2022.10.14
10月12日にデジタル・リリースされる新曲には、BiSH/PEDROのアユニ・Dが参加。曲名は「ふたり feat. アユニ・D」。フィーチャリング・アーティストが豪華である、アユニ・Dと釜中健伍(Gt/Vo)のデュエットっぷりが見事である、という以上に、DENIMSの10年の歴史の中で、エポックになったり、分岐点になったり、起爆剤になったり、というような、さまざまな意味で大きな可能性を孕んだ楽曲に仕上がっている。
少なくとも自分に関しては、極めてひらたく言うと「ヤバい、売れちゃう」「終わった瞬間すぐリピートしたくなる」「DENIMSはもちろんアユニ・Dに大感謝だろうけど、アユニ・Dとしても得るものがあったコラボなんじゃないか」とか、それはもう、いろんなものを感じた。ので、それらをメンバー4人にぶつけてきた。
L→R:土井徳人(Ba) 、釜中健伍(Gt/Vo)、岡本悠亮(Gt)、江山真司(Dr)
1曲の中でこんなに歌の表情や性格が変わるんや、っていうのが、衝撃でした
─「ふたり feat. アユニ・D」は、どのようにできあがった曲なんでしょうか。
釜中健伍(Gt/Vo):最初に、男女のデュエット曲を作りたいな、と思って。歌い出しの歌詞、〈TVと貴方の話は聞き取れないふたつも〉というのが、最初にあって。日常的に自分によくある、欠陥的なところというか。ひとつの話しか、頭に入ってこないので──。
─あの、全然欠陥じゃないと思います。普通だと思います。僕もそうですし。
釜中:(笑)そうですか。まあ、そういう自分のあるあるを、歌い出しの歌詞で思いついて。それで、このカントリーっぽいギターのリフは、それより前から、自分がアコースティックギターを爪弾く時に、お気に入りのフレーズとして、ずっとあったもので。そのアコースティックギターのフレーズと、この歌い出しの歌詞を足して、曲にしようと思って。で、こういう歌い出しだから、男女の気持ちが交差するような歌詞で、デュエット曲にしたらおもしろいんじゃないかな、と思ったのが、最初のきっかけでした。で、歌い出しのフレーズから広げていって、曲になって、女性を迎え入れて曲にしよう、ということで、メンバーとスタッフのチームで、誰がいいか話し合いをして。僕のイメージとしては、クールに歌い上げるようなシンガーよりかは、ちょっとあどけなさがあって、かわいらしさがあるけど......っていうような声のキャラクターの方が、この曲には合うなあ、っていう話をしたら、おかゆ(岡本)が、「アユニ・Dさん、どうや?」っていう提案をしてくれて。
岡本悠亮(Gt):僕はBiSHさんの「My landscape」が好きなんですけど。2番のBメロをアユニさんが担当しているんですけど、そこの歌い方が、すごいんですよ。息切れしたみたいな歌い方をするんですけど、なんかね、せつないというか、でもかわいらしい声でもあるし。合うんちゃうかなあ、って思って。
─普段から交流がある近場のボーカリストに頼もう、という感じではなかったんですね。
釜中:そうですね。意外性があって、この曲に合う人いないかな、っていう探し方をしました。で、アユニさんがいい、っていうことになって、ダメ元でオファーを──。
岡本:面識自体、なかったんで。断られても全然おかしくない。
釜中:でも、DENIMSを知ってくださっていて、すぐ「やりたい」というお返事で。
─レコーディング作業はいかがでした?
釜中:バンドのオケは、いつも大阪で録音しているスタジオで録音しまして。歌は、僕だけ東京に来て、アユニさんとボーカル・レコーディングをして。
─歌録りのディレクションも釜中さんが?
釜中:そうです。自分の声の録音しかしたことなくて、僕が作った曲を、人に歌ってもらって、「こう歌ってほしい、ああ歌ってほしい」ってディレクションするのは、初めてだったので。難しいかなあ、と思ったんですけど、やりだしたらアユニさん、僕の要望に応えようと、いろんな歌い方をたくさんしてくれたので。すごい楽しかったです。
─かなりのテイク数を録った?
釜中:そうですね、めちゃくちゃ録りました。ちょっと申し訳ないかな、と思ったんですけど、アユニさん曰く、BiSHではもっと録ってるから、全然余裕、みたいな感じで。力強いパターンだったり、ちょっと息を混ぜてやわらかく歌うパターンだったり、何回も何回も歌ってもらって。なおかつ、ちょっとしたニュアンス......語尾をしゃくりあげるとか、そういったようなところも、僕の想像していた部分じゃない、アユニさんのオリジナルなニュアンスが入ったことによって、よりアユニさんにしかない歌い方になったし。すごい才能だな、と思って、うれしかったです。
─メンバーは、聴いてどう思いました?
岡本:アユニさんの声、すごい好きやったんで。不思議な声で......あどけなさもあり、ちょっと鋭角的な、パンキッシュな部分もあり、すごいせつないニュアンスもあり。結果、この曲にすごいマッチしたなと思います。
江山真司(Dr):はじめにアユニさんの声がきこえてきた時に、「うわ、かわいい」と思ったんです。でも、二番のアユニさんパートになった瞬間、急に違う人が憑依したかのごとく、歌の表情が変わって。うまく言えないんですけど......急に、女性になった、っていうか。1曲の中でこんなに性格が違う人みたいな歌い方できるんや、っていうのが、衝撃でした。
土井徳人(Ba):僕は、2年ぐらい前に(DENIMSに)入ったんで。それまで外からDENIMSを聴くことが多かったんで。言うたら、ずっと、ちょっと客観的な目があって。
─ああ、そうかそうか。
土井:好きでずっと聴いてたんですよ、DENIMS。知り合いだし。そのDENIMSがデュエットになって、どうなんのかなあ、と思って聴いたら、意外とうまくマッチしていて。クセになる感じというか、何回も聴きたくなる感じに仕上がってるなあ、と。
釜中:あと、アユニさんがソロでやっているプロジェクトのPEDROも、アルバム全部聴いたんですけど、最新の『後日改めて伺います』っていうアルバムが、めっちゃかっこよくて。1曲目の「人」っていう曲と、最後の「雪の街」っていう曲が、特に......そのアルバムはアユニ・Dさんが詞曲を書かれてるんですけど、特に「雪の街」とか、すごい、おっきい優しさがある人なんだな、と思って。それから、BiSHの「本当本気」、アユニさんが歌詞を書いた曲で、これもかっこいいなあ、って。〈みんなが僕をバカにすんだ ナメんな〉で始まるんですけど、あのやわらかい雰囲気の中に、すごく芯が強い部分がある。かっこいい女性なんだな、という印象があったので。一緒にやれてよかったです。
両極端の気持ちを、自分はどっちも求めている
─で、この曲、彼女が参加したことによってさらに良くなったんでしょうけど、それ以前に楽曲として、DENIMSの中でも、かなりのキラーチューンだと思うんですね。
釜中:あ、ありがとうございます。でも、デュエット曲として、最初から作ったので......。
─じゃあ、そういう設定で作ると、こういう強い曲ができる、ってことなんですかね。
釜中:DENIMSの中でも、いろんなパターンの曲があると思ってるんですけど。女性のこととか、パーソナルなことを歌う曲って、よりいっそう多くの人に届きやすいのかな、っていうふうには、できた時に思いました。確かに、今までとは違う形の曲ができたのかも。
岡本:この2〜3年で......コロナやったりとか、メンバーの結婚やったりとかで、たぶん釜中も、書く歌詞とか書く曲が......本人が意識してるかどうかは別として、変わった部分はあると思うんで。それまでは、けっこう内省的な曲が多かったと思うんですけど、自分からもうひとつ外に向けて、っていうふうに、広がってきたというか。そういう変化があったというか。しかもそこで、アユニさんが参加して、ってなって、スタッフチームも、そのまわりの人たちも、「これは外に向けて作った曲やな」っていうふうに受け止めてくれたのかな、とは思います。最初から「外に向けて」と意識して作ったわけではないけど、結果としてそうなったんかな、って思います。
土井:去年、この曲をツアーでやっていて、新曲として。まだ誰が歌うか決まってない状態で、メンバーでコーラスしながらやってて。その段階で、「この曲、いいんじゃないの?」っていうのは僕も個人的に思ってました。
釜中:日常的な、自分が思ったことを歌い出しにして、一行目からだんだん書いていって。「外へ向いた曲にしたい」とかは意識してなくて、ただ、こういう感情のまま、つらつらつらーと書いてるんですけど。でもそのあと、レコーディングとか、昨日ミュージック・ビデオを撮ったんですけど、その時に何度も聴いているうちに、「この時、僕はこう思ってたんだな」っていうようなことを、再確認したというか......自分の夢とか、やりたいことを突き詰めたいっていう気持ちと、人のことを思いやる気持ちって......そういう両極端にあるものが同居することは、ダメなのか? っていう......なんつったらいいんだろう......そういう両極端の気持ちを、自分はどっちも求めている、というか。そういう矛盾が、今、僕の書きたいテーマなのかな、というのが──。
─この曲を書いたことでわかった。
釜中:はい。そこに、さっき言ったアユニさんの......かわいさもあるけど、あどけなさだったり、せつなさだったり、儚さだったり、かっこよさだったり、相対するものが同居している声。そういうのって、人間らしいし、美しいなあと思うので。あとサビで〈全て欲しがる〉って何度も言っているけど、最後は〈全て与えるから〉ってなって、「全然さっきと言ってることちゃうやん」と思ったり。あっち行ったり、こっち行ったり、一貫性がない。それが僕が書きたいことなんだろうな、と、何度も聴いていて、改めて感じました。
俺たちは演奏するのが仕事じゃなくて、表現するのが仕事なんやな、と、アユニさんに気づかされた
岡本:その、昨日ミュージック・ビデオを撮った時の話、僕もしていいですか?
─あ、ぜひお願いします。
岡本:釜中とアユニさんのふたりの歌唱シーンを撮ってる時、僕らモニターで観てたんですけど。もうほんま......語彙力なくて申し訳ないんやけど、表情がすごいな、っていう。「この歌詞のとこでちょっと斜め下向くんや?」とか、そういう細かい表情とか動きとかが、声と合わさって......映像で観ると、歌詞の浸透率が違う。全身で表現している、それがすばらしいなと。そうか、そういえば俺たちは、表現をしてるんやもんな。演奏をするのが仕事じゃなくて、表現するのが仕事なんやな。と、改めて気づかされたというか。いかに全身を使って、作った曲とか、弾いてる音を表現するか、っていうのができる人って、すげえなと思いました。曲のどの瞬間に、どんな角度から観られてもいいように......そこまで考えてステージに立ってる人なんやな、全身が才能ある人やなあ、って思いましたね。
江山:曲への入り込み方がね。
釜中:「こういう曲やったんや?」っていうのを、改めて教えてもらった気がします。
─9月10日のCOTTON CLUBのライブのMCで、今アルバムを作っているとおっしゃっていましたよね。12月から3月にかけて、13本の全国ツアーもある。という、近い未来の活動としては、それぞれどのようなビジョンを持っておられますか?
釜中:前のミニアルバム(『more local』2020年9月16日リリース)のあと、配信シングルが、「ふたり」を入れたら6曲出てるんですけど。やっぱりフルアルバムで、1曲目から流れがよくて、っていうのが好きなので。最高のフルアルバムを作りたいっていうのが、いちばん近い未来の想像で。で、それをひっさげて、前のツアーよりも進化させた姿を、全国のみんなに見せたいな、たくさん人が来てくれたらうれしいな、と思っています。
岡本:毎年言ってることでもあるんですけど、今回はほんまにグレードアップしたいですし。アルバムの質も、ライブの質も。より最強のDENIMSをお見せしたいなと思っています。
江山:ライブに関して、最近自分が思ってることがあって。もっといいライブ、もっと最強のライブをしたい、みたいな思いはずっとあるし、それを積み重ねてきたけど、今ここでもう一度、自分が最強になるにはどうしたらいいんか、と思った時に......今、「DENIMS、これからちょっといい感じになるんじゃないか?」っていう時に、自分がドラマーとして、メンバーの誰よりも強くないといけないな、と思っていて。今、そこをすごい努力していて......言葉にするとちゃちくなるんですけど、今すごいがんばって、強くなろうとしているところで。ツアーが2022年と2023年をまたぐんですけど、来年ぐらいには、僕が最強になれて、それにみんなも乗っかって、バンド自体がもっと最強になっている、という予定ではあります。
釜中・岡本:おー......。
土井:去年もワンマンでツアーを回ったんですけど、僕が入ってからの新しい曲は、まだシングル2曲とかだったんで。
─ああ、そうですよね。
土井:今回は、新体制として初のアルバムリリースも見据えたツアーなので。「新しいDENIMS、いいやん」って思ってもらえるようなライブにするべく、日々努力しています。前回のツアーの時は、まだ、「(お客さんに自分が)どれくらい受け入れられてるんやろう?」みたいなことを思ったり......でも、僕の体感としては、ツアーの後半の方で「あ、いい感じになれてるかもしれない」という感覚があったので。今回は、最初からそうしたい。気合い入りますね。
取材・文:兵庫慎司
撮影:村井香
アユニ・D/Q&A
Q. DENIMSのMVで好きなもの、印象に残っているものはありますか?
A. 最近のもので凄く印象に残っているものは「ひかり」という曲の、カーブミラーを使っているもので、こんな画角で撮られている作品を観たのは初めてで凄く印象に残っていて、(DENIMSの)メンバーに聞いたら、時間もお金もかけず自分たちで撮られたとおっしゃってて、「うわー、かっけーなー、バンドってきっとそういうことだよなー」って。自分たちで良いと思う作品を自分たちで作り上げて、ゼロから100にするって、凄く難しいことだなーって、自分が楽器を弾いたり、自分がプロジェクトをやってみて学んだので、自分たちのやりたいことを目に見える作品として完成させることって凄いことだな、と思いますし、何か、おしゃれなんですよね。そううチープだからダサい、とかでは全くなくて、センスがあるお4方なんだなーって、センスの塊が映像作品にも出ているなって思ってます。
Q. 最初にDENIMSを知ったきっかけになった楽曲を教えてください。
A.「ゆるりゆらり」です。自分はホントにBiSHに入るまで特に音楽は無知で、バンドとかほとんど聴かないで育ってきてしまったから、それこそライブハウスとかとは全く縁がない人生を送ってきてたんですけど、BiSHはじめて、ソロで自分も楽器を持つようになってから、凄くバンドとか音楽に興味を持つようになって、凄く好きになって聴きだしてた時期にDENIMSの音楽を見つけて、ミュージック・ビデオを見つけて、凄くかわいくて面白くて、曲も好みだったので、柔らかい雰囲気、でもライブ映像は凄く大人の男の余裕さ、とか色気さもありつつ、コミカルでポップで、あの独特な感じはDENIMSでしか見たことがなくて、そこから凄く曲を聴くようになりました。
Q.今回の曲のここを聴いてほしいというポイントを教えてください。
A.こうやって外のアーティストの方とデュエットさせていただいたのが、自分にとっては光栄なことですし、元々自分の好きだったバンドにこうやって自分の声が音楽の一部として混ざれたことが自分にとっての自慢なので、とにかく誰でもいいから聴いて欲しいです。それと、生きてるときっと、恋人、友達、家族関係なく、この人は大事な存在だな、っていう人がいると思うし、生活をしている人は人生の悲しさとか脆さとかも知っている分、強さとか愛とかも知っていると思っていて、それがこの楽曲には凄く描かれているので、この曲を聴いて、その自分の大事な人とかがくれた優しい言葉を思い出して、そういうものを抱きしめて、この曲も愛おしいな、と思っていただけたら嬉しいですね。
RELEASE INFORMATION
DENIMS「ふたり feat. アユニ・D」
2022年10月12日(水)
Format:Digital
Track:
1.ふたり feat. アユニ・D
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LIVE INFORMATION
DENIMS ONE MAN TOUR "Sing a Simple Song"
2022年12月2日(金)
神戸 太陽と虎
2022年12月10日(土)
横浜 FAD
2022年12月16日(金)
京都 磔磔
2023年1月21日(土)
福岡 BEAT STATION
2023年1月22日(日)
広島 4.14
2023年2月5日(日)
高松 TOONICE
2023年2月12日(日)
札幌 ベッシーホール
2023年2月23日(木・祝)
名古屋 CLUB QUATTRO
2023年2月25日(土)
金沢 GOLD CREEK
2023年2月26日(日)
新潟 RIVERST
2023年3月12日(日)
大阪 BIGCAT
2023年3月23日(木)
仙台 enn 2nd
2023年3月25日(土)
恵比寿 リキッドルーム
オフィシャル3次先行受付
受付期間:10/15(土) 10:00 〜10/24(日)23:59
受付URL:https://w.pia.jp/t/denims/
*2023年1月21日(土)福岡 BEAT STATION以降10公演が対象となります
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