2022.07.11
その終演後、楽屋でインタビューを実施。古舘佑太郎(ギター・ヴォーカル)、加藤綾太(ギター)、森の3人に、ここまでの新体制の手応えと今後の展望を聞いた。
―ライブおつかれさまでした! Ginza Sony Parkでの「Park Live」、雰囲気良かったですね。
加藤:ロックバンドっぽい感じでしたね。
―ガレージバンドっぽいというか。
加藤:文字通り駐車場ですからね(笑)。
古舘:銀座ってライブハウスないし、変な言い方ですけど、本当縁がない街だったから面白かったです。地上ではあんなハイセンスな人たちが歩いている地下で俺らがワーッてやってたって、ちょっとした映画みたいな世界ですよね。
―THE 2としては2月に新体制を発表して、4月に初ライブやって。まだライブとしては10本ぐらい?
加藤:10本やってないぐらいですね。
―どうですか、ここまで。
古舘:怒涛でしたね。その中でドラムの(歌川)菜穂ちゃんが産休に入るっていうタイミングもあったんで、一貫している感じはしないんです。不思議な感覚ではあります。でも楽しいですね。過去曲と、今僕たちが新しく向かいたい方向があまりにも違うので、どう中間点を取るかみたいな難しさもありますけど。
森:うん。THE 2としてまだ固まりきってないところもあって。それを楽しみながらやっています。過去曲は今まで通りのやり方でやりますけど、新しい見せ方の部分はこれからまだまだ模索していきたいなっていう感じです。
加藤:ドラマーが違うだけでこれだけライブの雰囲気も違うんだなっていうのも楽しめている最中ですね。サポートも、何人か予定している感じなんですけど、あまり固定観念を作らないようにやっていこうと思っています。
―メンバーが加入から数ヶ月で産休に入るというのもあまり聞いたことがないので驚きましたが。
加藤:1人1人の人生をちゃんと考えてくれる職場なので(笑)。
古舘:そう。優良企業を目指しているので(笑)。
―THE 2になって、それまでのバンドライフと何が一番違いますか?
古舘:客観的にマネージャーとか会社の人たちに言われるのは「こんな4人が4人みんな喋るバンドいない」って。打ち合わせでもみんなが何か意見を言ってみんなが主張してくるのが面白いらしいです。確かに、サラバーズは僕の1トップのバンドだったし、2の4年間は僕とPちゃん(加藤)の2トップだったけど、今は4トップでやっている感じなんです。それはめちゃくちゃ理想的な、求めてたことでもあったんですよね。
森:各々いろんなバンドをやってきて、その中でみんなよかったこともあればうまくいかなかったこともあって。それをちゃんと吸収して大人になって今このバンドをやっている感じがするんです。大人なバンドというとあれですけど、ちゃんと各々のことを考えてやれている気はします。すごくやりやすいし楽しいし、いろいろ話が早い。
加藤:古舘くんとはソロ時代から一緒にやっているんですけど、人の話を僕も古舘も聞けるようになってきましたね(笑)。特にこのメンバーはよく喋るし、自分たちにない意見をくれるし、それをお互いに尊重できるし。メンバーの状態としてはめちゃくちゃコンディションがいいと思います。
―バンドをやっているという意味では同じだけど、全然違うことをやっているような感覚もある?
古舘:本当にそうです。競技が違う感じがします。人の意見に自分が合わせてみて、そこで自分がどう立ち振る舞えるかという楽しさも覚えましたね。前は自分がやりたいことをやることが個性だと思っていたんですけど、今は人に色を塗ってもらってもにじみ出ちゃうものが自分の色なのかなって考えが変わりました。
―確かに"恋のジャーナル"の曲調とか歌詞の世界観とか、あの「メガ古舘」もそうですけど、ああいうものって今までの古舘くんの中からは出てこなかったものだと思うんです。それを自分たちのものとしてやれているという感じがすごく新鮮に映ります。
古舘:"恋のジャーナル"はもともとPちゃんと一緒に作り出したときから、明らかに「はみ出そう」っていうテーマがあったんです。やってきていないことをやろうっていう。それで試行錯誤をしていたところにプロデューサーとして山口一郎さんが入ってきて「好きに料理していいよ」って言ってくれた感じなんですよね。本当にゼロから建て替えをしようっていうのは思っていました。でも不思議と、2を始めて4年、今まで一度も「サラバーズっぽい」って言われたことがなかったんですけど、"恋のジャーナル"を出したときに初めて「サラバーズみがある」って言われたんですよ。
―それは面白いですね。
古舘:めっちゃ不思議でした。いまだに答え合わせはできていないんですけど、初めてそういう声があって。なんでだと思う?
森:オリエンタル感?
加藤:ああ、中華感みたいなのはあるかもね。
古舘:あと、2って変態みはあまり出していなかったよね。
加藤:そうだね。わりと王道で。
古舘:そう、青年っぽい感じでやっていたから。"恋のジャーナル"はちょっと変態っぽさがあるのかもしれない。
―歌詞とかも確かに変態ではありますしね。10代のドロドロしたものが、今30代になってまた出てきているのかもしれない。
古舘:そう。そこかもしれない(笑)。
―森さんは加入するってなったときには2というバンドに入るという感じだったのか、それともまったく新しいバンドを一緒にやろうっていうイメージだったのか、どっちのニュアンスだったんですか?
森:いや、僕が声をかけてもらったときはTHE 2という構想も特になくって......あったかもしれないですけど、それもちゃんと聞いていなくて。そこまで説明もされずに入る感じだったんですよ。だから、新しいことをしようみたいな雰囲気はあったけど、まったく新しいものを始めていくイメージではなかったんです。
―じゃあ、入る前にイメージしていたものとは明らかに違うものが始まっていく感じもあった?
森:まあ、いろいろ話を聞いていくと、今までやってきたことで芽が出ないから、どんどん新しいものを取り入れて変わっていきたいと。さっき古くんが言っていたけど、そこでどれだけ変わってもにじみ出るものが個性で、それで死ぬぐらいなら俺には個性がないんだっていう話を聞いて。それを聞いたときには確かにそうだなって思ったし、納得して進んでいきました。
―おっしゃる通り、どんなに変えてもにじみ出るものがTHE 2には確かにあると思うんですよね。
古舘:でもそれが自分ではわからなかった。だから実験でやってみたんですよ。一郎さんのアイディアを浴びたり、サカナクションのサウンドを取り入れたり。もしそれが全部そのまんまになっちゃったら、もう個性がないんだと諦めがつくなと思って。そういうかなり危険な実験を自分に課して始めたんですよね。で、やってみたら、思った以上にすんなり受け入れられちゃって。それはそれでだんだん不安になってきている(笑)。
―はははは。不安?
古舘:もっと賛否両論を起こしたかったんですよ。「サカナクションっぽい」とか「2変わっちゃった」とか「個性なくなった」とかいろいろ言われてもいいから、それを宣伝効果として広める材料にしたかったんです。そのために投下したつもりが、わりと普通に受け入れられてしまった印象があって。そのにじみ出てるものって何なんだろうっていうのが、実験したことによってよけいにわからなくなっちゃって。じゃあ次はもっとはみ出そうっていうのをこないだPちゃんとも話したところです。じゃないとこの実験がまだ終わってないっていう。
―でも見ていても本当に振り切ろうとしているというか、1回極端に振ってみようとしているんだなというのは伝わってきます。
古舘:うん。自分たちに合う音楽、僕の声に合う楽曲って結局、サラバーズの"サリンジャー"とか2でいうと"ルシファー"とか、ああいう「がなる系」のギターロックなんです。でもそれをやるならそのゲームの椅子取り合戦に勝たなきゃダメじゃないですか。だけどそこは10年見てきて、その椅子全部埋まっているって思うんです。新しいバンドも入ってきているし、そこには僕らは座れない。だからこそ自分たちは違うところに行こうっていうのが、大好きなギターロックに対する最大のリスペクトかなと思って。僕が似合わないような曲、たとえばAORとかってまったく僕の声には合わないと思うんですけど、それを僕がやることで、似合っていないからこそオリジナリティが生まれるのかなと思ったんですよ。ぎこちない服を着ることに面白さを見出そうっていうのは今後のテーマではありますね。
―だからすごいタフなことをやっているんですよね。相当意識しないと、やっぱり肌に合っているほうに行っちゃうだろうし。
古舘:でも肌に合った音楽をやってきて、僕ら散々な思いをしてきたので。惨めな思いをいっぱいしてきましたからね。だからそこはわりと未練ないよね。
加藤:うん、ないですね。
古舘:ま、いつでも戻れるしね。
加藤:そうなんだよね。
古舘:故郷はある、っていう感じですね。
―でもそれなりに長いキャリアを重ねてきて、この時点でこの果敢な挑戦っていうのはすごいなと思います。
古舘:この武器1個で、20年、30年続けるバンドもいるじゃないですか。それで武道館やるバンドもいる。それってすごいなと思うんですよね。でも僕は違うなって。やっぱり今まで一度もいわゆるブレイクをしていないからこそ、こういう変な実験もできるようになったっていうのもあるんで。逆に、最初の武器1個でサラバーズをやったときにもし売れちゃってたら、今もう音楽やっていないような気がするんですよね。だから奇しくも続けられているというか。今後も変わっていく理由は続けていくためだし、だから全然そこは怖くはないですね。
―全部変わったと思いますけど、曲作りの部分ではどんな変化がありますか?
古舘:Pちゃんと話していても......今までは感情論ばっかりというか、「なんかアガる曲」とか「なんかかっこいい曲」とか「ライブで盛り上がる曲」「泣ける曲」みたいな感覚的な部分でしか話せていなかったんですけど、今は別にギター・ベース・ドラム・声っていう縛りさえ気にしていないので。たとえばAORやってみようよとか、ジャンルを持ち込んで話ができるようになりました。2人で話すときのワードが増えた感じがする。
加藤:そうですね。前はギター・ベース・ドラムの中でできることっていう考えかただったんですけど、今は結構同期が多かったりもするので、そういう部分で「あの音入れたくない?」みたいなものが増えていくと、自然とジャンルになってくるんですよね。今までは「絶対4人じゃないとダメなんだ」って思っていたんですけど、別にいいじゃんって思える。そこに可能性をすごく感じます。
―なるほど。たぶんそれって、バンドが「社会」になったっていう感じですよね。今までは動物同士のコミュニケーションだったんだけど、ちゃんと言語で話すようになったというか。
古舘:そうですね。1つのジャンルを追求しているバンドでも、ただそのジャンルをやりたいだけの、言葉は悪いですけど「おままごとじゃん」みたいなバンドもいれば、同じようなジャンルなんだけど超オリジナルなバンドもいるじゃないですか。なんでそういう違いが生まれるのかよくわかっていなかったんですけど、それがつまり「違和感」みたいなことなんだなというのはちょっと理解できたような気がします。僕からしたら、すごくコンプレックスだった自分の癖とか声とか、リズム感がないところとか、ピッチが悪いところとか、それも全部その違和感を生むための要素だったんだなっていう。僕がAORをやっても絶対にAORにならない、変なグルーヴが生まれる、それって結構ラッキーだなと思います。
森:でも、僕はもともとサラバーズもすごく好きだったし、古くんもすごく好きなミュージシャンだったんです。Shiggy Jr.をやっていたときにに唯一観に行っていたのが2で、それはバンド仲間だからというよりは普通に好きだったからなんですよ。そういう意味ではずっと本物感を感じていたんです。真似事感がないアーティストだなということは10代の頃からずっと思ってはいましたけどね。
―そうですよね。古舘くんにはその自覚はなかったわけですか。
古舘:ないです、ないです。その全部がコンプレックスでした、どちらかというと。「なんでこんな感じなんだろう」っていうことばっかりで。それが個性だ、武器だと思ったことはなかったですね。本当超最近ですよ。"恋のジャーナル"を出してもまだわからなかった。超最近、1つのジャンルの中で個性を見出していくことってこういうことなのかって。
―やりかたを変えて、その違和感が強調されるような形になったから見えるようになったんでしょうね。
古舘:そうですね。これは僕だけじゃないし、僕よりもむしろ2人のほうが音楽的知識が高いからこそよけいにそれはあると思うんですけど、やっぱり形式に則るというか、重んじるというか。「ロックはこう」とか「ポップはこう」とかいう決め付けってあると思うんですよ。それを最近みんなで壊そうぜ、みたいな。思い込みやめよう、「あるべき」はないんだっていう。そこに今は向かっている感じです。楽曲も作ったストックがいっぱいあったんですけど「もう1回ゼロからやろうよ」と話をしていますね。
取材・文:小川 智宏
写真:雨宮 透貴
RELEASE INFORMATION
THE 2「恋のジャーナル」
2022年4月13日(水)
Format: Digital
Label: NF Records/ FRIENDSHIP.
Track:
1.恋のジャーナル
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