SENSA

2022.09.28

多彩なスタイルからほとばしる"格好よくあるための覚悟"──ODD Foot Works『Master Work』

多彩なスタイルからほとばしる"格好よくあるための覚悟"──ODD Foot Works『Master Work』

ODD Foot Worksの3年ぶり新作、『Master Work』。相当に気合いの入ったアルバムだ。オープニングナンバーの「ODD Knows」から芯の太い低音と迫力たっぷりのビートに乗せてPecoriが不敵なラップを繰り広げる。ファンクやソウル、ブラックミュージックをひとつのキーに、ブーンバップ、ニュージャックスウィング、ドラムンベースなど多彩なスタイルを取り入れた10曲。

なかでも驚いたのはラストの「音楽」だった。汗がほとばしるような疾走感あふれる8ビートのパンクロックに乗せて、自分たちの存在証明を叫ぶような一曲。

センスのいいバンド、格好いいことをやってるバンド、クールなことをやってるバンドは他にもいるかもしれないけど、それだけじゃなくこんなふうに"格好よくあるための覚悟"みたいなものを熱量高くぶつけてくるバンドは、なかなかいない。「音楽」を聴き終えてからもう一度アルバムの各曲を聴くと、聴こえ方が違ってくるような感じもある。

メンバー3人に、そしてライターでありマネージャー/レーベルオーナーの三宅正一氏に、いろいろと踏み込んで話を聞いた。


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ODD Foot Worksってものがやっとスタートラインに立ったんじゃないか

―アルバム、とてもよかったです。率直な感想を言うと、最後の「音楽」という曲がダントツによかったんですよ。今までのODD Foot Worksの方向性とは違うから「これがリード曲なんだ」という驚きもあったんだけれど、この曲があることで、アルバムの印象が全然変わる。なので、この「音楽」についてまずは聞きたいです。この曲はどういうふうにできていったんですか?


Pecori(Rap):もともと「音楽」なしで、ほぼアルバムできたね、だいぶいいアルバムになったね、みたいな感じになっていて。もう1曲何かあったら最高だねっていう話をしてた時に、マネージャーの三宅さんが、ド直球のロックサウンドで、俺がラップとかもせず歌い上げて〈音楽〉って叫んでるポップパンクみたいな曲がいいと思う、みたいなことを言って。「じゃあちょっとやってみようか」っていう流れで。生々しい感じのものをそのまま凝縮して曲にしました。

Tondenhey(Gt):この曲は歌詞を三宅さんが書いていて。そこからメンバー全員でうちに集まって、歌詞を見ながら即興でメロディーを付けていった感じです。SunBalkanがギターを弾きながら、Pecoriと俺が即興で作って、そこから肉付けしていきました。

―この曲、今までやってないパターンですよね。


SunBalkan(Ba):全然ないです。でもめちゃくちゃいいなって思ったし、恥ずかしがらずにやれてよかったですね。

―何故こういう8ビートのストレートなパンクロックの曲調になったんでしょう?


Tondenhey:とりあえず傑作を作りたかったんですよ。そういうアルバムって、賢いだけじゃなくて、ひとつ愚直な曲が入ってるイメージがあって。それくらいパワーだけで乗り切る曲が欲しかったっていうのがありましたね。

―じゃあ、アルバムの全体イメージについても聞かせてください。全部の曲が揃って、手応えは相当あったんじゃないですか?


SunBalkan:いやあ、だいぶありますね。

Pecori:出すまでに3年かかってるんで。とにかく1曲1曲、最高なピースを集めていって、着々と積み上げてきた曲たちが並んだ感じなんで、最初はまとまったパッケージにした時のイメージが湧いてなくて。でも、最後にミックスした完パケを爆音で聴いて、みんな「これはすごいね」って。とんでもないもの作っちゃった感じはありました。

SunBalkan:そもそも今年の春に出す予定だったのが、なんやかんやで9月末になったんです。絶対にヤバいアルバムを作ってやると思って、急いで焦ってやるよりは、落ち着いてゆっくりそれぞれが自分を見つめ直して。そこに嘘がないようにし続けた結果というか。みんなの正直な気持ちを込めてるし、それがアルバムという形になって。通して聴いた時にはすごい達成感がありました。

Tondenhey:すごい時間もかかったし、いろんな出会いとか別れもあって、アルバムを作っていく中でマインドが変化していった部分もあったりしたんで。できあがったアルバムを聴いてちょっと前向きな気持ちになれたというのもあって、そういう作品を作れたことがよかったなって思ってます。

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―振り返ると、前作からの3年は、ODD Foot Worksというバンドにとってどういう期間でしたか?


Pecori:ODD Foot Worksとしての3年で言うと、比喩じゃなく、普通に1回、それぞれ散ったという感じでした。別に仲が悪かったわけじゃないんですけど、それぞれ違う島で自分と向き合って、また集まったような感じですかね。なので、それぞれが経験と感情を持ち寄って、やっとメンバーとして対話できる環境が作れたというか。

Tondenhey:バンドは5年目になるんですけど、一番キツい時期だったのかなと思います。ただ、外のソロ仕事もあったりして、それぞれが個になって、個を認め合ってるようなグループになれたかな。それはいい進化だったと思います。

SunBalkan:一昨年の年末にリキッドでワンマンをやったんですけど、その時までは俺がどうにかしないといけないと思って必死になってて。それはそれですごい熱意を持ってやってはいたんですけど、あんまり上手く噛み合わなくて、ちょっとしんどくて。そこを乗り越えて、去年の9月9日にSTUDIO COASTでワンマンがあって。そこでやっと始まった感覚がありましたね。とは言いつつも、そこからもアルバムを出すタイミングを2回ぐらい遅らせたんで。だから、今ODD Foot Worksってものがやっとスタートラインに立ったんじゃないかっていう感覚があります。

「ODD Foot Woksって何?」っていうのは、このアルバムを聴いてください

―アルバムのリリース告知で、ハッシュタグが"#超音楽宣言"ってなっているじゃないですか。そこへの思いとかアイディアはどういうものだったんですか。


Pecori:インディーで自分たちで全部やるようになったっていうのもあって、予算をかけた大々的なプロモーションはできないんですけど、地道にSNSとかも駆使して、とにかくこのアルバムを広めていきたいっていう。それが"#超音楽宣言"っていう感じです。最後の「音楽」っていう楽曲とも紐づいてはいるんですけど、音楽を作ったことで、音楽を超えるというか。それを堂々と胸張って言える宣言になっているというか。

Tondenhey:ほんとそうだよね。

Pecori:意思表示っていうか。


―このキャッチコピーって意外と大事だと思うんですよ。というのは、このアルバムって、ビートもスタイルも全曲バラバラじゃないですか。ひとつひとつの曲は格好いいけれど、「でも、ODD Foot Worksって、結局何やりたいの?」って言われる可能性だってある。そういう時に、逆ギレのように「音楽だよ!」って言える。その宣言でもあるっていう。


全員:(笑)。

Pecori:たしかに。(ビートたけしのマネをしながら)「音楽だよ、馬鹿野郎!」って(笑)。

―「音楽」という曲って、アルバムの中でスタイリッシュな格好良さが一番ない、どちらかと言うと愚直で切実な曲じゃないですか。そういう曲が最後に入ってることにすごく意味があると思います。「ODD Foot Worksって結局何がやりたいの?」っていう問いに直球で答えるような曲になってる気がしました。


Tondenhey:わかるわかる。

Pecori:すげえ嬉しい。

Tondenhey:まさに「結局何やりたいの?」って言われるかなとか、同じように考えたことがあって。だからこそ「音楽」って曲を作ることに意味があると思ったんですね。実際、音楽を作るのがほんとに嫌になった時期もあって。タイムカードのアプリを入れて自分で決めた時間で制作作業をやるみたいな時期もあったんです。でも、いろいろ経て、また一段と音楽が好きになった。「ODD Foot Woksって何?」とか「音楽って何?」っていうのは、全部このアルバムを聴いてくださいって感じなんですよ。

―なるほど。その前提を共有した上で、あえて意地悪な質問をすると、ODD Foot Worksがやってる音楽にスタイルとしての統一感はないじゃないですか。アルバムでも、たとえばニュージャックスイングもあるし、ブーンバップもあるし、ドラムンベースもある。でも、そこに何らかの共通してるフィーリングがあると思うんですね。自分たちが格好いいと思う感覚の重なり合っているところというか。それってどういうものだと思いますか?


Pecori:これ、3人とも違いそうだな。

Tondenhey:うん、それぞれいこう。

Pecori:俺が共通してると思うのは、エモとかパンクに近い部分かもしれないですね。それをジャンルとして楽曲に昇華してるわけではなくて、どっちかと言うと気持ちの問題で。「これいいね!」ってブチ上がる瞬間というか。そういう感情の抑揚で制作が進むんで。

SunBalkan:俺もそこはありますね。で、その話の延長線上で言うと、別に何やっても勝手に自分らっぽくなってしまうと思ってるから、ジャンルに縛られなくてもいいと思っていて。Pecoriが言ったように精神性の部分というのはありますね。

Tondenhey:自分としては、感情が動く音って、計算では出ない音だったりするんですよ。例えばエラーで叩いちゃったビートを残すことが多いんですけど、そういうのに魔法がかかってる気がしてて。ピッチとかBPMとか、そういうものを人間性で超えちゃってる部分はずっと大事にしている。そういうのは意識してましたね。

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―皆さんが言った"ブチ上がる瞬間"みたいな感覚を、お客さんとも共有できている感じもありますか? それがあるから、ライブでもジャンルじゃなくてフィーリングで集まってきた人たちと一緒に楽しむことができるというか。そういう感じはあったりします?


Pecori:間違いなくありますね。そういう人が俺らを聴いてくれているのか、俺らがそういう人を呼び寄せてるのかわからないですけど、そこは信用したいし、信用してます。これから俺らを知ってくれる人のほうが確実にめちゃくちゃ多いですけど、今、俺らのことを知ってライブに来てくれてる人は、俺らが何やっても、「音楽」みたいな曲を作っても、それからまた全然違うことやっても、わかってくれるというか。

SunBalkan:今回の"#超音楽宣言"とか、「音楽」って曲自体も、めちゃめちゃマジでやってるっていうことを、せっかくこういう場なんで言っておきたいですね。純粋にいいものを作りたいって気持ちでやってるってことを、ぜひわかってほしいです。

―わかりました。このマインドとフィーリングの話を共有した上で、ようやく各曲の話ができる。


全員:(笑)。

決別しきれてない過去を曲に落とし込むことで、卒業するための一歩になれば

―というわけで、まずはシングル曲から聞かせてください。「I Love Ya Me!!!」はどういうふうにできたんでしょうか?


Pecori:今回のアルバムは初めての試みで、メンバー全員で集まって合宿みたいなのをして。そこで生まれましたね。ニュージャックスイングをできたらいいねっていう話はだいぶ前からしてて、じゃあ、せっかくだからこの場でそういう感じの曲を作ろうかっていう流れで、Todenheyと今MPCプレイヤーとしてサポートやってくれてるTaishi(Sato)くんのふたりでトラックを作って。

―ODD Foot Worksにニュージャックスイングは絶対合うと思うんですけど、そのアイディアはどういうところからだった?


Tondenhey:前からそう言われることも多かったし、合いそうだなって思ってて。実際やってみて、楽しかったですね。リズムがスイングしてるとラップを乗せる時もいつもとちょっと違うフロウになったりするんで。新しさを見つけてくれるジャンルなのかなって思います。

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―「卒業証書」はどうですか? 90年代のゴージャスなR&Bのポップスっぽい感じがありますけれど。


Tondenhey:これはアルバムの制作をする時に、みんなで集まってホワイトボードに仮想の曲順を書いたんですけど、そのときに俺が「SMAPみたいな曲をやりたい」という話をしていて。

―なるほど! ということは、90年代前半から半ばあたりのSMAP?


Tondenhey:あ、そうです。SMAPは大好きだったし、自分のルーツの中に完全に入っているから、それをどう昇華するかを、(勢喜)遊くん(King Gnu)とかナリハネさん(成田ハネダ、パスピエ)を呼んだりして考えていった感じですね。

―この曲はドラムを勢喜さんが叩いて、キーボードを成田さんが弾いていて。勢喜さんはライブでサポートに入っていたり、成田さんも近い関係のミュージシャンであるわけですが、そこにはどんなよさがある?


SunBalkan:個人的には、サポートでドラム叩いてもらって、そこから一緒に曲を作るっていう、このストーリー性が結構重要だなって思います。ODD Foot Worksの一員としてのフィーリングをバッチリ理解した上で、ゼロイチで曲を作るっていうとこに参加してもらえるのはやっぱり全然違っていて。フィーリングとかリズム感をわかった上でやってくれているから、言うことなしっていう。

―「Summer」はどうでしょう? この曲はどういうふうに作っていった?


SunBalkan:これはもともとTondenheyが作ったトラックに全然違う声が乗ってたんですけど、それをどうにか違う形にしてアルバムに入れたいねって話になって。で、そこから引き継いで、元のトラックはほぼ無しにしてゼロから作った感じですね。コードも付け直して、メロディーと歌詞も結構大幅に変えて。元のやつもいい曲なんですけど、全然違う曲になりました。

―この曲のチルな感じはどういうアイディア?


SunBalkan:もともとカルヴィン・ハリスをひとつのリファレンスにしてるというのはあって。で、ピアノをデモの段階から変えてないんですけど、それは不器用なものの要素として残しておきたくて。どこかで弱さをちゃんと見せて、その上で力強い気持ちを持って作ってるっていうのを表現したくて、ああなりました。


―アルバムの曲の流れで言うと、後半の「GOLD」から「燃えろよ桜」の、遅いところから速いところに行く感じがめっちゃいいなと思っていて。それぞれどんなアイディアの曲なのか、教えてもらっていいですか。


Tondenhey:「GOLD」は初期段階から3回ぐらい変更した曲で。視界が展開していくようなビートを作りたいっていうイメージがあって。自然体で作ってるので説明しにくいんですけど、とにかく自分は人よりパルスが遅い気がするんですよね。すごいゆったり生きてる気がするんです。なんか昔からそうだったって言われるんですけど。その一番気持ちいいリズムに入ってる感じがします。

―なるほど。遅いのが気持ちいいってのは、音楽だけじゃなくて、日常も?


Tondenhey:日常もです。なんか、生まれた時も、泣き声じゃなくて最初に溜め息ついて生まれたらしくて(笑)。そこからすごいゆっくりな子どもになって。今もゆっくりなほうが好きですね。いつかBPM20とかの曲とか作りたいと思います(笑)。

―「燃えろよ桜」についてはどうですか? この曲は途中でドラムンベースに展開しますが。


SunBalkan:この曲に関してはベースだけじゃなくギターもほとんど自分が弾いてて。Tondenheyが持っていない部分をアルバムの中に要素として入れたいっていう気持ちで作りました。ハードロックというか、ひずんだファンクみたいな、昔のレッチリみたいな感じを出したかった。かつ、めっちゃポップで、アニソンみたいな曲を作りたいなと思って。

―歌詞についてはどうでしょう? この2曲はどんなことを考えて書きましたか? 


Pecori:「燃えろよ桜」と「GOLD」の間で、ラグが1年ぐらいあって。「GOLD」は、1年半ぐらい前に書いてたんで、今とは思ってることも全然違うんですけど、それはちゃんと残したいなと思って。ライブで盛り上がる、渋く格好よく演奏できる曲だなと思うので、そういう情景を思って書いてますね。「燃えろよ桜」は、アルバムに「Summer」があって、あの曲は意外と秋の曲でもあるから、春の曲があってもいいなって。単純に、桜とかイルミネーションとかめっちゃ好きなんですよ。見るとうわあって思っちゃうんですけど、そういうものをちゃんと感じたまま言葉にしたいなと思って、桜っていうコンセプトで歌詞を書こうと思いました。

―Pecoriさんにはアルバム前半の曲の歌詞についても聞ければと思うんですけれど。「卒業証書」「ジュブナイルジャーニー」「Heavenly Bluetooth」という曲は、エモさが真っ直ぐに出ていると思っていて。これらの曲に関しては、どういうことを歌おうと考えていたんですか。


Pecori:このアルバムに関して、今、自分は28なんですけど、もうすぐ30になるんで、ひょっとしたらODDとしては20代最後のアルバムになるかもと思ってて。で、まあ3年も期間が空いてるし、20代の総決算というイメージもあって。なんで、「卒業証書」も「ジュブナイルジャーニー」も、学生とか10代の頃まで遡っていて。まだ決別しきれてない過去ってめちゃくちゃあるんですけど、そういうのを曲に落とし込むことで卒業するための一歩になればいいし、聴いてくれる人にもそう感じてくれる人がいたら前を向けるというか。たまにあるんですよ。ちょっと恥ずかしい思いをした過去を思い出して声が出ちゃう時とか。そういう時の手助けになる曲になればいいかなっていう。

―失ったこととか傷ついたことをなかったことにするんじゃなくて、それをちゃんと抱えたまま次に行くみたいなムードがある気がします。


Pecori:ですね。最近特になんですけど、たとえば傷ついた夜があったとしても、酒飲んで翌日になって、1週間思い出さずにいたら忘れちゃうことも増えて。傷ついた思い出すら忘れちゃうのは怖いなって思って。そういうのはちゃんと覚えていたいなっていうのもあります。

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一発当てて即時的な結果が出るよりも、ずっと音楽やってることのほうが重要

―わかりました。「音楽」の歌詞については三宅さんに聞きたいんですけど、これはどのタイミングで書いたんですか?


三宅:本当にアルバム制作期間の最後のほうですね。2、3時間で一筆書きのように書きました。最初は今年の2月ぐらいにマシンガン・ケリーの「エモ・ガール」っていう曲を、移動中に聴いてるときに、なんか、こういうポップパンクで、Pecoriがあえてラップせず〈音楽〉って叫んでて、それでコロナが収まった時にODDのライブでモッシュみたいなのが起こったら笑っちゃうくらい感動的だろうなって思ったところから始まって。で、そういう曲が欲しい、そういう曲がアルバムにあったらいいなっていうのを、メンバーに言って。そのままわりと軽いノリで「なんなら俺が歌詞書いてみようか?(笑)」なんて言ったら、メンバーが「書いてください、どうぞどうぞ」みたいな感じで書き始めたんですよね。

―これ、僕と三宅さんの関係だからあえて意地悪なことを聞くけど、クレジットに三宅さんの名前が乗るわけじゃないですか。リード曲だし、バンドの今のマインドを象徴する曲の歌詞をマネージャーが書いているという。そう見られることのリスクは考えました?


三宅:ああ、それはもちろん考えました。ペンネームとか、ODD Foot Worksっていうグループ名で歌詞クレジット入れるとかも一瞬考えたんですけど、ただもう、僕が最初は軽いノリで始まったのに結果的にこういう歌詞を書いたということは、メンバーもその状態にあるっていうことと同義っていうくらい一心同体感があって。少なくとも今の体制では一蓮托生でしかないし、照れてる暇すらないというか(笑)。「あいつ歌詞とか書いてなんなん?」って思われると想像しましたが(笑)、最終的には自分の名前で出そうって普通に思えたし、この言葉を彼らがその肉体をもって100%で表現することは、メンバーとの信頼関係も含めて全然できると思ったので。インディーズだからできたっていうのもあるかもしれないですね。お金のことも今はみんなで把握してたりするし。でも、リード曲になったのは、ほんと結果的になんです。他にも候補はいっぱいあったし。でも最後にこれができて、メンバーからもらったものとか、メンバーと一緒に体験したことが全部入ってるような歌詞になったし、ならざるを得なかったから。この2年半くらいでご多分に漏れず僕らもコロナでライブが何度も飛んだりとか、あとは──音楽に人生のすべてを捧げていたような大切な友人たちが亡くなったこともそうですし、メンバーと出会った下北沢GARAGEが昨年末に閉店してしまったこともそう。そのことに対して、何を感じて、どんな言葉でその思いを共有するのか。もう全部、メンバーと一緒に体験していたし、結局それがすべて歌詞の言葉になって。う〜ん、なんて言ったらいいんだろう?

―三宅さんはマネージャーとは、ちょっと違う肩書きかもしれない。


三宅:はい(笑)。僕の立場自体、やっぱ普段やってることも含めて、一般的なマネージャーからは外れてるし。車の運転もできないし(笑)、マネージャーとして欠落してる部分はいっぱいあるんですけど、でも僕が一緒にやってるからこそ、喜びも悲しみもメンバーとダイレクトに共有できたりしてるのかな。間違いなく歌詞を書くよりは車の運転ができたほうがいいんですけどね(笑)。

Pecori:マネージャーって立場の人が歌詞を書いているのは面白いですけど、そこに「これヤバくない?」みたいな気持ちはないですね。普通に、うちのチームのひとりがみんなの気持ちを代弁して書いてくれたって感じです。

三宅:うん。そこに曇りは全然ないですね。

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―了解です。最後にもうひとつ、これは三宅さん含めた全員に聞きたいんですけど、今回のアルバムはTokyo Invaderという自主レーベルを設立してのリリースで、FRIENDSHIP.がデジタルリリースをサポートしている。こういう仕組みはODD Foot Worksみたいな、インディペンデントだけど孤高じゃない、音楽仲間の沢山いるようなグループにフィットしているような感じがあるんですけれど。みなさんとしてはこの体制になってどうですか? 自分たちにフィットしてる感じはありますか?


三宅:めちゃくちゃあるよね?

SunBalkan:正直、始まったばっかなんでまだわかんないとこのほうが多いですけど、普通に(FRIENDSHIP.の)タイラ(ダイスケ)さんにはお世話になってるしめちゃめちゃ信頼できる人だし、それだけでグッドって感じです。自分たちだけじゃできなかったこととか、やりたいけどどうやってやるかわからないことを相談できる人がいるっていう。

Pecori:今思ったのは、やっぱり仕組みを知ってないアーティストって説得力ないと思うんですよ。甘ちゃんのまま音楽やってるより、流通の仕組みだったり、お金の動きとか制作の過程とか、そういう構造を全部知った上で出す音楽っていうのは、やっぱ強いと思うんで。そこをちゃんと理解した上で演者をやれてるのはすごい大事だと思う。

Tondenhey:基本はインディーズでやっていて、それを手伝ってくれる会社というイメージで。だから、何をやってくれて、何をやってくれないのかっていうことは、いちばん気にかけてることなんですけど、やっぱり、いろんなプレイリストに入れてくれたり、ストリーミングでの再生回数を伸ばしてもらえるっていうのはすごく感謝してますね。今の自分たちと倫理観とも合っていて、居心地がいいですね。

三宅:やっぱりアグリゲーターはあくまでデジタル流通してくれるサービスなんで、そこまで多くを我々が期待すべきではないっていう考え方も根本的にあって。だから正直、ここまで親身になってご尽力いただけているのはちょっと想像以上だったんですよ。少数精鋭で、皆さんの熱量がめちゃくちゃ高くて。本当にアーティストのことを、音楽文化のことを考えて運営されてるんだなっていうのはすごく思いましたね。ちょっとびっくりしているぐらいです。

―わかりました。これは個人的な感想で、繰り返しになっちゃいますけど、なにしろ「音楽」っていう曲と"#超音楽宣言"がすごくよかったです。「ODD Foot Worksって結局何をやりたいの?」っていう問いへの、逆ギレ的な、でも一番の回答になってる。


三宅:確かにそうなんですよね。そこだし、それで僕らも繋がってるし。

―三宅さんも言われたりするでしょ? 「ODD Foot Works、なんでもできるし格好いいけど、結局何をやりたいの?」みたいな。


三宅:言われますね(笑)。僕の基本的な考え方としては、一発当てて即時的な感じで結果が出てそのことで派生するノイズに人生を翻弄されるよりも、メンバーが一生自分が表現したい音楽をやってることのほうが重要だとは思ってます。でも、メンバー自身は若い今のうちに大きな結果が出たほうがいいと間違いなく思ってるし、もちろん、僕も売れたいっていう気持ちは持ってます。言い換えれば、本当に多くの人にこのアルバムを届けたいですよね。今、Pecoriが一発当てたいと本気で思ってる顔してますね(笑)。

―いけると思いますよ。


Pecori:届いてほしいし、本気で聴いてほしい。一発当てようと思ってます。

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文:柴那典
撮影:岩澤高雄

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■期間
2022年9月28日(水)19:00〜2022年10月9日(日)23:59まで

■当選発表
2022年10月12日(水)予定

■注意事項
※アカウントが非公開の投稿は応募を無効とさせて頂きます。
※当選者にのみDMもしくはメッセージでご連絡します。DM・メッセージの受信機能を有効にして頂くようお願い致します。
※当選のご連絡から2日以内にお返事がない場合は当選を無効とさせて頂きます。
※選考経過および結果に関するお問い合わせには一切お答えできません。
※プレゼントの当選権利は、当選者本人に限ります。第三者への譲渡・転売・質入などはできません。

RELEASE INFORMATION

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ODD Foot Works「Master Work」
2022年9月28日(水)
Format:Digital
Label:Tokyo Invader

Track:
1.ODD Knows
2.卒業証書
3.ジュブナイルジャーニー
4.Heavenly Bluetooth
5.SEE U DAWN
6.I Love Ya Me!!!
7.GOLD
8.燃えろよ桜
9.Summer
10.音楽 

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LIVE INFORMATION

ODD Foot Works " Master Work TOUR 2022"

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2022年10月6日(木)
愛知:名古屋CLUB QUATTRO
OPEN 18:15 / START 19:00

2022年10月7日(金)
大阪:ユニバース
OPEN 18:15 / START 19:00

2022年10月14日(金)
福岡:BEAT STATION
OPEN 18:15 / START 19:00

2022年10月20日(木)
東京:Spotify O-EAST
OPEN 18:15 / START 19:00

チケット一般発売中!


LINK
オフィシャルサイト
@oddfootworks
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