SENSA

2023.12.13

インターネットもアニメもゲームも咀嚼して生み出す平成育ちのリアル「PURIKURA MIND」-Highlighter Vol.190-

インターネットもアニメもゲームも咀嚼して生み出す平成育ちのリアル「PURIKURA MIND」-Highlighter Vol.190-

音楽だけでなく、どのカルチャーも共通点やつながりがあるということをコンセプトにしているSENSA。INTERVIEWシリーズ「Highlighter」では、アーティストはもちろん、音楽に関わるクリエイターにどのような音楽・カルチャーに触れて現在までに至ったか、その人の人となりを探っていく。Vol.190は、2023年10月から本格的に活動を開始したばかりのPURIKURA MINDを取り上げる。
ボーカロイド、アニメソング、歌謡、日本のロック、90年代のUSオルタナティブなど、多彩なジャンルだけではなく、インターネットやゲームやアニメといった、音楽に留まらないカルチャーで育ってきたルーツも感じさせる4人組だ。


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活動を始めたきっかけ
石ツ瞭斗(G/Vo):端的に説明するなら、2022年に僕の前身バンドが活動困難となった為、新しいバンドを組もうと意気込んだ僕がメンバー募集をして、集まったのでPURIKURA MINDとして活動を始めたよ!って感じで。折角なのでもうちょい深掘りすると、僕がロックバンドを大好きなのは勿論なんですけど、俺はバンドに拘っているというより、屋号に拘っているんです。自分が永続的に所属する屋号が欲しかっただけなんですよ。

社会人は名刺に就業している会社の名前が入っていて、○○株式会社の○○です!って自己紹介すると思うんですけど、その理想像がPURIKURA MINDでギターボーカルをしている石ツ瞭斗です!というところに有るというか。別にバンドじゃなくても、YouTuberだろうが、アイドルだろうが、宗教団体だろうが、はたまた会社だろうが何でも良い、たまたま自分に向いているのがバンドだったに過ぎないって感じです。ロックバンドほど普遍な居場所もなかなか無いですしね。

だから下手に就職したりとか、そうでなくても起業したりいろいろ有ったんでしょうが、敢えて、ちょっと時代錯誤なメンバー募集をして、もっと時代錯誤なバンドをやってやろうと、それこそが「PURIKURA MIND」という名前に相応しい第一歩目の活動なんじゃねーかなと、そういう魂胆で今の活動を始めました。

キタムラユウヤ(G):元々、石ツがやっていた前身バンドを好きで聴いていたんですけど、4月にメンバー公募で、直接石ツに会った時に、「バンドをやるなら、コイツとやりたい」と思っちゃって......(笑)。
そこから、前職を辞めたり、引越しをしたり、いろいろあって今バンドをやっている感じです。

影響を受けたアーティスト
石ツ:ボーカロイド、アニメソング、歌謡、日本のロック、90年代のUSオルタナティブ、挙げてったらキリは無いんですけど、結局カート(・コバーン)率いるNirvanaの楽曲、詩、思想、アートワーク、ファッション等からの影響がいちばん大きい気がしてます。

高校生の頃、憧れ過ぎて、服装から言動まで何でも真似しては馬鹿にされてました。クソガキが退廃的な頑張って雰囲気を繕っても、ちょっと汚いだけですからね。10代の頃は偽Nirvanaみたいな曲ばっか作ってたなあ......。

それと、神聖かまってちゃんというバンドが大好きで、インタビュー読み漁ったり密着やライブ映像を観漁ったり、実際ライブ行ったり、バンドとしての在り方に強く憧れています。

とはいえ、最近は本当にいろいろ聴きますんで、何でも演りたいし、作りたいし、月並みですが、やっぱPURIKURA MINDは PURIKURA MINDらしくやれるのがいちばんです。





カワシマ攻(Dr):小学生の頃にLISMO!のCMでGalileo Galileiの「ハマナスの花」を聴いて衝撃を受けたことが発端で、もっといろんな音楽を知りたいという探究心が芽生えました。

KEYTALKの事を調べてthe cabsにたどり着き、マスロックやエモの魅力に早くから気づいたり、当時同じ塾だった子がオススメしてくれた(レッド・)ツェッペリンを聴いてハードロックの虜になったり、『HUNTER×HUNTER』のEDだったベガス(Fear, and Loathing in Las Vegas)の「Just Awake」でメタルコアやエレクトロミュージック等を聴くようになったりと......。勉強とかやるべきことをそっちのけで音楽を聴くようになった結果、紆余曲折を経て石ツと出会い、今に至ってます。

いろんな音楽を聴いてるので影響を受けたとハッキリ語れるものを選ぶとなると途方もない時間になってしまいますが、強いて言うなら編曲を行う際はハードコアやニューレイヴといった自ずと身体が動いてしまうようなジャンルを聴いて挑みます。





注目してほしい、自分の関わった作品
カワシマ:ドラムに関しては「歌」を立たせるために、なるべく自我を出しすぎないように引き算して作っています。とはいえ、活動が始まったばかりの頃はあまりにも曲に対する理解度が低かったのでやりたい放題やっていました......。「Neither A Nor B」の2番のAメロなんか最初はカウベルなんか取り入れてLiily「Wash」の真似事(2:40辺り)をしてました。



ですが、引き算をしていく上でこのフィルやパターンはこのバンドのここを引用しよう!みたいな感じでオマージュするといった遊び心は捨てないようにしています。今の僕を作り上げた偉大なアーティスト達への経緯を込めた上で。

特に思い入れある作品といえば、「Lost In the Internet」になります。打ち込み感を生ドラムでどう演出しようかと悩み、ゲーム音楽やボカロといった打ち込みの音楽を聴きまくった結果、『ポケモン』の『ダイパ』(『ポケットモンスター ダイヤモンド・パール』)のBGMがいちばん参考になりました。変なタイミングでタムを叩いたり、展開にそぐわないフレーズを叩いたりと、通常の音楽だったらバランスが崩壊しそうな部分がこの曲では成立していると思います。



高橋遼真(B):僕も「Lost in the Internet」は印象に残っていて、インターネットから現実への脱出というコンセプトがあり、どうアプローチしていくかが重要でした。インターネットに対し、ゲームの世界や夢の中といった、現実と乖離した、画面内の仮想空間というイメージがあったため、はじめはゲーム音楽のような、ピコピコ弾む感じの音楽をいろいろと模索していました。しかし、苦戦。

その時、まだ出会って2週間しか経っていなかったカワシマから、大量のオススメ曲が送られてきたことがあって、その中にあったTwo Door Cinema Club「Undercover Martyn」が、なんとなく、参考にできそうだと感じ、そこからフレーズを考えてみました。イントロやサビのベースは、完全にこの曲のオマージュになっています。



裏打ちのリズムや、彷徨いながらも疾走感のあるようなところが、少し似ていたのかもしれません。音作りの面では、前半、仮想空間を彷徨っているようなフワフワとした輪郭を出すため、コーラスをかけています。後半ではそれを一気にくっきりした音にすることで対比となり、現実っぽくする工夫をしました。

今後挑戦してみたいこと
石ツ:僕の地元である蒲田に由縁有るライブハウスで企画を打ちたいですね。蒲田Studio80、日本工学院(蒲田キャンパス)、Zepp Haneda、最終的には大田体育館で演りたいです。蒲田と町単位でコラボしてグッズとか作りたいし、何でもしたい。地元でくらい肩で風切って歩きたいです。

別に町おこししたいとか地元に貢献したいとかはたいして無くて、本当にただ、地元にアイデンティティを見出そうとしているだけです。よく見る「○○県○○市から来ました○○です!」みたいな奴もちょっと羨ましいし。東京生まれだと地元に愛着湧かないがちなんすけど、町単位なら愛せるなっていう、東京産まれならではの苦肉の策みたいなモンですね。もちろん蒲田大好きですよ、生粋の蒲田っ子ですからね僕は。

あ、でも、普通に野外フェスに出たいし、普通に日本武道館でライブしたいです、フルアルバムも出したいし、こういうインタビューもたくさん答えたいです、あと、バイト辞めたい!!

キタムラ:まずは、基本的に東京で活動をしているので、東京のバンド好きな方たちに、直接、音を届けたいです。最終的には、自分の故郷でもある福岡に、ライブで凱旋するのが、展望というか、計画というか、夢というか。まぁ、そんな感じです!

カルチャーについて

触れてきたカルチャー
石ツ:完全にインターネットです。漫画やアニメも好きだし、映画もそれなりに観るし、外にも出るには出るんすけど、インターネットです。俺の青春はインターネットに始まり、インターネットに終わりました。

きっかけは『うごくメモ帳』というお絵描きツールみたいなソフトで、描いたイラストや動画を投稿して、それにコメントしたり出来たんですけど、そのコメント欄で会話する、所謂チャットに小学生の頃どハマりして、一回両親に病院連れて行かれかけました。

そこからは母親から教えてもらった2ch(現5ch)やニコニコ動画にどっぷり浸かり、『おもしろフラッシュ倉庫』に入り浸ったり、『デュラララチャット』や『もなちゃと』で喧嘩したり、自分でチャットサイト作ったり、ツイッターも気が狂うくらいのめり込んだし、『小説家になろう』に自作小説投稿したり、動画サイトにゆっくり実況を投稿したり、ニコ生主になったり。

なんというか、インターネットってちょっとストリート感が有るじゃないですか、本当のストリートが怖過ぎる俺には丁度良いスリルと安心感で、つまるところ、青春時代の殆どをインターネットに費やしてきたので、考え方の根本はそれらの場所から得たモノが大きいのかなと思います。

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多くの漫画やCDが並ぶ石ツの本棚


高橋:僕は小学生の頃に見ていたゲームやアニメですね。なかでも『ポケモン』『遊戯王』『イナズマイレブン』は相当好きでした。当時は人並みにしかハマっていなかったと思うのですが、中高が男子校だったので、話題になることも多く、後になって再熱したり改めてアニメを観返したりしていました。ゲームはもちろん禁止の学校でしたが、昔遊んでいたDSを持っていき、先生に見つからないようみんなで遊ぶなんてこともよくありました。ベイブレードは流石にスタジアムの大きさと音でバレて、没収されましたね。

この歳になると、少年漫画の三要素「友情・努力・勝利」みたいなものって、綺麗事みたいで恥ずかしいし、暑苦しくて嫌だと言ってしまいがちなのですが、やっぱり心のどこかでは大好きなままでいます。僕は友達が少ないからか、こういうことを恥じることなく言えてしまうので、忘れずに言い続けられる役で居たいなと思っています。

それにバンドってかなり「友情・努力・勝利」みたいなところありますし、こういった童心を、周りに悪影響のない範囲で持ち続けられたらバンドにとってもいいなと思います。

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『イナズマイレブン』の主人公、円堂守の御守りを今でも大切にしている



今注目しているカルチャー
キタムラ:僕は平成カルチャーですかね。やはりバンドのコンセプトとして、平成を意識しているところがありますし、PURIKURA MINDの初MVにもなった、「Neither A nor B」のMV中に使用されているものは、メンバーそれぞれで持ち寄ったものなんですけれども、平成を象徴する様々なもので埋めつくして撮影しました。

撮影の休憩中に、メンバー4人と撮影スタッフさんで、ベイブレードで遊んでたんですけど、やっぱり平成のおもちゃは面白い!ってなっちゃいましたね(笑)。

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平成に囲まれて行われたMV撮影の様子


携帯のおもちゃも、平成はパカパカ開くガラケータイプのおもちゃだったけど、令和はスマホのおもちゃとかがあって、びっくり仰天って感じ。何となく、令和はスマートすぎるなと感じる部分があって、僕らは、スマートじゃなくてもいいから、長く、いろんな人に愛される存在、平成カルチャーみたいになりたいなと思いますね。

そんなこと思ってたら、めっちゃ最近、平成生まれのものというか、平成ライダーを履修し直してて、懐かしいとか面白いとか、そういうのを日々楽しみながら飲む酒で、何とか生きています......。

石ツ:僕は、うーむ、ハイパーポップとかフューチャーベースとかに多少関連しちゃうんで、まったく音楽が関係ないって訳じゃないんですけど、強いて云うならインターネットミームです。

特に海外で流行っているDoomerという存在には凄く惹かれます。日本で言うところの「無敵の人」みたいなモンなんだけど、年齢は大体20代前半で、将来を諦めていて、酒と煙草、音楽に浸りながら夜道を散歩する奴ら的な感じの人達を刺す言葉らしく、派生してDoomerと呼ばれる人達が好んで聴くDoomer Music(原曲のテンポを過剰に落として音質を著しく下げたモノ等)なんかはツボでした。結局音楽かよって感じですんません。

なんというか、本当に生活は終わっていても、終わっている事に酔えてしまっているというか、そんな自分が嫌いじゃないって空気をヒシヒシ感じて共感しちゃうんですよね。丁度僕も似た様な感じで最近叩かれたし......まあ、だからこそ、コソコソ隠れて狭いコミュニティで慰め合ってんだろうなと思うと、なんか羨ましくって、自分の承認欲求や自己実現欲求が憎くてしゃーない。



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石ツの部屋で遊ぶ友人、彼もまた、Doomerのひとりなのかもしれない


他にも『ソニックザヘジホグ』とか『カエルのペペ』、どれもあんまりポジティブじゃないんだけど、何処かセンス良くて、憎みきれなくて。『カエルのペペ』に関しては映画(『フィールズ・グッド・マン』)も観ましたけど、社会問題にまで発展して、なんかインターネットから生まれた偶像がここまで大きな力を持つのかと、変に感動しちゃいました。もっとも作者はそのつもりじゃなかったようなので、そこは同情です。今となっては少し共感も出来ます。

インターネットミームには、インターネットの面白さと可能性、哀しみと恐怖が感じられて、やっぱりそれはとても興味深いっつーか。あ、挑戦したい事、インターネットミームになりたいです。俺、インターネットミームになりたい、そのためにまずはバンド、気張っていきます。PURIKURA MINDは正真正銘、日本の、ジャパニーズ、ロックバンドです!!



RELEASE INFORMATION

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PURIKURA MIND『Starter Kid's』
2023年12月12日(火)

試聴はこちら

LIVE INFORMATION

IN BETWEEN DAYS
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2023年12月12日(火)
下北沢SHELTER
予約 https://w.pia.jp/t/inbetweendays/

満喫、レイプされた先輩と下北沢にて散る
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2023年12月19日(火)
下北沢THREE
予約 https://tiget.net/events/274916

SweetPotion
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2024年1月6日(土)
心斎橋ANIMA
予約 https://eplus.jp/sf/detail/3986230001

PROFILE

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PURIKURA MIND
2023年、東京にて結成。
同年10月より本格的に活動を開始。1st Digital Single「Neither A nor B」をリリース。『リプレイスメンツ2023』等へ出演し注目を集める。
同年12月、1st EP『Starter Kid's』をリリース。コンテンポラリーな生活、pinfuを招き初となる自主企画を下北沢SHELTERにて開催。

LINK
@purikuramind_jp
@purikuramind_jp
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