2023.12.18
音楽だけでなく、どのカルチャーも共通点やつながりがあるということをコンセプトにしているSENSA。INTERVIEWシリーズ「Highlighter」では、アーティストはもちろん、音楽に関わるクリエイターにどのような音楽・カルチャーに触れて現在までに至ったか、その人の人となりを探っていく。Vol.191は、大阪を中心に活動する男女混声ツインボーカルのバンド・AIRCRAFTを取り上げる。
「SUPERCARよりも速くなりたかったのでAIRCRAFTという名前をつけた」というエピソードが象徴する、まっすぐな意志が魅力。グッドメロディをオルタナティブなバンドサウンドがエモーショナルに際立たせる、超新星4人組だ。
それでもどうしても音楽活動がしたかったので、高校の軽音楽部の同期・田中優衣と、後輩・尾形颯馬を引き連れてスタジオで音を合わせることになりました。
それがめちゃくちゃに楽しかったのを覚えています。
SUPERCARよりも速くなりたかったのでAIRCRAFTという名前をつけて活動を開始しました。コロナウィルスによる被害は僕の生活もぐちゃぐちゃにしていきましたが、あの時間がなければ、バンドを結成することはなかったかもしれません。
その時からバンドなるものが大好きだったので僕はSUPERCARの「Lucky」を流しました。僕の好きなバンドの音楽をこんなに多くの人たちに向けて聴かせるという行為がとても気持ちよくて、それなのに誰も気にも止めてないというか。僕だけが好きな音楽なんだという特別感みたいな。どうしようもない衝動的な感情が溢れた記憶があります。
気持ちよくなりすぎて、規定値を超える大音量で曲をかけてしまった為、校長先生にすごく怒られたんですけど、SUPERCARのことが元から好きだった友達ができたり、音楽のパワーってすごいなと思いました。
田中優衣(Vo/B):M6「blUr」にぜひ注目してもらいたいです。M5「Origin」とM6「blUr」は合わせてひとつの楽曲になるように作り上げた音源なのですが、このふたつは制作とレコーディングでいちばん時間を割いた作品だと思います。本当に頭を抱えながら作りました。
「blUr」は曲名も楽曲の尺も歌詞の一部も作った当初とは違うものとなっていて、そのおかげで納得のいく仕上がりになりました。M5「Origin」の不思議なサウンドは、ギターのエフェクターを使って何度も何度も満足いくまで弾いて録ってこの音は要る/要らないという作業を繰り返して完成させています。
レコーディングの時の緊張感やサウンドから引き出される浮遊感が、アルバム内だけでなくAIRCRAFTの曲として異質な感じがして、すごくお気に入りです。
そして、この曲は子どもから大人になる時について歌った曲になっています。
子どもから大人になる時って、どこかの時期で急に変化するわけではなく、じわりじわりと気付かぬうちに大人になっている。けれど、私って大人になったんじゃない?と思うどこか錯覚のような経験をした時、その時のことを大人になったときに忘れたくないなと思って、この曲を作りました。
淡々と流れていくメロディーに反するようなギター・ベースの短く刻む音や、大きな変化のないドラムの中に発砲したようなスネアの一音を入れるなどのコントラスト。ここから生まれる不思議な感覚を楽しんでもらいたいです。
また、楽曲後半で現れるサビの広がり方にも注目してもらいたいです。コーラスやボーカルを幾つも重ねたり、サビだけはリズムも大きく取るようにして他の箇所と違いをつけたり、サビのメロディーでやっと高音域を使うことなど、たくさんのギミックによって生み出されるサビの空間的な広がりを感じてもらえたら嬉しいです。
このサビのサウンドと共に歌われる言葉については、子どもである自分が大人になっていくことに対する決意のようなものを選びました。上記の通り、歌詞全体がひとつの経験によって生まれた言葉なのですが、その経験とは何であるのかも言葉から想像してもらえたらなと思います。
尾形颯馬(G):AIRCRAFTはボーカルがふたりいて、それぞれが全く異なる色味の曲を書きます。僕は上物として、そのそれぞれに必要なギターを常に探ってて、だから楽曲ごとに全然違ったギターを弾いてると思ってます。多分。
そういう意味で、みなさんにはこのアルバムを通して僕の変幻自在っぷりを知って欲しい!って思います。
松川文哉(Dr):M6「blUr」について。この曲のドラムはほぼ全て8ビートで構成されていて、際立った部分にのみMIX段階でエフェクトをかけています。荒々しくなるところと静かなところの差が大きい曲なので、その抑揚を感じながら聴いていただきたいです。
また同じ8ビートでもニュアンスの違いを込めて叩いたのでそれが伝わると嬉しいです。
田中:全国にAIRCRAFTの音楽が好きな人を増やしたいという思いが強いので、リリースを定期的・継続的にしていきたいなと思います。AIRCRAFTの音楽を好きでいてくれる人が少しずつ増えていったら、全国ツアーをしてみたいし、ワンマンライブもしたい。フェスにも出たい!音源もライブもどっちも強いバンドとして活動していくのが、今までもこれからも目標です。
好きな漫才師は夢路いとし・喜味こいしで、古典派漫才が好きだったので、言葉だけで笑えるようなスタイルで、漫才をしていました。
尾形:小学から中学にかけてわりとガチめにダンスをやっていて、そこでダンスジャンルとか音楽ジャンルのバックグラウンドには少し触れました。
特に黒人文化については印象深く、対白人文化に向けての反骨精神であったり、根深い差別に抗う術としてのダンスや音楽の存在を知りました。
松川:僕は兄弟の影響で物心つく前からいろいろなゲーム機器が自宅にありました。ゲームは好きになるより先に生活の中で当然のように触れていたものだったのですが、小・中学生で人と関わるようになると、人と比べゲームをたくさんやること、上手いことがアイデンティティになっており、自分たらしめるゲームというものを愛するようになりました。
ゲームは遊びだと捉えられることがありますが、僕にとっては学びの部分も多かったです。製作者の考えたテキストから考え方を学び、BGMや演出に心を揺さぶられ感受性を養うこともあった。私の触れてきたゲームは間違いなく、プレイスキルだけではなく、感情や思考能力も育んだものであると言えます。
映画の中には自分の知らない世界が広がっていたり、言葉や人の表情や行動、音楽や映像の構図や色味、たくさんの観るべきものや探るべきものに溢れていて、どんどんとその魅力に惹かれていっています。というものの、最近はあまり観ることができていないので、大きな時間を確保してたくさん映画を観ていきたいです。
尾形:ベッドルームポップには興味があります。Clairoなどを筆頭としたこれらの音楽が秘めるどこかふわついた雰囲気は、とても興味深いです。
松川:僕はここ1~2年、写真撮影、なかでもフィルムカメラに傾倒しています。カメラは僕がちょうど幼少期の頃、フィルムからデジタルへと移行していき、今ではスマートフォンで簡単に写真を撮ることができます。しかし近年、フィルムカメラが持つ写りの味、儚さ、手軽さなどに若者の注目が集まり、再ブームとなっています。そして僕もフィルムカメラが持つこれらに魅せられ、今にいたりました。
特に私は、フィルム時代のレンズに、当時の構造でしか写せないものがあるという点に魅力を感じています。アナログなものは現代のものと比べ不便さがあるが、その不便さを楽しみ、愛する行為に僕は心惹かれるんです。
AIRCRAFT『MY FLIGHT』 」
2023年12月13日(水)
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AIRCRAFT
大阪を中心に活動している、2021年に結成された4人組オルタナティブガレージポップバンド。体が弾む、心奪われるグッドメロディ、そして男女混声ツインVoと、ルーツから溢れてるオルタナティブ要素が魅力。一度ライブを体験したらリピートするリスナーがまさに「今」増加中。
2022年夏には、J:COM主催のオーディション「MUSIC GOLD RUSH2022」にてグランプリを獲得。さらに、アフターアワーズ、pavilion、フリージアン、えんぷていなどを呼び、隔月の自主イベントを1年通して完走した。2023年には、ライブで欠かせない人気曲を配信シングルとして3曲連続リリース。そして8月にはKamisado、The Shiawaseを呼んだ自主企画に合わせて3rdシングルをリリースした。
@aircraft_band_
@aircraft_official
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Podcast
FRIENDSHIP.
「SUPERCARよりも速くなりたかったのでAIRCRAFTという名前をつけた」というエピソードが象徴する、まっすぐな意志が魅力。グッドメロディをオルタナティブなバンドサウンドがエモーショナルに際立たせる、超新星4人組だ。
活動を始めたきっかけ
石川翔理(Vo/G):もとより私、ボーカルギターの石川翔理はバンドなるものをしてみたいとずっと思っておりました。大学に入学してサークル活動で、メンバーを探そうと思い立ち出会ったのが、ドラムの松川文哉でした。そこから少ししてコロナウィルスが大流行しまして、いよいよサークル活動もストップ。あまりにも虚無な時間が流れていきました。それでもどうしても音楽活動がしたかったので、高校の軽音楽部の同期・田中優衣と、後輩・尾形颯馬を引き連れてスタジオで音を合わせることになりました。
それがめちゃくちゃに楽しかったのを覚えています。
SUPERCARよりも速くなりたかったのでAIRCRAFTという名前をつけて活動を開始しました。コロナウィルスによる被害は僕の生活もぐちゃぐちゃにしていきましたが、あの時間がなければ、バンドを結成することはなかったかもしれません。
影響を受けたアーティスト
石川:SUPERCAR、NUMBER GIRL、おとぎ話、キイチビール&ザ・ホーリーティッツ等々...あげるとキリがないのですが、SUPERCARのお話をしたいと思います。高校生の時に放送委員長だった僕は体育祭に向けて準備をしていました。体育祭の前日に全生徒も参加する予行演習が行われてて、最後に音響のチェックで音楽を流すことになりました。その時からバンドなるものが大好きだったので僕はSUPERCARの「Lucky」を流しました。僕の好きなバンドの音楽をこんなに多くの人たちに向けて聴かせるという行為がとても気持ちよくて、それなのに誰も気にも止めてないというか。僕だけが好きな音楽なんだという特別感みたいな。どうしようもない衝動的な感情が溢れた記憶があります。
気持ちよくなりすぎて、規定値を超える大音量で曲をかけてしまった為、校長先生にすごく怒られたんですけど、SUPERCARのことが元から好きだった友達ができたり、音楽のパワーってすごいなと思いました。
注目してほしい、自分の関わった作品
石川:やはり1stアルバムより「MY FLIGHT」です。これまで僕が作ってきた楽曲の良いところをバランスよく摘出してできた楽曲かなと思います。僕たちの魅力でもある男女混声を生かしつつ、メロディックでどこか懐かしいような。退屈な日常に囚われてしまった人にこそ届けたい楽曲になっております。田中優衣(Vo/B):M6「blUr」にぜひ注目してもらいたいです。M5「Origin」とM6「blUr」は合わせてひとつの楽曲になるように作り上げた音源なのですが、このふたつは制作とレコーディングでいちばん時間を割いた作品だと思います。本当に頭を抱えながら作りました。
「blUr」は曲名も楽曲の尺も歌詞の一部も作った当初とは違うものとなっていて、そのおかげで納得のいく仕上がりになりました。M5「Origin」の不思議なサウンドは、ギターのエフェクターを使って何度も何度も満足いくまで弾いて録ってこの音は要る/要らないという作業を繰り返して完成させています。
レコーディングの時の緊張感やサウンドから引き出される浮遊感が、アルバム内だけでなくAIRCRAFTの曲として異質な感じがして、すごくお気に入りです。
そして、この曲は子どもから大人になる時について歌った曲になっています。
子どもから大人になる時って、どこかの時期で急に変化するわけではなく、じわりじわりと気付かぬうちに大人になっている。けれど、私って大人になったんじゃない?と思うどこか錯覚のような経験をした時、その時のことを大人になったときに忘れたくないなと思って、この曲を作りました。
淡々と流れていくメロディーに反するようなギター・ベースの短く刻む音や、大きな変化のないドラムの中に発砲したようなスネアの一音を入れるなどのコントラスト。ここから生まれる不思議な感覚を楽しんでもらいたいです。
また、楽曲後半で現れるサビの広がり方にも注目してもらいたいです。コーラスやボーカルを幾つも重ねたり、サビだけはリズムも大きく取るようにして他の箇所と違いをつけたり、サビのメロディーでやっと高音域を使うことなど、たくさんのギミックによって生み出されるサビの空間的な広がりを感じてもらえたら嬉しいです。
このサビのサウンドと共に歌われる言葉については、子どもである自分が大人になっていくことに対する決意のようなものを選びました。上記の通り、歌詞全体がひとつの経験によって生まれた言葉なのですが、その経験とは何であるのかも言葉から想像してもらえたらなと思います。
尾形颯馬(G):AIRCRAFTはボーカルがふたりいて、それぞれが全く異なる色味の曲を書きます。僕は上物として、そのそれぞれに必要なギターを常に探ってて、だから楽曲ごとに全然違ったギターを弾いてると思ってます。多分。
そういう意味で、みなさんにはこのアルバムを通して僕の変幻自在っぷりを知って欲しい!って思います。
松川文哉(Dr):M6「blUr」について。この曲のドラムはほぼ全て8ビートで構成されていて、際立った部分にのみMIX段階でエフェクトをかけています。荒々しくなるところと静かなところの差が大きい曲なので、その抑揚を感じながら聴いていただきたいです。
また同じ8ビートでもニュアンスの違いを込めて叩いたのでそれが伝わると嬉しいです。
今後挑戦してみたいこと
石川:海の見える丘でライブしたいです。田中:全国にAIRCRAFTの音楽が好きな人を増やしたいという思いが強いので、リリースを定期的・継続的にしていきたいなと思います。AIRCRAFTの音楽を好きでいてくれる人が少しずつ増えていったら、全国ツアーをしてみたいし、ワンマンライブもしたい。フェスにも出たい!音源もライブもどっちも強いバンドとして活動していくのが、今までもこれからも目標です。
カルチャーについて
触れてきたカルチャー
石川:高校生の時にお笑いが好きでしゃべくり漫才をしていました。好きな漫才師は夢路いとし・喜味こいしで、古典派漫才が好きだったので、言葉だけで笑えるようなスタイルで、漫才をしていました。
尾形:小学から中学にかけてわりとガチめにダンスをやっていて、そこでダンスジャンルとか音楽ジャンルのバックグラウンドには少し触れました。
特に黒人文化については印象深く、対白人文化に向けての反骨精神であったり、根深い差別に抗う術としてのダンスや音楽の存在を知りました。
松川:僕は兄弟の影響で物心つく前からいろいろなゲーム機器が自宅にありました。ゲームは好きになるより先に生活の中で当然のように触れていたものだったのですが、小・中学生で人と関わるようになると、人と比べゲームをたくさんやること、上手いことがアイデンティティになっており、自分たらしめるゲームというものを愛するようになりました。
ゲームは遊びだと捉えられることがありますが、僕にとっては学びの部分も多かったです。製作者の考えたテキストから考え方を学び、BGMや演出に心を揺さぶられ感受性を養うこともあった。私の触れてきたゲームは間違いなく、プレイスキルだけではなく、感情や思考能力も育んだものであると言えます。
今注目しているカルチャー
田中:映画です。元々好きだったわけではなかったのですが、時間に余裕のあった大学時代に友人と映画館に訪れる機会が増えたことや、コロナウイルスによる活動自粛とサブスクリプションの普及によって、少しずついろんな映画を観るようになっていきました。映画の中には自分の知らない世界が広がっていたり、言葉や人の表情や行動、音楽や映像の構図や色味、たくさんの観るべきものや探るべきものに溢れていて、どんどんとその魅力に惹かれていっています。というものの、最近はあまり観ることができていないので、大きな時間を確保してたくさん映画を観ていきたいです。
尾形:ベッドルームポップには興味があります。Clairoなどを筆頭としたこれらの音楽が秘めるどこかふわついた雰囲気は、とても興味深いです。
松川:僕はここ1~2年、写真撮影、なかでもフィルムカメラに傾倒しています。カメラは僕がちょうど幼少期の頃、フィルムからデジタルへと移行していき、今ではスマートフォンで簡単に写真を撮ることができます。しかし近年、フィルムカメラが持つ写りの味、儚さ、手軽さなどに若者の注目が集まり、再ブームとなっています。そして僕もフィルムカメラが持つこれらに魅せられ、今にいたりました。
特に私は、フィルム時代のレンズに、当時の構造でしか写せないものがあるという点に魅力を感じています。アナログなものは現代のものと比べ不便さがあるが、その不便さを楽しみ、愛する行為に僕は心惹かれるんです。
RELEASE INFORMATION
AIRCRAFT『MY FLIGHT』 」
2023年12月13日(水)
試聴はこちら
PROFILE
AIRCRAFT
大阪を中心に活動している、2021年に結成された4人組オルタナティブガレージポップバンド。体が弾む、心奪われるグッドメロディ、そして男女混声ツインVoと、ルーツから溢れてるオルタナティブ要素が魅力。一度ライブを体験したらリピートするリスナーがまさに「今」増加中。
2022年夏には、J:COM主催のオーディション「MUSIC GOLD RUSH2022」にてグランプリを獲得。さらに、アフターアワーズ、pavilion、フリージアン、えんぷていなどを呼び、隔月の自主イベントを1年通して完走した。2023年には、ライブで欠かせない人気曲を配信シングルとして3曲連続リリース。そして8月にはKamisado、The Shiawaseを呼んだ自主企画に合わせて3rdシングルをリリースした。
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