The fin.とコラボした中国発の気鋭バンド「Orange Ocean」-Highlighter Vol.112-

INTERVIEW

2022.01.17

The fin.とコラボした中国発の気鋭バンド「Orange Ocean」-Highlighter Vol.112-

音楽だけでなく、どのカルチャーも共通点やつながりがあるということをコンセプトにしているSENSA。INTERVIEWシリーズ「Highlighter」では、アーティストはもちろん、音楽に関わるクリエイターにどのような音楽・カルチャーに触れて現在までに至ったか、その人の人となりを探っていく。
Vol.112は、2012年に青島（チンタオ）で結成され、2020年から世界進出に向けて活動している中国の3人組オルタナティブバンドOrange Oceanを取り上げる。
2019年に発売されたデビューアルバム『岸辺の涙』が中国全土で話題を巻き起こした彼らは、12月24日にThe finと初めてコラボをした「Made For Mermaid」をリリース。Orange Oceanがデモを作成し、The fin.のYuto Uchino（Vo/Gt/Syn）がアレンジを手がけた楽曲は、90年代のUKロックを彷彿させるノスタルジックなシューゲイズポップサウンドになっている。

活動を始めたきっかけ

Xiao Lu（Ba）：高校生の時にロックを聴きはじめ、そこでギターを弾く友だちに出会って、一緒に練習をするようになりました。その後、Orange Oceanのメンバーと出会い、ベースを弾いてみないかと誘われました。音楽が得意だし、いい音楽を作りたいと思っていたので一緒にやることにしました。

Sean Tsing（Dr）：大学でロックに触れたことがきっかけで楽器を習いはじめました。当時はギターを習っている人が多かったので、あえて自分はドラムを選んでバンドを組みました。作曲や編曲にも挑戦して、社会人になるまでは趣味として続けていたのですが、その後、友人から2KMを紹介され、Xiao Luと出会いました。

2KM（Gt）：大学でギターを習いはじめ、バンドを組みました。メンバーが変わっても名前が変わっても、音楽を作ることをやめずに進み続けてきました。社会人になってからバンドをやっていなかったのですが、何年か音楽活動しているうちに彼らと出会い、僕たちの物語が始まりました。

影響を受けたアーティスト

Xiao Lu：影響を受けた音楽スタイルはたくさんあります。最初の頃はハードロックやポップパンクを好んで聴いていました。Orange Oceanに加入してからはイギリスのバンドを聴くようになり、そういった異なる音楽が自分のスタイルを育ててくれました。

Sean Tsing：My Chemical Romance『The Black Parade』などのエモバンドに触れ、その後、Radioheadの『The Bends』『OK Computer』やColdplay『A Rush Of Blood To The Head（静寂の世界）』にも大きな影響を受けました。

2KM：僕の音楽スタイルやギタープレイに影響を与えているのは、blur、Radiohead、Oasis、Suede、MUSE、The Beatlesなどブリットポップ黄金期のバンドです。ブリットポップ以外にもJeff Buckleyやオススメしたい音楽がたくさんあります。最近ではSuedeの『Dog Man Star』を聴き返しています。

注目してほしい、自分の関わった作品

Xiao Lu：デビューアルバム『岸辺の涙』で「Alpha」という曲を作りました。テーマとリフレインがはっきりしている一般的な曲の構成とは少し違います。アレンジも非常に特徴的なので、まだ聴いたことがない方はぜひ聴いてみてください。

The fin.と一緒に作った最新曲「Made for Mermaid」もおすすめです。初めて海外のバンドと一緒に楽曲を作りました。この曲では、Orange OceanとThe fin.の特徴的なスタイルを融合させました。デモの中からThe fin.が海に関する曲を選んでくれました。お互いに海沿いの街に住んでいたという偶然もあり、とても新鮮で満足のいくコラボレーションになりました。

Sean Tsing：『岸辺の涙』に収録されている「You Nuan Chi」は、僕たちが作った曲のなかで最もスムーズでリラックスした曲だと思います。この曲を聴いていると、とても懐かしい感覚を思い出します。

2KM：バンド名と同じタイトルをつけた「Orange Ocean」は、アレンジ、ギター演奏、全体の雰囲気など、Orange Oceanの最高の芸術性を表していると思います。また今年シングルとしてリリースした「How to」という曲は、非常に意外性のあるひねくれた試みで、最近ではあまり見かけない独特の存在かもしれません。この曲を演奏すると、いつもクリスマスの気持ちが思い浮かびます。もちろん僕たちの代表曲「Summer Cozy Rock」もぜひ聴いてもらいたいです。

今後挑戦してみたいこと

Xiao Lu：将来的には、まだやったことがないので、できるかどうかもわからないですが、映画のサウンドトラックを書く機会があればいいなと思っています。また、いろいろな場所でより多くの人にOrange Oceanを知ってもらいたいと思っています。

Sean Tsing：シンセサイザーは、そのサウンドが多様で、全く新しいアイディアを生み出すことができるので学んでみたいと思っています。最近、電子ドラムとアコースティックドラムを混合した構成に触れ、サウンドパフォーマンスの可能性が大きく広がりました。今後の研究していきたことのひとつとして考えています。

2KM：ソロプロジェクトをやっていて、その作品がまもなくリリースされます。僕の作る音楽は振れ幅がかなり大きいのですが、Orange Oceanの2KMとしては決まったジャンルの音楽を作るべきだと思っています。オルタナティブ、トリップポップ、クラシック、アンビエントなど、様々なスタイルに挑戦し、音楽の常識を破っていきたいと思っています

カルチャーについて

触れてきたカルチャー

Xiao Lu：SF映画を観るのが好きです。SF映画は大きなインスプレーションと想像力を与えてくれます。『プロメテウス』や『マトリックス』のような、架空の世界の描写はとても魅力的です。曲を作るときにも無意識のうちにSFの背景に触れていると思います。

Sean Tsing：僕は料理がとても好きです。いろいろな材料を組み合わせることで様々な味の可能性が生まれます。自分が食べたいものができたときや、新しい試みが成功したときはとても嬉しいです。ライブや旅行でいろいろな場所に行って、その土地の料理を食べることも楽しみのひとつです。

2KM：僕もロバート・ソイヤーやアーサー・クラークなど、SF小説やハードなSF映画が好きです。また、1本1本に個性や魂が宿っている不思議なギターやエフェクターを集めるのも好きです。

今注目しているカルチャー

Xiao Lu：子供の頃から遊んでいるビデオゲームが好きです。映画や音楽と同じように、ゲームからも大きな影響を受けていて、僕の精神世界に冒険の可能性を与えてくれます。『t Takes Two』というゲームをやったときはとても感動しました。最近ではTGAのゲーム・オブ・ザ・イヤーを受賞して、とても嬉しかったです。

Sean Tsing：最近は『新世紀エヴァンゲリオン』や『カウボーイビバップ』など、非現実的だけど人と人との絆を描いたアニメ作品を好んで観ています。リアルすぎるものは自分の生活を思い出してしまうので、観ると負担を感じてしまうのですが、SFなどの非現実的な作品は没頭してその核心を感じることができます。

2KM：最近、ドストエフスキーの小説を読んでいました。たくさんの情報を受け取ることに慣れてしまうと、立ち止まって考えたり、観察する時間がなかったのですが、ドストエフスキーの小説を読むことで、一時的に脳を停止させることができました。また、『Left 4 Dead』のようなホラーゲームをプレイすることで、ちょっとした安らぎを得ています。