SENSA

2021.07.21

自由な音が国境を越える。台湾発のスリーピース「Elephant Gym」-Highlighter Vol.082-

自由な音が国境を越える。台湾発のスリーピース「Elephant Gym」-Highlighter Vol.082-

音楽だけでなく、どのカルチャーも共通点やつながりがあるということをコンセプトにしているSENSA。INTERVIEWシリーズ「Highlighter」では、アーティストはもちろん、音楽に関わるクリエイターにどのような音楽・カルチャーに触れて現在までに至ったか、その人の人となりを探っていく。
Vol.082では、アジア各国や欧⽶ツアーでも重ね、全世界的に⾼い評価を得ている台湾出⾝のスリーピースバンド、Elephant Gymを取り上げる。7月19日にリリースされた4th EP『CRACK OF DAWN』は前作から約2年半ぶりとなる全国流通作品。ベースボーカルKT Changのエキセントリックなピアノが爆発した「Dreamlike」、ブラスバンドを取り⼊れた「Wings」など、スリーピースバンドの可能性を大きく広げ、バンドの音楽性が自由に羽ばたく全4曲になった。toeの楽曲をサンプリングした「Go Through The Night」を収録したほか、⽇本語で歌う「Dear Humans」は、cinema staffの三島想平が作詞を手がけている。

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活動を始めたきっかけ
Chia-Chin Tu(以降、Chia-Chin):ギターのTellと僕が同じ高校で、彼は僕の1年先輩なんだ。その高校の軽音部で出会った。彼はいつもみんなにオリジナルの曲を作れって言っていて、パンクやらメタルやらフォークやらインディーポップやら、いろんなジャンルの音楽を作ったよ。
彼は僕を含めたいろんなメンバーと音楽をやっていて、しかもこの軽音部に入るには「オリジナルの曲を作ること」という基準さえも作っていたね。その時は、Tellは、妹であるKT Changと、今の彼の奥さんである、当時の自分の彼女とフォークバンドをやっていた。僕はクラスメートとバンドを組んでいたよ。
その後、TellもKTも僕も台北の大学に通うことになるんだけど、Tellがこの3人でバンドをやろうと誘ってくれた。その時は皆、まだやったことはなかったけど、インストをやりたいと思っていて、それでインストを基調としたElephant Gymを始めたという経緯なんだ。

影響を受けたアーティスト
Chia-Chin : インストに興味を持たせてくれたのはtoeだね。更にtoeをきっかけにいろんな音楽にも広がっていった。でも、現在までにもちろん好みはどんどん広がったり変わってはいて。3人が共通して影響を受けたアーティストは、CorneliusGoGo PenguinLampTyler, The CreatorHiatus KaiyoteSoft Lipaが今浮かんでいるよ。











注目してほしい、自分の関わった作品
Tell Chang(以降、Tell):COVID-19の影響でライブのほとんどが中止になってしまって、友人やファンのみんなに会えなくなってしまった。それで、日本のマネージャーであるShoから連絡を頻繁にもらうまでは、僕らに音楽をやってほしいなんて思ってないんじゃないかってところまで考えるようにもなった。Shoが「日本ではしばらくライブもできていないし、これからもなかなかできる状況にはならないけれど、日本のファンはElephant Gymの音楽を聴きたいはずだから、EPをリリースしよう」って言ってくれていて。
それで、次のフルアルバムの前に日本限定のEPをリリースすることにしたんだ。ウィルスによって引き裂かれたけれど、音楽はそれでも国境を越えることができるんだって。
だからもちろん、新譜『CRACK OF DAWN』を聴いてほしいんだけど、その中で「Wings」という曲は管楽器を使った僕らにとって初めての曲。2020年に、台湾・高雄のブラスバンド、KCWO(Kaohsiung City Wind Orchestra)が一緒に何かやろうって誘ってくれて。最初はクラシック音楽のプレイヤーは僕らみたいなロックを好んでないだろうと思ったけど、実際はとてもオープンマインドで、僕らの変拍子やら複雑な曲構成、リズムを積極的に学ぼうとしてくれた。実際にコラボをしたライブでは、僕らの曲をアレンジしただけでなく、新曲も一緒に書いたんだ。それがこの「Wings」なんだ。
そういった「クラシックとの接点」に注目してほしい。僕ら兄妹は5歳から、ピアノの先生である母からピアノを習っていたんだ。だけど2人とも練習そっちのけで日本のアニメのほうに夢中だったから、母のクラスからは追い出されて(笑)。でも10代になって、だんだんバッハやドビュッシーなんかを改めて聴くようになったね。そういうのもあってインストに惹かれていったのもあると思う。このEPではKTが、そんなクラシックからのヴァイブスを引き継いだピアノソロの楽曲を作っているよ。



今後挑戦してみたいこと
Chia-Chin:僕らはいろんな人やモノとクロスオーバーさせていくことが好きなんだ。これまでもいろんなシンガーやラッパーとコラボをしてきたし、このEPでもそうだ。劇団やダンサーともコラボをしてきたし、それは本当に楽しくて、エキサイティングで刺激的なんだよね。そういった経験は僕らに好奇心や謙虚であること、そして努力し続けることを思い起こさせてくれる。
まだまだ道半ばだけれど、そういった様々なアート・フォームと自分たちの音楽を繋げて、驚くようなライブを見せたいと思っているよ。


カルチャーについて

触れてきたカルチャー
Tell:僕らは皆、日本の映画やアニメーションが好きだね。特に『攻殻機動隊』や『AKIRA』のような映画には影響を受けている。SFが好きだった。
今回の新譜『CRACK OF DAWN』には「Dear Humans」という曲が収録されているけれど、元々それは劇団とのコラボしたテーマ曲だったんだ。演劇はダーウィンの『種の起源』についてのもので、監督とはこの舞台についてかなり話し合ってきた。劇団は人類とロボットというところにフォーカスをしていたので、Elephant Gymとしてはもう少し人類と動物やペット、というところにフォーカスをした曲を作ることにした。その内容は、滅びゆく地球で、人類は他の星に移り住もうとするのだけれど、彼らがかつて飼っていた動物たちを地球に置いていくんだ。だけど、人類の移住計画は失敗し、動物たちは地球で生き残っていくというような話だね。
ここにはもしかしたらSFの影響が出ているんだと思うよ。cinema staffの三島想平さんが今回のEPのために日本語詞を書いてくれたんだけど、そういった原曲のコンセプトなどをしっかり活かしてくれていると思うので、ぜひ聴いてみてほしい。

今注目しているカルチャー
Tell:最近はエクスペリメンタルなミュージカルに興味を持っているよ。たとえば、ニューヨークの「Sleep No More」や日本の「Dumb Type "2020"」とかかな。




ミュージカルは音楽とストーリーがしっかりと関連し合っていて、その繋がりがとても好きなんだ。それが古い曲や既存の曲でも、全く異なったフィーリングを与えてくれたりもする。劇場では、音楽に加えて装飾なども使って物理的に想像力を与えることもできる特別な場所だしね。日本でもそういったミュージカルをやって、僕らの世界観を見せられたらと思っているよ。

RELEASE INFORMATION

CRACK OF DAWN_Cover_1500px.jpg
Elephant Gym『CRACK OF DAWN』
2021年7月21日(水)
試聴はこちら

<CD情報>
Amazon
Tower Records Online

PROFILE

Elephant Gym_Artist Photo_2021_sml_1500px.jpgElephant Gym
2012年結成、台湾・⾼雄出⾝のスリーピースバンド。初期はインストゥルメンタルを基調と
していたが、近年はボーカルを取り⼊れることも多く、洗練された楽曲構成と⾼いテクニックを⾒せつける。ジャズやフューチャーソウル、インディーロックやシティポップ、フィルムミュージックなど、ジャンルを超えた幅広い⾳楽性を体現する。

2016年8⽉、1stアルバムが⽇本でもリリースされ、「SUMMER SONIC 2016」に出演。
2018年2⽉、アメリカ「Topshelf Records」より全カタログ作品がCD&レコードで全⽶リリース。日本では、4⽉に都市型フェスティバル「SYNCHRONICITY ʻ18」(渋⾕)に出演、⼊場規制となり⼤きな反響を受けた。9⽉「りんご⾳楽祭2018」「OOPARTS 2018」に出演。
同年11⽉、2ndフルアルバム『Underwater』をリリースし、東名阪ジャパンツアー実施、代官
⼭UNITの東京公演はソールドアウトとなる。また、北⽶公演全6箇所ソールドアウト含む14
カ国約100公演のワールドツアーを実施。
2019年11⽉、Tyler、 The Creator主催「Camp Flog Gnaw Carnival」(LAドジャースタジアム)に出演。
2020年1⽉、⽇本での東名阪ワンマンツアー「The Rats and The Elephants」開催 、全公演ソ
ールドアウト。8⽉、延期となったFUJI ROCK FESTIVAL '20に出演が決定していた。

LINK
オフィシャルサイト
@Elephant_Gym
@elephant_gym_official
Official YouTube Channel

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