2023.08.15
同じ熱中のなかで組んでいけるんじゃないかなっていう気持ちがある(JunIzawa)
─おふたりはソロ活動のツアー中に出会ったそうですね。
Cwondo:昨年、大阪のSOCORE FACTORYでライブをしたときに、初めてお会いしたんです。ライブが始まる当日まで、出演する人の音楽を聴くのが好きなんですけど、井澤さんの曲がカッコイイなって気になっていたのと、実際当日のライブを観てめっちゃカッコよくて、ライブ後に話しかけに行ったんです。
JunIzawa:ライブが始まる前にも、ちょっと話したんだよね。
Cwondo:ああ、そうでした。その後、ライブを観てからまた話をして。自分は音楽遍歴が浅いので、聴けてないバンドとかいっぱいいるんですけど、普通に出会っていたらめちゃくちゃファンになっていたなって思いながら、そのライブが終わってからLITEにハマってずっと聴いてました。
JunIzawa:ありがとう。僕はもともと近藤くんの音楽を聴いていて、一緒にやりたいなって思っていて、意気込んで大阪のイベントに向かったんです。それで会場入りしたら、楽屋に僕と近藤くんしかいなくて。そのときに、No Busesがすごく好きでっていう話もしていたので、もしかしたら最初に話しかけに行ったのは僕の方かもしれない。そのときに近藤くんが、「整体に行きたい」って言ってたから、一緒に調べて「ここ評価高いよ」とかって話したよね(笑)。
Cwondo:そうでした(笑)。その後すぐに整体に行ってきました。
─そこから、お互いに連絡先を交換して交流が始まったわけですか?
JunIzawa:ライブが終わった後に音楽のことで話しかけてくれて、お互い音楽が好きだし必然的に仲良くなったんです。ソロのDJの人もたくさんいたんですけど、僕らはメインのバンドがあってそれとは別にひとりでも活動するっていう、ベクトル的には同じ方向性でやっていたふたりなので、すごく意気投合するのが早かったんです。それでライブ後に、今っぽいんですけど「飲もうよ」じゃなくて、「一緒に帰ろうぜ」って、ただ一緒に帰るだけっていう(笑)、それで仲良くなって。ただ、僕のひとつ前のライブが近藤くんだったので、あんまりライブは観れなかったんです。それで、東京で近藤くんのソロをやったときに遊びに行ったら、やっぱりカッコよくて。「ここまで仲良くなったんだったら、いつか一緒に曲を作れたらいいね」って、去年の冬ぐらいに話をしていたんです。そのタイミングで、今年になって運よくLITEとNo Busesの対バンイベントが決まったんですよ(2023年5月15日にWWW X で行われたLITE×No Buses× downtの3マン)。「やっと本チャンで一緒にやれるね」って言いながら、「せっかくならこのタイミングでソロでも曲作っちゃう?」って、軽い友だちのノリで始めたのがスタートですね。
Cwondo:そのイベントに誘われたときに、LITEの名前があったので、メンバーに「LITEめっちゃ良いから絶対出させてほしい」ってお願いしました。
─近藤さんは結構多作だと思うのですが、もともといろんな人と一緒に曲づくりをしたいという気持ちは持っているんですか?
Cwondo:単純に曲が良いだけだったら、あんまり一緒に曲を作りたいとは思わないんですけど、話した印象で「この人好きだな」って思ったり、人柄とか音楽以外のところで一緒に作りたいと思うことが多いです。井澤さんとは話をしていて自然に始まった感じでした。
─井澤さんから見て、近藤さんと一緒に曲を作りたいと思ったポイントはどんなところにありましたか。
JunIzawa:近藤くんって、僕の中では見るからに天才なんですけど、自分が表現しているものに対する熱中度や、自分が好きになったものに対しての熱中度が、僕からしたらすごくわかりやすいんです。僕も同じタイプの人間なんですけど、近藤くん的に「今、何かに熱中しているな」っていうのは、人が見ていてもそれが気持ち良い部分だったりするし、その熱中している姿が魅力的だと思っていて。僕自身が今曲作りに熱中しているんだったら、それは同じ熱中のなかで組んでいけるんじゃないかなっていう気持ちがあるかなあ......。なんか、言葉にするとチープになっちゃうので、一概に"近藤くんの魅力はこれだ"みたいにあんまり言いたくはないところでもあるんですけど、曲を聴いていて、「なんでこういうことをしちゃうんだろう?」っていう発見みたいなことで、一緒に曲を作っているからこそ人間性が見て取れたし、「ここでこうしちゃうの!?」っていう、近い存在だからこそ結構ビックリするところがあるんです。そういうところまで見てみたくなったというのが、惹きつけられた部分だと思います。
「言葉として共有しすぎずに作る」行為が、人と作る有意義な側面(Cwondo)
─実際の曲作りはどのようなアプローチで始まったのでしょうか。
JunIzawa:いちばん最初は僕のベースフレーズと、ネタとしては似たような尺の作り込むところまでは全然していなかった音を「今閃いて、こういうのをやりたいんだよね」っていう土台として近藤くんに送ったんです。それを近藤くんの方で「いろいろやってみます」って時間をかけて作ってくれたものが、返ってきたら尺は一緒なのに別次元になっていて。たぶん上に乗せているだけじゃなくて、乗せてる中の1個のフレーズが、PC上なら「ここからここまでの尺」とかあるじゃないですか?その中がメロディとしてすごく自由なんですよね。それって僕の中では結構あり得ない考え方だったので、「その方向でどんどん進めて行こう」って近藤くんに任せました。だから近藤くんからしたらRemix作業みたいな感じだよね?
Cwondo:ちょっと近いかもしれないですね。自由度の高いRemixみたいな感じでした。ベースのフレーズが最初に決まっていたというのは、たしかにそういう面が強かったかもしれないですね。もしかしてフレーズに対して最初に井澤さんが想定した出口とは違うかもしれないけど、自分の解釈で返したものが、ご本人が抱いていたものとは別として「これいいかも」って進んでいくっていうのは、人と作る意味のある作業のひとつだなっていう気がしますね。
JunIzawa:確かに、いつも僕の中で「こういうフレーズを作ってこういう曲にしたい」ってゴールを想定して作っていくんですけど、近藤くんに敢えてゴールがまったく見えてないフレーズを送ったっていうのはわざとだったかもしれない。
Cwondo:ああ、そうだったんですね。
JunIzawa:近藤くんに自由度があって欲しいし、僕が作ったフレーズを逆に近藤くんの方でどうゴールに持っていくのかを見てみたいというのもあったから。
─曲作りのテーマみたいなものを言葉にしたりはしなかったですか?
Cwondo:テーマを直接出したというよりは、お互いに投げていく中で受け取った印象をジワジワと感想として伝えて、それがだんだんテーマになっていった感じはあります。最終的には、曲としてはエスニックな感じはあるなって僕は漠然と思っていて。これは井澤さんに話したわけではないんですけど、井澤さんが送ってくれたベースのフレーズを聴いたときに、いろんな人が集まって踊っているような景色が見えたんです。お祭りみたいな感じが、作っているときにずっと頭の中に映像として流れていました。
JunIzawa:そうだったんだ?俺、ちょっと感覚が違ったかもしれない。自分のベースフレーズじゃなくて、近藤くんから返ってきたものを聴いた感じだと、どっちかというとシンメトリーではないというか、聴いていて「禅」とか「和」を感じた。
Cwondo:ああ、なるほど。それは、僕は直前ぐらいまで作っていた自分のアルバムのモードが若干残っていたのかもしれないです。そこらへんを敢えて細かく共有せずに、想像していることを曲の投げ合いの中で形にしていった結果、なんとなく印象は近いところはあるけどっていう。そういうのが、人と曲を作るときの楽しさだなっていつも思います。「言葉として共有しすぎずに作る」という行為が、人と作るっていう有意義な側面だなって。
─ゴールを決めずに、ということですけど、最終的に完成したっていう感触はどこで得られたのでしょうか。
Cwondo:ミックス、マスタリングを僕の方が中心になってやってみて、井澤さんに送ったんですけど、自分が今までやってこなかったことをマスタリング作業でやってみたりとか、話をしながら結構自然に最終的なゴールに辿り着いた感じはありました。やれる範囲でお互いの妥協点とか、良いと思える部分とかをやり取りして最後に「これが良い」ってなったんですけど、結構そこはパッと早くいけた感じでしたね。「これがゴールだ」って言える理由というよりは、最後までふたりで話しながら、この曲にとってどこらへんが良いものになるかみたいなことを考えながら導いていきました。
─近藤さんが歌詞を書いて歌うというのは、井澤さんの中では最初から考えていたんですか。
JunIzawa:歌が乗せられるんだったら乗せて欲しいなっていう感覚は持っていたんですけど、そもそもベースがベースらしくないフレーズを弾いているし、結構フレーズが強かったので。それ以外のところで近藤くんらしさもありつつ、今までと違うアプローチもあったので、インストの時点で既に僕の中では結構カッコイイなって思えるところまで行っていたんです。でも近藤くんは「これに歌乗っけたいんですよね」ってもともと言ってくれてたし、「これに歌が乗ってたらすごいね」って話もあったので、歌詞やメロディはすべて近藤くんに任せたんですけど、僕的には歌が乗ったところまでが曲の到達点、ゴール的な感覚はありました。ミックスの時点で近藤くんの方でいろいろエフェクトをかけて遊んでくれたり、僕からの要望も結構多めに反映してもらったり、マスタリングの詰めに関してもかなり繰り返しやり取りしたんですけど、ボーカルが乗るまでのところは僕は単純に待ちでしたね。それが僕的にはすごいなって思えたし、歌詞の世界観に関しても合致していたなっていう印象があります。「『禅』とか『和』の感じがするね」って言ってたのは、歌が乗る前の話だったんですけど、その後に乗ってきたのが、石とか自然の「禅」とか「和」を感じるものだったんです。そもそもいちばん最初の仮タイトルを"ROLL"として送っていたんですけど、LITEとしての作り方とそこは一緒で、具体的な印象を与えない仮タイトルを付けるんです。僕は、人がどう捉えるかがその人によって違う言葉を付けるのが好きで、"ROLL"は役割という意味もあるし、転がるっていう意味もあるから、そういう意味もありつつベースフレーズがボサノヴァ風だったので、エスニックな部分も含めて仮タイトルを近藤くんに送って、どう捉えてくるかなっていう、音だけで任せるコミュニケーションみたいなことをしたんです。そのコミュニケーションの中で行きついたのが、"ROLL"が"転がる"から《石》になって、僕の中では自分が思っていたところを飛び越えて斜め上を行ってくれたので、もう「最高だよ!」しか言えなかったです(笑)。
Cwondo:ありがとうございます。歌詞はサウンドに引っ張られて思いつきました。「禅」とか「和」っていうのは、後で井澤さんに言ってもらって「ああ、確かに」って思ったんですけど(笑)。そこにあるものをどう感じて歌詞にするかみたいなものは、自分の中にあって、その流れで自然に出た言葉でした。いちばん大事にしたいのはメロディのスムーズさなので、そこを崩さない良い言葉をサウンドのイメージと照らし合せて当てはめていく感じで出来上がりました。もともと伝えたいことがあってこういう歌詞にしたというよりは、音で見えた質感を言葉として選んだ感覚はあります。
自然な流れで作れたものって、聴き手にとっても自然体でいられる(JunIzawa)
─個人的な話で恐縮なんですけど、先日コロナに罹って最近回復したタイミングで「ROLLIN」を聴いたんです。そこから毎日繰り返し聴いているんですけど、疲弊した気持ちが癒されるというか、精神的にも身体にもすごく作用するような曲だなと思ったんですよね。普段バンドで曲作りをしているおふたりがソロで曲を作ると、より個人の深いところに入り込んでくる曲作りになるのかなと感じたのですが、バンドの曲との違いってどういう感覚を持っていますか?
JunIzawa:薬効効果があるかはわかんないですけど(笑)。「バンドでやってるからこそ」っていうのが、僕の中であるんですよ。近藤くんとの繋がりのスタートもそうだったと思うので。近藤くんは覚えてるかはわからないけど、最初に会ったときに近藤くんが喋ったことで、「パーソナリティな部分をさらけ出せる部分があることって健康的ですよね」っていう話になって。対バンしたときって、まだコロナで制限があって今みたいに「ライブ行こうぜ」みたいな空気じゃない時期だったんです。僕らもライブが制限されていたし、LITEに関しては海外に行けなくなってしまったので、国内だけでしか戦えない状況で何ができるかっていう感覚というか。それでバンドの活動がいったい停止している、何をしようかっていう状態のときに、僕はソロで自分のパーソナリティな部分を出していこうっていう、"修行"に近い感じで動いていたんです。そのときに、近藤くんと出会って、やっぱり「パーソナリティな部分を出せる」と言っていたので、そっちはそっちで僕の中で終わらせたくない場所だなと思ったんですよね。自分がバンドで生きていくためになんですけど。もちろんLITEにしろNo Busesにしろ、真っすぐ自分たちで進めていくんですけど、2バンドで共通しているのが、結構そのメンバーでしか出せない音になっているというか、個性が爆発しているひとりのためのバンドじゃなくて、「くっついたバンド」になっているというか。そのくっついたバンド感を推し進めていくためのデトックスとして、ソロがあって良いのかなっていう気はしていて。たぶん、そういう自分たちの中で自然な流れで作れたものって、聴き手にとっても自然体でいられるというか。それで少しコロナに効いたんじゃないですかね?わかんないけど(笑)。
─いや本当、そんな気がします(笑)。近藤さんはソロとしてご自分が作るものについてどう思っていますか?
Cwondo:今、井澤さんが言っていた、「なんでパーソナルな部分に効いてくるのか」っていう話は、めっちゃわかります。バンドで曲を作ると、アイディアからそれを作品にする過程で、レコーディングでフレーズを何度も録って反芻するっていう行為が重なって曲になっていくわけで、それが良いところでもあるんですけど、そこがひとりで作っているものとは違う質感になってくるひとつの理由でもあるんですよね。ひとりや少人数で曲作りをすると、自分的にはラフなアイディアや感覚はすごく残されているなっていう感じはあるんです。作っていく上での客観的な部分が減っていくし、チェックするフィルターが減るので、その分良い悪いのジャッジメントが緩やかになるというか。僕と井澤さんで言うと、バンドをやっているふたりだから、音楽に対するグルーヴは存在しつつ、でもひとつひとつのジャッジはバンドのときより緩やかだから、すごく絶妙なバランスでふたりの楽曲が出来たなって思いますし、作っている人のコアな部分に触れられるものはあると思います。そこがバンドとソロ活動の違いだと思います。
JunIzawa:やっぱり、自分の中で目指していたものが、LITEっぽくもNo Busesっぽくもない方が良いっていうのがあったので、そっちに偏れたなっていうのはあります。そもそも僕の中でも近藤くんの中でも偏っている部分でくっついたので、これは別次元だろうなって。だからLITEのファン、No Busesのファンにどう響くかわからないですけど(笑)。ただ、その偏ってるところを出せたというのは、僕の中で結構大きなことで。作ってる過程で「近藤くんってこういう作り方をするんだ、面白いなあ」って、自分の中で今後何かを作るときの勉強にもなったし。それを真似したいなっていうよりは、その手法が自分の中に沁み込んでいった感覚はあるので、これからの未来も楽しくなりました。
─「ROLLIN」を引っ提げて8月16日 恵比寿KATAを皮切りに『JunIzawa×Cwondo Rollin'Tour』が東京、大阪2days、名古屋、福井で5本行われます。どんなところに注目して欲しいですか。
Cwondo:「ROLLIN」、良い曲なのでいっぱい聴いて欲しいです。この曲が好きであれば、お互いの作品にその要素がどこかにあると思うので、LITEやNo Busesも聴いてみて欲しいですし、その先にいっぱい探れるもの、digり甲斐があると思いますので、たくさん音楽を楽しんでください。
JunIzawa:No BusesとLITEって、今まで繋がりがなかったんですけど、急激に関係性を作り上げられたというか。LITEの他のメンバーもNo Busesが好きだし、「No Busesと対バンできるんだ!?やろうよ」って言っていたんです。ただ僕らも20年選手になってしまったので、No BusesとLITEってリスナーの世代が違うと思うんですよ。聴いてる世代が違うからこそ、そこがくっついたことでお互いのリスナーが初めて知るということもたくさんあると思うし、そういう音楽好きが今回の「ROLLIN」、ツアーをきっかけにもっといろんな音楽を聴いてくれたら良いなと思います。
取材・文:岡本貴之
撮影:Mayuko Takeuchi (JunIzawa)、Mayuko Takeuchi(Cwondo)
RELEASE INFORMATION
JunIzawa, Cwondo「ROLLIN」
2023年8月2日(水)
Format: Digital
Label:FRIENDSHIP.
Track:
1.ROLLIN
試聴はこちら
LINK
@bass138@cwondo_