SENSA

2022.04.13

神秘的なインストが描いた繰り返す春「ioni」-Highlighter Vol.128-

神秘的なインストが描いた繰り返す春「ioni」-Highlighter Vol.128-

音楽だけでなく、どのカルチャーも共通点やつながりがあるということをコンセプトにしているSENSA。INTERVIEWシリーズ「Highlighter」では、アーティストはもちろん、音楽に関わるクリエイターにどのような音楽・カルチャーに触れて現在までに至ったか、その人の人となりを探っていく。
Vol.128は、作編曲家・トラックメイカーとして活動する「まつもとたくや」のソロプロジェクトioniを取り上げる。
4月6日にリリースされた最新作『Spring ep』には、インスト3曲と歌もの1曲の全4曲を収録。作品を締めくくる「環の中」のフィーチャリングにはシンガーソングライターであり、盟友のゆうさりが参加している。さまざまな春の形をイメージして制作されたという今作は、明るい爽やかさのなかに、どこか懐かしさや寂しさを含む楽曲集となっている。


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活動を始めたきっかけ
ioniとして最初にアルバムを出したのは2018年なのですが、その時は作曲家としての名刺がわりになるような楽曲集を作ろうと思って制作をしました。アーティストとして継続的に活動しようとはあまり考えていなかったですね。
2020年に会社がリモートワークになり、家での時間が増えたので、宅録でできる範囲で曲を作って出そうかと思い立ったのが出発点な気がします。
「あまり深く考えずに作りたいものを作る」をモットーに今までのんびりと続けてる感じです。

影響を受けたアーティスト
幼い頃はゲーム音楽や映画、ドラマ劇伴などのサントラが大好きでよく聴いていました。John Williamsとすぎやまこういちさんは心の師匠です。
テクニカルな楽曲や難解なものも好きで、ジャズやプログレなんかも好んで聴いていました。自分で弾けないぶん、打ち込みで難解なフレーズを作るのも楽しいなと思って曲を作っています。上原ひろみEmerson, Lake & Palmerあたりはとても影響を受けていると思います。





ioniの活動を始めてからはJacob Collierにものすごく影響を受けています。
楽曲やアレンジの良さもそうですし、楽器の扱いも一流のマルチプレイヤーで、ひたすらに多重録音でハーモニーを積み重ねる技術は見てて非常に気持ち良いです。「あ、そんな音の作り方あったのか」みたいな音作りや楽器の使い方まで、とにかくアイデアマンで面白くてすごく研究のしがいがある人です。



複雑にレイヤーを組み合わせて作るのも楽しいですし、逆にシンプルで心地よく風景に馴染むような音楽も好きで、今はそういう音楽を作りたい時期な気もします。
クラムボンのカバーで知ったJudee Sillがずっと好きで、穏やかで優しい曲調の中にある憂いや物寂しい部分がとても愛おしくて、自分で曲を作る時にもとても影響を受けていると思います。



注目してほしい、自分の関わった作品
過去曲のMVを作ってくれた角洋介さんの映像美がホント素晴らしいので、ぜひいろんな方に見てもらいたいなと思います。




今作『Spring ep』を作るにあたって、今年はどんな曲を作ろうかなって考えていたのですが、インスト好きなのにインスト曲をガッツリ作ってリリースしたことないなと思ったのが最初のきっかけでした。映像や何かのコンテンツのBGMという形でインスト曲を作ることはあったのですが、自分のためのインスト曲っていうのがすごく難しくて......。じゃあ四季をテーマにその風景の中で聴きたい曲を作ろうと思ったのが今作です。

作ってるうちにインストだけじゃ物足りなくなって、歌モノも作ったら「これはゆうさりさんの声で聴きたいぞ」という曲が出来てしまったので、お願いしたら快諾していただきまして......。すばらしい歌を歌ってくれました。



今後挑戦してみたいこと
あまり演奏活動とかは考えていないですが、とにかくずっと音楽を作っていきたいなぁと思っております。黙々と独りで作ることが多いですが、少しずつ人と一緒に作る機会にも恵まれて、誰かと何かを作ると、こんな簡単に自分の想像の及ばないとこに届くんだなぁと感動した最近だったので、これからも誰かと一緒に何かを作る機会は増やしていきたいです。音楽的なことに限らず、映像や写真、絵や文字など......いろんなものを組み合わせて、思ってもみなかった良いモノが作れたら嬉しいです。

あと今年は『Spring ep』を作ったので、このまま夏、秋、冬も作れたらいいなと密かに思っております......。

カルチャーについて

触れてきたカルチャー
ゲームは好きでよくやります。音楽へ興味を持ったきっかけがそもそもゲーム音楽だったので、幼い頃からふとした時にやっています。いろんなゲームを手広くやったり深くやり込むというよりは、気に入った作品を何度も繰り返しやったり、途中でやめて数年後にまたやり始めたり割と薄く浅く嗜んでおります......。

最も好きなゲームは『MOTHER2』です。唯一無二の世界観で、ストーリーもビジュアルも音楽もキャラクターも全てにおいて最高です。音楽はムーンライダーズの鈴木慶一さんと『めざせポケモンマスター』でお馴染みの田中宏和さんが担当していることもあって、不思議な音使いの曲からとんでもなくグッドメロディの曲までバリエーション豊かで全然アタマから離れません。



今注目しているカルチャー
最近はインディーズ映画界隈に興味があります。というのも、今作『Spring ep』でもアートワーク写真を提供してくれた角洋介さんは映像作家の方なのですが、僕の過去作品でもMVを作ってくれていたり、自身が監督を務めて自主制作映画を作ったりとかなり精力的に活動されております。

映像界隈でもそうやってインディペンデントに活動する人がいるんだなぁっていうのは角さんと知り合ってから気づいたところもあるので、音楽以外のそういう「作りたくてしょうがない人たち」が集まるカルチャーというのはとても興味があります。

僕らみたいなインディペンデントな活動をしてる人たちは、とにかくお金もないけど作りたい!みたいな衝動で動いてる人って沢山いると思うんです。
特に映像と音楽みたいに親和性が高いカルチャーが分断してるのはもったいないなとも思うので、「あなたの映像に音楽作るので、僕の音楽に映像作ってくれませんか!」みたいな技術のトレードができたら最高だなぁというのが最近の思うところです。

RELEASE INFORMATION

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Eupholks『Spring ep』
2022年4月6日(水)
試聴はこちら

PROFILE

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ioni
1989年生まれ、東京都出身。
作編曲家・トラックメイカーとして活動する「まつもとたくや」のソロプロジェクト。
in Case of Emergency、you & me togetherのドラマーとしてバンド活動する傍ら、作編曲家としても個人で活動している。
2015年頃よりフリーBGMサイトのDOVA-SYNDROMEにて「まつもとたくや」の名前で楽曲を配信するところから作曲活動を開始。
その後、2018年頃より「ioni」として活動を開始し、並行してアーティストへの楽曲提供やゲーム、ドラマ等のBGMを制作等も行う。
柔らかくふくよかなコーラスワークを得意としている。
楽器演奏は全て自身で行う宅録作曲家。

LINK
オフィシャルサイト
@ioni_dr
Official YouTube Channel

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