SENSA

2023.05.05

現在のインディーロックシーンを牽引するメンバーが集結して生み出す「ポップス」とは?──Guiba、結成の経緯から連続リリースまで語り尽くす

現在のインディーロックシーンを牽引するメンバーが集結して生み出す「ポップス」とは?──Guiba、結成の経緯から連続リリースまで語り尽くす

South Penguinのアカツカ(Vo/G)、同じくSouth Penguin のサポート等で活動する礒部拓見(Dr) 、Helsinki Lambda Club、Group2の熊谷太起(G)、odolのシェイク ソフィアン(B)というメンバーによって2022年夏に結成された「ポップスバンド」、Guiba(ギバ)。
3月22日配信のファーストシングル「愛の二段階右折」を皮切りに、4月14日にセカンド「養殖」、5月5日には、シンガーソングライターのましのみを迎えた「涙 feat.ましのみ」を次々と発表し、デビュー以来活発なリリースを続けている。
現在のインディーロックシーンを牽引する各メンバーが新たに集って作り出す「ポップス」とは、いったいどんなものなのか。バンド結成の経緯から、楽曲制作、「ポップス」への距離感、歌詞に滲む歌謡性まで、様々なトピックにわたって話を訊いた。

M1015454.jpg
いつか柳葉敏郎さんの顔ドアップのジャケでアルバムを作りたい

―Guibaはどんな経緯で結成されたんですか?


アカツカ(Vo/G):去年の6月、サザンオールスターズの「シュラバ★ラ★バンバ」を聴きながら街を闊歩していたら、突然ひらめいたんです。〈憧れのPARADISE☆PARADISE〉っていうフレーズを聴いて、桑田(佳祐)さんから「お前も、もっと楽しいことやっちゃえよ!」と言われている気がして。
思えば、桑田さんもサザン以外にKUWATA BANDやソロもやっているし、South Penguinだけにこだわらなくてもいいんだよな、って気づいたんです。

―まさか、サザンの曲がきっかけだったとは。


アカツカ:昔からサザンは大好きでよく聴いているんですけど、その時の気分とシンクロして、いきなり尻を叩かれた気がしたんです。
デジタルネイティブ世代らしく、その日のうちにインスタのストーリーに「バンドやりたいわー」って投稿したんです。そしたらありがたいことにみんなからすぐに反応があって。なかには複数の人からダブって応募が来たパートもあって、やむなく「ご期待に沿えず申し訳ございません。これからの貴殿のご活躍をお祈りしています」と返信するような事態になりました(笑)。

熊谷太起(G):僕もそのインスタストーリーを見て、本当に軽い気持ちで「やろうよ」って送りました(笑)。アカツカとは前から仲良かったし、僕のやっているバンドとSouth Penguinも対バンしたことありましたしね。

シェイクソフィアン(B):僕はちょうど友達のバンドの解散ライブを観て「ああ、今以上にもっと音楽をやりたい、挑戦したいなあ」って思っていたところで、アカツカさんのその投稿を目にしたんです。だから、まさにジャストタイミングっていう感じで。でも、South Penguinは前からファンだったけどアカツカさんとは一度面識があるくらいだったので、2時間くらい「俺ベースやりたいです!」って送るかどうか悩んで、思い切って送りました。アカツカさんと一緒にやったら絶対面白いことになるな、という予感がありました。

磯部拓見(Dr):僕は以前からSouth Penguinのサポートドラマーもやっていたので、アカツカさんに誘われて自然と参加しました。以前からSouth Penguinではタムを叩くのを制限されたり、いろいろ制約が多かったから(https://www.ele-king.net/interviews/007046/)、「おっ、こっちのバンドなら好きに叩けそうだな」って思って(笑)。

M1015466.jpg

―曲作りはどんなふうに進めていったんでしょうか?


アカツカ:僕、曲作るのめちゃくちゃ早いんですよ。バンド結成の話がまとまったその日のうちに、一気に4曲デモを作ってますからね。もともとあったストック曲を使いまわしたとかじゃなくて、全部書き下ろしです。

シェイク:速攻でデモが送られてきて、これはとんでもないバンドに入っちゃったかもしれない、と戦々恐々としました(笑)。

アカツカ:South Penguinで活動する傍ら、South Penguinではできないようなポップスに振り切った曲をやってみたいなとずっと思ってたんですよ。たまにそういう曲が出来てもSouth Penguinには合わなそうという理由でボツにしてたりして。だから、このバンドの発足が決まった時点で、自分でも驚くほどスラスラと曲が出てきました。

―バンド名の「Guiba」というのはどういう意味なんでしょう?何か深い由来がありそうな文字列ですが。


アカツカ:メンバーが揃ってからバンド名を決めるためにみんなで集まって飲み会をやったんですけど、なかなかいい案が出なくて悩んでいたんです。一般名詞を使うと検索に引っかからないし、ダブリも気にしなくちゃいけないし、かといって奇をてらいすぎるのもダサい。一通り出し尽くして、合間の雑談の中で思い出したのですが、以前、普段から仲良くしているDos Monosの没くんとたまたま一緒に熱海の温泉へ旅行に行く機会があったんですけど、その時泊まった旅館のイメージキャラクターが柳葉敏郎さんで......。

―え!?その「ギバ」なんですか?


アカツカ:はい。ギバちゃんです。ちょうどその少し前にNHKの『ファミリーヒストリー』に柳葉敏郎さんが出ている回を観たんですけど、それがめちゃくちゃいい回で超感動したんです。そういうことも含めて柳葉さんのことがぼんやりずっと頭の中にあって、そのインスピレーションから「ギバ」って提案したら、満場一致で「これだ!」と。
やっぱり言葉の響きのキャッチーさ、かっこよさ。一世風靡セピアの大ファンとか音楽性に影響を受けているとかそういう感じじゃないですけど、タイミングがハマってビビッとインスピレーションを受けたというか。

M1015479.jpg

―すごいバンド名の付け方だ......。


アカツカ:いつか僕らが売れたら、FUNKY MONKEY BΛBY'Sみたいに柳葉さんの顔ドアップのジャケでアルバムを作りたいです!
思うんですけど、人様の名前を元にバンド名をつけて活動する限り、ダサい音楽はやれないし、炎上して変な形で話題になるとかは絶対できないですね。常に、「こんなことをやったら柳葉さんはどう思うかな...?」って立ち止まりながらその名に恥じないようにしないと......。

―大胆なのか生真面目なのかよくわからないけど......いつか柳葉敏郎さんに認知してもらえるといいですね(笑)。


アカツカ:がんばります。

「身の丈にあったポップス感」に落とし込むことができた

―Guibaはどんな音楽性を目指して始動したんでしょうか?


アカツカ:最初はポップスというか、歌謡曲的なものも狙って明確にそういう路線で行こうと考えていたんです。ある曲ではグループサウンズ風のアレンジを試してみたりとか。けど、いざやってみるとカッコよく仕上げるのがめちゃくちゃ難しくて。今の時代に正面からああいう音楽をやるとなると、再現技術もそうだし、イメージ作りからしてすごく難しくて。

シェイク:試しにやってみたら、完全にダサい感じになっちゃいましたよね(笑)。

アカツカ:ファーストシングルを出す前に抜けちゃったんですけど、当初はキーボード担当のメンバーもいて、別の曲で1980 年代のニューミュージックとか歌謡曲を意識して思い切りベタな音色のシンセを入れてみたり。それこそ、ヴァン・ヘイレンの「ジャンプ」みたいな。けど、それがもうヤバいくらいダサくて(笑)。それこそ、ギバちゃんに合わせる顔がないって話です。

熊谷:結局、無理に歌謡っぽさを狙わずに、一回フラットな状態でアレンジを考え直しました。自分たちの得意とするインディーロックっぽい方向性でやってみたらそっちの方がしっくり来るものになって、やっぱこの感じだよね、と。そうやって方向転換後にはじめて形になったのがセカンドシングルの「養殖」です。

M1015488.jpg

―「養殖」は既にリリースされている3曲の中でも、もっともコンテンポラリーなアレンジが施されていますね。リズムもちょっとヒップホップ調だし。


磯部:そうですよね。自然とこのアレンジに落ち着いていった感じです。

―他の曲含めて、王道のポップス的なコード進行とこういう現代的なアレンジが融合しているのがとても魅力的に聴こえます。


シェイク:まだ未リリースのものも含めて、Guibaの曲っていわゆる「Ⅱ-Ⅴ-Ⅰ(ツーファイブワン)」のコード進行がすごく多いんですよ。

アカツカ:なにその横文字?ちょっと僕には理解できない話になりそうなんでこの時間にトイレ行ってきます(笑)。

シェイク:(笑)。はじめのうちは問題なく対応できたんですけど、自分のツーファイブワンのフレーズのストックが枯渇してきてしまって、徐々に違ったパターンのフレーズを考え出すようになりました。逆に、あえてベタベタな伴奏をしてみたりとか。そういう意味では、ベースに関しては、凝った部分もあるけど、一方で開き直って王道なアレンジも取り入れているという感じですね。

磯部:僕も、いかにもプレイヤー然とした、エゴを押し出したリズムパターンなりフィルは抑えているつもりです。それより、少し「渋味」みたいなものが出ていたほうがいいかなと思ってリズムを作っていきました。それと、念願だったタムの音は実際に結構入れています(笑)。

―レコーディングはどうやって進めていったんですか?


アカツカ:あくまでDIYなバンドなんで、まずお金をかけないのを前提として......ドラムも打ち込みですし。

―え、そうなんですか!てっきりスタジオで生で叩いているものだと思ってました。


磯部:僕がMIDIで打ち込んでプラグインに通してもらってます。

シェイク:ベースも宅録です。最初にMIDIでデモのフレーズを作って、データをやりとりしながら最後に生のベースを入れるっていう流れでした。

アカツカ:South Penguinの場合、全てセッションで作っていくのが基本なんですけど、Guibaの場合は各自が持ち帰って録音するスタイルの方がスムーズに進みますね。昔のポップスを志向すると言っておきながら、制作プロセスはかなり現代的なんですよ。

熊谷:コロナがあったりして、そういうやり方でもいいものを作れるようになってきたっていうのもあるかもしれません。

M1015621.jpg

―ファーストシングルの「愛の二段階右折」も、先程からキーワードとして出ている「ポップス」感とインディーロック的な要素が、とても良いバランスで両立していると感じます。


アカツカ:この曲はかなり意識的にA〜B〜サビみたいなポップソング的構造に沿って作ってみました。

―ちょっと1980年前後の松任谷由実作品の匂いを感じたりも。


熊谷:わかります。みんな共通して好きですからね。

アカツカ:実際かなり参考にしています。でも、当時のユーミンの曲って、アレンジからバンドの演奏から何から何まで超高度じゃないですか。僕らがそれをそのままやろうとしても技術的に難しいし、仮に似せることが出来たとしても、結局スケールダウンしただけのつまらないものになってしまうと思っていて。だから、一度僕らの語法で咀嚼してみるつもりでやりました。最終的にはちゃんと「身の丈にあったポップス感」に落とし込むことができたと思います。

熊谷:今までの自分たちの蓄積が、結果的にいいエッセンスになっている気がしますね。

Spotifyを見ると50代の人の再生回数が飛び抜けて多いんです

M1015523.jpg

―歌詞の面では、「愛の二段階右折」も、配信されたばかりの「涙 feat.ましのみ」も、今の時代のインディーロック系の文化圏では珍しいくらいの素直なラブソングですね。


アカツカ:South Penguinより分かりやすい歌詞にしようというのは最初に決めていました。South Penguinでは恥ずかしくてやってなかったようなストレートなことをやれるというのが、このバンドなので。

―一人称が女性の目線の歌詞というのも、男性4人のインディーロックバンドとしてはわりと珍しい気がします。


アカツカ:実はそこはあまり意識せずにそうなった感じなんです。なんだろう......こういうストレートな気持ちを描こうとしたときに、男目線だとどうしてもキモみが出てきてしまうというか。そういうのはむしろSouth Penguinでやっていて、あっちでは「ガチ恋おじさん」的なマインドを肯定しているつもりなんですけどね。こっちではもっと、可憐さや儚さみたいな感覚を言葉にしたかったんだと思います。

―今のポップスでは、「男性が女性の視点を借りて歌う」みたいな表現ってわりと避けられがちな気もしていて。下手をすると、「男性に都合の良い女性性」みたいなものの写し鏡になってしまう可能性もあるじゃないですか。ぶっちゃけ言えば、男の煩悩をそのまま歌うという行為よりも、もっと気持ち悪い可能性すらあるっていう......。


アカツカ:ああ、なるほど〜。

熊谷:確かに、そういう捉え方をされる場合もあるかもしれないですよね。

アカツカ:やばい、急に不安になってきたぞ(笑)。

―でも、Guibaの曲には不思議とそういう感覚が希薄なのが面白いと感じました。それこそ、黄金時代の歌謡曲における名曲たちと同じように、言葉による様々な描写がドラマ装置としてきちんと機能していて、むしろ作家側の自己意識が漂白されている感じがします。たとえば、「木綿のハンカチーフ」とかは、まさしくそういう美しさがあるわけですけど......。


アカツカ:いや〜、その比較は恐れ多過ぎますけど......確かに、「自分の願望を出す」、というより、何重にも重ねられたフィルターを通じてある登場人物の姿を描写する、という感覚はありますね。シンガーソングライターの方が自ら歌っている言葉にも、もちろん惹かれるんですけど、いろんなプロフェッショナルを介して形作られる架空の女性性みたいなものにもグッと来るんです。

M1015534.jpg

―「涙 feat.ましのみ」では、ましのみさんをゲストシンガーに迎えてデュエットしていますよね。デュエットという形態にも、ちょっと歌謡的なカルチャーへの意識を感じさせます。


アカツカ:カラオケで、❤︎で歌詞が表示される、あの感じですよね(笑)。ましのみさんの声は本当に素晴らしいですよね。昔から女性のウィスパーボイスが大好きなんです。ヴォーカルのディレクションもやらせてもらって、すごくいい経験でした。

―「愛の二段階右折」のジャケット写真も、ストリート感もちゃんとあるんだけど、どこか70年代的というか、フォーク〜ニューミュージック的な感覚があります。


シェイク:この写真は僕が渋谷の円山町で撮影したものを使っているんです。あの辺りって、再開発の進む渋谷の中でもエアポケット的に昔の雰囲気が残っていて、とてもいいんですよね。

―いろんな面で、Guibaの音楽は普段インディー系を追っている20代〜30代の人たちに限らず、もっと若いリスナーにも響きそうだし、逆に、年配の方にも支持されそうな気がします。


シェイク:老若男女に聴いてもらえると嬉しいですね。

アカツカ:僕はやっぱり若い女性、特に女子高生や女子大生に聴いてもらいたい。それこそ、TikTokとかでバズってくれたら最高でし、はっきり言えば、めちゃくちゃ売れたい!

磯部:僕は、自分たちの親世代、例えばカーステレオで今井美樹さんを聴きながらドライブしていたうちの両親のような人たちにもぜひ聴いてもらいたいと思います。どういう感想を持ってもらえるのか、とても気になる。

熊谷:それで思い出したけど、「愛の二段階右折」のSpotifyの再生データを見ると、意外と僕らの別のバンドを聴いてくれているような20代〜30代の人たちだけじゃなくて、50代の人の再生回数が飛び抜けて多いんですよ。

シェイク:え!そうなの?かなり意外。けど嬉しいですね。

―やっぱり、Guibaの「ポップス」感、もっといえば「ネオニューミュージック」な感じを嗅ぎ取っている人が多いってことなのかもしれないですね。


アカツカ:おもしろいな〜。

―今後の活動も楽しみにしています。


アカツカ:ありがとうございます。とりあえずは6月にもまた違ったタイプの曲をシングルでリリースするつもりです。既に他にも曲はたくさんあって、順調にいけばそう遠くない将来にアルバムもリリースできると思うので、ぜひ楽しみにしていて下さい。

M1015506.jpg
取材・文:柴崎祐二
撮影:マスダレンゾ

RELEASE INFORMATION

Guiba_jk_1200_namida.jpg
Guiba, ましのみ「涙」
2023年5月5日(金)
Format:Digital
Label:Guiba

Track:
1.涙

試聴はこちら

Guiba_jk_1200_omekashi.jpg
Guiba「おめかし」
2023年6月2日(金)
Format: Digital
Label:Guiba

Track:
1.おめかし

Guiba_jk_1200_namida.jpg
Guiba「涙 feat.ましのみ / おめかし」
2023年8月予定
Format: 7inch

Track:
1.涙 feat.ましのみ
2.おめかし


LINK
@Guiba_band
@guiba_band
Official YouTube Channel

気になるタグをCHECK!