいいよねっていう感じだったんですけど。気づいたらバンドになってました。僕は最初から「面白いことやろうよ」ってあいつに言ってたんで、「お前がそういうこと言うからバンドになっちゃった」って言われたんですけれど。ライブを観たらわかると思うんですけれど、バンドじゃなきゃ成立してないことをやってますね。

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─バンドマン4人がステージにいた感じでした。


中原:大がやりたいのはバンドだったと思う。俺もやりたかったのはこういうバンドだし。

伊藤:LAMP IN TERRENを辞める理由として何か必要だったっていうのはわかるから、対外的な言い方として、ちょっとモヤっとしてるところはしょうがないかなっていうのはあるけど。メンバーの意識としてはもとからバンドだったんじゃないかな。そんな感じです。

アンダーグラウンドの楽しみをオーバーグラウンドなところ、または超えるくらいまで持っていけたら(伊藤)
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─これは特に今年に入ってからのワンマンで感じたことなんですけれど、Enfantsの曲を好きだったり、刺激を受けて共感して来てくれる新しいリスナーやファンが確実に増えていると思うんです。そのことによって、ステージとオーディエンスが作るムードみたいなものも変わってきている。この実感って、皆さんとしてはどうですか?


中原:あります。

伊藤:最近特に男の子が増えているんですけど。やっぱりそういうことなんだろうなって。若い大学生ぐらいの男の子が来ている。そういう層にも届いてきているのかな。

中原:雰囲気の違いで、それを言葉にするのは難しいんですけど、静かに聴き入るみたいな感じじゃなくて、なんか、熱を感じるんですよ。最近はそれをより感じるようになってきている気がします。単純に男の子だったり、おっちゃんが増えて、見ている景色がそう思えるのかもしれないですけど。ちょっと雰囲気が変わった気がします。

大屋:LAMP IN TERRENから知ってくれている、いわゆるコアなファンの方々と、新しくEnfantsから来てくれた人たちがごちゃ混ぜになっている感じがします。

伊藤:でも、毎回違うんですよ。常にライブが生き物になっている。このバンドは特にそうですね。ここまでライブが一本一本、同じセトリで続いているはずなのに、こんなに前日と違うことがある?っていうバンドはなかなかないと思います。

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─どういう違いなんですか?


伊藤:主に僕と松本のせいだと思うんですけど、性格的にも、決められたことをそのまんまやるっていうのが歯痒いタイプなんですよ。何かサプライズが欲しい。それを僕や松本は、こいつら(大屋と中原)にやりたいんですよ。

中原:だから、Enfantsになってからいちばん変化があったのって、そこなんですよね。

伊藤:笑わせたら勝ちだと思って。

中原:そう、そういうイメージ。

伊藤:それを常にやっちゃってるんで。収録が入ろうが、何があろうが。本当は良くないのかもしれないですけど、それをやってるおかげなのか、そういうものを求めて来てくれてる人も増えてきている。

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─僕が見たのは表参道WALL&WALLの2日目の月曜日の方だったんですけど、PAが途中でマイクが落ちちゃって、生声でMCを喋ってて。むしろそれによってギアが上がるような感じはEnfantsのライブの特性だなって思いました。


伊藤:あのMCからの流れも、相互に影響されててテンションが上がってて、噛み合って、めっちゃいいライブになった。そういうのがうちのバンドのライブの醍醐味だと思います。

─偶発的なものとか、人間味とか、そういうものが持ち味になっている。


伊藤:生々しさというか。それがLAMP IN TERRENとの大きな違いで。

中原:そこだと思う。俺自身、今まではドラムとピタッと合わせた同じ線が一緒にあるみたいな、そういう演奏をずっとやろうとしてたんですけど、それじゃいけないっていう風にEnfantsでなって。嵩の性格がまったくそういうタイプじゃないんで。もっとラフな、自由にやりたいっていう人だから。で、それが噛み合った時にグルーヴが生まれるっていう。人間がやる意味みたいなものをすごく感じますね。探り合いながらやってるようなところもあったんですけど、噛み合った時、それがめちゃくちゃ気持ちよくて。Enfantsやってるなっていう感じがしますね。それはLAMP IN TERRENではあんまりなかったことです。

─もうひとつ聞きたいんですが。そういう生々しさはEnfantsのステージの魅力にあると思うんですけど、一方で楽曲の情景とかにはすごく閉塞感がありますよね。部屋の中の音楽である。


伊藤:そうですね。本人が言ってますね。家から出ない音楽である。

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─ここって矛盾だと思うんですよね。でも、その矛盾がEnfantsの面白さのひとつの由来でもあると思うんです。基本的には、部屋の中にいて完結してたらバンドをやらずに全部打ち込みでベッドルームミュージックを作ると思うんです。だけどバンドで、しかもそのバンドの肉体性とか偶発的なところをより拡大してフォーカスしていく。一方で、楽曲にはすごく閉塞感がある。このあたり、演奏しているメンバーとしての感覚ってどうでしょうか?


大屋:LAMP IN TERRENの時と比べて大きく変わったことのひとつでもあるんですけど、お客さんとコミュニケーションをとるというよりは、ある種、自分たちが叫んでいるところを上から覗いてもらっているぐらいの感覚で僕はステージをやっていました。エネルギーを中心にいる松本大に向けるような感覚というか。

伊藤:ステージ4人の中でエネルギーが渦巻いていて、そこから熱がガーッと上がっていって、それがお客さんに伝播していくようなイメージ。僕はそういうライブの作り方がすごい好きで。バンドで言うとOGRE YOU ASSHOLEとか、そういうタイプのライブをすると思うんです。で、今のライブとか、楽曲とかはそういう気がしているけど、それを披露する場もみんな内を向いている。松本は前を向いていてもエネルギー自体が中に向かっていて。それがピークに達すると爆発するというか。でも、矛盾とは違う感じかもで。

─矛盾じゃないかもしれないですね。爆発している感じもあるので。


大屋:外向きな爆発というよりも、内向きな静かな爆発という。

伊藤:なので、そんなにギャップがあるという感じはないかもしれないですね。

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─最後に聞かせてください。Enfantsのこの先についてはどんなことを思っていますか?もちろん松本さんがバンドのビジョンを描いて進んでいくと思うんですけど、皆さんとしては、たとえばこういうライブの風景を見てみたいとか、どんな未来像を思い描いていますか?


中原:Enfantsって、アリーナとかホールとか、そういうところのイメージは個人的には持ってないんです。規模感もそうだし、メジャーな音楽ではないと思ってるんですけど。でも、こういう音楽をああいう場所でやってたら面白いかもなって思います。そこはEnfantsで立ってみたいなって。

大屋:そこまで大きな話ではないんですけど、日本のロックに対してのアンチテーゼというか、ある種、昔の自分たちに対してのアンチもあると思うので。なので、王道のわかりやすい未来はあんまり描けてないんですけど。そういうちょっと反抗的な未来にしていきたいなと思います。

伊藤:僕らがやってることはアンダーグラウンドなことであるっていうのは理解していて。僕はそういうのがすごく好きなんですけど、そのアンダーグラウンドの楽しみをオーバーグラウンドなところ、または超えるくらいまで持っていけたらすごいなと思います。その熱量、ぼやっとした核自体はあるんじゃないかと思うんで。それをどうにか地表付近まで持ってきたいというのはありますね。あとは、バンドって個の集合体だと思うので。各個人がもっとフィーチャーされていろんな仕事をしたり活躍をしていける場にしていきたい。そこが目標です。

取材・文:柴那典
撮影:山川哲矢



RELEASE INFORMATION

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Enfants「D.」
2024年7月31日(水)
Format:Digital

Track:
1.Kid Blue
2.社会の歯車
3.洗脳
4.ひとりにして.

試聴はこちら

ライブ会場・通信販売でCD及びカセットテープの販売あり

LIVE INFORMATION

Enfants One Man Live "A Revolution From My Bed"
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2025年2月22日(土)
東京・LIQUIDROOM ebisu

2025年3月1日(土)
大阪・BIGCAT

2025年3月2日(日)
愛知・NAGOYA CLUB QUATTRO

いずれも16:00 OPEN / 17:00 START

チケット:前売一般¥4,500 / 学割¥3,000 / 当日¥5,000(いずれも別途入場時1ドリンク代必要)
https://eplus.jp/enfants/

特設サイト:https://enfants-oneman2025.studio.site/

Enfants One Man Live "タイムアウト"
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2024年8月29日(木) 名古屋Tokuzo
19:00 Open / 19:30 Start
※SOLD OUT

2024年8月30日(金) 岡山PEPPERLAND
18:30 Open / 19:00 Start

2024年9月1日(日) 熊本Django
16:30 Open / 17:00 Start

2024年9月3日(火) 京都磔磔
18:30 Open / 19:00 Start

チケット:前売一般 ¥4,500(別途入場時1ドリンク代必要)
https://eplus.jp/enfants/

特設サイト:https://enfants-timeout.studio.site/


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オフィシャルサイト
@enfants_jp
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