SENSA

2022.10.12

音楽・アート・人を、パッチワークのように鮮やかに縫い合わせる「こつぶ」-Highlighter Vol.148-

音楽・アート・人を、パッチワークのように鮮やかに縫い合わせる「こつぶ」-Highlighter Vol.148-

音楽だけでなく、どのカルチャーも共通点やつながりがあるということをコンセプトにしているSENSA。INTERVIEWシリーズ「Highlighter」では、アーティストはもちろん、音楽に関わるクリエイターにどのような音楽・カルチャーに触れて現在までに至ったか、その人の人となりを探っていく。 Vol.148は、様々なキャリアを経てソロアーティストとして全曲オリジナルの1stアルバム『Patchwork』をリリースした、こつぶを取り上げる。
33名もの参加ミュージシャンと共に作られた、まさにパッチワークのように鮮やかな一枚。アートワークも含めて、トータル・クリエイターとしての手腕も光っており、これからの活動にも目が離せない。


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活動を始めたきっかけ
物心ついた時から歌うことが好きでした。でも、高校生になってバンドをやろうと思うと、田舎じゃヴォーカルかギター志望ばかりで、あぶれちゃう。なのでずっとベースをやっていて、むしろバンドをやめることにしてからシンガーへの転向を決めました。

それから大学を出たあともずっとバンドで活動してきたのですが、風の時代がやってきて(笑)。みんながそれぞれ、進みたい方向へ進んでゆく流れに乗るように、自然にソロとしての作品作りを考えるようになりました。

影響を受けたアーティスト
最初に夢中になったのは、L'Arc~en~Cielでした。その次は椎名林檎。その後はインディーズ中心にV系バンドに傾倒していて、高校生のころ組んでいたバンドもV系でした。今思うと、音楽だけじゃなく衣装やメイク、演出までトータルで作り上げる感じが好きだったんだと思います。

全く音楽性は違うけど、かれこれもう10年以上参加しているGENTLE FOREST JAZZ BANDのライブの作り方なんてまさにそうですね。このバンドに絶対入りたい!と思いましたから(笑)。



その後は大学でジャズを学んだけど、技術の向上にばかり目がいっていたので、音楽の幅が広がったのはむしろ卒業後です。周りにルーツミュージックやワールドミュージック、いろいろな音楽を教えてくれる人が増えてきて、今も仲間に教えてもらっている感じ。

今回のアルバム『Patchwork』では一曲一曲のコンセプトが明確で、具体的にはNickel Creekブレッド&バターThe BandKate BushYMO大滝詠一はっぴいえんどShirley Collinsなど。

シンガーとしてずっとアイドルなのはJoni Mitchellですね。詞においては高田渡さんに影響を受けています。「memento mori」(M7)で朗読している詩「生きている位置」の作者である詩人の山之口獏も、高田渡さんの音楽を通して知りました。





注目してほしい、自分の関わった作品
今回のアルバム『Patchwork』では、それぞれの楽曲で作りたいサウンドを実現するためには誰と一緒に作るか?ということを一番に考えました。ひとりで考え込んで結局何もできない...ということになりかねないし、バンドだとメンバーが決まってますが、自由なのがソロのいいところだと思って。とことん楽しみながらキャスティングを決めました。なので、最終的に参加ミュージシャンが33名にもなってしまって(笑)。

特にアレンジャーを決めずに、みんなでアレンジを練った曲や、ひとりで完結した曲もあるのですが、アレンジャーがいるとそれぞれのディレクションのやり方も違って面白かったですね。特に面白かったのが、「memento mori」(M7)です。アレンジャーの瀬田創太さんとは何度かふたりでリハーサルをして、まずはピアノだけで大枠の方向性を決めました。

そこからはもうアレンジは無し。ヴァイオリンの梶谷裕子さんと、チェロの橋本歩さんは、当日まで譜面を見たりおさらいをしてはいけない!という瀬田さんの厳命のもと(笑)、全員での一発録音になりました。ストリングスのおふたりは始終即興で演奏していただきましたが、アレンジを書いていたらこのサウンドには辿り着けなかっただろうな、という最高のテイクが録れました。




今後挑戦してみたいこと
今回は大きく風呂敷を広げたので、次は逆にもう少しシンプルでトーナリティのあるアルバム作品を作ってみたいですね。いつもバラバラになっちゃうから(笑)。

もっと遠い将来では、自分のルーツでもある八木節もやってみたい。母のお腹にいる頃から聴いてたのに、歌ったことがないんです。八木節ってメロディーがひとつしかなくてシンプルなので、いつかジャンルを越えてフリー八木節をやりたいですね。

カルチャーについて

触れてきたカルチャー
音楽に興味が湧いてきて最初に自分から触れたのがV系だったので、派生して気になる物はアングラなものが多かったですね。漫画ならつげ義春や丸尾末広、寺山修司作品、Jan Švankmajerなど...でも私が中高生の頃の田舎では、これまた全然アクセスできないんですよ!

なので、必然的にファッションに目がいくようになりました。工夫次第でいけるんじゃないか?と思ったんですよね。とはいえゴスロリやパンクファッションは、バンドやりながらだとなかなか服が揃えられず(笑)。ヤフオクで買ったりしてました。

高校に入って、学校の図書室にあった装苑を読むようになって一気にファッションの世界が広がった気がします。この頃から、行く場所や気分、会う人によってファッションを変えることを自然と考えていました。いつも服が違うから、コスプレみたい!と言われたことも。

古着屋で働いていた頃は、服を買いすぎてよく金欠になっていました。高いものを買うわけじゃないので、以前は衣替えや引越しのたびに売ったり捨てたりしていましたが、最近はよっぽどのことがないと手放さないことにしています。ずっと持っていたい服かどうかを考えて買うようになったというのもありますが、後になって「あ~!あれ手放さなければ今日ぴったりだったのに...」ということが1~2年後に起きたりするのがすごく嫌で(笑)。

熊谷へ移住した際に、衣装部屋を作りました。今は普段着、衣装、そして結婚を機に着物も着るようになったので、それも合わせると2.5部屋ですね。

前述したGENTLE FOREST JAZZ BANDでは、みんなでヴィンテージ スタイルのヘアメイクやファッションを研究したりすることもあって、とても楽しいですね。古いスタイルブックを古書店などで探すのはなかなか大変なのですが、今はPinterestなどのSNSも駆使して、すぐにいろいろなアイデアに触れることができるので助かっています。特に、ヘアセットの方法などはチュートリアルが見られるので最高!

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GentleForest Sistersとジェントル久保田



今回のアーティスト写真を撮ってくれた碕雄大くんとの撮影も、ファッションやロケーションを一から計画するのはすごく楽しかったですね。バンドだと、その中にいる自分を客観的にプロデュースする感覚があるのですが、ソロの自分をどう表現するのかはまだ手探りで、楽しみでもあります。

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碕雄大とのフォトセッション



今注目しているカルチャー
今一番気になっているのは版画ですね。最近始めたユニット「点線」のジャケットとロゴは版画家のムアノ・ニアさんの作品なんですが、これがとっても素敵で。

私自身、小学校のころに授業でやって以来ですが、純粋な絵のタッチだけじゃないところが面白そうじゃないですか?線の太さや、色の重なり方。この細い線の質感を出すためにはどうやったんだろう?とか想像しながら見るのも楽しい。

こんなに子供たちが版画をやったことがある国も珍しいんだそうです。実は社会風刺やプロテストアートも多いのを最近知って、版画が日本で広まるまでの歴史も気になっています。
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点線ミニアルバム「ちいさな」ジャケット



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点線ロゴ 共にムアノ・ニア作



RELEASE INFORMATION

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こつぶ『Patchwork』
2022年10月12日(水)
試聴はこちら

LIVE INFORMATION

アルバム発売!こつぶウクレレ弾き語りライブ
2022年10月12日(水)
畑と昭和と音楽酒場 はな咲

トンプソンとこつぶの音楽会
2022年10月23日(日)
Back InTown

こつぶ1st Album"Patchwork"レコ発ライブ
2023年1月13日(金)
月見ル君ヲ想フ

PROFILE

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こつぶ/cotsuvu
群馬県出身。3月6日生まれ。幼少の頃より祖父の歌う民謡(八木節)、ピアノ、マーチングバンドを通して音楽に触れる。高校時代よりべーシストとしてバンド活動を始める。大学入学を期にヴォーカルを始め、「木村美保」として活動を開始。
洗足学園音楽大学ジャズヴォーカルコースを卒業後、エンタテイメントビックバンド「Gentle Forest Jazz Band」に加入。スウィング・ブギなどオールドスタイルをキュートに歌う女性三人組コーラスグループ「Gentle Forest Sisters」として、作曲にも積極的に参加。2018年1月にワーナーミュージックジャパンよりメジャーデビューすると、海外でも好評を博す。
2019年8月には、フォーク・ニューミュージックの名門レーベル・Bellwoodから『高木大丈夫とNoProblems』としてデビュー。得意とするカズーのみならずシロフォン・グロッケン・バックパッカーダルシマー・リコーダーなど、歌だけにとどまらないマルチ奏者としての面を見せた。
2019年9月20日、自身のルーツにより迫ったカヴァーやオリジナルを演奏するリーダーバンド、「こつぶと楽しいお豆たち」の1st Album『Beans Go Marchin' In』をリリース。2022年春には参加した『大土蔵録音2020』が第34回ミュージック・ペンクラブ音楽賞ポピュラー最優秀賞を受賞。
2022年10月12日、ソロアーティスト「こつぶ」として全曲オリジナルの1stアルバム『Patchwork』をリリース。

LINK
オフィシャルサイト
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