2024.08.16
映像やストーリーを想起させる歌、そして、ピアノ、ドラム、ベースによるオーガニックな音像。中野ミホの1stフルアルバム『Tree』は、シンガーソングライターとしての彼女の資質が奥深いサウンドとともに表現された作品だ。
2013年にロックバンドDrop'sでメジャーデビュー。2021年秋にバンド活動を休止してからはシンガーソングライターとして活動してきた中野ミホ。当時のことを振り返って彼女は「普段聴いている音楽と、バンドでやっていることが離れてしまっていた」と語る。
「日常のなかでリラックスしながら聴いているのは、チェット・ベイカーやデューク・エリントン、ファッツ・ウォーラーとかで。特にピアノと歌が好きなんですよね。Drop'sでやっていることも楽しかったんですけど、聴きたい音楽と自分がやっていることがズレている感じもあったし、惰性で続けるよりも、1回リセットしたほうがいいかなと。自分にとっての音楽を見つめ直したいという気持ちもありました」
ソロ活動では"歌"にフォーカスし、ジャズ、オールディーズをはじめとする古き良きアメリカの音楽にインスパイアされた楽曲を志向。2022年8月には6曲入りEP『Breath』を発表した。ライブや制作をサポートしているのは、ピアニストのRomantic(爆弾ジョニーの" ロマンチック☆安田")、そして、Friction、ROSSOなどでドラムを叩いていたサトウミノル。ロックミュージックを基盤としながら、幅広い音楽性を備えたミュージシャンたちだ。
「安田くん、ミノルさんとは何年か前から一緒に演奏する機会があったんですが、本格的にソロ活動をはじめるにあたって、『一緒にやらない?』と声をかけました。流れのなかで私がベースを持つことになって。それまで弾いたことがなかったので慣れるまで大変だったんですけど、歌とリズムの親和性というか、アンサンブルのなかで音を置いていく感覚が気持ちよくて。抑えたサウンドのなかで自分の歌を表現したいという思いもありました」
作詞・作曲のほとんどは中野が手がけるが、アレンジは3人でアイデアと音を交わし合いながら形作っていくという。
「自分が作った曲に対して、ふたりがいろんな意見をくれるんですよ。特に安田くんはコードを大胆に変えてくれたり、構成に対しても斬新なアイデアを出してくれて。自分がイメージしていたものをそのままやるのではなくて、3人で『ああしたい』『こうしたい』と言いながら作るのが楽しいんですよね。3人とも土台はロックなんですが、ジャズやヒップホップも好きだし、いろんな要素が入ってくるのもいいなって思ってます」
「自分の気持ちや景色を歌っているのは以前と同じ。鍵盤で作ることが多くなったので、和音の広がりはあるかもしれないです」という彼女。ニューアルバム『Tree』は、歌に込められた光景や感情が――まるで短編映画を観ているように――詩情豊かに描かれている。
「色や風景、物語の設定みたいなものが自分の中にしっかりあって。それだけは崩されたくない、守っていきたいという気持ちがあるんですよね。アレンジするときも、その楽曲で描こうとしていることをふたりと共有しています。彼らも『雨は降ってるの?』『昼? 夜?』みたいなことを聞いてくれて。"ドレミ"だけではなくてストーリやムードを共有することで、曲の雰囲気がハッキリしたんじゃないかなと。特に今回のアルバムは、イメージを共有することを第一に考えていました」
もうひとつのポイントは、ライブで培ってきた表現が反映されていることだろう。
「『YETI』や『オートバイ』は2年くらい前からライブでやっていて。ミノルさんは毎回違うフレーズを繰り出してくるし(笑)、かなり自由でフレキシブルなんですよ。歌も少しずつ変わってきてるかもしれないですね」
ここからは収録曲について記していきたい。1曲目の「YETI」は、憂いを帯びたメロディ、豊かなブルースの色合いをたたえたサウンド、なめらかなで美しい歌声が響き合うミディアムバラード。
「安田くんのピアノのアレンジで楽曲に広がりが出ましたね。思い描いていたのは、"誰もいない雪景色のなか、主人公が列車で旅する"という情景。"イエティ"というワードも浮かんでいたので、物語を作りやすかったですね。あとはジャン・コクトーが撮った映画『美女と野獣』のイメージもありました」
洗練と軽やかさを感じさせるピアノのイントロからはじまる「yellow」は、可愛らしさと切なさが入り混じる歌とコーラス、はなればなれになった"あなた"への思いを映し出す歌詞がひとつになった楽曲だ。
「近所の公園で歌とギターの練習をすることがあって。ある年の秋に公園でギターを弾いてるときに思い浮かんだ曲ですね。"誰もいなくなった部屋で一人佇んでいる"という感じなんですが、誰かに向けているというより、自分の呟きをそのまま歌ったような曲だと思います。フィクションで物語を作ることはあまりしたことがなくて。そのときに思ったこと、感じたことだったり、人間関係を歌うことがほとんどですね」
3曲目の「家」は2年以上前から温めていたが楽曲だという。オルタナの匂いを感じさせるエレキギターの響き、〈また 戻れない日をなぞる〉というリリックからはじまるこの曲の叙情性には、リリシストとしての彼女の才能がしっかりと反映されている。
「メロディはいいなと思っていたんですけど、ぜんぜんアレンジがまとまらず。最終的にはピアノもベースも入れず、ミニマルな形になりました。今回のアルバムはずっしりした楽曲が多めだったので、フワッとする感じの曲も入れたかったんですよね。歌詞は、1st EP『Breath』に入っている「ハウ・アー・ユー」のMVを撮ったときの経験がもとになっていて。長野の山奥の一軒家で撮影したんですが、夜中に土砂降りの雨が降って。実家の思い出も重なってますね」
〈名前のない星座を並べ/今 少し話すのやめて>というフレーズが聴こえてきた瞬間、曲の世界に誘われる「よふね」。3拍子のゆったりとしたリズム、間奏パートのベースライン、たゆたうようなボーカル、歌の情感を際立たせるピアノのソロなどが溶け合う、ジャズの雰囲気をまとった曲だ。
「アルバムのなかではいちばんジャズっぽいかもしれないですね。暗い夜の海に船が浮かんでいて、ライトが揺れていて......という曲ですね(笑)。〈星座〉〈刺繍糸〉などのワードも最初からあったので、自分が思い描いていたものをそのまま曲に出来たんじゃないかなと。DIRTY THREE("ロードムービー的"と称されるオーストラリアのインストバンド)のドラムがミノルさんの演奏の気持ちよさと近くて。この曲にはそのイメージもありますね」
続く「Sand」は〈愛していると言えないわたしは/つめたい生きものです〉という率直な言葉に胸を衝かれるバラードナンバー。シンプルに抑制されたアンサンブルのなかで、中野の歌は、徐々にエモーションの度合いを高めていく。
「アレンジはいろいろ考えてみたんですけど、『ストレートな曲だから、シンプルにやるのがいいよね』ということになりました。アルバム全部がそうなんですけど、特にこの曲は、いい音で録れましたね。生楽器の編成なので、できるだけいい音で録りたいという気持ちがあって。そこは前作以上に追求できたのかなと。歌詞は......そのときに思ってたことをそのまま書きました。そういう書き方しかできないんですよね、やっぱり」
6曲目の「りんご」は、1分10秒ほどの楽曲。オルガンと歌という編成で、美しい童謡にも似た世界を生み出している。
「鍵盤と歌で曲を作って、バンドに持っていったら『この曲はこのままでいいんじゃない?』と。朝起きて、光のなかでぼんやりしていて。夢の続きのような感じですね」
アルバム「Tree」のなかでもっともポップな手触りを感じさせるのが、7曲目の「ice town」。緻密に構築されたコード構成、心地よく跳ねるビート、ポップスとジャズを行き来するピアノが響き合う、切なくも愛らしい中野ミホ流のポップソングだ。
「最初はもっとシンプルな曲だったんですけど、安田くんがコード進行を提案してくれて。自分では思いつかないアレンジになったし、クリスマスの頃の雪景色を想像するような楽しい曲になりました。2019年にニューヨークに行ったときの思い出も入ってます」
アルバムの最後に収録されているのは、「オートバイ」。〈ふたりだけのスピード 溶けていたいよ〉という歌詞、大らかさと切実さを同時に感じさせるボーカル、彼女の歌を際立たせるサウンドなど、ソロアーティストとしてのスタイルが端的に示された名曲だ。
「2年くらい前からライブでやっているんですけど、最初からすんなり演奏できたんですよね。レコーディングも気持ちよくやれたし、いい形で残せてよかったです。この歌詞は、さっき話した『ハウ・アー・ユー』のMVでバイクの後ろに乗せてもらった思い出がもとになってます。好きな映画のバイクのシーンのイメージもありました。ウォン・カーウァイの『天使の涙』、レオス・カラックスの『アネット』だったり」
自らの音楽活動に対して、「いろんな人に聴いてほしいという気持ちはもちろんありますが、まずは自分が好きなこと、歌いたいこと、やりたいことをやらないと楽しくない。自分が楽しんでないと、人にも伝わらないと思うし、そこはいい意味で自己中でいたいなと。20代前半の頃よりは人の意見を聞いたり、『まずは試してみよう』という部分も増えましたが、曲げられないものもあって。気持ちいいことをやりたいというマインドは変わってないですね」と語る中野ミホ。『Tree』というアルバムタイトルにも、現在の彼女のスタンスが反映されているようだ。
「ずっと"木"が気になってるんですよ。北海道の実家に帰って、周囲の木を見るたびに『好きだな』って。ずっとそこにいてくれて、気持ちよさそうに風に吹かれていることもあるし、冬の夜に見ると怖さを感じることもある。自分もそんなふうに、包容力と優しさを持って、凛と立っていたいと思うんですよね。このアルバムに入っているのは自分が思っていることを書いた曲ばかりだし、全体を通して、1本の木のようにスッと立っている作品になっていればいいなと思います」
取材・文:森朋之
撮影:酒井優衣
中野ミホ「Tree」
2024年7月31日(水)
Format:Digital / CD
Label:Picea Records
Track:
1.YETI
2.yellow
3.家
4.よふね
5.Sand
6.りんご
7.ice town
8.オートバイ
試聴はこちら
渋谷 7th floor
Open:19:00 / Start:19:30
2024年9月23 日(月祝)
梅田ムジカジャポニカ
Open:18:00 / Start:19:00
2024年9月27日(金)
札幌 ZIPPY HALL
Open:19:00 / Start:19:30
RISING SUN ROCK FESTIVAL 2024 in EZO(WEEKEND LOVERS 2024 "with You"内ゲスト出演)
2024年8月24日(土)
日暮里 元映画館(弾き語りでのイベント出演)
2024年8月31日(土)
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2024年9月26日(木)
札幌REVOLVER(弾き語りでのイベント出演)
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オハラ☆ブレイク'24(氏原ワタル&中野ミホとしての出演)
@miho_doronco12
@miho_doronco12
2013年にロックバンドDrop'sでメジャーデビュー。2021年秋にバンド活動を休止してからはシンガーソングライターとして活動してきた中野ミホ。当時のことを振り返って彼女は「普段聴いている音楽と、バンドでやっていることが離れてしまっていた」と語る。
「日常のなかでリラックスしながら聴いているのは、チェット・ベイカーやデューク・エリントン、ファッツ・ウォーラーとかで。特にピアノと歌が好きなんですよね。Drop'sでやっていることも楽しかったんですけど、聴きたい音楽と自分がやっていることがズレている感じもあったし、惰性で続けるよりも、1回リセットしたほうがいいかなと。自分にとっての音楽を見つめ直したいという気持ちもありました」
ソロ活動では"歌"にフォーカスし、ジャズ、オールディーズをはじめとする古き良きアメリカの音楽にインスパイアされた楽曲を志向。2022年8月には6曲入りEP『Breath』を発表した。ライブや制作をサポートしているのは、ピアニストのRomantic(爆弾ジョニーの" ロマンチック☆安田")、そして、Friction、ROSSOなどでドラムを叩いていたサトウミノル。ロックミュージックを基盤としながら、幅広い音楽性を備えたミュージシャンたちだ。
「安田くん、ミノルさんとは何年か前から一緒に演奏する機会があったんですが、本格的にソロ活動をはじめるにあたって、『一緒にやらない?』と声をかけました。流れのなかで私がベースを持つことになって。それまで弾いたことがなかったので慣れるまで大変だったんですけど、歌とリズムの親和性というか、アンサンブルのなかで音を置いていく感覚が気持ちよくて。抑えたサウンドのなかで自分の歌を表現したいという思いもありました」
作詞・作曲のほとんどは中野が手がけるが、アレンジは3人でアイデアと音を交わし合いながら形作っていくという。
「自分が作った曲に対して、ふたりがいろんな意見をくれるんですよ。特に安田くんはコードを大胆に変えてくれたり、構成に対しても斬新なアイデアを出してくれて。自分がイメージしていたものをそのままやるのではなくて、3人で『ああしたい』『こうしたい』と言いながら作るのが楽しいんですよね。3人とも土台はロックなんですが、ジャズやヒップホップも好きだし、いろんな要素が入ってくるのもいいなって思ってます」
「自分の気持ちや景色を歌っているのは以前と同じ。鍵盤で作ることが多くなったので、和音の広がりはあるかもしれないです」という彼女。ニューアルバム『Tree』は、歌に込められた光景や感情が――まるで短編映画を観ているように――詩情豊かに描かれている。
「色や風景、物語の設定みたいなものが自分の中にしっかりあって。それだけは崩されたくない、守っていきたいという気持ちがあるんですよね。アレンジするときも、その楽曲で描こうとしていることをふたりと共有しています。彼らも『雨は降ってるの?』『昼? 夜?』みたいなことを聞いてくれて。"ドレミ"だけではなくてストーリやムードを共有することで、曲の雰囲気がハッキリしたんじゃないかなと。特に今回のアルバムは、イメージを共有することを第一に考えていました」
もうひとつのポイントは、ライブで培ってきた表現が反映されていることだろう。
「『YETI』や『オートバイ』は2年くらい前からライブでやっていて。ミノルさんは毎回違うフレーズを繰り出してくるし(笑)、かなり自由でフレキシブルなんですよ。歌も少しずつ変わってきてるかもしれないですね」
ここからは収録曲について記していきたい。1曲目の「YETI」は、憂いを帯びたメロディ、豊かなブルースの色合いをたたえたサウンド、なめらかなで美しい歌声が響き合うミディアムバラード。
「安田くんのピアノのアレンジで楽曲に広がりが出ましたね。思い描いていたのは、"誰もいない雪景色のなか、主人公が列車で旅する"という情景。"イエティ"というワードも浮かんでいたので、物語を作りやすかったですね。あとはジャン・コクトーが撮った映画『美女と野獣』のイメージもありました」
洗練と軽やかさを感じさせるピアノのイントロからはじまる「yellow」は、可愛らしさと切なさが入り混じる歌とコーラス、はなればなれになった"あなた"への思いを映し出す歌詞がひとつになった楽曲だ。
「近所の公園で歌とギターの練習をすることがあって。ある年の秋に公園でギターを弾いてるときに思い浮かんだ曲ですね。"誰もいなくなった部屋で一人佇んでいる"という感じなんですが、誰かに向けているというより、自分の呟きをそのまま歌ったような曲だと思います。フィクションで物語を作ることはあまりしたことがなくて。そのときに思ったこと、感じたことだったり、人間関係を歌うことがほとんどですね」
3曲目の「家」は2年以上前から温めていたが楽曲だという。オルタナの匂いを感じさせるエレキギターの響き、〈また 戻れない日をなぞる〉というリリックからはじまるこの曲の叙情性には、リリシストとしての彼女の才能がしっかりと反映されている。
「メロディはいいなと思っていたんですけど、ぜんぜんアレンジがまとまらず。最終的にはピアノもベースも入れず、ミニマルな形になりました。今回のアルバムはずっしりした楽曲が多めだったので、フワッとする感じの曲も入れたかったんですよね。歌詞は、1st EP『Breath』に入っている「ハウ・アー・ユー」のMVを撮ったときの経験がもとになっていて。長野の山奥の一軒家で撮影したんですが、夜中に土砂降りの雨が降って。実家の思い出も重なってますね」
〈名前のない星座を並べ/今 少し話すのやめて>というフレーズが聴こえてきた瞬間、曲の世界に誘われる「よふね」。3拍子のゆったりとしたリズム、間奏パートのベースライン、たゆたうようなボーカル、歌の情感を際立たせるピアノのソロなどが溶け合う、ジャズの雰囲気をまとった曲だ。
「アルバムのなかではいちばんジャズっぽいかもしれないですね。暗い夜の海に船が浮かんでいて、ライトが揺れていて......という曲ですね(笑)。〈星座〉〈刺繍糸〉などのワードも最初からあったので、自分が思い描いていたものをそのまま曲に出来たんじゃないかなと。DIRTY THREE("ロードムービー的"と称されるオーストラリアのインストバンド)のドラムがミノルさんの演奏の気持ちよさと近くて。この曲にはそのイメージもありますね」
続く「Sand」は〈愛していると言えないわたしは/つめたい生きものです〉という率直な言葉に胸を衝かれるバラードナンバー。シンプルに抑制されたアンサンブルのなかで、中野の歌は、徐々にエモーションの度合いを高めていく。
「アレンジはいろいろ考えてみたんですけど、『ストレートな曲だから、シンプルにやるのがいいよね』ということになりました。アルバム全部がそうなんですけど、特にこの曲は、いい音で録れましたね。生楽器の編成なので、できるだけいい音で録りたいという気持ちがあって。そこは前作以上に追求できたのかなと。歌詞は......そのときに思ってたことをそのまま書きました。そういう書き方しかできないんですよね、やっぱり」
6曲目の「りんご」は、1分10秒ほどの楽曲。オルガンと歌という編成で、美しい童謡にも似た世界を生み出している。
「鍵盤と歌で曲を作って、バンドに持っていったら『この曲はこのままでいいんじゃない?』と。朝起きて、光のなかでぼんやりしていて。夢の続きのような感じですね」
アルバム「Tree」のなかでもっともポップな手触りを感じさせるのが、7曲目の「ice town」。緻密に構築されたコード構成、心地よく跳ねるビート、ポップスとジャズを行き来するピアノが響き合う、切なくも愛らしい中野ミホ流のポップソングだ。
「最初はもっとシンプルな曲だったんですけど、安田くんがコード進行を提案してくれて。自分では思いつかないアレンジになったし、クリスマスの頃の雪景色を想像するような楽しい曲になりました。2019年にニューヨークに行ったときの思い出も入ってます」
アルバムの最後に収録されているのは、「オートバイ」。〈ふたりだけのスピード 溶けていたいよ〉という歌詞、大らかさと切実さを同時に感じさせるボーカル、彼女の歌を際立たせるサウンドなど、ソロアーティストとしてのスタイルが端的に示された名曲だ。
「2年くらい前からライブでやっているんですけど、最初からすんなり演奏できたんですよね。レコーディングも気持ちよくやれたし、いい形で残せてよかったです。この歌詞は、さっき話した『ハウ・アー・ユー』のMVでバイクの後ろに乗せてもらった思い出がもとになってます。好きな映画のバイクのシーンのイメージもありました。ウォン・カーウァイの『天使の涙』、レオス・カラックスの『アネット』だったり」
自らの音楽活動に対して、「いろんな人に聴いてほしいという気持ちはもちろんありますが、まずは自分が好きなこと、歌いたいこと、やりたいことをやらないと楽しくない。自分が楽しんでないと、人にも伝わらないと思うし、そこはいい意味で自己中でいたいなと。20代前半の頃よりは人の意見を聞いたり、『まずは試してみよう』という部分も増えましたが、曲げられないものもあって。気持ちいいことをやりたいというマインドは変わってないですね」と語る中野ミホ。『Tree』というアルバムタイトルにも、現在の彼女のスタンスが反映されているようだ。
「ずっと"木"が気になってるんですよ。北海道の実家に帰って、周囲の木を見るたびに『好きだな』って。ずっとそこにいてくれて、気持ちよさそうに風に吹かれていることもあるし、冬の夜に見ると怖さを感じることもある。自分もそんなふうに、包容力と優しさを持って、凛と立っていたいと思うんですよね。このアルバムに入っているのは自分が思っていることを書いた曲ばかりだし、全体を通して、1本の木のようにスッと立っている作品になっていればいいなと思います」
取材・文:森朋之
撮影:酒井優衣
RELEASE INFORMATION
中野ミホ「Tree」
2024年7月31日(水)
Format:Digital / CD
Label:Picea Records
Track:
1.YETI
2.yellow
3.家
4.よふね
5.Sand
6.りんご
7.ice town
8.オートバイ
試聴はこちら
LIVE INFORMATION
中野ミホ Bandset Oneman Tour 「Tree」
2024年9月20日(金)渋谷 7th floor
Open:19:00 / Start:19:30
2024年9月23 日(月祝)
梅田ムジカジャポニカ
Open:18:00 / Start:19:00
2024年9月27日(金)
札幌 ZIPPY HALL
Open:19:00 / Start:19:30
イベント出演情報
2024年8月17日(土)RISING SUN ROCK FESTIVAL 2024 in EZO(WEEKEND LOVERS 2024 "with You"内ゲスト出演)
2024年8月24日(土)
日暮里 元映画館(弾き語りでのイベント出演)
2024年8月31日(土)
難波Mele(弾き語りでのイベント出演)
2024年9月26日(木)
札幌REVOLVER(弾き語りでのイベント出演)
2024年9月28日(土)
オハラ☆ブレイク'24(氏原ワタル&中野ミホとしての出演)
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オフィシャルサイト@miho_doronco12
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