2022.08.19
「RUSH BALL 2022」出演の2バンドが関係性から意気込みまで語りつくす!谷口鮪(KANA-BOON)×石原慎也(Saucy Dog)対談
このたび、初日のトリを飾るKANA-BOONの谷口鮪(Vo./Gt.)、そして、同じく初日の"トリ前"に登場するSaucy Dogの石原慎也(Vo./Gt.)の対談が実現。フェスに対する思いと、今年のRUSH BALLへの意気込みについて聞いた。
まるで兄と弟? ともに大阪発のロックバンドの出会い
─谷口さんと石原さんの普段の交流って、どんな感じなんですか?
谷口鮪:手のかかる後輩ですね。
石原慎也:やめてください(笑)。
谷口:(笑)仲いいですよ。
石原:よくしてもらってます(笑)。KANA-BOONが拠点にしていた(三国ヶ丘)FUZZには僕らもお世話になってたんですけど、ライブハウスのスタッフの方からいろんな話を聞いていて。「同じステージに出てたんやな」って距離の近さを感じてました。
谷口:Saucyの拠点ってどこだった?
石原:最初は(アメリカ村)DROPですね。そこでコア系やメタル系のバンドと一緒にブッキングされて、めちゃくちゃ鍛えられて(笑)。
谷口:ハハハ(笑)。
石原:その後はROCKTOWN、(LIVE SQUARE)2nd LINEですね。
谷口:僕らと同じ界隈やな。時代がちょっと違うけど。
─谷口さんがSaucy Dogを知ったきっかけは?
谷口:「いつか」を聴いたのが最初だと思いますね。ここまで人を惹きつける声、カリスマ的な声のボーカリストはしばらく不在だった気がするし、とにかく曲がよくて。歌の時代がまた来るんだなと思ったし、「すげえ若手が出てきた」という印象でした。
石原:うれしいです。......今、鮪さんと初めて会った時のことを思い出しました。
谷口:いつやった?(笑)。
石原:福岡の「RockDaze!(2017 Xmas Special)」です。会場の反響が気になってしまって、思うようなライブができなくて、打ちひしがれてたんですよ。そのときに初めて鮪さんとお会いして、いきなり「みなさんはどうやってるんですか?」って質問して(笑)。
谷口:思い出した(笑)。最初からけっこうフレンドリーやったよな。
石原:いやいや、緊張してましたよ。最近は鮪さんの家にいって飲んだりもしていて。めっちゃいいお兄ちゃんという感じです(笑)。
谷口:いちばん面倒見てます。
石原:うれしい(笑)。
フェスに思いを馳せ、経験を積んできた2バンドにとって「フェスとは?」
─出会いの場はやはりフェスだったんですね。バンドで出演する前は、フェスに対してどんなイメージを持ってました?
谷口:フェスに遊びに行ったことはほとんどないんですよ。高校時代からKANA-BOONをはじめて、雑誌のフェス特集とかを見ながら、「俺らも出たい」と思ってましたね。自分たちがステージに立つまではフェスに行かないって決めて。
石原:僕は、コンサートスタッフのバイトをやってたんですよ。
谷口:そうなんや?フェスのバイト、大変そう。
石原:駐車場がヤバイんですよ。下がコンクリートでめちゃくちゃ暑いし、夜は電灯に虫がたかって。ただ、なぜか僕は2か月くらいでバイトのチーフになったんですよ。会社の人に気に入られて。
谷口:かわいがられるタイプか(笑)。会場でバイトしていた人がバンドでフェスに出るって、夢があっていいね。
石原:そうかも。バイトしているバンドマンもいると思うし、ちょっとでもそういう人たちの希望になれたらいいですね。僕も当時「フェスに出たい」って思ってたし、悔しさもあったので。
─KANA-BOONがフェスに出始めたのは、2013年からですね。
谷口:(メジャーデビューした)最初の年からいろんなフェスに呼んでいただいて。いちばん最初は「METROCK」で、小さいステージだったんですけど、入場規制がかかって。柵の向こうにもたくさん人がいて、「(バンドをテーマにした漫画)『BECK』のワンシーンみたいやな」って感動しました。すべてのフェスが印象に残ってるし、どのステージでもずっと感動してましたね。その後、どんどんフェスの数が増えて、自分たちの向き合い方も少しずつ変わってきて。"フェスの出順で自分たちの置きどころを探る"みたいなところもあるし、責任感も強くなってきましたね。
─なるほど。Saucy Dogのフェスの思い出は?
石原:"野外、炎天下"の夏フェスでいえば、2018年の「MURO FESTIVAL」ですね。トップバッターで5曲くらい演奏したんですけど、全部歌詞を間違えちゃったんですよ。
谷口:緊張で?
石原:はい。はっきり覚えてるんですけど、1曲目の「ナイトクロージング」でいきなり歌詞を間違えて。「やばい!」って焦ってたら、その後の曲も間違えまくって。トップバッターって重要だし、どうしても緊張しちゃうんですよね。
谷口:わかる。俺らもトップバッターをやらせてもらうことが多かったから。
石原:しかも次の日が(福岡で開催の)「NUMBER SHOT」で。当時、俺しか免許がなかったから、ひとりで16時間くらい運転して会場まで行って。楽しかったけど、体力的にはかなりハードでした(笑)。
─フェスに出演するときって、普段のワンマンや対バンのときのテンションとは違いますか?
石原:フェスは"一部"になるイメージなんですよ。フェス全体のことを考えるし、どうしたらみんなが楽しんでくれるかを意識しているというか。
─他の出演バンドに対するライバル心とかではなく?
石原:それはないですね。だって、お客さんが楽しんでくれるのがいちばんじゃないですか。それがフェスの在り方だし、自分たちのやるべきことなのかなと。
谷口:"フェスの一部"という感覚は確かにありますね。"みんなで作る1日"という感じは、出演者全員が持ってるんじゃないかな。自分たちに関して言えば、最近ようやく闘争心が芽生えてきて。以前は「全部持っていってやる」とか「他のバンドを食ってやる」みたいな気持ちは全然なかったんですけど、今は「負けたくない」と思うようになりました。30代に突入して、なぜか20代前半みたいな感覚が自分たちのなかで生まれてきてるのが面白くて。KANA-BOONにはギラギラしたイメージがなかったと思うんで、そこは変わってきてますね。
石原:そうなんですね。......俺、さっきウソつきました。
谷口:(笑)。
石原:フェスに出て、前のバンドがいいライブをしてると、「俺らはもっといいライブをやる」って思ってしまうので。もちろん悔しい思いをしたこともあるし。
谷口:同年代のバンドだと、余計にそう思うよな。フェスに出てる時点でいいバンドなのは当たり前で、それを越えてくるような人たちが集まってるからね。
「RUSH BALL」に刻まれてきた物語と、高まる期待
─「RUSH BALL」については、どんなイメージがありますか?
谷口:(「RUSH BALL」が開催される)泉大津は僕らの地元に近いし、"身近なフェス"という印象ですね。規模は大きいんですけど、いい意味で手作り感があって、居心地がいいんですよ。あと、作り手のみなさんの顔が見えるのもよくて。どういう人たちが開催していて、どんなチームが運営しているかがわかるって、バンドにとってはすごく大事で。「RUSH BALL」はまさにそういうフェスだし、お客さんも含めて、「みんなでいいフェスを作っていこう」という雰囲気がある。ひとつの理想形だし、大好きなフェスですね。
石原:確かにどんな人がやってるのかがわかると、自分たちも気持ちが入りますからね。「RUSH BALL」に行くと、いろんな人が声をかけてくれるんですよ。最初に出たのは2017年ですけど、ずっとよくしてもらってます。
─今年の「RUSH BALL」の1日目(8月27日)は、KANA-BOONがトリ。Saucy Dogはトリ前に出演。熱いですね!
石原:責任重大ですね......。
谷口:でも、これは「RUSH BALL」からのメッセージじゃない?
石原:どういうことですか?
谷口:この並びに意味があると思うんだよね。自分たちのことで言うと、最初に出させてもらった2013年は、クロージング・アクトだったんですよ。トリのサカナクションが終わった後、帰っていくお客さんに向けて演奏して。それから9年経って、自分たちがメインステージのトリを担うのはストーリーがあるじゃないですか。あと、27日のラインナップは僕らの世代のバンドが中心になっていて。これは僕自身の希望でもあるんですけど、このメンツで10年先、20年先もやれていたらカッコいいなと。なので今回の「RUSH BALL」は、この世代の代表みたいな気持ちでやろうと思ってます。このフェスのトリを張れるバンドだという自信もあるし。
─その前にSaucy Dogがいるのも、すごく意義がありますね。
石原:なんでプレッシャーかけるんですか(笑)。
谷口:(笑)でも、まさにそうで。この日はキュウソネコカミ、SHISHAMO、go!go!vanillasも出演するんですけど、"キュウソ、SHISHAMO、バニラズ、KANA-BOON"は2014年に「列伝ツアー(スペースシャワー列伝 JAPAN TOUR)」を回ったメンツなんですよ。実は、この4組がフェスで一緒になるのは初めてで。
石原:え、そうなんですか?
谷口:うん。そのなかにSaucy Dogが入ってるのは、「RUSH BALL」に"次世代につなげていきたい"という思いがあるからじゃないかなって。
石原:なるほど。今の話を聞いて、さらに気合いが入ったというか、背中を叩かれている気分になりました。
─同じ日には、神はサイコロを振らない、マカロニえんぴつ、ハンブレッダーズなども出演します。Saucy Dogとしても、ロックバンドとしての魅力を伝える絶好の機会じゃないですか?
石原:そうしたいですね。プレッシャーもありますけど(笑)。
谷口:大丈夫でしょ。今Saucy Dogはすごく注目されてるし、いろんな意見もあるだろうけど、いい顔して歌ってるから。
─オーディエンスにとっては、このご時世のなか、フェスが開催されること自体が喜びでしょうし。
谷口:そうですよね。そこも、「RUSH BALL」はずっとがんばってたんですよ。2020年、2021年も開催して。
石原:柵に黄色のテープが付けてあって、「この位置で観覧してください」って。
谷口:右も左もわからない状態でも、(コロナウィルスの感染)対策をしながら開催してくれて。そういう意味でも特別なフェスなんですよね。ここ2年はお客さんも「ちゃんと対策しないと」という義務感があったと思うんですけど、今は、それも含めて楽しめるようになってる気がして。
石原:ぜひ、その場で鳴らされる音楽を楽しんでほしいです。俺もKANA-BOONのステージは絶対に観ます!
谷口:俺も頭から会場にいます。あとはもう、「みんな、最後まで残って」というだけですね(笑)。残ってくれさえすれば、あとは俺たちに任せてほしいし、盛大なステージにするので。
石原:みんな最後までいると思いますよ。トリのバンドを見ないと、フェスに参加したことにはならないので。
─めちゃくちゃ期待してます!ちなみに石原さん、フェスのときはグッズのTシャツを着てステージに上がるそうですね。
石原:はい。「RUSH BALL」はこのTシャツ(胸元にギターをモチーフにした刺繍が入ったTシャツ)を着ようと思ってて。ここに刺繍されてるテレキャス、俺のヤツかな(笑)。
谷口:みんなのテレキャスや(笑)。
石原:(笑)Saucy DogのTシャツは、ドラムのせと(ゆいか)が中心になってデザインしてて。たまに俺もイラスト描いたりしてます。鮪さんもイラスト描きますよね?
谷口:俺が描けるのは古賀(隼斗/Gt)のイラストだけ(笑)。KANA-BOONのTシャツは事務所のデザインチームにお願いしてるんですけど、今後は自分も参加したいと思ってます。
取材・文:森朋之
撮影:山川哲矢